154 王宮へ
お父様からお話を伺った日から週が明け、学園に通うとやはり想像した通りに色んな噂が流れていた。
まぁ親から聞いた話をそのまま話しているのだろうけど、ただの憶測をここまで大っぴらに話すなんて大丈夫かな、と色んな意味で変な心配をしてしまう。
それは私のクラスでも話をしていて、自然と耳に入ってくる。
ただ、同クラスのレグリスとロベルト様は適度に話を聞いているだけで輪には加わらず静観しているようだ。
お父様から私の側近としての打診が既に出され、早ければ既に返事をしているだろう。
考える時間が二日程しかなかったので申し訳なく思う。
二人の今の様子ではどちらを選択したのかは分からない。
クラス中を観察していると、先程の噂話でアリシアがどう思っているのか意見を求められるけれど、真実は分からないので、ただの憶測で軽はずみな返事は出来ないと答えておく。
週明けの初日からこの様子だと、宮廷内はもっと騒がしくなっている事でしょうね。
生徒会でも試験の事だけでなくこの話題について話が上がった。
私の事はまだ学園には知らせていないので、生徒会としては生徒達に軽はずみな言動をしないよう注意していくようにとの事。
ラグナル様はヴィンスお兄様に一応お伺いをしたが、お兄様は「皆お暇なようで羨ましいですよ」と全く答えになってはいないけれど、これ以上余計な事を話すなというように釘を差すように答える。
ラグナル様が悪いわけではないけれど、ラグナル様もそれ以上は何も質問する事無く、この噂はただの噂である以上、生徒会としては嬉々として噂をしている生徒に関しては注意を行い、規律を正すことに努めるようにとの事でこの話は終わった。
入学試験に関してはもう来週に迫っている為、最終確認が行われ、光曜日には先生方を手伝う事になっているので、一度生徒会に集まってから各自分かれて準備を行うと説明されると今日の生徒会が終了した。
噂、と言うのは早々直ぐには無くならないもので、翌日は更に噂の幅が広がっていた。
中にはちょっと笑ってしまうような事も言われており、警戒するよりも楽しんでしまっている自分がいる。
勿論楽しめるような噂だけではなく、悪質な内容もあるのだけれどね。
この日学園が終わり、寮に帰ってくるとお父様からのお手紙を預かった。
内容は私の側近についてだった。
打診した四人からの返事は全員了承の意を得たとの事で私の側近が決まった事を伝えられた。
侍女も決まり、早々に私との顔合わせが必要となるのだが、少し気になっている事があり、私はティナに手紙を書いた。
打診の段階で一度は話しをしているので直ぐ動いてくれるでしょう。
書き終わった手紙を届けて貰うと、程なくして了承の返事が届いた。
これであちらの事は安心ね。
日が無いけれど、侯爵家であるティナなら何とか間に合うでしょう。
顔合わせの日は週末の無の曜日、昼から私との謁見が行われるので、本当に日が無いので申し訳なく思う。
それから週末までは本当に早く時間が過ぎたように思う。
噂は相変わらず止むことが無かったけれど、生徒会や風紀部の人達が注意するので、表立って噂を言う人は少なくなっていった。
そして光曜日の授業終わり、私とレグリスが生徒会室に行くと、今日はハセリウス先生も珍しくいらっしゃっていた。
まだ全員は揃ってはいなかったけれど、室内に入ると用紙を渡される。
そこには誰がどの試験場のお手伝いをするか記載されていた。
私は会長と共に初日は受付と昼からの魔法操作の試験会場のお手伝いと二日目は受験者の面接場での誘導に割り振られていた。
全員が揃うと、ラグナル様から当日の流れの説明を受ける。
私達がお手伝いするのは不正がないか、中には緊張で体調が悪くなる子もいるので、そういった体調不良者が出た時の対処も行う。
魔法操作の試験も同じで、中にはこっそりと魔道具の力を借りて披露する人もいるようで、見逃さない様によく注意する必要がある。
室内に入る直前に持ち物の確認を行い、その時点で不正が見つかったら受験資格取り消し、試験中に見つけても勿論取り消しだけど、試験中に見つけた場合は、その試験終了後に受験者へ通告することになっている。
試験中に指摘して騒がれても周囲の受験者には迷惑な話でしかない。
二日間の説明を聞き終わると地の曜日、試験初日の集合時間を確認して終了した。
私はマティお兄様、レオンお兄様と一緒にシベリウス邸へと戻ってくれば、お養父様、お養母様とアレクが出迎えてくれた。
「おかえり、三人共」
「ただいま帰りました」
「お帰りなさい!」
「ただいま、アレク。見ないうちにまた背が伸びたね」
「レオンお兄様も背が伸びてます! あっ、お姉様!」
アレクはそう言うと私に飛び込んできた。
そういえば、学園最初の長期休暇は、私は離宮で過ごしていたので、お兄様達よりもアレクに会うのが久しぶりなのでアレクは私にぎゅっと抱き着いてきた。
そんなアレクがとても可愛くて、私も抱きしめ返した。
「アレク、本当に背が伸びたわね」
「お姉様はとっても可愛くなりました!」
「そう? ありがとう。アレクもとっても大きくなったわ。一人でお留守番も出来る様になって偉いわ」
「僕もお勉強頑張ってます!」
可愛い!
