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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
166/264

166 男爵夫妻


 今日はフリュデン男爵夫妻と面会するので、いつもより少し早い時間に宮廷の執務室へ行くと、すでに側近の皆が揃っていて少し驚いた。


「おはよう。皆さん早いですわね」

「おはようございます。今までとは違って今日から毎日登城致しますので、皆張り切っているのですよ」



 そう話したお従兄様に賛同するように皆頷いている。

 何だかすごくやる気に満ちているわね。

 何かあったのかと聞きたくなってしまう。

 侯爵に関してはそんな彼らを良き生徒だというように見守っている。

 早速ルイス嬢から本日一日の予定を確認し、私は卓上の書類に早速目を通す。

 男爵夫妻との面会は一時間後で隣の応接室で行う。

 私に付き従うのはヴィクセル嬢とクロムヘイム卿の二人で他の皆は此方で書類の整理や侯爵の元で引き続き勉強を行う事が決まった。

 いつもマティお従兄様やティナに頼むわけにもいかないからね。

 それにフリュデン男爵夫妻が相手ならこの二人でも問題はないので、お勉強の一環として付いてもらう。

 そして約束の時間より少し早く男爵夫妻がいらっしゃって応接室に案内したとアルネから報告を受けたので、私は二人と共に応接室へと移動する。

 部屋に入ると、男爵夫妻と伯父様が私達を出迎えた。



「お待たせしてしまったかしら」

「いえ、今来たところです。殿下、先ずはこちら二人を紹介させてください」

「えぇ」

「ベンヤミン・フリュデン男爵とクリスタ夫人です」

「ご紹介に預かりました、ベンヤミン・フリュデンと申します。隣は妻のクリスタです。王女殿下にお目にかかれますこと、光栄に存じます」



 そう男爵夫妻が私に挨拶をしたと思ったのも束の間、凄い勢いで跪き、頭を深く下げたのだった。



「この度は娘が殿下に対し働いた無礼を、平にご容赦ください! 我々はどうなっても構いませんが、娘だけは助けて頂きたいのです! 勝手なお願いだとは重々承知しておりますが、どうかお願い申し上げます!」



 一体彼らは何をそんなに怯えているのかしら。

 私、別に彼女の命をどうこうするつもりはないのだけれどね。

 そう思ったが、普通に考えたら王族に危害を加えたのだから彼らの反応の方が真面なのは言わずもがな。

 客観的に見てしまったけれど、私は当事者で彼らのその反応はヒュランデル公爵以上のものだった。

 まぁ、あちらは実害が無かったのであの程度で済み、だけど男爵令嬢に私は階段から落とされたという事実があるので娘を助ける為にと必死さが伝わってくる。

 後ろの二人はというと、顔にこそ出てないけれどこの光景に驚きつつもそれ程表情を崩さず現状を注視している。

 で、話を戻して二人の発言だけれど⋯⋯問題だらけなのよ。

 この発言を聞いた伯父様は笑みが深くなり、シベリウスで見てきたから分かるけれど、これは怒っている証拠だ。

 心の中で溜息をついてしまう。



「お二人共、それは本当に勝手な事だと分かっての発言ですか?」


 

 私がそう二人に問いかける。

 許すのは簡単だけれど、謝罪後すぐに娘を助けて欲しいというのは話が違う。

 私がそう発言した事に後ろの側近二人がかなり驚いているけれど、貴方達、それは減点よ。

 後でお説教です。



(わたくし)が階段から突き落とされ、こうして無事でいるのは(わたくし)が普段から鍛えていてどうすれば助かるか分かっているから動けたのです。深窓のご令嬢だったら不意に突き落されれば頭から落ち、打ち所が悪ければ死んでいますよ。それを分かった上で発言をしているのですか? どのような理由があれ、分かっていなければ貴方方の謝罪は上辺だけの事。到底そのような謝罪は受け入れられません」



 私はきっぱりとそう言い切った。

 もし、あの時私が頭を強打していればお父様は決して許さなかっただろうし、彼らは一族諸共処罰されていたの違いない。

 彼らの発言は私がこうして無事で外から見れば無傷だからそう言えるのだ。

 私の言葉を聞いた二人は震えて、更に深く頭を下げた。



「殿下の、仰る通りです⋯⋯。浅はかな発言をお許しください」



 そう力なく謝罪した。

 全く、娘が可愛いのは良いけれど、だからといって考えなしにただ娘を助けてほしいというのは虫が良すぎる。

 私の指摘で理解したようだけど、それでも⋯⋯ね、伯父様納得していないし、私も残念に思う。

 


