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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
161/273

161 お披露目


 私がお兄様のエスコートでホールへ足を踏み入れると、大勢の貴族達が私達を迎える。

 全員礼を以て迎えているので俯いているが、気配でこちらを伺おうと、どういう事なのかと興味津々さがひしひしと伝わってくる。

 私がお兄様のエスコートで席に着くと、宰相であるエドフェルト公爵が「顔を上げる様に」との言葉をかけ、全員が礼を解き顔を上げると、それは驚きのざわめきへと変わる。

 殆ど全員が私を凝視しているのではないかと言うくらいの痛い視線だが、私はそんな視線に怯まずに、優雅に笑みを浮かべ前を見据える。

 お父様が手を上げるとしんっと静まり返った。

 皆が静まり返ったのを確認し、お父様は静かに話し始めた。



「今夜時間を早めたのは他でもない、我が娘の披露目を行う為だ。本来八歳で披露目を行うが故あって今となった。先ずは皆に紹介しよう。グランフェルト第一王女である、エステル・ヴィルヘルミーナ・グランフェルトだ」



 私はお父様のお言葉で立ち上がって優雅にカーテシーを行うと、貴族全員から返礼があった。

 その後、席に着いたのを確認すると宰相から事の説明がなされた。

 内容は前以て聞いていたので、特に驚くようなことは無いけれど、貴族達はまた違う。

 私が毒に侵された事、その後何処でどのように生活をしていたかを伝えられた。

 私がシベリウス辺境伯の養女として生活していたことに対しては、やはり、と言った風な雰囲気に包まれた。

 宰相が説明している最中、私は貴族達をそれとなく見ていると、私達の近い位置にアル伯父様、オリー伯母様を始め、セイデリア辺境伯夫妻が一緒にいて、その反対側にはベリセリウス侯爵夫妻がいらっしゃった。

 彼等は宰相の話を聞きつつもさり気無く周囲に目を光らせていたが、私と目が合うとふわっと表情を緩ませた。

 それも一瞬のことだけれどね。

 そして宰相の話が終わると次はお父様が口を開く。



「今宰相からあった通り、王女はシベリウス辺境伯の元で四年と少しを過ごした。我が娘が恙なく過ごす事が出来、この様に成長した姿で我が元に戻って来ることが出来たのも一重にシベリウス辺境伯のお陰だ。改めて礼を言う」



 お父様のお言葉と同時に私達は伯父様達に対して礼をする。

 伯父様に私達が礼を尽くした事で周囲の貴族たちの牽制を図る。

 王家が頼んで(王女)を護り育てた事への要らぬ詮索を避けるためと、伯父様達への負担を減らすためだ。

 これで私の説明は終了し、社交界の始まりとなり、貴族達からの挨拶を爵位順に受ける。

 先ず挨拶に来たのはエドフェルト公爵家の方達だ。

 私達の前で礼をし、お父様の言葉で顔を上げるとお父様がねぎらいの言葉を掛ける。



「先程はご苦労だったな」

「勿体なきお言葉。漸く王女殿下のお披露目を行う事が出来安堵いたしました。改めてご無事にお戻りになられました事、お慶び申し上げます」

「感謝する」

「つきましては王女殿下に愚息を紹介したく存じ⋯⋯」

「それは許さん。後ろが支えているからさっさと行け」



 お父様は最後まで言わせずに鬱陶しそうに手で下がるように示した。

 宰相も分かっているのかクスクスと笑いながらあっさりと引き下がる。

 愚息というのは、学園の生徒会長の事だ。

 試験中にも変わらず、会長は夜会に出席したみたいね。

 八学年は既に行き先が決まっており、試験は受けなければならないが、寮生活でなくても邸から通うことができる為、夜会に出席したようだった。

 その次はヒュランデル公爵家。

 ヒュランデル公爵家は私が学園に入って直ぐ絡んできた元令嬢の義父だ。

 夫人はいらっしゃらないので、一緒に来ているのは公爵の嫡男と二人だった。

 先ほどと同じく礼をとる公爵へ挨拶をすることを許す。

 


