167 誕生日パーティー
フリュデン男爵の件がお父様の裁定で終わり、次に待ち受けるのは自身の誕生日パーティー。
一昨日、皆様から色んな事を言われてしまったけれど、情報収集と交友関係を広げる事が目的だ。
成人していない方達との交流はこれが初めてとなる。
そして誕生日パーティー当日。
私は朝から準備を行っている、と言っても私自身は特に何もしていないのだけれどね。
モニカ達が頑張ってくれているから何時もながら私はされるがままとなっている。
ふと外を見ると雪は降っていないものの昨夜沢山降ったのかそれなりに積もり、陽光が真っ白い雪に反射してキラキラと輝いている。
私が物思いに耽っている間に準備が整ったので鏡で確認すると、今日もとても素敵な仕上がりだ。
モニカ達にお礼を伝えソファで一息ついていると、ヴィンスお兄様がお部屋まで迎えに来てくださった。
今日の装いもお兄様とお揃いのデザインで嬉しくなる。
「今日のステラも可愛いな」
「お兄様も素敵ですわ」
「父上に見せたら閉じ込められるよ」
「まさか。この間の言葉があるので閉じ込められることはありませんでしょう?」
「それとこれとは別だよ。さて、母上のところに行こうか」
「はい、お兄様」
私はお兄様と一緒にお母様が待つお部屋まで行くと私達二人を笑顔で迎えてくれた。
フレッドもお母様と一緒にいたけれど、彼はまだお披露目が終わっていない為、お父様と同じくパーティーには来られないのでここでお留守番で、私達に会いたいから侍女達を振り切って此処に来たようだった。
お母様は笑顔で出迎えて下さったけど、フレッドはお母様に叱られてしゅんと項垂れていた。
声に出して言わないけれど、抜け出してきたフレッドが悪いので叱られても当然なんだけれど、弟が項垂れている姿が可愛らしい。
「さぁフレッド、ヴィンスとステラに会ったのだからそろそろ部屋に戻ってお勉強の続きをなさい。また夜に会えるのですから」
「分かりました。兄上、姉上。夜に沢山お話ししてください」
「勿論だよ。フレッド、勉強頑張りなさい」
「夜にいっぱいお話ししましょうね」
フレッドは大人しく宮へと戻って行くのを見送った後、少しお母様とお話をして私達も会場となる庭園に向かった。
侍従によれば招待客の方達はほぼ揃ったようで、私達が着く頃には全員揃っているでしょう。
そして庭園に近づくにつれて楽しそうな声が響いてくる。
「ステラ、緊張はしていない?」
「はい、今日は大丈夫ですわ」
「それなら良かった。あまり前向きじゃなかったから気になってたんだよ」
「始めは気乗りしませんでしたが、今はとても楽しみです」
最初はお誕生日パーティーをすると聞いたときは遠慮したいと思っていたけれど、招待客には成人した方だけでなく、未成年者、つまり学園で同クラスの数人は出席する旨をお母様からお聞きしているので、会うのが楽しみだったりする。
どのような反応を示すかは少しドキドキするけれどね。
そして私達は会場である庭園へと着くと、先に揃っていた皆さんに私達は出迎えられる。
「皆さん、お待たせ致しましたね。楽にしてください」
お母様のその言葉で顔を上げる。
日中のパーティーなのでご夫人方が多いが、中にはお仕事を調整して来て下さったのであろう方々も見受けられる。
その中にはヒュランデル公爵の姿もあるし、お父様の側近の方もいらっしゃるわね。
どうやって抜け出してきたのかしら。
「本日は王女の誕生日パーティーに来て下さってありがとう。漸くお披露目も終わり、こうして皆さんと一緒に祝う事が出来て嬉しく思います」
私はお母様の手招きでお兄様と共に側に寄ると皆さんの視線が一気に私に集まる。
「まだ会った事の無い方々もいるでしょう。改めて紹介しますわ。第一王女のエステル・ヴィルヘルミーナ・グランフェルトよ」
