表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
162/263

162 宮廷へ


 お披露目の翌日、私は初めて宮廷に足を踏み入れる。

 初めての宮廷ということもあり、ベリセリウス侯爵が迎えに来て、執務室まで案内をしてくれる。

 宮廷に着くと、先に向かったのは私が使用する執務室で、部屋に入ると室内には一人見知らぬ壮年の男性がいて、私達に気付くとこちらにやってきた。



「殿下、この者は宮廷にて殿下の侍従を務めるアルネです」

「お初にお目にかかります。アルネと申します。本日より殿下の御身の回りのお世話をさせて頂きますので、よろしくお願い申し上げます」

「こちらこそよろしくお願いしますね」

「早速ですが、今から宮廷内をご案内いたします。その後陛下の執務室で話し合いがございます」

「分かりましたわ」



 時間が勿体無いので、早速侯爵の案内で宮廷を見て回る。

 時間が早い事もありまだ人も疎らだ。

 見た目から私が王女だと分かるので、私が歩いてると脇に避けて礼をするが、その後は興味津々と言った視線がひしひしと感じられる。

 先に案内されたのは宮廷内の各部署に図書館、そして食堂や庭園を案内してもらい、その後は騎士団棟や魔法師団棟へと向かう。両棟は早朝訓練をしていたので朝から活気と熱量が凄く、訓練を少しだけ見学させて貰ったのだけれど、私が見学しているのがバレてしまって少し騒ぎになってしまい、早々に訓練場を後にした。

 一通り案内が終わる頃には宮廷に出仕し仕事をしている人達が多くなり、先程と比べられないほどの視線を浴びる。

 まるで珍獣になってみたい。

 大体見終わると、謁見の間とヴィンスお兄様の執務室、そして最後はお父様の執務室に案内される。

 侯爵は取次をし直ぐに中へと通される。

 初めて入るお父様の執務室は広く、そこにはお父様の他にお父様の側近とみられる方二名と侍従がいらっしゃった。



「陛下、エステル殿下をお連れしました」

「あぁ。ステラ、悪いが少しソファに掛けて待っていてくれ」

「はい」



 私はソファに掛けると直ぐに侍従がお茶を淹れてくれる。



「どうぞ」

「ありがとう」

「殿下、彼は陛下の侍従のイリスです」

「王女殿下にご挨拶申し上げます。陛下の侍従を務めさせて頂いております、イリスと申します。よろしくお願い致します」

「こちらこそよろしくお願いしますわ」



 イリスは何だかほんわかした方だった。

 私は彼の淹れたお茶を頂くと、紅茶に蜂蜜とレモンが入っているみたいで甘さだけではなく喉がすっきりとするような、爽快な味わいだった。

 


「この紅茶はどこのでしょう? 初めて飲みましたわ」

「これはゼフィール国から取り寄せている紅茶になります。お気に召されましたか?」

「はい。甘いのかと思ったのですけれど、とても爽やかでとても美味しいですわ」

「では、王女宮にも届けさせましょう」

「ありがとう!」



 嬉しい!

 この紅茶は本当に香りも良くて美味しいわ。

 お父様を始め皆さんに微笑ましそうに見られている事に気付かずに私はこの紅茶を堪能していた。

 暫く待つとお仕事に一段落がついたのか、お父様がソファにまでいらっしゃった。



「待たせて悪かったな」

「それほど待ってはいませんわ」

「あぁそうだ、先に紹介しておく。あそこの二人は私の側近で、紺色の髪がヴェイセル・ロセアン、茶髪がエルンスト・ネルソン子爵だ」

「陛下よりご紹介頂きました、側近の一人、エルンスト・ネルソンと申します。王女殿下にお目にかかれて光栄に存じます」

「同じくヴェイセル・ロセアンです。麗しの王女殿下にお会いでき、とても光栄に存じます」

「こちらこそよろしくお願い致しますね」



 ロセアン卿はお父様の側近の中でもお若い方の様に思う。

 逆にネルソン子爵は侯爵よりも年上かな。



「ステラ、宮廷の見学はどうだった?」

「とても広くて見応えがありましたわ。特に図書館には惹かれます」

 


 私がそう感想を述べるとお父様は呆れたような顔をされた。


 

「暫く宮廷の図書館に行くのはダメだ。王宮にある図書館にしておきなさい」



 王宮にも図書館があるの?