「陛下、改めて謝罪させて頂たく。王女殿下におかれましては⋯⋯」

「ヒュランデル公爵、その件は既に終わった事だ。謝罪は不要」

「ですが⋯⋯」

「お前は生真面目だな。後日王女が会うことを許せば直接謝罪するがいい」

「そのように。改めましてこの度、王女殿下がお戻りになられた事、心よりお慶び申し上げます」

「感謝する」



 流石にこの場で謝罪されても困るので助かったわ。

 ため息を付きそうになるのをぐっとこらえていると、ゾクッと嫌な気配がした。

 ねっとりと絡みつくような気持ちの悪い気配⋯⋯。

 視線を戻せば、お祖父様に似た方がいらっしゃった。

 似ているのは外見だけで相貌は全く違う。

 一見厳格そうに思うけれど、それとはまた違う、気配が可怪しい。


『もしかして、あの方がノルドヴァル公爵?』

『左様です』

 


 彼は先の公爵達と同じくきちんと礼を尽くすが⋯⋯。

 お父様は態度を変えることもなく表を上げるよう声を掛けると、すっと正面を、お父様を見据えた。

 


「ご機嫌麗しく。ようやく王女殿下が公にお出ましになられた事、誠に喜ばしく思います」

「あぁ、公は特に王女の事を気に掛けていたな」

「恐れ多くも王女殿下は私にとっては姪孫となりますので心配もしましょう」

「ノルドヴァル公爵、其方は既に王族から除籍されている身である故、王女は其方の姪孫には当たらぬ。発言には注意せよ」

「これは、失言を。申し訳ございません」



 口では何とでも言えるけど、この方は何と言うか不気味な方だわ。

 顔を顰めてしまいそうになるのを必死で堪える。

 挨拶が終わりこの場から去ったことで安堵していると、次に挨拶に来たのがベリセリウス侯爵夫妻、そして嫡男のヴィルアム・ベリセリウス卿と一緒だった。

 確かお兄様の側近の一人よね。

 私が記憶を辿っていると侯爵との挨拶があっさりと終わり、次にいらっしゃったのはアル伯父様とオリー伯母様だった。

 ここでは簡単な挨拶だけでちらりと私にも微笑んで下さって下がっていった。

 そしてセイデリア辺境伯がいらっしゃり同じように挨拶を受ける。

 こうして続々と多くの貴族達の挨拶を受けるのだが、中には不躾に私を見てくる者達もいるが、優雅さを崩さずに相手がどこの誰なのか、またどのような人物なのかをよく見ておく。

 挨拶を受けていると、誰がどのような者達なのかがよく分かる。

 そして全員の挨拶が終わると本格的に社交界の始まりだ。

 


「今夜は王女のお披露目という事もあり、ファーストダンスは第一王子と第一王女に努めてもらう」



 お父様のお言葉でヴィンスお兄様が立ち上がり、私の元に来て手を差し出す。

 私はその手を取り優雅に立ち上がり、ダンスホールへと降りると人垣が割れて中央へと向かい、お兄様と向き合う。

 多くの貴族達が私に視線を向けているのが分かる。

 そして曲が始めり、お兄様とのダンスの始まりだ。

 曲が始まるまでは少し緊張していたけれど、それもお兄様のお顔を見ていると緊張も忘れてただ二人の世界を楽しむ。



「ステラ、直ぐに緊張が取れたね。それにとても上手だよ」

「お兄様と一緒ですもの。ずっとお兄様と踊れるのを楽しみにしていたのです。緊張するよりもこの時間を楽しみたいですわ」

「私もだよ。やっとステラとダンスが出来てとても嬉しいよ」



 私達は話したいこともあるけれど、今の時間はただダンスだけを楽しむ。

 お兄様はリードが上手でとても踊りやすく、本当に楽しんでいるので周囲の事を忘れていたくらい。

 曲が終わるとお互い礼をとり、私達のダンスが終わった。

 楽しすぎて一瞬で終わってしまった。



「二人共見事であった。他の者達も夜会を楽しむといい」



 お父様のお言葉で、周囲の貴族達もダンスを始める。

 私はお兄様にエスコートされ、王族席の近くに移動した。

 先ず私達の元にやってきたのは、エドフェルト公爵家の者達だ。

 エドフェルト卿も一緒だった。



「両殿下、先程はとても素晴らしいダンスでしたね」

「ありがとう。やっと妹とダンスが出来て、見せびらかすことが出来て嬉しくてたまらないよ」

「お兄様、見せびらかすなんて⋯⋯、恥ずかしいですわ」



 見せびらかすって、そんな事しなくていいです!

