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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
152/265

152 決定事項


 お父様が私を王宮へ戻すとお決めになられた日の夜、私はその時の事を思い出しいた。

 


「ステラを王宮へ戻す」



 お父様はそう静かに告げた。

 お祖父様は「それがいいだろう」と呟き、伯父様は「私に依存はありません」とお父様のお考えに賛同し、否と言う言葉を言う人はいなかった。

 そして何故そのお考えになったのかも教えて頂いた。

 理由としては、(アリシア)がここまで狙われるとなると、今のままでは護る事が難しく、(アリシア)が危険に合うという事は、必然的に(エステル)が危険だという事は言うまでも無く、今のままだと表立って私を守れない上、影に関してもアリシアとして行動している時では堂々と動くことも儘ならない。

 予定よりかなり早まったが私が王宮に戻る事が決まった。

 後は戻る時期を早々に決めるとお父様は詳しく決まったらまた伝えに来ると言い残してヴィンスお兄様、伯父様とレオンお従兄様を伴ってに王宮へ戻っていった。

 私はと言うと、その時は如何して良いか分からず固まってしまったのだけれど⋯⋯。

 それは今もそうで、王宮に戻るという事はお父様達と過ごす機会が増えるという事、公に触れ合う事も話すことも出来るし、隠れる様に行動しなくていい事、私も王女として公務も行う事、私としてもそれらは勿論嬉しく思うし、お父様の意見に否は無い。

 ただ、急な事でこの五年間を、決して短くない期間をシベリウス領で過ごした事については、寂しいと心がそう言っている。



「眠れませんか?」

「アステール。昼間の事を考えると⋯⋯寝付けなくて」

「急に王宮に戻る事が決定した事で悩まれているわけではないですよね。シベリウス領の事ですか?」

「お父様がそうお決めになった事も理解できるわ。戻れることも勿論嬉しいのよ。だけど、やはり少し寂しいという気持ちもあるの」

「辺境伯は姫様のそういったお気持ちも分かっていらっしゃるでしょう。陛下も、とても葛藤していらっしゃるかと」

「そう、かしらね」



 ただちょっと不満に思う事もある。

 こればかりはたらればになってしまうので口に出して言う事はないけれど、これなら学園に入る前に王宮に戻して頂けたら良かったのに⋯⋯と、思わず溜息がでそうになるのをぐっと我慢する。

 


「今回の事、貴方達はどう思う?」

「陛下達が確信しているように、ノルドヴァル家が裏で絡んでいるかと。特にあの令嬢に関しては自身の思い通りにならなければ嫌な質でしょう。ですのでこれからも続くかと思われます」

「たったあれだけの事で、と思わなくないのだけれど。それにあの性格、どうしたらあのようになるのでしょうね」

「まぁ育った環境でしょうか⋯⋯」

「それを言ったらアステール達もよく道を踏み外さずに影なんてしてるわね?」

「私達の場合は皆孤児で行き場がない所、長の目に留まり幼い頃から訓練を受けていましたからね。別に洗脳とかはされていませんよ。我々は自分の意志で影を目指しましたので。訓練は尋常でない位厳しく、ですがきちんと衣食住は保証されていましたから。まぁ飴と鞭ですね。訓練の内容はお聞きにならない方がよろしいですよ。私も話すことはありません」

