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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
151/273

151 騒動後の話合い


 夕食後の団欒の時間に今日の事について少し話をすることになり、今は人払いをしているので部屋には私達だけだ。

 帰ってきてから出迎えてくれたお養母様はレオンお兄様と共に無言で抱きしめられ、やはり結界の外から見ていると相当心配を掛けてしまっていたのだと改めて痛感する。

 お会いした時はただ心配だったと、今はお養父様と共に頑張った事を労い褒めてくださった。

 


「改めて、三人共おめでとう」

「「「ありがとうございます」」」

「特にレオンとシアは最終試合をよく乗り越えたな。誇らしいよ。だが、異変を感じてから結界を内側から破ろうとは思わなかったのか?」

「破ろうとしましたよ。ですが、出来なかったのです」



 そう、実は内部から結界が破れないか密かに試してみたのだけれど、吸収されているような感じがしたので、魔力の無駄遣いはできないし、それだったら破るのではなく目の前の魔物を全て倒してしまった方がいいと判断したのだ。

 魔力も体力もそこで失うわけにはいかなかったから。

 


「成程。実際はどうだったんだ?」

「おかしいと思ったのは、二十体目以降ですね。それまでの魔物は本当にいつも対峙する魔物と同じだったしそれ程強くはありませんでした。ですが、二十一体目からは僕達の前に出ていた魔物とは違って強く、残り四体が出てきたときは、魔物を相手、というか人を相手にしているような感じでした。シアは僕よりも早くに違和感に気付いていたようです」



 そこでレオンお兄様は私を見て話をつづけた。



「シアが魔物の首元を見てと言ってきたので、そちらを確認すると、ラルフの時に見た同じような首輪が付いていたので、あれらは元々人間でしょう。シアも同じ気配がすると言っていましたので」

「残り四体位になると外から視認がしづらくて観覧席からは何も分からなかったが、ベアトリス様があれらは元々人間だと仰ったのでこちらもようやく事態の重さが分かったのだ。それに二十体を過ぎたくらいから魔物が少し可怪しかったろう?」

「はい。僕は何が、とまでは分からなかったのですが、シアは何か気付いていたようです。だよね?」

「はい。(わたくし)が攫われた時に見た魔獣達の目と同じでした。正気ではなく、操られているようでしたから」

「他には?」

「後はレオンお兄様がお話ししてくださった通りですわ」

「そうか、分かった。今日は疲れただろう。今日は此処までにして詳しい事は明日にしよう。特にシアはそろそろ休まないとだめだよ」



 そうお養父様の言葉で今夜はここまでとなり、私達は部屋へと戻った。

 部屋に入りまずは湯に入る。

 今日は本当に疲れたので、この時間が幸せでほっと出来る。

 身体を表れているとそのまま寝てしまいそうになるが、何とか寝ずに湯から上がり、冷たい飲み物を用意してもらい一息つく。

 今日は本当に長かったわ。

 あっ、お父様達にお手紙を書かなきゃ。 

 そう思っていると、一歩遅かったみたい。



『姫様、陛下の影が来ております』

『分かったわ』

「御前失礼いたします。陛下よりお手紙を預かってまいりました」

「ありがとう」

「では、失礼いたします」



 お手紙を私に渡した後、直ぐに帰っていった。

 私は早速お手紙を読むと、そこには労いの言葉があったけれど、やはりとても心配を掛けてしまったので、その旨がびっしりと書き連ねていた。

 そして最後には返事は良いから今夜は早くに休むようにとの言葉があった。

 流石に今日は夜更かしは出来ない。

 やはり元々人間だった魔物と対峙するのは気が重いので、疲れがないことはない。

 お父様の言う通り、今日はもう寝ようかしら⋯⋯。

 けどお兄様にもお手紙書かなきゃ⋯⋯。

 珍しくソファでうとうとしていると、モニカに「無理はせずにお休みください」と言われてしまい、眠気に抗わず、素直に従ってベッドに入ると、やはり疲れからか直ぐに眠りについた。