 私が少し恥ずかしそうに抗議をすると、お兄様がもくすくすと笑っていた。

 もう、笑うなんて酷いわ。

 そんな私達を優しく見ていた公爵は、先程お父様に素気無くあしらわれたにも関わらず、同じ言葉をにした。

 言葉の意味は少し違うけれどね。

 



「エステル殿下、愚息を紹介してもよろしいでしょうか?」

「えぇ」

「嫡男のアルヴィンです。愚息はヴィンセント殿下の側近を務めておりますので、これからもお会いする事がありますでしょう」

「お初にお目にかかります。アルヴィン・エドフェルトと申します。王女殿下にお目にかかれました事、光栄に存じます。そしてこれまでの無礼をお許しください」



 そう深く頭を下げた。

 いつも見る会長とはまた雰囲気も違い、この夜会の雰囲気がそうさせているのかもしれないけれど、エドフェルト卿も緊張しているのかもしれない。

 そして最後の言葉には言葉以上の気持ちが籠もっていた。

 多分、生徒会での事が原因でしょう。

 


「頭を上げてください。今まではシベリウス辺境伯家の者として過ごしていたのですから、お気になさらないでくださいね」



 私は特に気にしていないので、そこまで深い謝罪は必要ないので、そういった意味を込めて彼にそう伝えた。


 

「感謝いたします」

「エドフェルト夫人はお久しぶりですね」

「はい。前王妃殿下のお茶会以来ですわ。無事にお戻りになられました事、お慶び申し上げます」

「ありがとう」



 夫人は変わらず優し気に私に接して下さる。

 そう思っていたら公爵が何か思い出したように話しかけてきた。



「殿下のお時間がある時で構いませんので、一度お話をさせて頂たく存じます」

「前にもそのようなことを話していましたが、どのようなお話かしら?」

「殿下のお考えに興味がありますのでゆっくりとお話をしてみたいのです」



 ――⋯⋯えっ何? 聞き間違いかしら。考えに興味があるって、なに?



 私が若干引くと、お兄様とエドフェルト卿が公爵を止めてくださった。



「ステラ、公爵は若干変態なんだ。公爵にとって興味のある施策があれば、誰にでもどうやって考えたのか聞き出そうとする。少ししつこいからまた言われたら、嫌なら遠慮なく断っていいからね」

「ヴィンセント殿下の仰る通りです。遠慮なくお断り下さい」

「分かりましたわ、お兄様、エドフェルト卿。ありがとうございます」



 少し雑談をしていると、次にいらしゃったのは、ベリセリウス侯爵家だった。

 


「おや、エドフェルト公爵もご子息を殿下に紹介したのですか?」

「勿論紹介しますよ。学園で同じ生徒会ですからね」

「では、私の愚息も紹介させていただいてもよろしいでしょうか?」

「あら、嫌だと申し上げたらどうするのです?」



 私が少し戯けてそう聞くと、侯爵は面白そうに笑って返事を返してきた。



「殿下はお優しいので許してくださいますよ」

「そのように言われてしまっては許さないわけにはいきませんわね」

「お許しいただき恐縮です」



 侯爵とは最近とても気安くお話しするようになり、今みたく軽口も叩くようになった。

 私達を見ていたヴィンスお兄様が紹介して下さった。



「ステラ、彼は私の側近だから覚えてあげて。ヴィル」

「初めてお目にかかります。ヴィルアム・ベリセリウスと申します。王女殿下に御目見え出来ました事、光栄に存じます。妹共々、よろしくお願い致します」

「えぇ、こちらこそお願いしますわ」



 侯爵のご子息は、侯爵より夫人に似ていらっしゃるのね。

 だけど、その内面はきっと父である侯爵似ね。

 何となく、そのような雰囲気が出ている。



「エステル殿下、ご無沙汰しております」

「夫人もお変わりないようですね」

「はい。殿下、もし彼に意地悪をされたらいつでも仰ってくださいね」

「え? えぇ、分かりましたわ」



 あら? もしかして、夫人って何気に強いのかしら?

 色んな意味で⋯⋯。

 侯爵の表情が一瞬崩れた様な⋯⋯?

