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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
144/273

144 酷い勧誘


 そろそろ試合が始まるようでアレーナでは審判員の姿が見える。

 三年であるお兄様達は今年から試合形式になるので、会場の盛り上がりは私達が行ったとき以上だ。

 これにはお養父様達も楽しみにしているようだ。

 去年までの魔法操作の披露を見ている限りでは、上位はレオンお兄様やアストリッド様になるだろうとされているが、これは試合を観てからのお楽しみであって、四年生がどれくらいの実力なのかで変わってくるだろうと。

 入口で今日のトーナメント表を確認すれば、お兄様は第一試合の四組目で登場、アストリッド様は最終十組目で出場となるので、先にレオンお兄様が試合に臨む。

 お養母様とベアトリス様はお兄様とアストリッド様の対戦が楽しみなようで、早く決勝戦が観たいと話しているが、私は初めての観戦なので、他の方々の実力も知らないので私が言えることは何もないけれど、お兄様がお強いのは実際に魔物達との戦いを見ているので分かってはいるのだけれど、相手が理性の無い魔物と理性のある人では訳が違うので、昨日のマティお兄様達の試合もそうだったけれど試合を実際観なければ分からないと思う。

 試合が始まるようで一組目の方達が出てくると周囲から歓声が上がった。

 試合が始まると今度は後ろのお二人による評価が始まったので、それを聞きながら観戦すると、ただ試合を見ているだけと大きく違い良い勉強になる。

 そうして三組目までが終わり、いよいよレオンお兄様の初戦が始める。



「レオンは今年が初めての対戦だからね。緊張しているかと思ったんだが、全く心配いらなさそうだな」

「どのような試合を展開するか楽しみだな」

「確かレオンは四属性持ちだったか?」

「そうだ。魔法の才だけは私を凌ぐだろうな」

「ほう。剣の方はどうなんだ?」

「可もなく不可もなく。悪くはないが、あの子は魔法が一番合っている」



 私から見ればレオンお兄様も剣の腕は凄いと思う。

 けれど本人は剣はそこまでだと言っていたし、レオンお兄様は魔法を使用している時の方が自然で確かに魔法が合っていると思う。

 試合相手は同じ三年の方だったけれど、お兄様の相手としては不足で直ぐに決着が付いた。

 その試合を観て、お養母様達も「相手が可哀相ね」と呟いていた。

 試合は進み、最終組のアストリッド様の出番がやってきた。



「アストったら、何がそんなに楽しいのかしら」

「ふふ、表情から見てもとっても楽しそうで、緊張している相手の子がちょっと気の毒ね」

「あの子はどんな状況でも楽しむ傾向があるからなぁ。その気楽さが羨ましいと思うときがある」

「アストリッド嬢の性格はユリウス似だろう?」

「俺はあそこまで気楽な感じじゃなかったぞ」

「そうか? 学生の頃はあんなに⋯⋯」

「待て待て! 何を暴露する気だ! 何も知らないアリシア嬢が聞いてるんだから止めろ!」



 お二人のやり取りを聞いて面白くてついくすくすと笑ってしまった。

 本当に仲良しだわ。

 そんなお二人のやり取りをお養母様達は呆れたような眼差しを送っていたが、そうこうしている内にアストリッド様の試合も時間がかからず直ぐに終わっていた。

 お兄様もアストリッド様も安定の強さで勝ち進み、昼からの準々決勝進出が決まったところで午前中の試合が終わった。

 昼食中は剣技の話題で、ヴィンスお兄様は順調に準々決勝に勝ち進んだようだった。

 ヴィンスお兄様は剣も魔法も両方優れているとの事で、一年の時は乗馬で去年は魔法技に出場していたようで今年は剣技に、来年はまた違う種目に出場するかもしれないので、お兄様の剣技は見れないのかなと、ちょっと残念に思う。

 離宮や王宮に戻ってから、お兄様の訓練を見ることは出来るだろうけど、学園の、この交流会での試合とはまた別物なので、やはり学生の内は交流会でのお兄様の活躍を見たいと思ってしまう。

 昼食を食べ終わり、少し学園内を歩いて競技会場に戻り始まる迄また話に花を咲かせていた。



「ヴィクセル伯爵家のディオーナ嬢も準々決勝に勝ち進んだみたいよ」

「順当にいけばヴィンセント殿下と決勝で当たるでしょうね」

「どちらが勝つかしらね」

「どうかしら。シアの目から見てどう?」

(わたくし)、ヴィンセント殿下が訓練している姿を見たことありませんので、分かりませんわ」

「どちらに優勝してほしいかしら?」



 分かっているのに意地悪な質問をされるお養母様が恨めしい⋯⋯。

 ヴィンスお兄様に勝ってほしいし、お兄様の格好いいお姿を見たい!

