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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
159/264

159 帰る場所


 離宮に着くと私達はお祖父様達が待つ部屋へと向かった。

 そこにはお父様達を始め、私の家族とお祖父様にお祖母様、そしてお養母様とアレクも一緒だった。



「お待たせいたしました」

「遅かったな」

「申し訳ありません」

「ステラ、こちらに来なさい」

「はい、お父様」



 私はお父様に呼ばれたのでそちらへ行くと、心配そうにそっと背中を撫でた。

 


「背中の痛みはどうだ? そう痛みは直ぐに取れないだろうが⋯⋯」

「あれから時間も経っていますので、何もしなければ今はそれ程痛みませんわ」

「それならいいが⋯⋯まさか披露目前にこのような事が起こるとはな。あの令嬢と面識は無かったのか?」

「ありませんわ」

「ステラに大きな怪我が無くて安堵したが、まだこっちは表立って動くことが出来ないからな。それも後数日の事だ」



 という事は、私のお披露目終了後に堂々と動くという事ね。

 今の時点で分かっている事と言えば、男爵令嬢は何故私を突き落したのか理由は言わなかったけど、かなり震えていたという事だった。

 私を突き落した事への罪悪感ではなく、何かに怯えているような感じだったと。

 誰かに脅されての行動だというのが濃厚で、彼女の意思ではなさそうだけど、何がしたくて私を突き落したのか。

 それも私が提案して始められた“語り部屋”で何かを話してくれたらいいけれど。

 担当はアンデル伯爵自ら行うとお父様が教えて下さった。

 この件は伯爵が令嬢からどれだけ話を聞き出せるかで誰が指示した事なのかが分かるでしょう。

 一旦この話はここまで、先程までのピリッとしたものからがらりと雰囲気が変わった。



「ステラをシベリウスに預けてから四年と六カ月余りが経ったが、今日からは王宮がステラの帰る場所だ」



 静かに話が始まる。

 私の帰る場所。

 今まではシベリウス邸が私の帰る場所だったが、本当の居場所に、お父様達がいる場所が私の居場所。



「シベリウス辺境伯、姉上。改めてお礼を。今までステラを護り育てて下さった事に感謝致します」



 お父様のその言葉で、お母様、お兄様、フレッド、そして私も伯父様達に対して礼を尽くす。

 


「そしてステラの兄妹として娘が寂しくないよう、一緒に過ごしてくれたマティアス、レオナルド、アレクシスの三人にも感謝を。マティアスにはこれからもステラの側で力になってあげて欲しい。よろしく頼む」

「勿体なきお言葉。エステル殿下に置かれましてはご不便をお掛けしたことと存じますが、無事に王宮へ戻られる事、お慶び申し上げます」



 とても堅苦しい事かと思うけれど、大事な事だ。

 まぁ、それも直ぐにいつもの気安い雰囲気に戻ったけれどね。



「アル、明日ユリウスも交えて話があるから執務室に来るように。マティはステラの所へ来るのだろう?」

「はい。ベリセリウス侯爵様にご教授頂く事になっていますので王宮へ参ります」

「そうなのですか? 学園の試験が近いので、終わってからだと思っておりました」

「問題ないですよ。皆そこはきちんとしておりますから」



 試験が終わってからでもいいと思うのだけれど、それぐらいこなして見せなさいという事かな。

 けど侯爵を長い間私の臨時補佐官としていて貰うのは、お父様にも悪いので、早急に進めた方がいいのは確かね。

 


「姉上はリュスとお茶会でしたね」

「えぇ。明日は宮廷でリュス様主催のお茶会に出席するわ」

「ご夫人方のお茶会か⋯⋯」

「ふふっ、きっと色んな話が聞ける事でしょうね。楽しみだわ」



 お母様は笑顔でそう話すが、伯母様と笑顔で頷き合っているのが怖く感じる。

 それはお父様達も同様だった。



「さて、今日は父上の許可を取ったので、離宮(ここ)でアル達に感謝の意を込めて晩餐にしようと思う」



 それで皆揃ったのね。

 お父様の言葉で準備が整っている食堂へと移動すると、テーブルが二か所に分かれていた。

 この配置って、大人組と子供組に分かれるのね。

 その通りで、私達は席に着くと早速料理が運ばれてくる。

 従兄同士でお食事をいただく事は珍しい事なので、何だか新鮮でとても楽しい。

 フレッドはむっとしながらも従兄であるマティお従兄様達とお話しをしているし、何だかんだでお従兄様達の事が気になるのね。

 それに、アレクとは年が近い事もあって、話が弾んでるみたいで楽しそうに笑っている。

 弟達の笑っている姿を見ると癒されるわ。

 お父様達もお酒が入って話が弾んでる模様⋯⋯と言うわけでもなさそう?

