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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
163/264

163 呆れた理由


 二日目の朝、宮廷の執務室へ行くと、昨日と同様に今日の予定が伝えられる。

 今日は私が執務室で試験を受ける日。

 休学をしていると言っても学生なのは変わりなく、学園の試験日と試験内容は少し異なるが、二学年に上がる為には必要な事なので学生らしく試験に臨む。

 試験の為に此方へいらっしゃったのは担任であるクランツ先生だった。



「失礼いたします」

「お待ちしておりましたわ。ご足労をお掛けして申し訳ありません」

「いえ、早速ですが試験の概要をお伝えしてもよろしいでしょうか?」

「お願いします」



 本来試験は実技と筆記があるのだけれど、今回は筆記のみだった。

 その理由としては魔法操作に関しては交流会で私が魔法披露を行ったので、それが試験として評価される事となり、態々試験をする必要がないと判断されたようだった。

 そういった理由から実技が省かれたので、筆記試験のみとなった。

 時間も限られているので、早速試験を始める。

 私の卓上には執務に関する書類は全て片付けられて、この場にはクランツ先生と侍従のアルネだけだった。

 一応一教科に対し時間が設けられているが、特に時間まで待たず、次の教科に進める事が出来るので、私は見直しが終わると先生に伝え次の試験を始める。

 少しでも早く試験を終わらせる事が出来れば、先生も早く帰れるし私も自分の時間を作る事が出来るからだ。

 流石に午前中のうちに終らせることは出来ないので、一旦お昼休憩を挟む。

 一応先生をお誘いしたのだけれど、断られてしまったので、 先生は宮廷の食堂へ私は隣の休憩室で食事をいただく。

 そして午後からの試験を始め、すべての試験を予定よりも一時間早く終わらせる事が出来たので、クランツ先生は私の解答用紙を持って学園に戻っていった。

 試験が終わったので少し休憩を取っていると、侯爵が戻って来た。



「殿下、試験お疲れ様です。手応えはいかがですか?」

「悪くないわ」

「殿下なら何も問題はなく首席のままでしょうね」

「どうかしら。結果が出ないと分かりませんよ」

「結果を待つまでもありません」

「⋯⋯(わたくし)と同じクラスにシャーロット嬢もいらっしゃるのに、ご自分のご息女の結果は気にされませんの?」

「シャロンは偏りがありますからね。首席は無理です」

 


 きっぱりと言い切った侯爵は特に成績の事に関しては気にしてないみたい。

 今日は私の試験があった為、執務はお休みだ。

 元々私が此方に戻ったばかりという事もあり、まだそれ程振られてはいないので急ぎの案件もない。

 この後の予定を確認すると、伯父様が此方にいらっしゃるとの報告に少し驚いたけれど、一緒にアンデル伯爵が来るとの事でどのようなようなのかと考えれば、もしかしたら伯父様の怪しい説明の娘が私だと紹介するつもりなのかもしれない。

 報告から程なくして伯父様と壮年の男性、アンデル伯爵が一緒にいらっしゃった。



「失礼いたします。殿下、急にお時間をいただきありがとうございます」

「試験が終わり時間もありましたので問題ありませんわ」

「試験は如何でしたか?」

「問題なく終わりましたわ」

「それは何よりです」

「それで、そちらはアンデル伯爵ですね」

「覚えていてくださり光栄です」



 アンデル伯爵とはお披露目の際に挨拶をしているので、会うだけなら今日で二度目となる。


 

「今日はどうされたのですか?」

「例の件ですよ」



 ちょっと意地悪な表情でそう答えた伯父様。

 例の件っていうのがまた怪しいが、以前に仰っていた通り、そして私が思った通りの要件のようだ。


 

「分かりました。どうぞそちらにお掛け下さい」



 伯父様達にソファを進め、私もそちらに移動し、早速本題に入る。

 だけどその前に⋯⋯。

 


「伯父様、先にアンデル伯爵に説明した方がよろしいのでは?」

「そうですね」

「どういう事です?」



 何の事か分からずに不思議そうにする伯爵。


  

「貴方にお願いした現在試験運用している語り部屋の件です。以前あれを考案したのは『とても可愛くて聡明で謎に包まれた娘』だと伝えていましたが、覚えてらっしゃいますか?」