「本当に⋯⋯領での貴方方の評価は良いものだったので対応に期待していましたが、少し期待外れでしたね。ですが、学園での出来事を考えると、令嬢に処罰なしとはいきませんが、情状酌量の余地はあります。それには全容を明らかにしなければいけませんので貴方方の力も必要です。⋯⋯まずはそちらにお掛け下さいね」

「はい⋯⋯、失礼いたします」



 男爵夫妻と伯父様、そして私がソファに座り、アルネがお茶を淹れ後ろに下がる。

 私が謝罪を受けないので二人の顔は真っ青だ。

 別に絶対に許さないわけだもないし、きちんと情状酌量の余地ありと話したのだけれど、伝わってない?

 少しきつ過ぎたかしら。

 今はそこを気にしていても仕方ないわね。

 話が進まないもの。



「フリュデン男爵」

「は、はい」

「ご令嬢の様子はいかがですか? この間辺境伯に確認すると大分落ち着いてきたという事でしたが」

「そ、そうですね、私達が娘に会った時は酷く取り乱していましたが、今では落ち着いて話が出来ています。まだ表情はぎこちなく、いつものあの子には程遠いです」

「一度心に傷を負うとそう中々癒えないものです。長い時間が必要ですよ」

「はい、アンデル伯爵様にもそのように言われました」



 こればかりはその人の心内の事だから、薬を飲んだり塗ったりして治る外傷と同じとはいかない。

 彼女から誰か、具体的な名前を聞くのはまだまだ難しそうね。

 というとやはり二ルソン家の者から話を聞くのが一番早いかも知れないけれど、彼女を苛めていた者達の名前は彼女の口から聞かなければならない。

 


「男爵にはご令嬢の様子に心配りしながらも、誰が彼女を苦しめていたのかをアンデル伯爵と共に聞き出して欲しいのです」

「畏まりました。⋯⋯殿下、不躾なお願いと存じますがお聞き届け頂きたい事が御座います」

「聞くだけ聞きましょう」



 一体私に何をお願いするというのかしら。

 先程の事で分かっていないの?



「娘に会っていただきたいのです。娘もそれを望んでいます」

「男爵、それは無理だと伝えたはずだが?」



 流石にその発言が目に余ったようで伯父様は何を言ってるんだ? と言わんばかりに冷ややかな視線を男爵夫妻に向ける。


 

「勿論辺境伯様から難しいとお伺いした事は覚えております! ですが娘は殿下にお会いして直接謝罪をと望んでいます」

「辺境伯からも伝えている通り、直ぐに会うことはできません」

「何故ですか?」

「許可が欲しいのなら直接陛下にお話しください。陛下の許可が下りたのならお会いしましょう」



 私がそう男爵に伝えると、陛下の許可がいるのかと項垂れてしまった。

 そのようにされても、無理な者は無理だし何より私は未だ未成年。

 王女だからと言って何でも出来るわけではないし、好き勝手していいわけでもない。

 男爵には悪いけれど、こればかりはどうにも出来ない。

 伯父様は呆れたよう表情で男爵を見ているけれど、彼等は彼等で娘の為に必死なのでしょう。



「男爵、何も絶対に会わないと言っているわけではありませんよ。何を焦っているのですか?」

「殿下、夫も(わたくし)も娘がまさかあのように誰かに苛められているとも露知らず、その事実をまだ受け止め切れていないのです。どうか寛大なお心でお話を聞いて頂ければ⋯⋯」

「お話は伺いしますわ。ですが、お二人はまだ分かっていないようですね。一年もの間気付かなかったのは親である貴方方の責任です。心に傷を負った者は必ず何かしら助けを周囲に求めているのです。休暇中、それに気づかなかったのは親の責任ですよ。それよりも、ご両親であるお二人がそのような事でどうするのですか? 彼女にとって一番身近な頼れる存在はお二人でしょう。それなのにそのように動揺していると彼女も不安になりますわよ。もっと鷹揚にに構えていらっしゃる方がよろしいですわ」



 私がそう指摘するとはっとしたように男爵は顔を上げた。

 表情を見てみると、何か思い当たる節でもあるのか、瞳が揺れている。

 それは夫人にも言えることで、口元に手を添え震えている。

 はぁ。結局この二人はただ娘の処罰の軽減だけを私に話に来ただけなのね。

 