「なら訓練に関しては聞かないわ。ちょっと気になるけどね」



 話を脱線させたのは私だけど、少し気持ちを散らすことが出来たから、少し落ち着いた。

 決まったことをあれこれ考え思っても仕方ないし、明日は明日で忙しくなりそうだから寝た方がいいわよね。



「話し相手をありがとう。気分転換になったし、そろそろ寝るわ」

「いえ、姫様の気分が少しでも落ち着いたのなら良かったです」

「いつもありがとう。おやすみ」

「おやすみなさいませ」



 アステールにお礼を言って、私はベッドに入り目を閉じる。

 あれだけ考えていたにも関わらず、少し疲れていたのか思ったよりもすっと寝ることが出来た。


 翌日、朝食を頂いた後の事。

 私はお祖父様の執務室に呼ばれて赴くと、そこにはベリセリウス侯爵ともう一人初めて見るが、何処かで見た事のあるような方がいらっしゃっていた。



「お待たせしていまい申し訳ありません」

「いや、急に呼び出したのは私だから気にするな。エリオットはいいとして、これとは初めてだな」

「はい、お会いしたことはありませんが、もしかしてエドフェルト公爵ではありませんか?」

「よく分かったな。あぁそうか。今学園の生徒会長はこいつの息子だったな」

「はい。よく似ていらっしゃいますわ」

「カシミール、彼女がエステルだ。ステラ、こいつはカシミール・エドフェルトで宰相を務めている」

「お初にお目にかかります。カシミール・エドフェルトと申します。これからお目にかかる機会も増えるかと思いますでのよろしくお願い致します」

「こちらこそお願い致しますわ」



 エドフェルト公爵との挨拶が終わると早速本題に入った。

 あれからお父様は王宮に戻り、ごく一部の忠臣だけを集め、会議を行ったそう。

 決まったのは、学園には二学年から王女として通う事が決まり、王宮に戻るのは今年の社交界の始まりでお披露目を行う、という事も決まった。

 これだけだと、忙しいであろう宰相までくる必要がないのでは? と思わなくもないけれど、公爵はお父様に挨拶だけは先にしておきたいと押し切って侯爵に付いて来たそう。

 やはり親子なのか、会長を彷彿とさせる性格をされている。

 今決まった事を聞けばお披露目までもう日があまりないが、学園にはお披露目まではアリシアとして通う事も決まっている。

 お披露目後、二学年まで私は学園を休み、二学年からエステルとして復学することになった。

 何故冬の休暇後からではないのか、と思わなくもないが、その間に色々とやる事があるそうだ。

 その色々に関してはまた後日教えて頂けるそうで、今日は取り敢えず急ぎ決まったことを伝えにきただけのようだった。

 エドフェルト公爵は帰り際に「お時間ある時にお話しさせて頂きたいです」と私に一言残して帰られたが、私は別に公爵とお話する事は無いのだけれどね。

 その謎はお二人が帰った後にお祖父様から「何か気になる事でもあるのだろう」と話した後で「無視していい」との事。

 それはさておき、お祖父様の用事はこれだけだったようで、私の昼からの予定が伝えられた。

 昼からはお母様が此方にいらっしゃって、お披露目に着用する衣装や他にも数着決める為で、私は昼からの事を思うと、楽しみ半分で、覚悟半分といった感じだ。

 それまでは自由にしていいとお祖父様から言われたので図書室で久しぶりにゆっくりと読書をすることにした。


 昼食後、お母様とお祖母様と共にお披露目で着る衣装だけでなく色んなデザインのドレスを決める為、今まで以上の上質な布にきめ細かなレース、宝飾類と部屋中に溢れている品々を手にとって見る。

 実は昨日、お祖母様にお披露目をする時のデザインを決めなさいと言われていたので、数枚描いていたものをお母様達に見せると「全部作りましょう!」と意気込んでしまい、そのデザインで細かく布はどれにするか、レースや花はどうするか、どの宝飾を使うか、髪飾りや本当に細部まで事細かに決めていく。

 これ、半日で終わるのかしら⋯⋯。

 少し遠い目になりながらも気を抜けば叱られるので、私も一緒にこれがいい、あれが良いと言い希望を出すこと数時間、辺りは日が落ち始めていた。

 ようやく決まったので、後はお針子さん達の腕次第。

 仮縫いが出来たら連絡が入るので、今日はここまでだった。

 お母様から「日を改めてお茶会をしましょう」とお誘いを頂き、今日の所はゆっくりとお話しする暇もなく帰っていった。


 翌日、休暇三日目の事。

 この日のお昼にはシベリウス邸に戻るので、午前中はお祖母様の授業を久々に受けていた。

 といっても王宮に戻った後、どう振舞うかのお復習いと言ったとこだ。

 それが終わり、昼食を頂くと伯父様が私を迎えにいらっしゃって、私は伯父様とシベリウス邸に戻ってきた。

 こちらに戻ってきて早々に、伯父様から「夕方まで皆で話をしようか」と提案されたので、お兄様達と共に四人でお茶会をすることになった。

 伯母様は既に領に戻っているらしく、ここにはいなかった。

 伯父様は人払いをした上で防音の魔法を使ってこの部屋を覆った。

 