お母様の紹介で私は一歩前へ出てしっかりと前を見据える。
「皆様はじめまして。エステル・ヴィルヘルミーナ・グランフェルトです。本日は私の誕生日パーティーに来てくださり感謝しますわ。何よりも皆様と交流できる日を楽しみにしておりました」
私は皆さんに挨拶と来てくださったお礼を伝える。
この後皆さんからの挨拶とお祝いの言葉を順番にいただくのだけど、真っ先にエドフェルト夫人とお兄様の側近であるエドフェルト卿がいらっしゃったが、流石に宰相はお忙しいので欠席みたい。
その後はヒュランデル公爵とそのご子息ご令嬢方全員いらっしゃって、見ている限りでは親子の関係は改善されたように思う。
今日は穏やかに挨拶をして終わり、次はベリセリウス侯爵家の面々だ。
この中ではシャーロット嬢が何故かキラキラした目で私を見てくるのがとても気になるし、何よりとても居心地が悪い。
それから順番に祝いの言葉を受け、中には私と同クラスのミルヴェーデン家、アベニウス家、勿論クロムヘイム家もいる。
その他にも数人同クラスの方達もいらっしゃっていた。
挨拶が終わると、皆それぞれ話に花を咲かす。
お母様はお母様でご夫人方に取り囲まれていた。
そして私はお兄様と共に皆さんと交流すべく会場を回ろうとすると、先ずは私とお兄様の側近達に囲まれた。
「エステル殿下、改めてお誕生日おめでとうございます」
側近の皆さんにお祝いの言葉を頂くと、お誕生日を祝って貰えることに気乗りはしなかったけれど、やはりお祝いされると素直に嬉しい。
「皆さん、ありがとう」
「やはりヴィンセント殿下とエステル殿下、お二人が並ぶと更に佳麗さが増しますね。目の保養です」
「言い過ぎだろう」
「言い過ぎではありませんよ。ご令嬢方の目を見ればよく分かるでしょう」
そうエドフェルト卿が周囲を見るよう促したので、ちらりと視線を向けると、ベリセリウス嬢と同じようなキラキラとした視線を感じる。
お兄様はちょっとうんざりしたようなお顔をされていた。
「アルヴィンの言いたい事は分かったが⋯⋯ステラと一緒だとこうなるんだな。それもそうか。ステラの可愛さは日に日に増している」
「私ではなくお兄様を見ていらっしゃるのではなくて?」
「「「違わないけど違います!」」」
そんな皆して間髪入れずに否定しなくても!
「殿下、先日も申し上げましたが皆エステル殿下とお話がしたいのですよ。そしてお二人が揃うと麗しさも増しますからね。そろそろ本当にご自覚ください」
誰かと思ったらベリセリウス侯爵が伯母様と一緒にいつの間にか傍まで来てそう話した。
「ステラってどうしてこう鈍感なんだろうね。誰に似たの?」
「鈍感ではありませんわ」
「「「いえ、かなりの鈍感です!」」」
練習したの!? って聞きたいくらい皆揃って言わなくてもよくない⁉
本当に意味が分かんないんだけど⋯⋯。
「あらあら、ステラ様は未だにご自覚が無いのね」
「オリー伯母様」
「困った方ね」
オリー伯母様は伯父様に嫁いだので王家から離れたとはいえ皆に慕われていて、丁寧な挨拶を受けている。
そんな伯母様は私に何時ものように呆れた様子で見つめているけれど、意味が分からないんだもの。
「ステラ様、ヴィンス様はご自覚なさっておいでなのに、貴女がそうではお兄様が苦労しますよ」
「どうしてお兄様が苦労するのでしょう?」
「貴女に近寄る大きな虫を追い払うのが大変でしょうから」
「虫、ですか?」
虫くらい平気ですけど。
あぁけど、あの黒いテカテカしているのは無理よ。
気持ち悪いもの。
「もう! 貴女の想像している事とは違うわよ。後でリュス様と一緒に少しお話ししましょうね」
あっ、よく分からないけどこれはお説教だわ!