 お父様が伯父様に絡んでいるところを見てしまった。

 見なかった振りをしようかしらね。

 


「父上は見事にアル伯父上に絡んでいるね。絡むと思ったけど」

「お兄様⋯⋯」

「まぁ、陛下の父上に対してのあれは、もう恒例みたいなものですからね。いつもの日常です」

「お父様ってそんなに伯父様に絡んでいらっしゃるの?」

「大体ステラ様の事で、ですけどね」

「理由はともあれ、お二人はとても仲がよろしいですのね」



 私がそう言うとヴィンスお兄様とマティお従兄様は何とも言えない顔で私を見てくる。

 変な事言ったかしら?

 よく分からず首を傾げると、お二人揃って笑い出した。

 お兄様達が仲が良いのは宜しいですけど、何故笑われたのかが分からない私としてはちょっともやもやしますよ?



「ステラってたまにズレるよね」

「そんな事ありませんわ」



 仲が良く無かったら無理な事でしょう?

 どうして私がズレていると言われるのかしら⋯⋯

 私がちょっとむっとしているとお兄様に頭をぽんぽんされたけれど、そんな事では惑わされませんわよ。



「話は変わるけど、本当に背中は大丈夫なの?」

「はい。大丈夫ですわ。無理はしていませんよ?」

「それならいいけど。ステラの事だから無理をしているんじゃないかと思ってね」

「今の所は、ですが明日になったらどうなっているか分かりませんわ。今日は打ったばかりですので、無意識に背中を庇って歩いたりしていたらきっと違うところが痛くなったりすると思います」

「明日と明後日は無理せずに安静にね。お披露目は私とダンスもあるから。無理はさせられないんだけど」

「ヴィンスお兄様とのダンスはとても楽しみですので、無理は致しませんわ」



 そう、お披露目の時にはお兄様とファーストダンスを披露する事になっているので、お披露目の時に無様な姿を晒すわけにはいかない。

 貴族達の格好の餌食にもなるし、舐められる。

 


「お披露目当日、私達は行けないからね。残念だけど」

「マティは今年成人だから学園が休暇に入ったら王宮で開かれる夜会に参加出来るだろう? マティが参加するときは私とステラも顔を出すよ」

「私が出席する夜会にお出ましになるのですか?」

「嫌か?」

「いえ、殿下方は未だ出席義務は無い筈ですが⋯⋯」

「無いけど、従兄が来るなら私達も冒頭だけ顔を出すよ。従兄同士、仲が良いところも見せておかないとね。あぁ、けど王宮で開かれる夜会の前にステラの誕生日会もあるな。こちらは日中にはなるが」

「ステラ様のお誕生日会に私達も必ず出席致しますよ」



 えっと、私のお披露目終わってそう時が経たずにお誕生日を迎えるのだけど、お誕生日会するのですか?

 それは聞いてないわ。



「不思議そうな顔をしているけど、お誕生日会はするからね。私とお揃いの衣装で私がステラをエスコートするからね」

「お披露目は良いとして、お誕生日会までするのはさ⋯⋯」

「嫌って言っても既に決定してるからね。ステラを自慢できる機会だからね。その機会を逃がすはずないよ」



 お兄様の目が本気だわ。

 私もお兄様と仲が良いところを見せたいけれど、お誕生日会って、未だお披露目済んでないのに気が早いです。

 来年からでいいと思ってしまうのは許してほしい。

 だけど、お披露目が済んだからこそのお誕生日会を開くのでしょうから、諦めが肝心よね。

 私達の話の区切りが良いところを見計らったのか、お父様が「そろそろ時間だ」と楽しい時間はあっという間で、これでお別れ、というわけではないけれど、伯父様と伯母様に再度感謝の言葉を伝える。

