表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第1章  大切なもの
16/263

16 邸の外へ


 昨日は邸内と温室に行ったので、今日は邸の周囲にある建物を紹介して貰うと共にお養父様と散歩に出掛けた。

 昨夜はお風呂でマッサージをしてもらったので、夜は一度目が覚めたものの、その後はぐっすり寝るこがてきたので、今朝もすっきりと目が覚めた。

 相変わらず夜の出来事はあまり覚えていない。

 それはさておき、足に疲れが残るかなと思ったけれど、その心配もなくお外の散歩の許可が降りた。

 但し、お昼から。

 午前中は念のためお部屋でゆっくりと過ごすように言われたからだ。

 ちなみに昨日はお兄様達が案内してくれたけど、今日はお勉強があるからと、お養父様が案内してくれることになった。

 お養父様も執務とか無いのかなと思ったけれど、今日はお休みみたい。

 そして昼食後の休憩をし、玄関ホールを抜けお外に出る。

 今日は風が吹いていて少し肌寒く感じるけれど、晴れていて暖かく陽光が眩しい。

 モニカが帽子を用意してくれていたのでその眩しさも遮られている。



「寒くはないかい?」

「大丈夫です」

「寒かったり疲れたりしたらすぐ言いなさい」

 


 優しくそう言うと、邸の温室側に見えていた大きな建物へ歩いて行き、その建物は領主館でお養父様が一日お仕事をするところ。

 もうひとつの建物に比べて少し小さめだけど、住み込みで働いてる人達の住居も兼ねていると説明をしてくれた。

 まずは領主館に足を踏み入れる。

 ここのホールは少し邸に似ているけれど、それなりに人がいた。

 領民や時には商人、冒険者も訪れたりするそうで、今も装いがそうだろうなという人達がちらほら見えた。

 領地を運営をするに当たっての要といった所かな。

 そう思いながら館内の説明を受けながら執務室へと向かう。

 室内には二人だけで仕事をしていたが、私達が入ってくるとその手を止めて此方にやってきた。



「アルノルド様、お疲れ様です。本日はお休みのはずでは?」

「あぁ、休みだからこうして養女(むすめ)と散歩をしている。紹介しておこう。アリシアだ。シア、この二人は私の側近で、イクセルとデニスだ」

「初めまして、アリシアです。よろしくお願い致します」

「初めまして、アリシア様。イクセル・アルセンと申します。イクセルとお呼びください」

「初めまして、デニス・セーデンです。同じくデニスとお呼びください」



 イクセル様はお養父様と同じくらいの歳かな、デニス様はちょっと年上?

 ちょっとヨレヨレしてるのは疲れてるのかな⋯⋯。

 あっ。もしかして、私のせい?

 お養父様が暫く私に付きっきりだったからとか?

 そっとお養父様を見ると私の考えが分かったのか「心配ないよ」と言った。



「シア、気にする必要はないよ。イクセルとデニスは殺しても死なないから」



 笑顔で言ったのだけど、デニス様はひきつってるしイクセル様も呆れている。

 お養父様、何気に酷い。



「ですけど、お二人はお養父様の大切な側近ですよね?  休息は必要だと思うのです。お養父様と同じくらいのお歳かと思ったのですが⋯⋯」



 最後は言葉を濁した。だって疲れてるから老けて見えるなんて失礼だよね。



「シアは優しいね」



 ただただ、ブラック企業を見ているようで辛いだけなのですけど⋯⋯。

 そんな事口には出せないので、私は曖昧に微笑んでおいた。



「では、紹介が済んだので次に行こうか」



 ――はやい!


 

 本当に挨拶だけで終わってしまった。

 私はにこりと微笑んで「お仕事中に失礼しました」と挨拶して執務室を後にした。

 扉を閉める前に「癒されるー!」とかなんとか聞こえたけれど、本当に大丈夫かな?

 次に向かったのはもうひとつある建物。

 こちらは領主館のような綺麗さはなく、どうやら辺境伯領の騎士達がいるようだった。

 お養父様はここに入る前、「むさ苦しい連中だけど、悪いやつはいないよ」と教えてくれたけれど、ちょっと殺伐としていて雰囲気と何とも言えない男臭が⋯⋯むさ苦しい。

 お養父様が爽やかなだけに、ここにいる事がすごく違和感を感じる。

 領主館でも思ったけど、歩いてるとすっごく見られているのよね。

 まぁ五歳児がここにいるのって違和感しかないよね。

 そう考えるとお養父様より違和感あるよね、私って。

 頭の中を忙しくしていると、少し大きめな部屋の前に付いた。

 扉の前にいた兵士がノックをし「辺境伯閣下がいらっしゃいました」と声をかけたけど、返事をまたずにお養父様は入っていった。

 そこには背の高い厳つい騎士がいた。



「お疲れ様です。本日は何かございましたか?」

「いや、養女(むすめ)のアリシアを紹介しておこうと思ってな。シア、これはベルンハルド・ミルヴェーデン。辺境伯領の騎士団長だ」

「初めまして、アリシアです。よろしくお願い致します」



 私と視線を合わすように膝を付き、胸に手を当てて挨拶していただいた。



「ご丁寧な挨拶痛み入る。ベルンハルド・ミルヴェーデン、どうかハルドとお呼びください。姫君」

「姫君?」

「シベリウス辺境伯のご息女なら姫君でよろしいかと」



 凄く真面目な方?

 それでいいの?