「話しは以上ですね。そろそろご令嬢の元へ行って差し上げてください。辺境伯は少し残ってくださるかしら」

「畏まりました」

「お、お待ちください!」

「男爵、これ以上(わたくし)から話す事はありません」



 有無を言わせぬよう再度伝えると、夫人に促されて退室していった。

 溜息をつきたくないけれど、ついてしまう。



「殿下、お疲れ様です」

「伯父様。何です、あのお二人は」

「私も彼の発言は頭の痛い思いをしましたよ。貴女の傷の確認を最後までしないとは⋯⋯自国の王女、それも自身の娘が傷つけた相手の無事を確認しないなど、人としてあり得ない。殺意を抑えるのが大変でした」

「伯父様のお顔、怖かったですわよ」

「それを言うならステラ様の発言も似たようなものですよ。二人共顔色が真っ青でしたね」

「意地悪を仰らないでください。流石に疲れましたわ⋯⋯」



 そもそも私が対応するのは可怪しくないかしら。

 もしかして、王女と言っても私が自身の娘より年下の子供且つ戻ったばかりの王女だから舐められていたのかしら。

 その可能性は十分ありうる。



「ご安心下さい。この件は陛下の耳にも入りますので、あの二人はただでは済まないでしょう」

「それは、伯父様がお父様にお話しするからでしょう?」

「その通りです」



 ――それなら本当に最初っから親同士で対処してくださればいいのに!


 

 男爵夫妻に会って話をしてみてのただの八つ当たりに過ぎないのだけれど。



「そのような可愛らしいお顔をしないでください」

「伯父様も意地悪ですわね」

「私も?」

「伯父様も、です」



 私に意地悪する人なんて直ぐに分かったようで、呆れた溜息をお付きになった。

 何故呆れているのか分からずに見返すと「私が再三注意した事が全く伝わっていませんね」と言われたけれど、色々と言われていたけれどどの件かなと首を傾げてしまったら、はぁと大きな溜息をつかれた。



「ステラ様にはもう少し自覚を持って頂きたいですね。何度も言っておりますが、全く聞いて下さらない」



 何の事?

 困った子を見るような目で見られているけど、伯父様が何について言ってるのかが本気で分からないわ!

 私が首をひねって考えていると「マティかモニカにでも聞いてください」と言われてしまった。



「そろそろ陛下の執務室へ行かねばなりませんので私も失礼しますが、殿下、甘やかしてはいけませんよ」

「分かっていますわ」



 最後の言葉は何を指しているか流石に分かる。

 それについては私も話をしなければならないと思っているので、私が頷いたのを見て頷き、伯父様も退室していった。

 さて⋯⋯。



「二人共座ってください」



 私は後ろの二人に声を掛けると、戸惑いながらも「失礼します」と先程まで男爵夫妻が座っていたソファに座る。

 何事だろうと少し緊張気味の二人に少し癒される。

 先程までのやり取りを思えばそう思っても許してほしい。



「二人は男爵夫妻の話を聞いてどう思いましたか?」

「貴族らしい答えだと思いましたわ。ただ、辺境伯様も仰ったように殿下の容態を一度も確認しない事はあり得ない事です。娘が不調と言えど考えられない事ですわ」

「私もヴィクセル嬢と同じ意見です。流石にあれは無いと思いました」

「二人の意見は分かったわ。(わたくし)も当事者と言え同じ意見ですが、本心は分かりません。それだけ娘の事で気が動転している、と言えなくもないです」

「殿下がお二人を擁護する必要は無いと思います!」



 あら? 思ったよヴィクセル嬢は怒っている?

 それはクロムヘイム卿も同じようで、顔を顰めている。

 成程⋯⋯?