 そしてお祖父様とお祖母様にも感謝の念を忘れない。

 お祖父様には「いつでも遊びに来い」ときっとオリー伯母様があまり顔を出さないからかもしれないけど、私は時間が沢山あるので、直ぐにお祖父様達に会いに行くと思うわ。

 伯父様達とはお披露目でお会いするし、年明けに領へ遊びに行くのでこちらも直ぐに会える。

 最後は普通に「おやすみなさい」と挨拶をして私達は王宮へと帰ってきた。

 王宮へ着くと、お父様は「今日は早く休みなさい」と私に言い、お兄様に宮まで送っていただく。

 宮に着くと私の侍女として仕えてくれることになったオルガとナタリーが出迎えてくれる。

 そしてそう時間が経たずに、私の元にブルーノ医師がいらっしゃった。



「ステラ、きちんと診て貰わないと。こちらについて直ぐに父上が手配したんだよ」

「そうでしたのね。ブルーノ医師(せんせい)、ご無沙汰しておりますわ」

「殿下におかれましてはこのようにお美しくご成長されましたこと、誠に喜ばしく、またお会いできて光栄ですな。さて、お話はお伺いしました。背中を見せて頂いてもよろしいかな?」

「お願いしますわ」



 お兄様を部屋で待っていただいて、隣の部屋へと移り、早速医師に背中を診て貰うと、やはり強打した箇所に痣が出来ており、触診された時は結構痛くて、背中だけではなく、他の筋肉に問題がないかも診て貰うと、少し足の筋肉が張っているという事でやはり変に力が入っていたのだろうと。

 湯上りに炎症を抑える塗布剤を背中と足、両方塗る個所を侍女に伝え、やはり明日明後日は安静にと言われてしまった。



「お若いので動きたい気持ちは分かりますが、お披露目でダンスを披露なさるなら、それまでは無理は禁物じゃよ」

「部屋を移動するくらいなら大丈夫でしょうか?」

「それくらいならば平気じゃ。殿下もまだまだお若いし回復力がおありなのでそこまで神経質にならずともよいですよ」

「ありがとうございます」

「では明日の夕刻、診察に参ります」



 大したことなくてよかったわ。

 部屋で待たせているお兄様の元へ行くと、安堵した表情をされていたけれど、痣が出来ているとの報告を聞いて目が据わっていた。



「とりあえずは酷い状態ではなくてよかった。だけど、ステラに痣が出来るなんて⋯⋯」

「痣と言っても強打した部分に出来た青痣ですから、炎症が治まれば自然と消えますわ」

「それでも許せないよ」

「訓練している時は頻繁に細かい痣がありましたわ」

「それとこれとは話が別だよ。訓練は自発的なものだけど、今回のそれは故意だからね。可愛い妹に傷をつけるなど、許せるものではないよ」

「お兄様、私の為に怒ってくださってありがとうございます。そのお気持ちが嬉しいですわ」



 訓練の時の怪我と故意に怪我をさせられた、では全く違いますものね。

 お兄様が怒ってくださるのは純粋に嬉しい。

 それだけ私を心配しての事だから。

 逆にお兄様が傷つけられたら私はきっと物凄く怒るからお兄様の気持ちは分かる。

 お兄様は気持ちを落ち着かせるために息をついた。



「さて、そろそろお休み。夜更かしはいけないよ。きちんと薬を塗ってから寝るんだよ」

「はい、お兄様。おやすみなさいませ」

「おやすみ」



 お話は明日でも出来るし、あまり寝るのが遅くならないようにと、お兄様はご自分の宮に戻っていった。

 私は直ぐに湯浴みをしてからブルーノ医師の言いつけ通り、オルガに薬を塗って貰う。

 薬は冷たくてすっとして湯上りの身体にはとても冷たく感じる。

 背中だけでなく、足にも塗って貰い、お兄様に言われた通り早々とベッドに入り、オルガ達は「おやすみなさいませ」と部屋を後にする。

 侍女達が下がり部屋には私一人となったところで、アステールを呼ぶと直ぐに私の元へ現れた。



「姫様、お背中は大事ないですか?」

「状態については聞いていたでしょう? 問題ないわ。それよりもフリュデン家はどうだったの?」

「はい。フリュデン男爵家は一年を通して作物の生産が主な収入源でして、領民からの評判は上々で敢えて悪い点をあげるなら、温厚過ぎるところだと、領民達から見た男爵の評価です」