 夢も見ずにぐっすり眠れたようで、朝起きるとまだ辺りは仄暗く、とても寒い朝だった。

 領ではすでに雪が降っている頃よね。

 王都ではまだ雪は無いけれど、冬はもうすぐそこまで来ている。

 


『おはようございます。姫様、もう少し寝ていても大丈夫ですよ』

『目が覚めちゃったから起きるわ』

『昨夜姫様が寝入ってからヴィンセント殿下よりお手紙を預かっております』

『ありがとう』

『お読みいただいている間にモニカ殿を呼んできましょうか?』

『お願いね』



 私が寝てからお兄様の影が来ていたのね。

 それにしても、モニカっていつも朝早いよね。

 影を使って呼びに行かせるのはどうかとも思うけれど、鈴を鳴らすと他の侍女が来ることもあるから、気兼ねしないモニカが来てくれる方が嬉しい。

 お兄様からのお手紙を読んでいると、頃合いを見計らったかのようにモニカが部屋に入ってきた。



「おはようございます。ご体調はいかがですか?」

「大丈夫よ。よく眠れたから悪くないわ」

「それを聞いて安心いたしました」



 ベッドから出て用意されたお水で顔を洗う。

 寒い朝に冷たい水がとても沁みるが、それが余計にシャキッとさせてくれる。

 部屋着に着替えて軽く髪を整えたら、仄暗かった外は明るみを帯び始めていた。

 私はモニカが淹れてくれた温かいお茶を頂きながら、今日の予定を確認すると、少し早い朝食を何時ものように皆で頂いた後、離宮へ行くようだった。

 

 陽が上り、予定通り早めの朝食を頂き、全員で行くのかと思いきや、お養父様に「マティ、レオンと共に先に離宮へ行きなさい」と言われたので、マティお兄様達と一緒に離宮へと転移する。

 離宮の転移陣の部屋にはエメリと護衛の二人が待っており、こちらでの自室へと誘われた。

 そこで何時ものように準備を整える。

 ドレスもすっかり冬仕様だ。

 離宮は郊外にあるので、王都中心部よりもより寒く感じる。

 私の準備が整うと、お祖父様達が待つ部屋へと案内され、部屋に入ると、伯父様達も揃っていたが、伯母様の姿はなく、少し疑問に思っていると、お母様の所だと仰っていたので、もしかしたら違う方面から情報収集するのかもしれない。

 お父様はまだのようだった。



「おはよう」

「おはようございます。お祖父様、お祖母様」

「体調が良さそうで安心したわ。こちらへいらっしゃい」



 お祖母様に呼ばれたので、私はお祖母様の隣に腰掛けるとふわっと抱きしめられた。

 やはりその行動は伯母様と同じで、やはり親子なのだと感じられる。

 


「交流会は楽しかったかしら」

「はい。色んな事がありましたが、楽しかったですわ」

「それは良かったわ。けど最後の試合の事を聞いた時は驚いたわよ。貴女達に大事なくてよかったけれど。レオンもすっかり頼もしくなったわね」

「ありがとうございます。お祖母様」

「まだまだだ。レオンを甘やかすのは早いぞ」

「貴方やアルが厳しいから(わたくし)が甘やかすのですよ」



 お祖父様とお祖母様は良い飴と鞭だと思う。

 お祖母様がレオンお兄様の事を褒めると、やはりお祖父様はまだまだだとぼやいていた。

 お祖父様に認めて頂けるのって至難の業じゃないかしら。

 楽し気に話をしていると、お父様達がいらっしゃったようだ。



「やっときたか」

「父上、母上。お待たせいたしました」



 お父様とヴィンスお兄様のお二人だけでいらっしゃったようだ。

 お祖父様達に挨拶をして、伯父様達には気軽に声を掛けている。

 そして私に向き直ると、おいでと手招きされたと思ったら、そのまま抱き上げられた!