伯母様の表情が怒っているもの。
優雅さは崩れていないけれど、五年も一緒に暮していたら分かるわ。
「ステラは伯母上に叱られると良いよ」
「お兄様、助けてはくださらないのですか?」
「この件に関しては伯母上を支持するので、後程よろしくお願いします」
「お任せください」
私はマティお従兄様に助けを求めようと思ったけれど、すっと視線を逸らされてしまった。
レオンお従兄様にはニコニコといい笑顔で「頑張ってください」と言われてしまった。
伯母様はそう言うと私の側近の皆に「ステラ様の傍に控えるのは大変だろうけど頑張ってね」と声を掛けて去っていった。
一体伯母様は何をしにいらしたのかしら。
伯母様が去ってからは少し雑談をした後、私達は他の皆さんとの交流もあるのでお兄様に声を掛けられた。
「ステラ」
「はい、お兄様」
私はお兄様のエスコートで側近達の元から離れ他の皆さんの所へと向かった。
先ず声を掛けたのはお父様の側近のネルソン子爵とご一家だ。
「ネルソン子爵、父上の元に戻らなくてもいいのか?」
「この後戻ります。あまり長く此処にいると陛下の嫉妬が凄いでしょうから」
そう苦笑していたが、お父様の側近の皆様はお父様の事をどう思っていらっしゃるのでしょう。
「確かにな。まぁ一番その被害を受けるのはあそこで涼しい顔をしている伯父上だろうが」
「言えてますね。⋯⋯エステル殿下、先日お話をしておりました、私の娘達を紹介させて頂いてもよろしいでしょうか」
「えぇ」
子爵に促され前へ出てきたのは瓜二つの双子だった。
「お初にお目にかかります。ネルソン家の長女ソーニャ・ネルソンと申します。お会いできて光栄に存じます」
「同じく次女のソフィア・ネルソンです。漸くお会いする事が出来、胸がいっぱいです」
二人はそう輝いた瞳で挨拶をしてきたが、私に会っただけでそんなに感激される事なのかしら。
そう疑問に思いながらも私は二人の挨拶に答える。
「お話は子爵に伺っていましたわ。本当にお声までそっくりですわね」
「はい! 私達が本気を出せばお父様達さえ見分けはつきません。⋯⋯あの、不躾ではあるのですけれど、ひとつお願いしたい事があるのですがよろしいでしょうか?」
「何かしら?」
双子はお互い見合って頷くと二人揃って私に向き直り同時に口を開いた。
「「もしよろしければ私達とも仲良くしていただければ光栄です!」」
そう告白するように両手を胸の前に組んでキラキラした目でお願いをされる。
声も揃っていて何だかとっても可愛らしいわ。
「こちらこそお願いしますわね」
「まぁ! やったわ!」
「ありがとうございます!」
二人共きゃーと嬉しそうに喜び溢れている。
子爵はそんな二人に釘を差すのを忘れなかった。
「二人共、殿下にご迷惑を掛けたら即刻引き離すからよく覚えておきなさい。殿下、もしこの二人がご迷惑をお掛けしたらすぐにお知らせください」
「分かったわ」
二人共素直でとっても明るいわね。
子爵より夫人に似ているのかしら。
その夫人は二人を窘めているから、生来の性格かしらね。
子爵は私とお兄様に挨拶をしてお仕事に戻っていった。
少しだけ夫人と双子と話をし、次へと回ろうとするが、既に順番待ちの様に列が出来ていた。
次に会ったのはベリセリウス侯爵家だった。
つまり、キラキラした目を向けていたシャーロット嬢がいる。
いつもと雰囲気が違い、目がキラキラしているのは何故なのだろうか。
「エステル殿下、お誕生日おめでとうございます」
「ありがとう。先程からシャーロット嬢の視線がとても痛いのだけれど⋯⋯」
「申し訳ありません。ずっと殿下にお会いしたくて、主人やヴィル、それにティナにまで突っかかっていて、とても面倒⋯⋯いえ彼女にしてはとても珍しい行動をとっていたので、それ程殿下に会いたくてたまらなかったみたいなのです」
珍しくセシーリア夫人がぽろっと本音が零れたところを見ると、相当だったのだろうと感じられる。
侯爵も何処か疲れた表情をしていたが、彼女に挨拶をするよう促すと、さっと前に出てきて挨拶の口上を受ける。
「エステル殿下にお会いできる日を心待ちにしておりました。ベリセリウス家が次女、シャーロット・ベリセリウスと申します。今後もよろしくお願い致します」
「こちらこそお願いしますわ。ところで⋯⋯そのキラキラした瞳はどうにかならないかしら?」
「漸く殿下にお会いする事が出来たのです! 家では私だけが除け者でしたわ。殿下と同じ年齢ですのに⋯⋯学園でも同じクラスにいたというのに! 悔しいですわ」
シャロンってこんな性格でしたっけ?
もっと落ち着いていて、静かな感じだったと記憶しているのですが?