「マティとレオンも一緒に聞いていたから分かっていると思うが、シアが王宮に戻る時期が決まった。社交界が始まる日が殿下のお披露目となるので、一週間後、実際はもっと早くなるだろうが王宮へ戻る事になる。この邸で過ごすのも後僅かだな」

「寂しくなります。ですが、シアの安全を考えると、それが良いかと」

「アレクも寂しがりますね」

「冬の休暇中、シアは一度領に戻ってくるから、その時に話そうか」

「冬の休暇、領に戻れるのですか?」

「ヴィンセント殿下と街でデートする約束があるだろう? それに、シアも領の者達と気軽に触れ合えるのも最後となるから数日は領に来ることの許可が下りた」

「本当ですか⁉」



 私は思いがけないことで嬉しくて前のめり気味に聞き返してしまった。

 そんな私を咎めずに「本当だよ」と優しく答えてくださった。


 

「嬉しそうだね。陛下自らそう仰ったんだ。娘を振り回しているからと。シベリウスでの交流もあるだろうから行ってきなさいとね」



 お父様の気遣いがとても嬉しい。

 ちゃんとお別れが出来ると思っていなかったから、心の痞えが無くなった。

 私を見ていた伯父様達はそんな私に安心したのか表情を緩めていた。



「シア、急に王宮に戻る事になり、これから慌ただしくなるだろう。周囲もまた暫く騒がしくなるだろうが気にすることは無いよ」

「はい。お気遣いありがとうございます。そういえば、(わたくし)が王宮に戻ると必然的に(アリシア)はいなくなるわけですが、その理由はどうするおつもりなのでしょう? まだ何も伺っていないのですが、決まっているのですか?」

「それに関しては嘘偽りなく話すことになっている」

「事実をそのまま公表されるのですか?」

「下手に作り話をしても信憑性が無くなるからな。隠さなければならないところは隠すけどね」

「それは⋯⋯、学園が騒がしくなりますわね」



 ただ、(エステル)が学園に通うようになるから、公に出るから騒がしくなるのではなく、事実を公表して戻るなら、それは別の意味で学園は騒がしくなるでしょうね。

 後の事を考えると私はちょっとげっそりしています。

 クラスの方達はきっと驚くでしょうね。

 もしかしたら敬遠されるかもしれない。

 そこはこちらが偽っていたので仕方がないと思うけど、そうなればやはり、少し寂しく思うわけで⋯⋯。

 レグリスやシャロン様は驚くでしょうけど、あの二人はきっとそれほど変わらないと思う。

 エリーカさんはきっととても動揺するでしょうね。

 何だか目に浮かぶわ。

 私が少しその光景を想像していると、伯父様はふっと笑いを漏らした。



「お養父様?」

「いや、シアの表情を見て少し安心したよ」



 私はよく分からず首を傾げると、マティお兄様とレオンお兄様は苦笑していた。



「お養父様、お兄様達。何故笑っていらっしゃるの?」

「怒らないで。シアが全くいつもと変わらなくて安心しているだけだよ」

「どういう事です?」

「心配していたんだよ。予定よりも早く王宮へ戻る事になって、シアとして学園でも友情を築いているというのに、王宮に戻れば王女として学園に通う事になるから心配しているんじゃないかと思ったんだ」