「はい。当日お伺いした時は一体誰なのかと不思議に思ったものです」



 それはそうよね。

 怪しすぎるもの。

 そんな怪しい説明で試験運用まで行ってくれた伯爵は心の広い方、優しい方⋯⋯本当にいい方なのだろう。


 

「アンデル卿、あれはエステル殿下の事ですよ」

「⋯⋯え? あのお話をお伺いしたのは、四、五年前でしたよね? 当時殿下はまだ五歳位だったはずでは?」

「合っていますよ。それに、当時は私の元におりましたからね。殿下が考案したとは言えなかったのです」

「それで謎に包まれた娘、ですか」

「大体、伯父様の説明が良くないのです。謎の娘って怪しすぎるでしょう?」



 私が少し呆れを含んでそう言うと伯父様はくすくすと笑っていた。

 絶対楽しんでいるわ。

 謎の娘っていう説明がとても怪しいのよ。



「それで、謎明かしだけで此処にいらっしゃったわけではありませんね。何かありましたか?」



 私がそう問うたら、すっとお二人の表情が引き締まったので、やはり本題は別にあるようだった。



「お披露目が終わり、エステル殿下がアリシア様だったと広まりつつあり、それも思いの外早く城下にも浸透しつつあります。現在平民達の間ではその話でもちきりです。これは特段気にする事ではありませんが、大聖堂でお預かりしているフリュデン男爵令嬢の耳にも入りました。それにより、かなり動揺しておりまして、今まで以上に精神状態が良くありません。事実を知り殿下を、というより当時アリシア様を突き落した理由が分かりました」

「何かしら?」

「殿下にとっては寝耳に水と言った理由です。学園でアリシア様は養女という事で軽く見られていたところがおありでしょう? それによって周囲の仲の良い男子学生と一緒にいる事を妬んだ者達の嫌がらせですね。上位貴族からの命令でアリシア様を突き落したと。ただ、その命令を下した者は直接フリュデン令嬢に言わず、別の者を挟んでいるようで、その者は三年の二ルソン子爵家の三男です」



 どこにでもある様な学園でのあるあるね。

 思わず記憶の言葉が出てきてしまったわ。

 頭が痛くなるわね。

 


「それで、陛下に報告はしましたの?」

「はい。こちらにお伺いする前に報告をしてまいりましたが、この件に関しては学園内の事ですのでエステル殿下に任せる、との事です」



 今学園の事に関しては私が受け持っているので私が処理するように、との事ね。

 学園の事と言っても自分の身に起きた事を自分で処理する、どうしようかしら。

 学園内でもアリシアが王女だともう全員が知るところでしょうから、やり過ぎも王家に対しての心象が良くないし、だからと言って手緩い対処をすれば侮られる。



「フリュデン男爵令嬢に会うことはできるかしら? 直接お話をしたいわ」

「それは了承しかねます」

「まだ(わたくし)が外に出ることは許可されていないのは分かっています。彼女を此処に連れてくることは可能ですか?」

「それもお勧めできません」

「彼女を此処へ呼んだら要らぬ噂が立つからですか?」

「仰る通りです」



 にべもなく却下されてしまったわ。

 まぁそうなると思ったけれど、私が直接話した方がいいような気もするのよね。



「仕方ありませんね。彼女にお手紙を書きますので届けてください。それならばいいでしょう?」

「はい、お手紙ならば構いませんよ」



 私は直ぐにお手紙を認める。

 先ずは挨拶から、そして強打したが大したことない事、私がアリシアではなく王女だという事は噂で聞き知っているだろうが、ただの噂ではなく事実であり、今回の件を嘘偽りなく話してほしいと。

 それにより、彼女の処断が変わってくる。

 彼女の事を考慮しながらも話しをするよう促す内容にするが、今の精神状態で読めるかどうか、そこが問題。

 そこはアンデル伯爵に任せるしかないのだけれど。



「この手紙をフリュデン令嬢に渡してください。但し、今の彼女の精神状態はきちんと考慮してあげてくださいね」

「畏まりました。お預かりいたします」

「殿下、二ルソン子爵家の子息は如何されますか?」

「まだ表立って何かは出来ないわね。だけど二ルソン家は確かどの派閥にも属していなかった筈⋯⋯」

「左様ですね。彼の家でないことは確かです」



 だからと言って、三男が繋がっていないとは言い切れない。



『二ルソン家を調べてくれる?』

『畏まりました』


 