私は思わず侯爵と夫人を仰ぎ見る。
「侯爵と夫人に質問があるのですけど⋯⋯」
「はい、何でしょう?」
「シャーロット嬢は、彼女はこのような性格だったかしら? 私の記憶と別人のように思うのですが⋯⋯」
「あぁ、何時もは殿下の記憶で間違いありませんが、少し⋯⋯感情が振り切れるとあぁなるのです。その内戻ると思いますよ」
そう苦笑して言った。
感情が振り切れるって、私に会いたくて?
ひとつ疑問が解決するとまた新たな疑問が生まれた。
「ステラは人気者だね」
「何か違う様な気がしますわ」
「違わないと思うけどね」
ほらとお兄様に言われてそちらを向けば、今か今かと待ちわびる瞳が向けられていた。
怯みそうになるけれど、お兄様と一緒に挨拶を受ける事暫く、ようやく全員とお話が出来たので、皆銘々にパーティーを楽しんでいる。
私はお兄様と別れて別行動をとる事となった。
ずっとお兄様に引っ付いているわけにもいきませんものね。
お兄様と別れたと言っても流石に一人での行動ではない。
側近であるセイデリア卿とヴィクセル嬢が付いている。
私が向かったのはシャーロット嬢がいる令嬢達の輪だ。
「お話し中ごめんなさいね。私もご一緒してよろしいかしら?」
「「「きゃあ‼」」」
えっ!? きゃあって何!?
私が驚いていると「勿論です!」と練習でもしたのかと言いたいくらい揃って返答が返ってきた。
思わず怯んでしまったわ。
そんな私を余所にシャーロット嬢が話しかけてきた。
「殿下、先程お伺い出来なかったのですが⋯⋯」
「何かしら?」
「お背中の具合はいかがですか?」
「大丈夫ですよ。痛みもありませんわ」
「それを聞いて安心いたしましたわ」
私の答えを聞いて、皆さんは心底ほっとしたように表情が和らぐ。
彼女の質問から話は学園の話に自然と流れていった。
その中には私が聞きたかった事も含まれていて、彼女達の話に耳を傾ける。
「フリュデン男爵令嬢ですが、私が聞いた話、彼女を苛めていたのはやはりノルドヴァル令嬢の取り巻きらしいですわ」
「あっ、その話なら聞いたことがありますわ。きっかけは彼女がノルドヴァル嬢を諫めた事でしょう? そのお話は二年の間では有名すぎて私達三年の間でも知れ渡っていますもの」
「殿下、元々エディトはあのように人を傷付けるような事をする子ではないのです」
そう話したのは彼女と従姉妹であるヨハンナ・ダールグレン子爵令嬢。
とても真剣な表情で私にそう訴えかけてきた。
それを聞いた他の令嬢達は反論する。
「そうだとしても今回殿下を傷つけたのは事実ですわ。それはどう釈明されるおつもりですか?」
「そうですわ! 殿下を突き落としたフリュデン令嬢も彼女に指示したニルソン卿も処罰されるべきですわ」
――えっ? 学園内でもニルソン卿が指示したと出回っている!?
その事に驚いた。
一体何処から噂が出回ったのか。
「皆さん、少し落ち着きましょうか」
私は自分を落ち着かせる為にも、彼女達を鎮めるためにもパチンと手を合わせて遮った。
「ダールグレン嬢、彼女が人を傷つけるような方ではなくても、今回私を階段から突き落としたことは残念ながら事実です」
「その件に関しましては従姉であり同じ学園にいながら彼女の異変に気付けなかった私の責任です。殿下を傷付けてしまった事、大変申し訳ございませんでした」
ダールグレン嬢はそう真摯に謝罪した。
あの男爵夫妻とは違うわね。
まぁ真っ先に男爵令嬢を庇った事は同じだけれど。
「同じ学園にいたとしても学年が違えば中々一緒にいる事も出来ないでしょう。貴女の責任ではありませんよ」
私がそう言えば一瞬ホッとしたような表情をしたけれど、直ぐに真剣な表情に変わった。
「恐れながら殿下にお願いがございます」
「何かしら?」
「今回の件をお調べの事と存じますが、私にもそのお手伝いをさせて頂きたく、お許し願えないでしょうか?」
従妹の事を心配しているのね。
真剣な目を見れば分かるけれど、簡単に許可を出すわけにはいかないのよね。
「貴女のそのお願いはダールグレン子爵もご存じなの?」
「いえ、父は知りません。私の勝手なお願いでございます」
子爵も知らないなんて、あまり良くないわね。