「心配という事は特にしておりませんわ。逆に(わたくし)の事情なので、周囲の皆さんには混乱させて申し訳なく思います」 



 私がそう話すとお養父様は表情を変え、態度を改めた。



「ステラ様。ステラ様のご事情は確かに周囲の者達を混乱させる事でしょう。しかし、貴女が申し訳なく思う必要はありません」

「何故です?」

「この国、グランフェルト王国は王家であるグランフェルト家が舵を取っています。シベリウス家なら当主である私が領を統治していますが、私を支える為に家族がいて領主館、騎士団で働く人々がいます。そして領民達、領に住む人達の手によって領が栄えています。そんな領民達を護るのが力のある私達貴族階級の務めでもあります。このように領が成り立っているのはステラ様にはご存じ頂いている事と思います。王家もまた同様で、グランフェルトの長である陛下がこの国を導きこの国に住む人達が憂うことなく過ごせるよう其々の領を束ねる貴族、領地を持たなくても国の為に貢献している貴族達を管理するのも陛下の役目です。国をたった一人で管理するには広大過ぎますからね。平民を取り纏めるのが貴族なら、貴族を取り纏めるのが王家です。この世界は大体が君主制ですが中には民主制の国もあります。そしてこの国も君主制ですので、王家を守る為に近衛がいるのです。貴族ならシベリウスとセイデリアを除いた貴族は私兵が其々の主君、引いては次期をを護るためにいます。ステラ様は王位継承権をお持ちでいらっしゃる為、ステラ様個人を護る必要性があり、ステラ様を護る為に我が領でお預かりして護ってきました。ですので、ステラ様が周囲に対して申し訳なる必要はありません。王族であることへの責任はありますが、護られて当然の御方なのですから」



 とてもとても遠回しに最もな事を話しているけど、詰まるところ⋯⋯。



「伯父様、率直に言って(わたくし)に護られることに慣れなさい、と言いたいのですね」

「その通りです」

「前置きが長すぎますよ」

「お褒めに頂き恐縮です」

「全く誉めていませんわ」



 伯父様ったら真面目な表情なのに目元が笑っていらっしゃるわ。

 最後の最後で緩んでしまっているわ。

 だけど伯父様のその心遣いの中にも厳しくもそう諭して下さるのは私のこれからにはとても必要な事。



「ですが、ステラ様のその周囲を気遣うお気持ちは我々にとってはとても心地よく思いますが、それを零す相手を間違えてはいけませんよ。相手を間違えると付け入る隙を与えてしまうのと、勘違いされる事もありますので」

「分かっていますわ。ですが伯父様達の前ではよろしいでしょう?」

「勿論ですよ。恐れ多くもステラ様は私にとっては姪であり、マティ達にとっては従妹なのですから」



 話が一段落したところで、お茶を楽しみ、話は真剣な話から思い出話に花を咲かせた。

 そして学園に戻る時間帯となり、伯父様は暫く王都に留まるそうで、私には周囲に気を付けるようにと、お兄様達には私を必ず護るようにと言葉をかけ、送り出した。

 学園に着くまでの馬車の中で三人で話をしていた。



「何だかいつも学園に戻るときの感じと少し変わってしまったね」

「レオン?」

「レオンお兄様、どうされましたの?」

「あっ、ごめん。シアと一緒にいる時間が長かったのって兄弟では僕なんだよね。だから、やっぱり寂しくなるなって思って⋯⋯」

「レオンお兄様、どんな姿でも(わたくし)(わたくし)です。そしてマティお兄様、レオンお兄様が(わたくし)従兄(おにいさま)達である事も変わりませんわ」

「そうだね」

「レオン、しんみりしすぎだ」

「すみません」



 レオンお兄様が素直にそう話してくださるのはとても嬉しいく、お兄様の気持ちが知れて寂しく思っているのが私だけじゃない事に心がじわっと温まる。



「まぁ、レオンのことをとやかくは言えないんだけどね」

「マティお兄様?」

「私も寂しく思っているよ。従妹とはいえ公では気軽に話す事も触れる事も出来なくなるかね」

「マティお兄様⋯⋯」



 マティお兄様も私を見て少し寂しそうにしていたけれど、それを払拭するかのように微笑んだ。

 