思わずぎゅっと抱きしめていると、お養父様にその辺で中に入ろうと止められてしまった。
部屋へ入り、一旦着替えて私はお養父様の執務室へと向かう。
執務室に着き、ノックをしてから中へと入ると、お養父様とお養母様が揃っていらっしゃった。
「シア、そこに座りなさい」
「失礼します」
「早速ですが、今から離宮へとお送りいたします」
「明日ではなくて、今からですか?」
「はい。今夜は離宮でお泊り頂いて、明日一番で王宮へ移動になります」
お養父様は既に私を養女ではなく、王女として対応している。
もうすぐ、アル伯父様をもうお養父様と伯母様をお養母様とお呼びする事も無くなるのね。
「シアには忙しくさせるが、無の曜日の夜にはこの邸へ戻り、学園には此処から登校し、水の曜日から週末まで寮でお過ごしになり、それが最後となります。学園も一旦終了となり、同じくこの邸でお過ごしになる最後の日でもあります。翌日、闇曜日に王宮へご帰城になられる段取りとなっております。何かご不明点はございますか?」
「いえ、ありませんわ」
「では、離宮までご案内させていただきます」
お伯父様はそう言うと席を立ち、私と伯母様もそれに続く。
「シアなら大丈夫よ。頑張りなさい」
「お養母様。ありがとうございます」
言葉短めにお礼を伝え、私は伯父様について部屋を出た。
少し気になった事があり、伯父様に確認してみた。
「お養父様、アレクにはまだ何も伝えてはいないのですか?」
「アレクには殿下が王宮へ戻られる日かその前後で伝えるよ。今はまだ知らなくていい」
「きっと驚くでしょうね」
「驚くより寂しがると思いますよ。今日も貴女に会えるのをとても楽しみにしていましたから」
それなのに直ぐに邸を離れてしまったら、怒るかしら。
アレクが怒るというのは想像できないわ。
きっと落胆するわね。
離宮に着くとそのままお祖父様の元へと案内され、伯父様はお祖父様に挨拶をして早々に邸へと戻っていった。
「ステラ、今後の予定はアルに聞いたな?」
「はい。お聞きしましたわ」
「側近が決まったことも確認しているな?」
「はい。お父様からお手紙で教えて頂きました」
「不安はないか?」
「特に不安とかはありません」
「それならいい。面白い程噂が飛び交っているからな、不安に思っていないか心配をしたんだが、全く問題なさそうだな」
やはりお祖父様も噂をご存じなのね。
それはそうよね。
私の教育を引き受けてくださり、守ってくださっていたのだから。
「お祖父様⋯⋯」
「礼は不要だぞ」
「まだ何も話しておりませんわ」
「ステラの事だから分かる。私にとっては可愛い孫と長く一緒にいられたことは嬉しい事だ。だから気にするな。話は変わるが、王宮に戻ったらそう直ぐに事が起こることは無いだろうが、周囲に気を付けなさい。王女宮に近づける奴は限られた者だけだが、披露目が終わり宮廷内と行き来するようになれば話は変わってくる。周囲によく注意するように」
「はい」
「明日朝一で迎えが来るので、今夜は早く休みなさい」
その後、お祖父様とお祖母様と共に夕食を頂いて、お祖父様に言われた通り何もせずに早く休もうとしたのだけれど、中々寝付けなかった。