 私は先に調べてもらうようにノルヴィニオにお願いする。

 私が少し黙ったのを不思議に思ったのか、伯父様が声を掛けてきた。


 

「殿下?」

「彼女がきちんと証言したならば表立って調べられるけれど、今はまだ出来ないわ。だけど、学園内の事ならば、マティお従兄様達でも調べられますね」

「休暇に入るまで日がありませんが、調べさせますか?」

「えぇ。お従兄様達にもお手紙を認めます。それを至急届けてください」

「畏まりました」



 私は直ぐにお従兄様達に二ルソン家の三男がどのような人物なのか、交友関係、学園での態度を調べる様に認める。

 それを伯父様にお渡しして、今後こまめに報告をするよう伝えて二人は部屋を後にした。

 私に出来る事はまだ少ないわね。

 行動範囲が狭いので難しいわ。



「お疲れ様です。殿下、差し出がましいとは思いますが、焦ってはいけませんよ」

「アルネ。分かっています。お茶をありがとう」



 アルネに淹れて貰ったお茶を飲みながら一息つく。

 そういえば、今日は侯爵の姿を見ていないわね。

 先日の件で忙しいのかしら。

 時間をちらりと確認すると、既に夕刻でお兄様も帰ってきているはず。



「ヴィンセント殿下の執務室へ行かれますか?」

「えっ、あ⋯⋯分かりやすかったかしら」


 

 ちょっと恥ずかしいわ。

 考えがそんなに丸分かりなのかしら。



「いえ、お時間を確認されましたので。ヴィンセント殿下は既にお戻りになられておられますよ」

「行ってきてもいいかしら?」

「勿論です。護衛の二人を必ず共に付けてくださいね」

「えぇ! ありがとう」



 私はヴィンスお兄様の執務室へと護衛の二人を連れて向かった。

 部屋へ入る許可は直ぐに下りた、というか、お兄様がご自分で開けて出迎えて下さった。



「ステラ! ただいま」

「お帰りなさいませ、お兄様」

「今日は部屋にステラがいなくてがっかりしてたんだよ」

「ごめんなさい。伯父様がいらっしゃっていてお話をしていたのです」

「話は聞いたよ。ステラが処理するんだろう?」

「はい」

「困ったことがあったらいつでも頼っていいからね」



 お兄様はお優しいわ。

 だけど頼ってばかりはダメな気がするのよね。

 勿論どうにも出来なくなったら頼るかもしれないけれど、それまでは頑張りたい。



「お兄様、学園はいかがですか?」

「予想通り、かな。噂に尾鰭が付いているから、曲解している部分もあるけれど、流石にシアがステラだという部分はきちんと伝わっている。一番動揺しているのはやはり一年、そして二年も同様かな」

「二年も、ですか? 接点は殆どありませんでしたが⋯⋯」

「そこはノルドヴァルの双子がいるからだと思うよ。令嬢がステラにちょっかいを掛けていたのを知っているだろう? 身を偽っていたとはいえ、王女に手を出していたんだからね」

「周囲の者達は動揺しているでしょうけど、あの令嬢本人はそれほど気にしていないでしょう」

「よく分かったね!」



 そう楽しそうな声を上げたけれど、お兄様の目は全く笑ってはいなかった。

 また何か変な事を話しているのでしょうね、きっと。

 


「神経図太くて一度頭の中を覗いてみたいね。どうやったらあんな風になるんだ?」

「育った環境のせいでしょう。それよりお兄様、何か隠していませんか?」

「何を?」



 お兄様はすっとぼけていらっしゃいますが、絶対何か隠していらっしゃるわ。

 私はお兄様の目をじっと覗き込む。

 お兄様は暫く私の目を見返していたけれど、自然に見える様にすっと視線を逸らした!