 侯爵を見ると、何事も無かったの様に何時もの表情を取り繕っていたけれど。

 ⋯⋯なるほど。



「エステル殿下、何をお考えですか?」

「いいえ、何もありませんわ」


 

 侯爵は少し探るように、ちょっぴり苦虫を噛み潰したように聞いてきたけれど、にっこり笑って躱した。

 続々と私達の元にやってくるのは私と交流のある人達だった。

 アル伯父様達とセイデリア辺境伯夫妻が一緒にこちらにいらっしゃり、同じように挨拶を交わす。



「エステル殿下、とても堂々としていてヴィンセント殿下とのダンスもとても素敵でしたよ」

「ありがとうございます、伯母様」



 伯母様はそっと私に近づいて、私に話しかける。



「ノルドヴァル公爵に何も言われていないかしら?」

「挨拶の時に私の事を姪孫だと言って、お父様に窘められていましたわ」

「喧嘩売ってるのね。この後も気を付けなさい。(わたくし)達もそれ程離れずにいるつもりだけれど、(わたくし)達が離れたらきっと近づいて来るわよ」

「はい。よく注意します」



 やはり、後から来るのかしらね、あの公爵は。

 伯父様とセイデリア辺境伯、そして夫人とも言葉を交わして、彼らは離れていく。



「ステラ、これからは私達を支持する者達だけでなく、色んなに者達が近づいてくるから、私の側にいてね」

「はい、お兄様」



 それからという者、本当に色んな貴族達からの挨拶を受けた。中には本来の意味で子息を進めてくる者もいたが、素気無くお兄様に撃退される。

 そして、ノルドヴァル公爵よりも先にヒュランデル公爵が此方に近づいてきた。



「王子殿下、並びに王女殿下にご挨拶申し上げます」

「あぁ」



 お兄様は未だに燻っているのか、公爵に対して素っ気ない。

 親の監督不行き届きと言えど、彼はどちらかと言うと、私達寄りでしょうに。

 


「王女殿下、少しお話させて頂いてもよろしいでしょうか?」

「あの件に関して此処で話をするつもりはありませんわ」

「承知しております。殿下は明日より宮廷で執務をされるとお伺いしましたが、近く少しお時間を頂いてもよろしいでしょうか?」

「えぇ。日程時間等については此方に合わせて頂きますけれど、よろしいかしら」

「勿論です」

「では後日時間を伝えさせますわ」

「はい。お時間をいただき、感謝します」



 お父様が生真面目だと言っていたけれど、あの二人と比べたら真面目な方のようね。

 あの二人、と言うのはエドフェルト公爵とベリセリウス侯爵の事だけれどね。



「ステラが良いなら文句はないが、ヒュランデル公爵、ステラを煩わせたら承知しない」

「肝に銘じます」



 公爵との話が終わると、ふと先程挨拶の時に感じた不気味な気配が強くなった。

 私はそっとお兄様に近づくと、お兄様も気付いたのか、こちらに近づいてくる人物を注視する。



「お時間よろしいかな?」

「ノルドヴァル公爵、我らに対して気安過ぎる。先程陛下に言われたばかりではなかったか?」

「失礼致しました。少し会わない間にご立派になられましたな。妹姫が戻られて余程嬉しいと見えます」

「発言には気を付けた方がいいぞ。今の言い方は周囲に誤解を与える」

「ご忠告痛み入ります」



 そうお兄様と言葉の応酬をしている中、私はと言うと侯爵に言われた通り、少し弱々しく見えるように、目を伏せ気味に、お兄様にぴったりと引っ付いている状態だ。

 その私に対して可哀相な者を見るような、嘲る様な視線を私に向けてきた。



「妹姫はこの場にはまだ早いと見えますな。親交の無い者に対してそのように兄王子に隠れているとは⋯⋯もう少し社交性を身に付けなければなりません。王家の威信に関わりましょう」

「王女は今日が初めての夜会だ。公爵の言は最もだが、ステラにはステラの時間が必要だ。其方に言われる必要なはい」

「ふむ。少々心配ですな。我が孫が王女の一つ上ですので、良ければ我が孫から学ぶとよろしいでしょう。あの子にもそのように伝えておきましょう」

「遠慮しておく。ステラには既に同学の友人がいるので必要ない」

「残念ですな。もし必要ならいつでもお申し付けください」



 公爵は思ったよりもあっさりと去っていった。

 あの不気味な気配、一体何なのかしら。

 人知れず息を付くと、お兄様は励ますように私の頭を撫でる。



「大丈夫?」

「平気ですわ。もう少しで面倒になるところでしたね。お兄様、ありがとうございます」

「あの孫がステラに纏わりつくと思うと不愉快だ」



 私も不愉快ですわ。

 それに、私が(アリシア)だと直ぐに噂が広まるでしょうに、それでもあの令嬢は私に近づいて来るかしらね。

 