やはり少し緊張しているのか、不思議な感覚がする。
眠れない⋯⋯。
あまりにも目が冴えているのでベッドから起き上がるとセリニが側に現れた。
「眠れませんか?」
「何だか目が冴えてしまって⋯⋯」
「ハーブティをお持ちしましょうか?」
「そうね、お願いするわ」
「畏まりました」
少ししてセリニがカモミールティを淹れてくれたので頂き、ほっとする。
寒いときに温かい飲み物は落ち着かせてくれる。
やっぱり久々の帰宅だから緊張するのかしら。
人知れず溜息をつく。
「姫様、王宮にお戻りになられるのが不安ですか?」
「不安はないわ。⋯⋯ただ、本当に久しぶりだから少し緊張しているのかも」
「陛下方は姫様のお戻りを随分と心待ちにしてなさっておられますよ」
「私もお父様達にお会いするのは嬉しいわ。自分でもどうして緊張しているのか分からないのよ」
緊張と言っても良い意味であって悪い事ではない。
緊張、と言うよりも寧ろ興奮しているのかしら⋯⋯。
何だか遠足を前にした子供みたいで恥ずかしいわ。
興奮して眠れないとか⋯⋯。
ゆっくりとカモミールティーを飲み、心を落ち着かせる。
「先程よりは落ち着かれたようですね」
「そんなに顔に出てた?」
「珍しく、年相応のお顔をされておられました」
年相応って、それって普段どう見られているの?
私がちょっと傷ついたような顔をしていたのか、セリニは慌てて弁解してきた。
「違いますよ! 普段の姫様は落ち着いていらっしゃる事が多く、先程の様に嬉しさや緊張のはらんだ表情をされているのがとても珍しく、新鮮で安心したと言いますか⋯⋯」
かなり必死の弁解だった。
それを聞いて思わず笑ってしまうと、セリニも苦笑していた。
「セリニの慌てた姿って新鮮ね」
「申し訳ありません」
「謝る必要はないわ。お陰で気分が落ち着いたから。お茶もありがとう」
「とんでもありません。そろそろお休みになられますか?」
「そうね。朝起きられない事はないけど、そろそろ休むわね」
「ゆっくりお休みください」
気分が落ち着いたのかあっさりと眠りに就くことが出来、朝まで夢も見ずにぐっすりと寝たおかげで目覚めもよく、朝から王宮へ行く準備をする。
その準備の最中にお祖母様がいらっしゃった。
「おはよう、ステラ。やっぱりそのドレスにして良かったわ」
「おはようございます。お祖母様が用意してくださったのですか?」
「そうよ。ステラが数年ぶりに帰城するのだもの。華やかにしないとね」
お祖母様が仰る通り、とても華やかに見えるけれど、色合いが落ち着いているので嫌な感じではない。
久しぶりにお母様やフレッドにも合うので、楽しみで仕方がない。
髪を整え終わるころ、お祖父様は私を迎えに来たベリセリウス侯爵を伴っていらっしゃった。
「おはよう。よく眠れたか?」
「おはようございます、お祖父様。実は少し寝付けなかったのですが、夢も見ずに休むことが出来ましたわ」
「それは何よりだ。それよりも、いつもに増して可愛いな」
「ありがとうございます」
お祖父様から誉めて頂いてとても嬉しくて舞い上がってしまった。
お父様達も褒めてくださるかしら。
あっ、いけない!