 行った事ないし、場所も知らないんだけど。



「ん? あ⋯⋯、ステラは王宮に戻ったばかりで少しバタついていたからな。今度ヴィンスとフレッドと共に王宮内を見回ると良いよ」

「そう致します」



 そんな私の姿を見てお父様も思い出したのか、すまなさそうにそう提案してきたので、私は素直に頷いた。



「他はどうだった?」

「騎士団と魔法師団にも行きましたわ。魔法師団の方々には、少し避けられてしまいました。きっと交流会の一件が原因でしょうね。逆に騎士団の方々には騒がれてしまいましたので、直ぐにその場を後にしました」

「は? 彼奴等ステラに何をしたんだ?」

「何もされてはいませんわ。ただ、何か口々に話しをしていたのですが、侯爵に耳を塞がれてしまって何を言われていたのか分かりません。聞いても教えてくれないんですもの」

「殿下のお耳汚しになりますから」



 侯爵がそう言うと、何かを察したのかお父様はしかめっ面になって何かボソッと呟いたようだけれど、何を言ったか聞き取れなかった。



「他に何も無かったか?」

「そうですわね。今日は珍獣になったような体験でしたわ」

「珍獣?」

「はい、(わたくし)を見てこそこそと皆様お話されてるんですもの。珍しい者を見たといった感じで珍獣の気持ちが分かりましたわ」



 私が感じた事をそのまま話すと、お父様の機嫌は何故か急降下していた。

 訳が分からずにしていると侯爵がこそっと教えてくれた。



「今のは殿下が悪いですよ」

「何故?」

「ご自分の事を珍獣などと評したからです」

「別に評したわけではないわ。ただその時の状態がそうなった様に感じただけですもの」

「一番悪いのは殿下を見てこそこそしていた連中です」

「エリオット、何時までステラとこそこそ話しをしている!」

「陛下、人聞きが悪いですよ。今の私は陛下からの命令でエステル殿下の補佐に回っているのですから、陛下の機嫌が悪くなった理由をお教えしていただけです」



 今度お父様対侯爵になってしまったけれど、それを聞いていた他の側近達はこういった光景がよくあるのか、やれやれといった風に気にも留めていない。

 お二人共落ち着いたのか、お父様はここからが本題だというようにこほんと咳払いをした。



「ステラ、昨夜の披露目の件だが、何事もなかったか?」

「そう、ですね。嫌味を言う者達が幾人かいましたが、特に気にする程の事はありません。ただ⋯⋯」

「何か気になることでもあったのか?」

「はい」



 気になる事は、例の公爵の件。

 だけど、この場でそのまま話してもいいのかどうか⋯⋯。

 私が話すのを躊躇っていると、お父様は此処にいる者達は問題ないと仰ったのを聞いて、お披露目で初めて会ったノルドヴァル公爵に対して感じた事をお話しした。

 私の話を聞くとお父様と侯爵だけが難しい顔をしていて、他の三人はよく分からないといった風な様子だった。



「エリオット、ステラの話を聞いてどう思う?」

「確かに普通の人よりも気配は良くはありませんが、殿下が仰るような気配は、私には感じられません」

「俺にもステラのようには感じられん」



 あれ、お父様ってご自分の事を“俺”って言うの?

 初めて聞いたわ。

 いつもと違う事に驚いてしまって、思わずお父様をまじまじと見ていたら私の視線を感じたお父様が問いかけてきた。



「どうした?」

「いえ、少し驚いただけです」

「何か驚くようなことがあったか?」

「あの、お父様がご自分の事をそのように砕けた風に仰るのを初めてお聞きしましたので」



 そういうと、しまったという風に口元を抑えてそっぽ向いたけれど、私に聞かれて少し恥ずかしかったのか、耳元が赤くなっていたのを見て、何だかお父様が可愛く感じる。

 普段信頼を置いている皆さんの前では口調が砕けていてもおかしくは無いので、変とは思わないけれど、いつも完璧なお父様が少し砕けた口調になるところを見るのは新鮮でなんだか嬉しく思うが、お父様はそうではないみたい。



「ステラ、今のは忘れなさい」

「何故ですか?」

「陛下、別によろしいのではありませんか?」

「言い分けないだろう。娘の前では完璧で余裕のある父でいたい!」



 お父様がそう言うと側近の皆さんがそっぽを向いて口元を抑えて笑いを堪えている。

 そんな皆さんを見たお父様はむっとしたように、睨んでいたが全員そんな事に怯む様子もない。


 

「殿下はどう思われますか?」

「お父様には申し訳ないのですが、(わたくし)は先程のお父様も新鮮で好きですわ」

「本当か⁉」

「本当ですわ」



 私がそう答えると、お父様は徐に立ち上がって私の元へ来ると、嬉しそうにぎゅっと抱きしめられたけど、家族の前ないいけれど他の人がいる前では止めて欲しい!