 


「お父様、恥ずかしいです。下ろしてください」

「断る。心配を掛けた罰だ」



 それを言われると何も言えない。

 お父様がソファに座ると、私はお父様の隣に下ろされ、お兄様と挟まれてしまった。

 お兄様は隣からぎゅっと抱きしめられて「元気そうでよかった」と安堵の表情を浮かべていた。

 そんな私達のやり取りをお祖父様達は温かい表情で見守っていた。



「早速本題に入ろうか」

「今回の学園の件だが、公であのような事が起こったので全部を隠匿することは出来ない。だが、人間が魔物に転じたのがあの場にいたという事実に関しては、初めて双璧から報告を受けてから今に至るまで、王宮でも一部の者しか知らない。なによりその件に関しては一般的に知られていない上、今公表すると多くの混乱を招くだろう。まだその時ではないのでこの件に関しては胸の内に秘めておいて欲しい。今は突然変異した魔物、という事で処理をするが、その他の事に関しては公表をする。闇の者が関わっている、という事は世間にも注意を促すのに丁度いいだろう」

「ふむ。まぁそれが良かろうな」

「人が魔物に転じる、という件に関しては、双璧からの報告もあるが、王都でそれが起こった、と言う事実は重く受け止めなければならないし、より鮮明に解析しないといけないから、この件に関してはアル達にも協力を頼みたい」

「勿論です」

「マティとレオンには引き続きステラとヴィンスの側で表の護衛を頼む」

「承知しております」

「だが、二人共無茶はするなよ」



 お父様はお従兄様達に私達の護衛を頼むと同時に、お従兄様達の身を案じた。

 お父様にとっても二人は甥なのだから、心配なのだろう。



「ステラ、今後魔法師団からの勧誘は無いだろうから安心しなさい。もしあれば直ぐに言いなさい」

「はい」



 これは、何かしら圧力をかけたのかしら。

 だけど、お父様が何かを仰るのは色んな所で弊害が出ないとも限らない。

 一体何をされたのか⋯⋯。



「ここまでは宮廷の対応だが、実際現場にいたマティ達の話も聞きたい。昨夜ヴィンスからは話を聞いたが、実際領で魔物の対応をしているマティ達なら何か違う事を感じたのではないか?」



 昨夜、伯父様の問いかけと同じ質問を既にされていたので、これには伯父様が私達から聞いた話をそのままお話された。

 それを聞いたお父様は、何かを深く考えているようだった。

 


「ステラ、その操られている魔物や魔獣の見分け方ってあるのか?」

(わたくし)も自信があるわけではないのですが、先程も伯父様が話された通り、魔物の目が普通ではなかった事です。後は、気配が違う、という事でしか今の所は判断ができません」

「そこは実際その魔物と対峙してみたいと分からない、という事だな」



 人が魔物に、との判断も首元で鈍く光る魔石だという事と、それに関しても普通の魔物と気配が違う、という事しか分からないので、それが本当かと聞かれると証拠がないので。

 人が転じた魔物も、倒せば普通の魔物と同じように消滅するからだ。

 ラルフの時はまだ人としての姿が残っていたのでそうはならなかったけれど。

 それ以降に相対した魔物は倒し消滅してしまったので、一体誰がそうなったかを特定するのが難しかった。

 今回も分からないだろう。

 失踪者を調べたらある程度絞る事は出来るだろうけど、中々の時間を要する。



「お兄様、外からはあの魔物をどのように感じていたのですか?」



 私はそうヴィンスお兄様に問いかけた。

 マティお兄様のお話は昨夜お聞きしたけれど、ヴィンスお兄様はまた感じ方が違うと思う。

 


「感じ方はステラと然程変わらないと思うけど。私が感じたのは、不愉快な感じかな。何て言うか、魔物は中身がないかんじだが、今日見たあれらから感じたのは人の感情だったよ。結界も外から破ろうと思えば破れたけど、中にどのような影響を及ぼすか分からなかったから出来なかったんだ。影達にも止められたしね。ステラが中でいるというのに何も出来なくて、とてももどかしかった」

「沢山心配をお掛けして申し訳ありませんでした」

「いや、ステラが強いのは分かっていたからね。あの程度ではやられないだろうとは思ってはいたけど、心配はするよ」



 お兄様はそういうと私をぎゅっと抱きしめた。

 私の家族は皆はこういった触れ合いが多い。

 決してそれが嫌と言うことは無く、とても嬉しい。

 