 お養母様の意地悪な質問で余計にそう思ってしまう。



「ディオお姉様に勝ってほしいですわね。女性で剣の腕も立つなんてとても格好いいですわ」

「あらあら、シアがそう話していたと知ったら、ヴィンス様も落ち込んでしまうわね」



 お兄様の試合を観に行けなくて、私が先に落ち込みます!

 私は少しもやっとした気持ちを落ち着かせるために、試合が始まるまで時間もまだあるので少し席を外します、とお養母様に伝えたが、一人での行動はダメだと止められた。

 だけど遠くへは行かないし、何よりも学園内でそれも会場内だからと断ると、渋々一人にさせてもらえた。

 お養母様は私に影が付いているのは知っているので、それもあって少し気晴らしに席を立つ事が出来たが、競技場からは決して離れないようにと念を押された。

 折角考えないようにしていたのに、お兄様の試合を観に行きたくてもやもやするわ。

 外の空気が吸いたくて一度競技場から出て直ぐの木陰のベンチに座り落ち着かせる為に深呼吸をする。



『姫様、宮廷の魔法師が近付いてきますのでお気を付け下さい』



 魔法師が何故?

 そう思ったけれど、そう言えば初日の評価に堂々と勧誘宣言されているのだったわ。



「アリシア・シベリウス嬢。少し時間を頂いても?」

「申し訳ありませんがそろそろ試合が始まりますので戻らないといけませんの」

「それなら心配ないよ。私は評価をする一人として来ているので、まだ時間は大丈夫です」

(わたくし)が戻らなければお養父様が心配するので、貴方に時間があろうと(わたくし)にはありません。何よりも礼儀のなっていない方と話を続けるつもりはありません。失礼します」

「待って!」



 私は立ち去ろうとしたけれど、まさか腕を取られるとは思っておらず驚いた。

 影達が動こうとしたのが分かったので直ぐに止める。

 


 ――痛い!



 だけど結構な力で掴まれてしまい、痛くて振り払う事が出来なかった。

 影達の怒りが感じ取れるが、ただの勧誘に彼等が出てくることはない。



「お離しください!」

「私の話を聞いてくれるなら離しますよ」

「名も名乗らないような礼儀を知らない方とお話をするつもりはありません」

「あっ、忘れてた。まだ名乗っていなかったでしたね。私は宮廷魔法師、第三師団に所属しているトシュテンと言います。これで話を聞いてくれるよね?」



 ――聞きたくないしさっさと腕を離してほしい。



 そう心の中で強く思った。

 私に絡んでくる人ってまともな方はいないのかしら。

 このトシュテンとか言う人も人の話を聞かない方のようだし。



「今日お話したかったのは是非とも将来魔法師団へ来てほしくて! 貴女の魔法披露は素晴らしく、今すぐにでも師団に来て欲しいくらいだ。将来有望な方なら休息日に魔法師団で、実際訓練をする人もいるし、貴女の実力を直に感じてみたい! というか今直ぐにでも! 交流会なんか置いといて魔法師団の訓練場へ今から行きまし⋯⋯」