「領民には慕われているのね。邸の中ではどうかしら?」

「使用人達の話も概ね同じです。ただ、男爵は人が良すぎて人に騙される事もあるようです。夫人がしっかりした方のようで、男爵は尻に敷かれているようですね」

「その夫人はどういった方なの?」

「元々はダールグレン子爵家の三女です。ダールグレン家の者としての血は濃いかと。夫人に対しての評価もとても高いですね」



 ダールグレン家、ヨハンナ嬢の伯母様に当たる方、という事は、フリュデン男爵令嬢とは従姉妹同士なのね。

 使用人からの評価も高かったら、フリュデン男爵家自体は問題がなく、後は令嬢本人が問題かしら。



「令嬢の方はどうだったかしら?」

「申し訳ありません。令嬢の方が難航していまして⋯⋯ただ、領での評価はご家族揃って問題無いようです。学園に入ってから何かあったようですね。ここ最近、学園では挙動不審というか、周囲の目を気にしている、といった風な行動が目立っているようです」

「令嬢本人に何かあったのか、誰かに脅されたのか⋯⋯」

「そう推測されますが、この件に関しては陛下も動かれております」

「そうよね。きっと私も調べている事なんて知られているわよね」



 お父様に行動が筒抜けなのはどうしようもないのかも。

 それはアステールも同意するように苦笑していた。

 


「引き続き令嬢の方をよろしくね」

「畏まりました」



 やっぱり本人が話してくれた方が一番早そうよね。

 まぁ今考えても分からないし、寝てしまいましょう。

 私はそっとベッドに横たわり、目を瞑ると直ぐに夢の中に誘われた。


 翌朝、何時もの時間に目を覚ます。

 ちょっとぼうっとしていて、一瞬此処が何処だか分からなかったけれど、昨夜王宮に戻って来たのを思い出した。

 起きだすのに鈴を鳴らすと、直ぐにエメリが入室してきた。



「おはようございます。お起きになられますか?」

「えぇ」

「畏まりました」



 直ぐに顔を洗う為の水が用意され顔を洗い、着替えるのだけれど、その前に、背中に薬を塗って貰う。

 昨日から酷くはなっていないようで安心する。

 着替えを済ませて寝室から出て部屋に行くと、温かい紅茶が用意され、今日の予定を確認する。

 朝食はお父様達とご一緒し、午前中の内にお披露目の内容の確認があり、昼からは安静にという事なので何も予定がないので、私は側近の皆が此方に来ているだろうからそちらに顔を出すことにした。

 私が一日どう動くか報告する必要があるので、決めておかないといけない。

 急遽変更する事はあるけれど、私の居場所を把握しておかなければならないのだ。

 何かあった時の為に⋯⋯



「殿下、そろそろ食堂へ参りましょう」



 物思いに耽っていると時間が来たようで食堂へ移動する。

 お父様達をお待たせするわけにはいかないし、先に行って待っておきたいから。

 食堂に着くと、まだ誰も来ていないようで私が一番だった。

 別に競争をしているわけではないけれど、予定通り行動できるのは良い事だ。

 少し待つと、お兄様がいらっしゃった。



「おはようございます、お兄様」

「おはよう。よく眠れた? 背中の具合はどう?」

「よく寝れましたわ。背中も悪化せず、他に痛いところもありません」

「よかった。ちゃんとお薬は塗って貰った?」

「はい。とても冷たくて目が覚めますわ」

「そうか。確かに塗布剤は冷たいよね。もう冬だしね」



 お兄様と他愛無いお話をしていると、フレッドが眠たそうな顔をしながら入ってきた。

 寝ぼけ眼のフレッドも可愛い!