 やっぱり私に言いたくない事があるのね。

 お兄様が私に言いたくない事⋯⋯それもとても不愉快な事よね。

 んー、ってことは、やっぱり⋯⋯。



(わたくし)の相手が双子の片割れ、オリヴェル・ノルドヴァル令息だという噂でも流れましたか?」



 私がそう推測して伝えると、苦々しく顔を顰めてぶつぶつと何か呟いていらしたけど、何を言ったかまでは聞き取れなかったが、大体予想はつく。

 エドフェルト卿とベリセリウス卿二人揃って呆れていらっしゃる。



「こう言っては何だけど、あの一族の面の厚さときたら、凄いと変に感心してしまいますね」

「確かに。大体王女殿下にお会いしたことも無いというのにその自信満々な言動は呆れを通り越して感心します。私には無理ですよ」



 中々あそこまで神経の図太い方はそうそういないと思いますよ。

 それに沢山いてても嫌ですわね。



「大丈夫ですよ。その噂に関しては丁度ヴィンセント殿下が通り掛かったところで話をしていたので、きっぱりと否定なさいましたから」

「そうでしたの?」

「あぁ、下らない噂を流す暇があったら学生らしく勉学に励めと言っておいたよ」

「ありがとうございます、お兄様」

「少しは気分転換になった?」

「お兄様?」

「ステラの事だから行動範囲が狭くて動けないからもやもやしてたんじゃない?」



 お兄様にはお見通しなのね。

 


「お兄様には隠し事は出来ませんわね」

「可愛い妹の事だからね」

「そろそろ戻りますわ。お兄様のお邪魔をするわけにもいきませんし」

「全く邪魔ではないからまたいつでもおいで」

「ありがとうございます」



 お兄様にお礼を伝えて私は執務室へと戻って来たら、侯爵も戻ってきていたようだった。


 

「お帰りなさいませ。気分転換は如何でしたか?」

「学園では面白い噂が流れているようでしたわ。もうご存知なのでしょう?」

「はい。報告が上がってきております。ヴィンセント殿下だけではなく、エステル殿下もその中に入ってしまいましたね」

「お兄様がきっぱり否定したそうですよ。丁度その場面に出くわしたそうですわ」

「それならばその件は下火になるでしょう」



 大人しくするかしら。

 懲りずに話をしそうな気もしますけどね。



「それよりも、お忙しいのでは?」

「報告が上がってくるのを待っているだけですから、それ程忙しくはありませんよ。私の事より、シベリウス辺境伯から報告はありましたか?」

「えぇ、フリュデン令嬢の件で先程アンデル伯と共に伺いましたわ。直接お話を聞く事が出来ないので不満ですが」

「⋯⋯不満ですか」



 私がそう零せば、侯爵はくすくすと笑った。

 最近私の言葉で笑う事多くない?



「笑い過ぎです」

「申し訳ありません。殿下は陛下にそっくりですね。ヴィンセント殿下もそうですが、私達の報告だけを待つのではなく、ご自分できちんとお話を聞こうとなさる。とても良い事です。ですが⋯⋯」

「今はまだ動くなと言うのでしょう?」

「はい。窮屈かとは思いますが、ご辛抱頂ければと」

「分かっているわ」



 もどかしいのはあるけれど、私が勝手をするわけにもいかないものね。

 この件は報告を待つ以外ないわね。

 私は学園の不正の件について侯爵に話を聞くと、教育部門で私の書類の指示に従って調査に動いているとの事で、そちらに関しても後は報告待ちとなる。

 


「急に学園の管轄が(わたくし)となり、よく直ぐに動きましたね?」

「そうですね。最初のあの監査の書類を殿下が作成なさったと言えば、彼等も納得しましたよ」

「そんなに直ぐに納得するもの? まだ九歳の子供が考えた事よ」



 私のその言葉で侯爵は笑い声を隠せない程に笑い声をあげた。

 本日二度目、しかも立て続けに。



「侯爵、最近(わたくし)の言葉で笑い過ぎではないかしら?」

「今、のは殿下が、悪いです、よ」



 いつもの侯爵らしくない笑いを収めることが出来ていない返事。

 笑うようなことは言っていないわ!