「ところで、アンセやアルノルドは何か感じ取れたのか?」

「ヴィンス程正確には感じ取れてはいないですが、不快感なら」

「私は領で何度か経験がありますので、直ぐに、とまではいきませんが感じ取れました。ただ、側にベアトリス様がいらっしゃいましたので、今回は彼女からの情報で分かったことです」

「あぁ、セイデリア辺境伯夫人で魔国の元王女だったな」

「はい」

「夫人に聞けばもっと早くに分かるようになるんじゃないのか?」

「それは難しいかと。魔国の方や竜王国の方々は人とは違いますので、捉え方が全く違うようです」

「そうか⋯⋯」



 そもそもどれくらいの人達が感じ取る事が出来るのだろうか。

 生徒会の人達はあまり分かっていないようだったし、何か、魔道具とかで分かるように装置、みたいなのを作成とかできないかしら。

 感知系の魔道具⋯⋯。

 私は魔道具に関しては分からないから無責任な事は言えないけれど、あればとても便利だと思うし、いくら人々の心の憂いを少しでも取り除くような精神医療があってもそう直ぐには改善って難しいと思う。

 私が提案したこととはいえ、そう直ぐ簡単に効果が出るとは思っていない。

 だけど、もし、感知系の魔道具があったとして、魔物が着けていた魔石に早く感知出来れば手遅れになる前に対策が出来るのでは無いかしら。

 


「ステラは一体何を考えているのかな」

「⋯⋯あっ」

「お帰り」



 ヴィンスお兄様に呼ばれて顔を上げれば、全員が私を見ていた。

 私、考えに耽り過ぎていた⋯⋯?



「何を考えていた?」



 次はお父様にそう問いかけられた。

 これ、言わないとだめかしら?

 両側からだけでなく正面周囲からの視線が痛い。

 前置きとしては魔道具の件で、ただふと今考えた案としてだけ聞いて欲しいと。

 なんせ魔道具の知識は乏しいから。

 話を聞き終えたお父様は「いい案だな」と褒めてくださり、ただその魔道具を作るのはかなり難しいだろうとも。

 それは何となく分かる。

 


「ステラの案はいいと思うが、時間がかかるだろうな。それだと騎士達を鍛えた方が早いかもしれん」

「先ずは学園が捕らえた魔物だが、あれらは王都郊外にある森に生息する魔物だ。そこで人が転じた魔物達がいたとなると、一度探ったほうがいいだろうな」

「父上、そうとは限らないのではないでしょうか?」

「と言うと?」

「学園の管理体制が劣っているとは思いませんが、相手は闇の者達です。捉えていた魔物、では無く、捕えた後にすり替えられたか。結界に細工するような奴らですよ」

「ヴィンスの言うことも一理あるが、どちらも調べる」



 お父様のいう事も最もだし、ヴィンスお兄様のいう事も分かるけれど、そもそも闇の者がいつも裏でこそこそとしているのに、今回は態々学園の交流会に手を出したのかしら。

 また私が何かを考えているのか見抜いた伯父様が心に留めるのではなく話しなさいとでも言うように視線を送ってきた。

 


「エステル殿下はどう思われますか?」



 視線だけでなく促されたので一旦考えることを止めた。

 

 

(わたくし)は、何故沢山人が集まる交流会で闇の者が手を出してきたのかが気になります。今迄表立って動かずにいたのに態々目立つ事をするのが不思議でなりません」



 何故あのような人が多く集まる場所を選んだのか⋯⋯。

 

 

「ステラ、それは学園、もしくは関係者に協力者がいるという事か」

「その可能性もあるのではないかと。今までも学園に嫌がらせをしている人達がいるとお聞きしましたが、今回は状況が全く違いますでしょう? それに、今まで表立って動いていなかったのに、今回はどうしてこのように公に動いてきたのでしょう? 何よりも、あまりにも(アリシア)を狙っているかのような気がいたします。」