 それにしても朝に弱いのかしら。



「フレッド、おはよう。まだ眠たい?」

「姉上、おはようございます。とても眠たいです⋯⋯」

「フレッド、まだ半分寝ているな?」



 まだぽけぽけしながら席に着くフレッドは見ていて飽きないが、椅子から落ちないか心配。

 ヴィンスお兄様からフレッドは朝が苦手なんだと教えていたいたけど、本当に眠たそう。

 暫くフレッドの観察をしていると、お父様とお母様がいらっしゃり、全員が揃った。



「おはよう。ステラ、背中の具合はどうだ? 痣になっていると報告を受けたが⋯⋯」

「おはようございます。見た目がわかりませんが、何もしなかったら痛みはありませんわ」

「痛みがないなら安心だな。痣も二週間程で消えるだろうが、何か支障があったら直ぐに言いなさい」

「はい、ありがとうございます」

「ではいただこうか」



 お父様の言葉でお食事が始まる。

 これからはこれが当たり前の光景となる。

 話は今日の予定を其々確認し合い、お父様とお兄様は宮廷へ。

 フレッドは午前中、お勉強でお昼からは自由時間となっているようで、お母様は昼からのお茶会の準備があり、ご夫人方のお茶会が催される。

 私はまだ王宮からは出る事が出来ないので、朝に確認した通り、お披露目の確認と昼からは臨時の執務室へ顔を出す。

 お父様達から再三無理をしないよう言われて宮に戻って来た。

 安静にと言われているので時間は沢山あるけれど、散歩も自制する。

 お披露目でダンスが踊れなくなったら困るしね。

 読書をしていると、補佐官である侯爵がいらっしゃったので応接室へ移動する。



「おはよう、侯爵」

「おはようございます。お背中の具合はいかがですか?」

「大丈夫ですわ」

「それを聞いて安心いたしました。本日はお披露目の確認で参りました」



 侯爵からお披露目当日の流れの説明を受ける。

 私にとっては初めての夜会で私のお披露目なのでいつも夜会の始まる時間より、少し早めるようだった。

 未成年という事と、色んな貴族達と交流する為の時間を多く設ける為だとか。

 時間が来たらお兄様と共に退出する事になるので、行動は常にお兄様と一緒だという事。

 そして前にも聞いたけれど、多くの貴族と接する事。

 近衛が二人付き従うが、決して一人で行動しない事を約束させられた。

 一人になる事は無いと思うけれど、何が起こるか分からないからね。

 そしてもう一つ。

 お披露目にはノルドヴァル公爵もいらっしゃるので、一番気を付けるところがそこだ。

 私を紹介した後、貴族達からの爵位順に挨拶を受け、ノルドヴァル公爵は三番目の挨拶順となるりる。

 挨拶の時に何か起こることは無いだろうが、その後、ダンス終了後に接触してくる可能性が高いので、一番気を付けないといけないところだ。



「お披露目で何かをしてくることは無いでしょうが、言葉巧みに情報を引き出そうとしますので、お気を付けください」

「分かりましたわ」

「出来ましたら公爵には弱々しい印象を植え付けて欲しいのです」

「相手を油断させる為に?」

「はい」

「ですが、交流会の事がありますので、それ程弱々しく見せる事は難しくないかしら?」

「大丈夫ですよ。社交会別対抗試合の最終試合で殿下は倒れていますので」



 確かに倒れたけど!

 あの時は必至で、だけど上から見ていると確かに倒れたと見られるわよね。

 試合中、外からは見えていなかったのだし⋯⋯

 私がちょっと恥ずかしくて落ち込んでいると、侯爵は笑いを噛み殺していた。



「もう! 笑い過ぎですよ」

「申し訳ありません。とても、お可愛らしくて⋯⋯」

「忘れてください」

「それは難しいですね」



 侯爵って意外に意地悪だわ。

 話を変えてしまおう。



「それで、お披露目に関しては以上かしら?」

「注意していただく事は以上になります」

「話は変わるけれど、今日は彼らの教育をするという事でしたけど、お昼からかしら?」

「いえ、既に皆集まっていますよ。課題を出しておきましたから何処まで出来ているか楽しみですね」

「彼らは明後日から学園の試験もありますので、程々になさってくださいね」

「殿下はお優しいですね。まぁ、程々にしておきましょう」



 怪しいわ。

 胡乱気な目で侯爵を見るが、全く聞いていなさそうなのはよく分かる。

 教育をしているのは侯爵だからその件に関しては強くは言えないけれど。

 


「殿下はお昼からいらっしゃるとお伺いしましたが」

「えぇ、昼食後にそちらに顔を出します」

「それは良かったです。殿下に見て頂きたい書類もありましたので、纏めておきます」

「何かあったの?」

「見てのお楽しみですね」



 侯爵は気になる言葉を残して彼らの元に戻っていった。

 気になるけれど、お昼までまだ時間はあるし、読書の続きでもしましょうか。


ご覧頂きありがとうございます。

ブクマ、評価、いいねをありがとうございます

とても嬉しく励みになります!

次回は七日に更新致しますので、楽しんで頂けたら幸いです。

よろしくお願い致します。

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