 恥ずかしい⋯⋯!



「お父様! 家族以外の人の前では止めてくださいませ。恥ずかしいです」

「娘が可愛すぎる! そしてお前達は見るな!」

「アンセ、流石に殿下が可哀相ですよ。それくらいにしておきませんと、嫌われてしまいますよ?」



 侯爵のその言葉を聞いて、はっとしたように私を恐る恐る伺ってくるけれど「嫌いにはなりませんよ」と伝えると、心底ほっとしたように表情を元に戻した。

 私が話しを脱線させてしまったとはいえ、話を元に戻したお父様は、私が感じた気配を詳しく聞いてきたが、言葉にするのが難しいのよね。

 私は一応言葉にして伝えてみるけれど、やはり要領を得ないような表情をされていたので、悩んだ末、お父様と侯爵なら平気でしょうから、実際に私が感じた気配をそのまま魔力に乗せて伝える事をお父様達に提案したら了承を頂いたので、お父様、侯爵の順で伝えると、お二人共かなり険しいお顔をされたので、私はちょっと怯んでしまった。



「エリオット」

「直ぐに調べさせます」



 お父様は侯爵に何かを命じ、侯爵は部屋を退出した。

 今ので何か分かったのかしら⋯⋯。

 私には何も分からなかったのだけれど。



「ステラ、あれには決して近づくなよ。もし会う事となっても決して警戒を怠らないようにしなさい」

「はい。気を付けます」

「ヴィンスが帰ってきたら話を聞かないといけにな。あれについてヴィンスと何か話したのか?」

「いえ、何も話していません」

「そうか。詳しい事はヴィンスが戻ってきてから話そう」



 一旦この話は終わりみたい。

 気にはなるけれど、お兄様と一緒に聞いた方が一度で済むものね。

 侯爵が戻って来るまではお父様と少しお話をした。

 宮廷で気を付ける事やこれから貴族達が何かしらの理由を付けて会いに来るだろうが、関係ない者は会わなくていいと。

 そして何かあれば直ぐに言いなさいと、何だか過保護ぶりに拍車がかかってきているような気もしなくも無いのだけれど⋯⋯気のせいではない筈。

 侯爵を私の臨時とはいえ、補佐に付けた時点でそれが発揮されているものね。

 お父様と話をしていると、侯爵が戻って来たので、お父様に挨拶をして私は自身の執務室へ戻って来た。



「侯爵、何か分かったのですか?」

「その件に関しましてはヴィンセント殿下がお戻りになられてからお話があるでしょうが、そのご様子だと気になって仕方ないといった風ですね」

「それは、気になるわね」



 気にならない方がおかしいと思うが、お父様が仰ったのように、お兄様がお戻りになってからお話しくださるだろうから今は出来る事をするのが正しい。

 


「殿下」

「分かっていますわ」

「では、今日この後のご予定をお伝えしても?」

「えぇ、お願いします」



 この後はお昼までこの間の執務の続きをし、昼食を頂く。

 お昼からは同じく執務を行い、ヴィンスお兄様が戻られたらお父様の執務室へ行き、話を聞く事となるが、その前に確認を⋯⋯。



「侯爵、今日お兄様がお戻りになられる時間帯にお兄様の執務室でお出迎えをしたいのですが、よろしいかしら?」

「勿論ですよ」

「ありがとう!」



 私はずっとお兄様に「おかえりなさい」と言ってお出迎えをしたかったので、今日漸くひとつ叶うと思ったら嬉しくて、先程の件が気になっていたけれど、今のであっさり気にならなくなった。