「だけど、私が学園にいる間はシアの護衛として近くにいるからね」

「ありがとうございます。お兄様」



 学園に着き、馬車を降りると丁度なのか見計らったのか、ティナお姉様とシャロン様が馬車から降りてきたところで、こちらに歩いていらっしゃった。



「ごきげんよう。ティナお姉様、シャロン様」

「ごきげんよう、シア。(わたくし)達と一緒に寮に向かいましょう」

「はい。マティお兄様、レオンお兄様。行ってきますね」

「気をつけてね」

「また学園でね」



 私はティナお姉様とシャロン様と共に他愛無い話をしながら寮へと向かう。

 交流会が終わったことで次の話題と言えば来月初旬に行われる試験の事で、二週間を切っている。

 そういえば、私達が試験を受けてからもう一年が経とうとしているのね。

 あの時は魔物の襲来があったので本当言うと試験どころではなかったのだけれど⋯⋯。



「そういえば、去年の試験の時はシベリウスとセイデリアでは魔物の襲来の予兆があったのよね?」

「そうですわ。ですので試験より領の事が気になってしまって、勿論試験中は集中していましたけど、終わったらあちらの事ばかり考えていましたわ」

「それを考えると二人共首席と次席なんて凄いわね。そうしたら試験が終わって直ぐに領へ戻ったのかしら」

「いえ、試験結果を確認してから直ぐに領へと戻りました」

「マティアス様が長期で休暇申請を出し、参戦していると聞いた時は驚きましたわ。だけど、交流会で三人が魔物と対峙した姿を見たらやはり慣れていると感心してしまいました。⋯⋯シアは体調は大丈夫かしら?」

「体調ですか?」

「えぇ、あの時倒れてしまったでしょう?」

「あれは、魔力を使い過ぎたせいですから、三日間休んだので問題ないです」

「それを聞いて安心したわ」



 そういえば、私倒れたのよね。

 すっかり忘れていたわ。

 自分でも呆れてしまうけれど、それを忘れるくらいの大きな出来事があったので⋯⋯。

 ティナお姉様の様子を見ている限りはまだ知らないみたいね。

 寮に着き、私達は挨拶をして部屋へ戻り、ほっと一息つくとのだけれど、お父様からお手紙が届いたので、早速読み始める。

 内容は今週末に今後について話をするので必ず離宮に来なさいとの事だった。

 


 ――必ずって、お父様に呼ばれたら必ずもなく行きますけれど?



 少し疑問に思いながらも、お父様に必ず離宮に参りますとお返事を認め、お父様に届けてもらう。

 必ず⋯⋯なんだか週末に何か予定が入りそうな事あったかしら。

 


 ――あっ! もしかして⋯⋯。



 確かではないけれど、ただ交流会前に話していたし、今回あんな事があったので開催するか分からないけれど、もしそうなら先回りする必要があるわね。

 私はその憶測の為に最近ようやく定着しつつある通信の魔道具を使てってマティお兄様に連絡を入れると、すぐに繋がった。



『シア?』

『マティお兄様、今お時間宜しいでしょうか?』

『大丈夫だよ』

『確認をしておきたい事が、交流会前に親睦会が開かれましたけど、終わったら皆様でまた集まる事があるのでしょうか? それらしい事を交流会前に話していた気がしますが』

『そうだね、例年集まっているよ。多分今年も今週末になると思うけど、何かあったの?』

『お父様から週末は離宮に来るよう言われましたの。一年の(わたくし)が欠席をするのはどうかと思いますので申し訳ないのですけど、マティお兄様には(わたくし)と一緒に離宮に来ていただきたいのです』

『成程。分かった。明日の生徒会で慰労会を開催するなら、私が発言をしよう』

『ありがとうございます。助かりますわ』

『構わないよ。ではまた明日ね。おやすみ』

『おやすみなさい』



 流石に一年生なのに皆様の集まりを欠席って生徒会の方達だったら特に何も思われないでしょうけど、風紀や広報の方々一緒だと思うし、気が引ける、というのは多少ある。

 マティお兄様やレオンお兄様がいらっしゃるのに私だけって言うのはまずあり得ないものね。

 それにレオンお兄様はヴィンスお兄様の護衛があるから欠席は無いでしょう。

 これで明日の心配は無くなったわ。

 交流会が終わって明日からまたいつもの日常が始まるけど、(アリシア)として学園に通うのはあと一月もない。

 それを思うと、何だか変な感じがするが、あのような事があった後の学園生活を気を引き締めて行動しなければならないのは確かで、周囲には、特にノルドヴァル令嬢とは暫く会いたくないわね。

 こればかりは何とも言えないけれど。

 あまり考え過ぎるのは良くないし、そろそろ休まないとまた皆に叱られるわね。

 自身に苦笑しながら叱られる前にベッドへ入り眠りについた。

 


いつもご覧頂いている方々、また初めての方々も読んでくださりありがとうございます。

そしてブクマ、いいね、評価をありがとうございます。

次回は十日に更新致しますので、楽しみにしていだければとても嬉しいです。

よろしくお願い致します。


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