「二人が(わたくし)の為に怒ってくださるのは嬉しいですが、ただ私情で物事は判断できませんから。後⋯⋯」



 私が一旦言葉を切って改めて二人を見据えると、二人は何かを感じ取ってのか少し身構えた。



「今日の二人の態度ですが、減点です」

「えっ?」

「男爵夫妻が(わたくし)に減刑を求めた後、(わたくし)が発言した時の二人の態度です。覚えていますか?」

「は、い⋯⋯殿下があのように仰るとは思わず、驚いてしまいました」

「私も同じです」

「あの様に顔に出し過ぎては相手に侮られますよ」



 二人ははっとしたように自身の失態に思い至ったようだ。

 男爵夫妻は頭を下げていたので二人の様子は知らないけれど、伯父様にはばっちり見られているからあの発言だもの。



「申し訳ありません。以後気を付けます」

「どうして気を付けなければならないか分かっていらっしゃる?」

「私達の行動一つで殿下が侮られる事です」

「違わないけれど違います」



 やっぱり分かっていない。

 勿論私の側近の行動一つで私が侮られることもあるので間違ってはいない。

 だけどね、それだけじゃないのよ。

 二人はよく分からない顔をしているけれど、根本的な事なのよ。



「二人の考えは間違ってはいないわ。だけどね、(わたくし)が侮られる事は勿論、貴方方自身が侮られる、引いてはその後ろ、其々の家にも飛火します。それは(わたくし)も同じ事。だから慈悲を見せるのはとても簡単な事だけど、(わたくし)の感情一つでそれは出来ない事なの。故の発言だから、今後(わたくし)が言いそうにない言葉でも顔に出してはいけませんよ」



 私がそう注意すると二人共はっとなり、仲良く落ち込んでいた。

 二人に伝えた事は貴族としては基本的な事で小さい頃から家でも学園でも習っている事だからね。

 何だか教師になった気分だわ。

 二人は気を付けますと仲良く頭を下げたけれど、基本的な事が抜け落ちたものだから項垂れているので、それを払拭するように私は手をぱちんっと合わせた。



「二人共、落ち込んでいても始まらないわ。次から気を付ければいいのよ。そろそろ執務室に戻りましょう」



 私は二人と伴って執務室へ戻ると、侯爵から「遅かったですね」と探るように私に視線を向けるが、笑って躱し、少し疲れたのでアルネに甘い飲み物をお願いする。

 もう少ししたら昼食の時間だけれど、甘い食べ物を食べたくなってしまう。



「お疲れですね。男爵夫妻との面会は思わしくなかったのですか?」

「思わしくないと言えばそうかもしれないわ。侯爵は二人をご存じ?」

「何度か挨拶を交わしたくらいですので、それ程知っているわけではありませんが、人柄は悪くありませんね」



 侯爵がそう受け取っているなら気が動転して今は全く頭が回っていない、といった感じかしらね。

 私はアルネの淹れたお茶を飲みながらそう思う。

 


「殿下、ヴィンセント殿下とその側近達がいらっしゃっているようです」

「お兄様が? お通しして」



 お茶を堪能していたら気付かなかったわ。

 直ぐに部屋に通すようアルネに伝えると、私はお兄様を迎える。



「ステラ! 迎えに来たよ」

「お兄様、今日は何かご予定がありましたでしょうか?」

「いや、ついさっき決まったんだよ。私の側近達とステラの側近達は纏めて昼食へ、ステラと侯爵は私と共に陛下の元へ」

「お兄様?」

「話は後だよ」



 そうお兄様に言われてしまったから大人しくお兄様と共にお父様の元へと向かった。

 お父様の執務室内には、伯父様とお父様の側近でこの間お会いした二人と、もう一人知らない人がいたので紹介して下さった。

 お名前はステファン・リンディ伯爵で表情に乏しい⋯⋯じゃなく、あまり表情が動かなくて感情が読みにくい方のようで、一見取っ付きにくそうな方だけど、侯爵は彼の趣味は小動物や植物をこよなく愛でる事だと教えてくれた。

 ちょっと睨まれているのかと怯んでしまいそうになるけれど、侯爵は「あの顔は私が小さいから小動物と同じように見ている目です」と教えてくれたけど、全然分からないわ。

 それは置いといて、話というのは先程の男爵夫妻の件だった。

 お父様もまさか私に対してあのような対応をするとは思っていなかったようだった。

 それだけ男爵夫妻の普段は人に対してあのような礼を欠くような人物ではないという事なのでしょう。



「ステラ、悪かったな。アルから報告を受けた時は流石に衝撃だった」

「いえ。それだけお二人共も気を病んでいらっしゃるのでしょう」

「ステラは優しいな。だがそれで済ます事は出来ない。二人に私が話をし、謹慎処分を与えた。まぁ娘ときちんと向き合い、事の詳細を娘に話させる事だ。アンデル伯が引き続き男爵一家の経過観察を行う」



 という事は私はこの件に関してはこれ以上出来る事が無くなってしまった。

 学園も休暇に入ったので調べることも出来ないし、そもそも私は二学年まで休学になっているので私自身で調べることも出来ないのだけれど。

 もどかしいわ。



「ステラ、気を落とすな。やる事はまだあるぞ」

「お父様?」

「ステラの場合はどちらからでも情報を集められる」

「どちらからでも?」



 ――どういう事? どちらからでもって何?