 それからは執務に集中し、休憩を挟みつつお仕事をこなしていく。

 そしてお兄様がお戻りになる時間帯が近づいてきて、私は近衛の二人を伴ってお兄様の執務室へと急ぐ。

 そんな私を侯爵とアルネは微笑ましそうに見送ってくれた。

 お兄様の執務室へ着き、この時間帯に私が来ることは伝えられていたのか、直ぐに中へ通してくれた。

 中にはお兄様の侍従であろう方がいらっしゃって私を出迎えてくれた。



「お待ちしておりました。お初にお目にかかります。ヴィンセント殿下の侍従を務めておりますオリヤンと申します。今後ともよろしくお願い致します」

「よろしくお願いするわ」

「殿下がお戻りになられるまで、こちらでお待ちください」



 挨拶をしてソファに掛けてお兄様がお戻りになられるのを待つ。

 オリヤンが淹れてくれた紅お茶を頂きつつお兄様の執務室を見回すと、本棚には専門書がびっしりと詰められていた。

 


「本をお読みになられますか?」

「大丈夫よ、ありがとう」



 今本に手を出せば、お兄様がお戻りになった時に気付かない可能性もあるので、そこは遠慮しておく。

 それから程なくして、扉の外から微かな話声が聞こえたので、きっとお兄様がお戻りになられたと、私は立ち上がってお兄様が部屋に入っていらっしゃるのをドキドキしながら待っていると、扉が開きお兄様が部屋へと入っていらっしゃった。


 

「お帰りなさいませ、お兄様」



 お兄様の姿を確認し私がそう声を掛けると、まさか私がいるとは思わなかったようで目を見開いて私を確認すると、それも一瞬で私の元へ駆け寄ってきたと思ったら抱きしめられた。


 

「ステラが出迎えてくれるなんて! 幸せだなぁ。ただいま、今帰ったよ」

「ふふっ。お兄様、驚きましたか?」

「驚いた。まさか執務室にステラがいるなんて思わなかったからね」

「ずっとこうしてお兄様におかえりなさい、って言いたかったのです。ひとつ夢が叶いましたわ」



 私がそう伝えると、お兄様は嬉しそうに私の頭をそっと撫でた。

 お兄様が私を離すと、その後ろにはエドフェルト卿とベリセリウス卿が控えていてびっくりしてしまった。

 まさか一緒に戻って来るなんて思わなかったからだ。

 ずっと見られていたと思うと恥ずかしい。

 思わずお兄様にぎゅっとしがみ付いてしまった。

 


「ステラ、あの二人なら気にしなくていいよ」

「いえ、気にしますわ。お二人もいてたなんて⋯⋯恥ずかしいです」

「我々の事はお気になさらなくてもよろしいのですよ」

「エドフェルト卿とは学園でも接していましたので、それを思うと少し⋯⋯」



 それを聞いた彼はくすくすと笑っていつも学園で見せる表情をしていた。



「殿下はアリシア様の時とこうしてお戻りになられた今とではやはり少し違いますね。柵が取れてとても自由なのだと感じます」

「それはそうですけれど、学園での(わたくし)も嘘ではありませんし、どちらも(わたくし)ですわ」

「仰る通りですが、第三者から見ると振舞が全く違いますよ」



 そうかしら?

 そこまで言われるほど違うとは思わないのだけれど。

 エドフェルト卿と話をしていると、少し拗ねたお兄様が私の手を引いてソファに誘った。

 


「ステラ、今日は何をしていたんだい?」

「午前中は侯爵に宮廷内を案内していただきましたわ。それからお父様と少しお話をしてから執務を行っておりました。そういえば、この後お兄様と共にお父様の執務室へ行かなければなりません」

「何かあったのか?」

(わたくし)にも詳細は分かりませんわ。原因は(わたくし)であることは間違いありませんが⋯⋯」

「分かった。二人は此処で待機だ。ステラ、行こうか」

「はい、お兄様」



 お二人を残して私とお兄様は早速お父様の執務室へ行くと、侯爵も執務室に居て私達を待っていた。



「来たか」

「お待たせいたしました。お呼びと伺いましたが」

「先ずは二人共座りなさい」

「失礼いたします」



 私達はお父様の対面に並んで座り、早速本題に入った。

 話と言うのは午前中に私がお話した件だった。

 ヴィンスお兄様がどう感じたか、お父様が質問すると、お兄様からは私と同じような答えが返ってきた。



「ヴィンスもステラと同じように感じていたのか」

「ステラもって、ステラもあの不気味な、言い知れない気配を感じていたの?」

「お兄様もですか?」

「お前達はほとほと予想外だな」



 お父様は少し感心、というか呆れを滲ませてそう零した。

 侯爵も少し驚いた表情をしていたが、少し考える素振りを見せていた。



「陛下も魔力は多いですが、殿下方が感じたように捉えられていないとなると、もしかしたらお二人は感受性がとてもお強いのかもしれませんね」

「それは二人がまだ子供で周囲の機微に敏感だという事か」

「そうだと思われます」

 