 私がそのように疑問を口にすると、お父様は何故か嬉しそうに顔を綻ばせ、褒める様に私の頭を撫でた。

 


 ――何か引っかかる⋯⋯。



「お父様? もしかして⋯⋯」

「そのもしかしてだよ。で、減点だ。アルに促されなければ良かったんだがな」

「それは、伯父様も分かっていらしたのですか?」

「いえ、陛下からは何も伺っていませんよ。もしかしたら、とは思いましたが、あまりにもステラ様が何も仰らないので、口を出してしまいました。申し訳ありません」

「アルが謝る必要はない。ステラを試していただけだ。発言は遅かったけど、内容は悪くない」

「という事は、今迄の会話は全て前置きに過ぎなかったのですか?」

「よく分かったな」

「いえ、最初から何かおかしいと思いっていました。此処で話すにしては中身が⋯⋯」

「そこまで分かっているのなら十分だ」



 これからはお父様達とお話しする際はもっと気を付けよう。

 きっといつも私の行動や言動を見ていらっしゃるのだろう。



「さて、では本題だ。ステラも気付いているように、狙いはシアだろう。ステラを守るつもりでシアとして普段行動させているというのに。これでは全く意味をなさない。一度シアが攫われているからそれで闇の者に狙われる、と言うのは分からなくもないが、それが堂々と学園で狙ってくるのは解せない。ステラが予想通り、協力者がいるのだろう。それもシアを疎ましく思っている人物だろうな」

「今シアの事を疎ましく思っているのは、ノルドヴァル令嬢でしょう」

「だろうな」

「たったあれだけの事で闇の者と繋がるでしょうか?」

「直接は繋がってはいないだろう。間に何人かいるだろうな。奴らにとって切ってもいい都合のいい人間が」



 流石に直接関わっているとは思わないけれど、お父様を始めお祖父様に伯父様はお父様の仰る通り、都合のいい人間を間に置いている、そのように聞くと心が重くなる。

 切られると分かっていて協力している訳ではないでしょうけど⋯⋯。

 それでも何故そのような人達に力を貸すのか、理解できない。

 人の命を軽く見過ぎている。



「ステラ、奴らに協力するような人間はお互いに利害関係が一致しているからこそだ。だからステラがそこまで奴らの為に悩む必要は無い」

「はい」

「ステラよ。よく覚えておけ。いくら協力者がどうしようもなく奴らと手を組んだとしよう。それはその協力者の自己責任だ。当たり前だろう? それを決めたのは自身だからだ。それによって苦しめられる者達がいるという事を忘れてはならん。例えその事実を知っても知らなくても奴らと手を組んでいる時点でそこに加担しているのだからな」

「はい、お祖父様」



 お祖父様の言う事は最もで、責任が無いとは言えない。

 私も別に救いたいとか、そう言った事を考えているわけではなく、命を軽く扱っている事への怒りだ。

 生きたくても生きられない人もいる。

 それなのに簡単に人の命を投げだすなんて、とてもではないけど許せるものではない。



「ステラは優しいからな。奴らのやり方に憤りを感じているのだろう?」

「そこまで優しくはありませんわ。お祖父様の言う事は最もですし、(わたくし)もそれに同意いたします。ただ、そうですね。簡単に人の命を道具として使うような者達へは憤りを感じます」

「彼奴等に道徳的な事を求めても仕方ない。我々とは根底的に考え方が違うから話が通じることもないだろう」



 確かに、人の命を何とも思っていないような人達と相容れる事は容易ではないでしょう。

 お父様達は裏にノルドヴァル家が関与していると確信しているようだった。

 私がお祖父様と話をしていると、その間にお父様は目を閉じて何かを思慮深く考えている様子だった。

 暫くして目を開けると、何かをお決めになったのか、感情の読めない表情で「仕方ない」と呟き、私を見据えた。



「ステラを王宮に戻す」



ご覧頂きありがとうございます。

ブクマ、評価、いいねをありがとうございます。

次回は明日更新致しますので、楽しんでいだければとても嬉しいです。 

よろしくお願い致します。

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