「おはよう。お迎えは侯爵がいらっしゃったのですね」
「おはようございます、殿下。事情を知らない者には任せられませんからね」
「お休みでしょうに、ありがとうございます」
「こうして殿下をお迎えに上がるのは二度目ですね」
「フレッドが産まれる時も迎えに来ていただきましたね」
あの時とは状況が違うし、明日の夕刻にはまたこちらに戻ってくるのだけれど。
あの時の様に嬉しさが込み上げてくる。
嬉しさが顔に出ていたのか、私を見ていたお祖父様達も顔を綻ばせていた。
私の準備が整うと、転移陣までお祖父様達も見送ってくださるようで、皆で移動する。
モニカとエメリも一緒だ。
転移陣の部屋に到着し、部屋へと入る。
「ステラ、また明日の夕刻に」
「今日はいっぱい甘えてらっしゃい」
「はい。お祖父様、お祖母様ありがとうございます」
「では、参りましょう」
お祖父様達に挨拶をして私達は王宮へと転移した。
次の瞬間、王宮の転移陣がある部屋に到着しており、部屋を出ると久しぶりに見る王宮の廊下が姿を見せる。
――この感じ、とても久しぶりだわ。
王宮の雰囲気、空気感が懐かしい。
「殿下? 如何されましたか?」
「とても久しぶりで、帰ってきたというより懐かしく思ってしまいました」
「それも陛下方にお会いしたらきっと吹き飛びますよ」
「そうね。早くお会いしたいわ」
「では、皆様がお待ちしているお部屋へ参りましょう」
侯爵の先導でお父様達が待つ部屋へと向かう。
此処は王族の住まう場所なので、とても静かであちらこちらに精霊達の気配も感じる。
とても居心地がいい。
離宮やシベリウス領も居心地は良かったけれど、ここは少し違うように思う。
部屋へ向かう途中、侍女達とすれ違う事がなく、少し不思議に思う。
もしかしたらこの時間にここを通らないようにしていたのかしら。
色んな事を思いながら歩いていると部屋の前に着き、侯爵は私が到着した事を伝えると、扉が開けられ、侯爵に中へと促される。
少し緊張しながら部屋の中へと踏み入れると、そこにはお父様を始め、お母様、ヴィンスお兄様、そしてフレッドが揃って笑顔で私を出迎えてくれた。
「ステラ、良く戻ったな。待っていたよ」
その言葉を聞いて、私は漸く家族の元に帰ってきたことを実感し、涙が込み上げてきたけれど、ぐっと我慢してお父様の言葉に答える。
「お父様、お母様、ヴィンスお兄様、そしてフレッド。ただいま戻りました」
そうしてお父様様達に礼をする。
やっと、ただいまと言えた。
嬉しくて胸がいっぱいになる。
「ステラ⋯⋯」
近くでお父様の声が聞こえたと思ったら、ふわりと頭に手が触れた。
顔を上げると、お父様が私の前まで来ていて、嬉しそうに顔を綻ばせていた。
「長い間寂しい思いをさせて悪かったな」
「いえ、こうしてお父様達に出迎えて頂き、とても、とても嬉しいです」
「私だけステラを独り占めしているから後ろからの視線が痛いな。さぁ、リュス達にも甘えるといい」
「はい、お父様」
私は後ろで待っているお母様の元へ向かうと、両手を広げて私を包み込んでくれたので、私も抱きしめ返した。
「お帰りなさい」
「ただいま帰りました、お母様」
「これからは貴女と沢山したいことがあるのよ」
「私もです。お母様と沢山お話しがしたいです」
お母様の抱擁後、ヴィンスお兄様にも同じようにぎゅっと抱きしめられた。
「やっとステラとこうして触れ合う事が出来る。お帰り。ずっと待っていたよ」
「お兄様、私も同じですわ。漸くお兄様と普通にお話しすることが出来てとても嬉しいです」
最後はフレッドに向き合ったのだけれど、フレッドには私から抱きしめた。
「フレッド、ただいま」
「姉上! お帰りなさい。ずっと待っていました!」
「フレッドが元気そうで安心したわ。可愛い!」
「姉上はとてもお綺麗です」
弟ってどうしてこんなに可愛いのかしら!