 頭にはてなを飛ばしていると、お養父様が口を出した。



「ハルド、シアが困っている」



 困っているというかなんというか⋯⋯。



「シア、ハルドは顔に似合わず小動物が好きなんだ。シアの事も同じ感覚で見ているのだろうね」



 確かに顔はとても厳ついし、背も高くとてもがっしりとしていてがたいが良い。

 見た目によらず小動物が好きなんだね。

 戯れている姿を想像すると⋯⋯ギャップ萌え?



「閣下、此のようなむさ苦しい場所に姫君をお連れしてよろしいのですか?」

「構わないよ。シアは色んな事に意欲的だからね。一ヶ月後にはレオンと一緒に魔力操作と戦う術を教える予定だ」

「ほんとですか!?」



 私はその言葉を聞いて嬉しくて目をキラキラさせながらお義父様を見上げた。

 おもむろに私を抱き上げたお養父様は「本当だよ」と答えてくれた!

 予定がきちんと立てられていることに嬉しくて思わずお養父様に抱きついた。

 お養父様は一瞬驚いたけどすぐに頭を撫でて「可愛いな」と呟いていた。

 そして抱っこしたままソファに座わり、そのままお膝の上に収まった。



「お待ち下さい! こんなに可愛い姫君に戦う術をお教えするのですか?」

「何を言う? オリーも戦えるだろう。シアが学んでも何ら不思議ではない。お前も知ってるじゃないか」

「いや、あの方は別といいますか⋯⋯いえ、何でもありません」



 ハルドが何かを言ったようだけど、お養父様の凍るような瞳を向けられ黙った。



「あぁ後、クラースは今何をしている? シアに護衛を付けるのに、あれなら任せられるだろう」

「クラースなら新人を扱いています。少々お待ちください」



 ハルドは扉の外で待機している者にクラースを呼ぶよう指示を出しに行った。



「お養父様、(わたくし)に護衛が付くのですか?」

「勿論だよ」



 護衛がつくんだ。

 シベリウス辺境領ここにいるなら付かないと思ったのだけれど。



「シア、ここにいるからと言って大丈夫とは言えないのだよ。念には念をいれなければね。それにそんなに気負うことはないよ。マティとレオンにも護衛は付いているからね」



 それなら、いいのかな。

 少し待つと外からノックと声が掛かった。



「お呼びによりクラース参りました」

 

 

 ハルド様が「入れ」と言うと、一人の騎士が入室してきた。

 きっちり姿勢をただし挨拶をする。



「閣下、お疲れ様です。団長、お呼びと伺いましたが⋯⋯」



 挨拶しながら視線を此方に向けてきた。



「用があるのは閣下だ」

「クラース、新人教育中に悪いね。君に新たな仕事を頼みたくてね」

「はい。どんなことでしょうか?」



 お養父様は私を抱っこしたままだったが、そのまま私の紹介をした。



養女(むすめ)のアリシアだ。仕事というのはシアの護衛を頼みたい」

「私が⋯⋯ですか?」

「あぁ、何か問題が?」

「ご子息様方の護衛は貴族でしょう? お嬢様の護衛を平民である私がするのは如何なものでしょう?」

「身分は関係ないよ。その者の人格と実力で決める。それに、君は冒険者時代に凄腕の護衛だったのだろう? 問題ないよ」



 子供が嫌いとかなのかな?

 何だか若干嫌そうな、出来れば引き受けたくないとかそういった雰囲気が出ている。



「あの、お養父様? クラース様がお嫌なら別の方でも構いませんよ。嫌々お仕事するのも精神的に良くないかと」

「シアは優しいね。けど軟弱なものはこの辺境領には、ここの騎士団には要らないかな。後こいつに様は要らないよ」

「すみません!」



 怖い寒い怖い!

 私何か地雷踏んだ!?

 えっと、それなら⋯⋯。



「お養父様、提案なのですが、(わたくし)一ヶ月は邸にいて、邸の外には出ないでしょう? その期間を仮護衛としては如何でしょう? 一ヶ月護衛に従事していただきそれでも嫌ならば他の方にお願いするというのは⋯⋯」



 私はそう提案をしてみた。

 そう私が話すのを聞いたハルド様とクラースは目を見開き驚いていた。

 五歳児のお膝抱っこされた子供にそう提案されるとは普通思わないでしょう。

 私は提案しておきながら、やってしまったと内心焦っていた。



「なるほどな、シアは賢いね。ではシアの言う通り、一ヶ月間仮護衛として付くように、一ヶ月後にもう一度聞く」



 若干冷めた目をクラースに向けそう話した。

 顔色の悪いクラースはその提案「畏まりました」と受け入れてくれた。というか、受け入れざるを得ない状態だよね。



「今日中に引き継ぎを、明日の朝には邸に来るように、以上だ」



 お養父様は意に介さず、準備をするよう指示を出し終え、私達は邸に戻った。



「疲れてはないかい?」

「はい。色んな所を見学出来て楽しかったです。連れて行ってくださってありがとうございます」

「熱は無さそうだね。疲れてないならお養父様と少しお茶に付き合ってくれるかい?」

「もちろんです!」



 邸に戻るまではずっと抱っこのままだったので、疲れることもなく、お茶をする所まで連れて行って貰った。

 

ご覧いただきましてありがとうございます。

気付けば初投稿から一週間経ちました。

最初はどういう反応なのかなとドキドキでしたが、ブクマもしていただけて本当に嬉しいです。

この一週間は昼と夜の二回投稿していましたが、明日からは二日に一度の投稿にしますので、すみませんが宜しくお願い致します。

次話もよろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