 

 それを聞いたお兄様は何だか納得いかないような表情をしていた。

 きっと子供だからという事にひっ掛かっているのだと思う。



「ステラ、ヴィンスにも先程私達にしたように教えてあげなさい」

「はい、お父様」



 私はお兄様にも私が感じた気配を魔力に乗せて伝えると、顔を顰めて「私が感じたより酷い」とそう仰った。

 本当に気持ち悪そうに首を振って私に向き直る。



「ステラ、こんなに気持ち悪くなるのにどうしてその時言ってくれなかったんだ?」

「続々と貴族達が挨拶に来ておりましたから言えませんでしたわ」

「部屋でも話せただろう?」

「ごめんなさい」

「ヴィンス、ステラも初めての夜会で疲れていたんだろう。そう攻めてやるな」

「攻めてはいませんよ」

「お父様、お兄様は心配してそう仰っているのは分かってりますので、大丈夫ですわ」



 話は此処からが本題で、お父様が侯爵に命じたのはノルドヴァル公爵周辺をの再調査だった。

 いつも見張らせてはいるようだけれど、今回は身辺調査と言うよりも、この気配を探る為に侯爵に命じたようだった。

 あの気配は人の気配と言うよりも悪意が強すぎて、あの魔道具に似ている気がする。

 それよりもずっと濃い気配で、だけどそれで正気を保っている事に疑問も感じる。

 そこにお父様達も不可解に思っている点だと思う。

 お父様達にしてみたら、正気を失い魔物化してくれた方が排除しやすいと考えているでしょうけど、今回の調査結果次第では動けるかもしれないと踏んでいるのかもしれない。



「どのような結果が出てくるかは分からんが、奴はお前達二人共、特にステラに興味深々だ。弱々しく思わせる事で余計にステラが狙いやすいと思った事だろうな。それは披露目の際の態度を見ていても分かる事だが⋯⋯私が命じた事とはいえ、ステラを囮の様に使うのは嫌なんだがな」

「お父様、(わたくし)も王家の一員ですわ。害となる者を排除するのに(わたくし)が必要ならば何でも致します」

「「だからステラを使いたくないんだ⋯⋯」」



 何故かそこでお父様とお兄様の言葉が重なった。

 そんなに私って頼りないのかしら。

 確かにまだまだ子供だけれど、ちょっと傷つくわ。



「エステル殿下、陛下とヴィンセント殿下のお考えは少し違いますよ」

「どう違うのですか?」

「お二人共、エステル殿下の事が心配なだけです。貴女は決して弱くはありませんし、進んで事をなそうとされるでしょう? ですので殿下を囮に使うのはとても有効ですが、そうはしたくないのが本音なのです。危険に晒したくないだけであって決して頼りないと思っているわけではありませよ」

「エリオットに説明させるのは癪だが、その通りだ」



 頼りないと思われているわけではないようでほっとしたけれど、暫く私の行動範囲は、王宮と宮廷内だけだと限定されてしまった。

 やはりアリシアの時よりも行動範囲は限定されてしまうけれど、今はそれでいいと思う。

 まだ此処に戻って来たばかりだし、何が起こるとも分からないので、これ以上お父様達に心配をお掛けするのも申し訳ないので、大人しくしておこうと思う。

 ノルドヴァル公爵の件に関してはまた何か進展があれば教えて頂けることとなったので、この件はお父様達からの情報を待つようにとの事で終了した。

 

ご覧頂きありがとうございます。


今日は予約日時間違いで時間過ぎてしまい、お待たせしてしまってすみません(_ _;)



ブクマ、評価、いいねを頂きたいとても嬉しいです!

本当にありがとうございます。

次回は十六日に更新致しますので、楽しみにして頂けたら幸いです。

よろしくお願い致します。

次回は間違えないように気を付けます!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