「お兄様、(わたくし)弱々しく見えたかしら?」

「とても上手だったよ。安心していい」

「それは良かったですわ」



 私達の貝輪が一段落したのを見計らい、近衛騎士がそっと近づいてきた。


 

「両殿下、そろそろお時間です」

「分かった」



 色んな貴族達と会話をしていたので、時間はあっという間に過ぎていたみたい。

 近衛に言われて、私とお兄様はお父様とお母様に挨拶をしに行くと、お父様はエドフェルト公爵と話をしていた。



「父上、私達はそろそろ戻ります」

「あぁ、もうそんな時間か。二人共、今日はご苦労だった。詳しい話は明日聞く。ゆっくりやすみなさい」

「はい。お先に失礼いたします」



 お父様に挨拶をして私達はホールを後にした。

 入ってきた時と同じ扉から廊下へでると、一気に夜会の雰囲気から一変する。

 私がほっと一息つくと、お兄様が心配そうに顔を覗き込んできた。



「初めての夜会で疲れた?」

「いえ、疲れてはいないのですが、少し力が入っていたようです」

「そうは見えなかった。とても堂々としていて、誇らしかったよ」

「それはお兄様が側にいて下さったからですわ」



 お兄様が側にいて下さらなかったら流石に緊張できちんと話せたかどうか。

 初めての夜会だったから、やはり緊張で手に汗をかいてしまっていた。

 お兄様が褒めて下さったので、きちんと出来ていたのだろうとは思うけれど、やっぱりちょっと不安だわ。



「お兄様、(わたくし)きちんと話せていましたか?」

「ステラはもう少し自信を持っていいよ。大丈夫。初めてとは思えない位よく話しが出来ていたし、堂々としていたよ。それに悪意ある言動にも怯む事も無く対応できていた。今日の私はステラを護る事は勿論、ステラが初めて会う貴族達と相対できるか、それの確認も含まれていたんだよ。だけど、心配無用だった」



 手放しで褒めて下さったが、まさかそのように試されていたなんて⋯⋯。

 この間から試されてばかりだけど、私、試験されている事に全く気付いていないって、逆に大丈夫なのかしら。



「父上や母上もステラの事をきちんと見ていたから安心して。ただ、お披露目が終わって明日から宮廷で執務を行う事になる。そうしたら何かにつけてステラに近づこうとするだろうから気を付けて」

「はい、気を付けますわ」

「何かあったら必ず直ぐに父上か私に話をしてね。私は後五日学園に行かなくてはならないから日中側にいてあげられないけど、帰ってきたら話を聞くし、緊急であればベリセリウス侯爵に話をするといい。本当は真っ先に頼られたいけれどね」

「分かりましたわ」



 お兄様とお話をしながら宮まで送ってもらい、部屋に入ると既にブルーノ医師(せんせい)が待っていてくださったので、お兄様には別室で待っていてもらい、先に医師の診断を受ける。

 今夜はダンスも行ったし、何時もよりも長い時間立っていたので、緊張もあり変に力が入っていたことから背中に関しては悪化はしていないが、他の筋肉が少し凝っているので侍女達にマッサージをしてもらってから休むようにと言われただけで、背中の痣も薄れてきているようなので安心した。

 その事を待っていてくださったお兄様にもお伝えすると安心したようにほっとした表情を見せた。

 


「悪化していないとはいえ、完治するまでは無理はいけないよ」

「完治が遅れたら訓練も出来ませんものね」

「ステラはまだ訓練をするつもり?」

「訓練をしないと身体が訛りますわ」

「全く、ステラは頼もしいね。だけど、医師の許可が下りてからだよ」

「勿論ですわ」

「今日は疲れているだろうからゆっくり休みなさい」

「はい。お兄様。今夜はありがとうございました。お兄様もゆっくり休んでくださいませ」



 お兄様とおやすみの挨拶を交わし、見送った後は言われた通りにモニカ達にマッサージをして貰っているとやはり気を張っていたものが一気に薄れて、ベッドに入ると早々に夢の中へと旅立った。


ご覧頂きありがとうございます。

ブクマ、評価、いいねをありがとうございます!

とても嬉しいです!

次回は十四日に更新いたしますので、楽しみにして頂けると幸いです。

よろしくお願い致します。

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