一緒に暮らしていたら甘やかしてしまいそうよ。
皆に挨拶を交わし終わると、侯爵は「また後程参ります」と一度部屋から退出した。
此処にいるのは私達家族だけとなり、先ずは一緒に朝食を頂く。
――嬉しい。
こうやって皆でお食事を頂くだけで幸せだと感じる。
食事中は他愛無い話に花を咲かせ、食事が進む。
食後は場所を変え、食後のお茶を頂きながら、今日の予定を話し合った。
この後侯爵が戻ってくるので、簡単に明日の予定を確認をする。
今日の午後からは明日行われる私と側近達の初顔合わせに着用する衣装の最終手直しを行い、それが終わると来週のお披露目に着用するドレスの手直しが待っている。
お母様は私のお披露目がいつ行われてもいい様に、毎年ドレスのデザインから髪飾り等小物まで詳細に作成していたようで、今年も同じように作成していた事から、お針子達は大変だったかもしれないけれど、それ程時間に追われる事なく今日に間に合わせたようだった。
フレッドは私との時間があまりないと拗ねていたが、昼食、夕食も一緒にとるので今は我慢してもらった。
年内いっぱいはきっと忙しくてフレッドとゆっくり出来る時間が少ないとは思うけれど、また兄弟でお茶会が出来ればいいなと思う。
少し家族水入らずで会話を楽しんでいたけれど、時間が来たのでお母様とフレッドは部屋を下がった。
今此処にいるのはお父様、ヴィンスお兄様、そして私の三人だったが、程なくして侯爵が戻ってきた。
「失礼いたします」
「何度も悪いな」
お父様は軽く声をかけ、侯爵がソファに落ち着くと早速本題に入った。
「ステラ、戻って早々、暫くは忙しくなるだろう。先ず、明日の側近達との謁見だな。明日の準備は整っているが、問題はステラの周囲に慣れた者がいない事だ。それを補う為に明日から暫くの間、エリオットを臨時でステラの補佐に付けるから、側近達の教育を行ってもらう事にした」
「明日から暫くの間、エステル殿下の補佐としてお仕えさせて頂きますので、改めてよろしくお願い致します」
この件は決定事項で、侯爵が私にそう挨拶をした。
けどそれって、もっと早くに分かっていましたよね?
それにしても、お父様筆頭側近が私の補佐って、⋯⋯少し深読みしてしまうが、心強くあるので有り難くお願いする。
「こちらこそ、暫くの間よろしくお願いしますね」
「お任せください」
「次に、来週のステラのお披露目だが、先週伝えたようにステラを皆に紹介する際は宰相から事の次第の説明があり、公でシベリウス辺境伯に礼を伝える。その後ステラとヴィンスのダンスを披露した後、多くの貴族達と言葉を交わすようにしなさい。言わなくても分かるな?」
「はい。お父様の姉であるオリー伯母様がいらっしゃるシベリウスを重宝しすぎだと不満が出るからですね」
「そうだ。いくら姉上がいらっしゃるとはいえ、シベリウスに不満が集まるのは良くない。それでなくてもステラの発案で領が潤っているからな。ステラの有能性を知ったらもっと酷くなるだろう」
「あれらを私が発案したことは公表しないというお話ではなかったでしょうか?」
「いや、折を見て公表する、と言っても大々的に公表することは無い。ただ発案者を隠すことはままある事だが、それを撤回するだけの事だ。あれが世に出て数年経ち、知りたい奴は確認するだろうが、そこに興味がない者の方が大多数だからな。そう直ぐに騒がれることは無いだろう」
それならいいのですけど。
まぁ、面倒な貴族達が多い事。
一部の人達でしょうけど、それでもお父様がご自分の姉を頼るのは姉弟なのだから普通の事でしょうに。
それすらも嫉妬の対象になるなんて、強欲と言うかなんというか⋯⋯。
「披露目が終われば、宮廷にステラの執務室があるからそこで執り行うように。それまでは王宮の応接間が簡易の執務室という事になる。少し面倒だが我慢して欲しい」
「それも二日間の事ですから、大丈夫ですわ」
「そうか。ステラから何か質問や要望は無いのか?」
「そうですね⋯⋯今の所は特にありませんわ」
「何かあれば遠慮せずに言いなさい。私に聞けない時はエリオットに言うと良い」
「はい。ありがとうございます」
お父様の話が終わり、お父様は宮廷に、私はヴィンスお兄様とベリセリウス侯爵と共に私の住まいである、王女宮へと向かった。
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よろしくお願い致します。