「申し訳ないけれど、許可を出すことは出来ません。事この件に関しては陛下のお考えもある為、私の一存でお返事は出来ないの。それに、貴女の振舞で貴女のお父様にも迷惑が掛かりますよ。それは分かっていて?」
「そ、れは⋯⋯」
「従妹を思う気持ちは分かりますが、何が出来るか、先ずはお父様とご相談された方がよろしいわ」
「⋯⋯はい」
うん、男爵夫妻よりまだ素直で好感が持てるが、表情からは納得していないようだけど。
アリシアの時に良くしていただいたから、力になってあげたいのだけどね。
だけど今の私には私の感情だけで動く事が出来ない、何よりもアリシアの時とは全く立場も状況も違うのだ。
彼女の話が終わり、私は気になることを皆に聞いてみた。
「先程のお話に戻ってもいいかしら。二ルソン卿が彼女に指示を出した、というのは事実ですか?」
「あっ、はい。二ルソン卿がノルドヴァル嬢の取り巻きの者達から指示を受けている現場に居合わせたらしいですの。彼曰く、二ルソン卿に手紙をフリュデン男爵令嬢に必ず渡すようにと、話しているのを聞いたそうですわ。それからその彼は二ルソン卿がフリュデン男爵令嬢に渡す所を目撃したとも言っておりました」
それって事が起こるのを分かっていてずっと追っていたって事?
ただの興味本位なのか面白がっているのか⋯⋯。
そうだとしたらこうなる事が分かった上で黙っていたとなると、幇助したと捉えかねない。
当時はアリシアだったとしても、今公にアリシアが王女であると公表しているからだ。
何だか事が広がっていっている気がするわ。
「その彼と言うのは誰かしら?」
「クヌートと言う同じ二年の平民ですわ」
「その彼とは仲がよろしいの?」
「同じ社交会ですのでその中で話をするくらいなのですが⋯⋯」
「そのお話を聞いたのは何時かしら?」
「休暇に入る前の社交会で聞きました」
「そうすると、貴女と同じ社交会の方々は皆ご存じなの?」
「いえ、同じ学年の私だけですわ」
彼女の話を聞いて私は頭が痛くなってきた。
他の方々も私と同じ考えなのか、不愉快だというのが見て取れる。
彼女は分かっていないのね。
今話している事がどれだけ重要な事なのか。
そしてその話を一緒に聞いていたダールグレン嬢も、彼女としてもその現場を目撃していたなら先生なりに話せば事前に防げたのにという感情が溢れているのがよく分かる。
聞きたいことはまだあるけれど、これ以上はこの話を長引かせるのは良くないわね。
「もうひとつ皆さんにお聞きしたい事がありましたの」
「私達で答えられることでしたら何でもお聞きください」
「ありがとう。どうして今日は参加して下さったのでしょう? 私もこちらに戻ってまだそれ程経ってはいませんので、少し不思議に思いましたの」
そう、直接聞いてしまった方が分かるかと思って思いっきりな質問をぶつけてみた。
そうすると、先程の少し暗い雰囲気がなくなり、ぱぁっと明るく、予想しなかった反応が返ってきた。
「それは勿論、王女殿下にお会いしたかったからですわ!」
「アリシア様の事は存じ上げておりましたが、まさか王女殿下だったなんて!」
「交流会でもあんなに格好良くていらっしゃって、それが殿下だと分かり、もう言葉に表せない位興奮いたしましたわ!」
「シア様は同じクラスのお友達で、そのシア様が王女殿下だと知り、今迄色んな事を我慢されていたのだと思うと、もっと殿下の事を知りたいと思いました。お姉様達が羨ましくて仕方ありません」
双子を始めシャーロット嬢までこちらが引いてしまう程興奮して話すのを聞いて、違う意味でちょっと頭が痛くなってしまった。
墓穴を掘ったような感覚だ。
聞いてるこっちが恥ずかしいが、皆さんの興奮が治まるまで口を挟まず話に耳を傾けていた。
暫くして落ち着いたところで、ベリセリウス夫人が私を呼びに来た。
「楽しくお話しをされているところごめんなさいね。エステル殿下、あちらでお話をと皆様うずうずしていらっしゃいますわ。私達ともお話ししてくださいませんか?」
「勿論ですわ。皆さん、失礼しますわ」
私はベリセリウス夫人について席を立ち、ご夫人方がいる方へと向かった。
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