「何処に笑う要素があったのです?」

「殿下、ご自分を子供だときちんと認識されていたのですか?」



 ようやく笑いを引っ込めた侯爵はそう質問をしていた。

 一応子供だという自覚はあるわよ、失礼ね。

 

 

「久しぶりにここまで笑いましたよ」

「笑い過ぎですわ! 夫人に言いつけますよ」

「笑ってしまい、申し訳ございませんでした」



 態度をころりと変えて殊勝に謝ってきた侯爵があまりにも可笑しくて、先程と逆転し、今度は私が笑ってしまった。



「侯爵ったら、そんなに夫人に頭が上がらないの?」

「一度彼女を怒らせてしまったことがあり、そこからですね頭が上がらなくなったのは」



 私に対しての態度と家での態度はまた違うでしょうけど、何でもそつなくこなしそうな侯爵でも人を怒らせることがあるのね。



「話は変わりますが、来週、火の曜日のお誕生日パーティーの件ですが⋯⋯」

「それ、ほんとうにするのね」

「気乗りしませんか?」

「お兄様が決定事項だと仰っていたので、否を唱えるつもりはないけれど」

「この件に関しては王妃殿下が主導で動いております。殿下はまだお茶会を開ける年齢ではありませんので。パーティーと言ってもお茶会の様なものだと思った下さい。王妃殿下が招待された方のみですのでご安心を」

「それだと不満が噴出するのではなくて?」



 私の安全を優先に、という事も分かるけれど、あまり偏り過ぎも良くないと思うのよね。

 勿論自身のお誕生日なんて家族だけで祝って頂けたらそれだけでいいのだけれど、そうは言っていられないもの。



「そうですね。ですがお披露目が終わってそう日が経っておりませんから、今年は控えめに行うのですよ」



 規模が小さいなら構わないのかしら。

 私のお披露目が急な事だったから、多くの貴族達は対応に困るでしょうしね。



「それなら。(わたくし)がすべき事はあるのかしら?」

「特にありません。殿下のお誕生日会なのですから主役が何かをする必要はありませんよ。こちらが招待客一覧になります」



 渡された用紙を確認すると、お母様が懇意にされている方が殆どで、後は私の近い人達だった。

 本当に小規模で行うのね。

 招待客を確認し、少し、ほっとしてしまった。

 ほっとしたら、一つ考えなければならない事を思い出したわ。

 


「侯爵、明日以降の予定の確認なのですけど、優先すべきことはありますか?」

「特には⋯⋯全て報告待ちが現状ですので。何かございましたか?」

「ヒュランデル公爵といつ会おうかしら。先に片付けてしまいたいのだけれど」

「そうですね。では明後日、光曜日の午後からで如何でしょう?」

「そうね、ではそのようにヒュランデル公爵に伝えてください」

「畏まりました」



 決めるべきことも決まったし、今日はここまでね。

 私は侯爵、アルネに挨拶をして近衛と共に王宮へ戻る。

 

 この日の診察では腫れも大分引いてきているので、思ったよりも早く完治するかもしれないとの診断で、安心した。

 そろそろ身体を動かしてもいいか確認をすると、それはまだ駄目です、ときっぱりと却下されてしまったので、訓練はまだまだ我慢しなければならないみたい。

 無理をして成長期の今に支障をきたすのは良くないと。

 それを言われてしまっては何も出来ないわ。

 診察も終わり医師も戻り、今は寝室に私一人。

 何だか久しぶりにゆったりとした夜を迎えている気がするわ。

 昨日までは一応試験勉強をしたりしていたし、色々とあってここまでゆっくりする暇なかったものね。

 王宮に本格的に戻り早五日。

 思ったよりもすんなに馴染んでいる。

 元々の家が此処だから馴染むも何もないんだけれど、シベリウスで過ごした年数を考えたら不思議ね。

 王宮と宮廷では空気感が全く違い、王宮(ここ)はとても心地いい。

 どちらかと言うと精霊界のような清浄な空気感だ。

 此処には小さな精霊達がいて、可愛らしくふわふわと飛んでいるのを見ると心が和む。

 そういえば私も忙しかったし、エストレヤはどうしているのかしら。

 あれから私の様子を見に来ることはあっても直ぐに何処かに行ってしまうし、交流会後は全く姿を見ていない。

 精霊だから気まぐれなのは分かっているけれど、こうも姿を見せないと少し心配になる。

 そのうち元気よく姿を現す気もするけどね。

 さて、そろそろ寝ようかしら。

 夜更かしすると怒られるしね。

 ノルヴィニオの気配もないから調査に難航しているのかもしれない。

 無理をしていないと良いけれど。

 影の心配をしつつも私は眠たさに勝てずにすぅっと眠りについた。



ご覧頂きありがとうございます。


ブクマ、いいね、評価を頂き、とても嬉しいです!

ありがとうございます。


次回は二十一日に更新いたしますので、楽しんでいただければと思います。

よろしくお願い致します。


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