「分かっていなさそうだな」



 お父様はそう面白そうに言うけれど、素直に教えて欲しいです。



「ステラの場合は、お茶会で令嬢達から情報収集できるだろう?」

(わたくし)はまだお茶会を開くことが出来ませんわ」

「分かっている。リュスや姉上のお茶会に出ればよい。ステラのお披露目は終わったからな。公のお茶会に出席するとなれば夫人や令嬢達も喜んで出席するだろう。女性の噂話は馬鹿にできんからな」



 お茶会での情報収集は分かったけれど、私がお茶会に顔を出したとしてそんなに喜ぶのかな?

 不思議に思っているとこの場にいる全員から呆れた視線を向けられた。

 

 

「殿下はご自分の価値が分かっていませんね」

「私の娘達は殿下にお会いできるのを楽しみにしていますよ。家では羨ましがられていますから」

「確かに、シャロンも家で不機嫌ですね」



 ロセアン卿からはそう指摘され、ネルソン子爵はご息女が私に会いたがっていると?

 そして何故シャーロット嬢が機嫌悪くしているのかしら。

 その理由は侯爵を始め、ヴィルアム卿、そしてティナが私と会っている事に対して彼女が羨ましがっているという事だった。

 確かに同じ年で同じクラスの友達なのに(王女)に戻った途端に接点が無くなってしまったから心境は複雑なのかもしれない。

 シャーロット嬢は理由が分からなくもないけれど、他の方々よね。

 全く分からない⋯⋯けど、あれかしら。

 こう有名人に会いたいというあれに似た様な感覚?

 私が悩んでいると、お兄様が笑いを噛み殺しながら私の頭を撫でる。



「ステラの身分は?」

「王女? ですね」

「何で疑問形なの」

「改めて聞かれましたので、つい?」



 無意識に疑問形で答えてしまいお兄様から即座に突っ込まれるけれ「そういう所がまた可愛いんだけどね」と笑われてしまった。

 可愛いは関係ないと思うのですが、私はお兄様に先を促す。

 


「ステラは女性の中では母上の次にこの国で高い身分に位置してるのは分かっているよね?」

「勿論ですわ」

「この国の女性は母上を除きステラより身分は下で、ステラは憧れの存在だという事は自覚ある?」

「どうして憧れられるのですか? (わたくし)はまだこちらに戻って日が浅いですし、まだ公にはお披露目の夜会にしか出ておりませんわ。まだ何かをしたわけでもありませんので憧れられる理由が分かりません」



 真面目な顔でそう答えると、お父様は「⋯⋯王宮外で過ごした影響かな」と呟きを漏らした。


 

「実感できないのは仕方ないのではありませんか? 二日後のお誕生日パーティーを経験すればステラ様もご自覚が芽生えるでしょう」



 伯父様は私を擁護し、お父様とお兄様は納得が出来たのか出来ていないのか、私も分かってはいないけれど、伯父様は私をいつもの優しい微笑みで大丈夫だというように頷いてくれる。

 その変わらない笑みに安心していると、見咎めたお父様が伯父様に食って掛かる。



「アル! ステラはもうお前の養女ではないから気安くするな!」

「養女でなくても目に入れても痛くない程可愛い姪ですからね。優しく接しても問題ないでしょう」

「ステラが減るから駄目だ!」

「心の狭い義弟ですね」

「お前に義弟呼ばわりされるのはぞっとするから止めろ!」



 いつものやり取りが始まってしまった。

 これって、別に私は悪くないよね?

 こんなに話が脱線していていいのかしら。

 そんな心配をしていたけれど、直ぐに二人共収めて話を戻した。



「ステラはそのお茶会で情報を集めたらいい。フリュデン令嬢や二ルソン家の三男から語られるのが一番だが、それもいつになるか分からん。なら周囲の目からの情報も役に立つ。むろん噂に過ぎないものもあるから照らし合わせる必要はあるが、真実に辿り着く事もあるからな。それに、アルの言う通り、誕生日パーティーやお茶会に出席していると自覚するだろう。一石二鳥だな」



 お父様はそう言うと私に頑張りなさいと励まして下さった。

 結局甘やかされて終わった気がしなくもないけれど、あの男爵夫妻の件に関してはほっとしたという思いが強いから。

 話が終わるとこのままお父様達とご一緒に昼食を頂いた。


ご覧頂きありがとうございます。

ブクマ、評価にいいねをありがとうございます!

とても嬉しいです!

次回はすみませんが一周開きまして、七月五日に更新致しますので、次回もご覧頂けたら嬉しいです


よろしくお願い致します



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