 ようやく掴んでいた手を離してくれたのは良いけど、すごい勢いで言葉を捲し立て始めた。

 だが、後から来たもう一人の魔法師の方に後から「ガンッ」と何とも痛そうな音がする程の強さで頭をどつかれて撃沈した。

 当の叩いた本人は、それはもう面倒臭そうな表情を隠しもせずに殴った手を痛そうにひらひらとさせながら地面に沈んだ魔法師を嫌な顔で見ていた。



「うちの者が失礼した。俺はこいつと同じ師団でペールと言います。こいつに何もされなかったですか?」

「腕を強く掴まれましたわ」



 隠すこともなく私がそう話すとチッと舌打ちをして今度は足蹴にしていた。

 挨拶はしてくれたけれど、ガラが悪い⋯⋯。



「重ね重ね失礼した」

「もう行ってもよろしいでしょうか?」

「勿論です」

「失礼します」



 私は早々に競技会場へと足を向けた。

 勧誘って言っても良識あるものかと思ったら違っていた。

 まぁあの方が異常なのかもしれないけど、それにしても二人共に関して言えば、片方は礼儀知らずでもう片方は素行が悪そうに見える。



『姫様、腕は大丈夫ですか?』

『少し痛いけれど、平気よ』

『あの者達⋯⋯!』

『ルアノーヴァ、何もしないでね』

『まだ何も言っておりません』

『何かするつもりだったでしょう? 手を出しては駄目よ』

『分かりました。ですが、きちんとシベリウス辺境伯にはお話しください』

『そうね、きっと中々帰ってこないと思っているはずだし、話さなくてはならないわね』



 試合、始まっちゃっているわ。

 急いで観覧席に戻ると、お養父様達が心配そうに私を待っていた。



「シア、私の隣に来なさい」



 そうお養父様がいい、私にお養父様とセイデリア辺境伯の間に座るよう促されたので、そこへと掛けると直ぐに遅くなった理由を問いかけてきた。



「何かあったのか?」

「魔法師に捕まっておりました」

「何もされなかったか?」

「腕を掴まれましたわ」

「は? あいつらは暴力を行使したのか⁉」

「暴力とまではいかないですが、流石に男性に強く腕を掴まれましたので、痕がまだ残っていますわね」



 掴まれた腕の部分をそっと袖を捲ってまだ少し赤くなっている腕をお養父様に見せると、お養父様とセイデリア辺境伯の目が完全に冷え切った。

 そしてその冷え切った眼差しのまま、魔法師の方々が座っている席へと視線を向けた。



「名前は聞いたか?」

「はい。魔法師団第三師団所属のトシュテンと言う方です。後から来たペールと言う方が止めてくださいましたけど」

「あいつか⋯⋯」

「ご存じなのですか?」

「あぁ。魔法馬鹿で人の話をまともに聞かない厄介な変人だ。ただ、実力はあるのでぎりぎり師団に所属できているが、今日はあいつの手綱を握っている奴は来てないのか」



 厄介で変人って、聞いただけで危険な方のようだけど、きちんと教育は行って欲しいが、行っていたとしてもあのような残念な感じなのかもしれない⋯⋯。



「痛くないか?」

「痛みはもうそれ程でもありません」

「あぁやはり一緒に行けばよかったな」

「お養父様、流石に学園内までは⋯⋯」

「だが実際襲われただろう?」

「これは予想外です。まさか勧誘と言っても手を出すとは思いませんわ」

「普通は手を出さない。だが、次はもうこんな事は無いから安心しなさい」



 一体何をなさるのか、そう確信をもって仰った。

 それはそうと話をしている間にレオンお兄様の試合が終わって準々決勝第三試合が始まっていた。

 準々決勝ともなると試合も見応えがあり、お養父様の解説付きで見ているのでとても贅沢な時間だと思う。

 アストリッド様も危なげなく準決勝へと進んだ。

 準決勝一試合目にレオンお兄様が姿を見せた。

 マティお兄様と同じく落ち着いていて余裕も感じられる。

 試合運びもとても冷静で相手の動きをよく見れていて、お兄様には無駄な動きが無く攻撃も最小限の魔法で圧倒していた。

 何だかお兄様との実力差があり過ぎて、これも経験の差なのだろうけれど、何とも言えないわね。



「やはり決勝戦で二人が交えるのが楽しみだな」

「あの子も昔に比べたら大分成長したわね。安心して見ていられるわ」

「学園に入る前まではまだ少し頼りなかったからな。それを思えば大分成長を感じられる」



 レオンお兄様はお養母様達からの評価が高い。

 確かに前はどちらかと言うと可愛らしい感じのお兄様だったけど、まだ可愛さは残るものの、頼りになるお兄様といった感じだ。

 そしてお次はアストリッド様が登場した。

 レオンお兄様と同じくとても落ち着いて見える。

 この試合より次の決勝を見据えているように思う。

 そして危なげなく準決勝も勝ち、次の決勝へと駒を進めた。

 三位決定戦と決勝は二十分の休憩後に行われるので、観戦者達は各々時間を過ごす。

 私達は特に何処に行く事も無くこの場で話をしながら待つ事に。



「シア、腕は大丈夫かしら?」

「もう痕も消えましたわ」

「それを聞いて安心したわ。全く! (わたくし)の可愛いシアの腕を掴むなんて」

「流石に腕を掴まれた時は驚きました。もう一人の方が止めてくださらなかったら途方に暮れていましたわ」

「もう一人の方はどういった方だったの?」

「そうですわね⋯⋯助けて頂いてこういっては何ですけれど、今日お会いした二人は少し、印象が良くないですわ」

「どういう事? もう一人にも何か言われたの?」



 私はその時の事をお養母様達にお話をした。

 トシュテンさんは変人だと言うので置いといて、ペールさんは悪い人ではないのでしょうが、舌打ちするなんてあまり良くない。

 それに私の腕を掴んだと言っても、足蹴にする事までないと思う。

 話を聞き終わったお養父様達は、何とも言えない顔をしていた。

 


「シア、騎士団や魔法師団への入団方法は知っているかい?」

「はい。各学園の在学中に入団試験を受けて卒業後に入団するか、学園に行かずして一般公募で入団する方法がありますが、其々の試験内容違う事と一般公募の方は入団してからが大変だと聞きましたわ」

「その通りで、今聞いた二人はその一般公募で入った者達だ。学園の卒業者でその素行はあり得ないからね」



 確かに、あのような素行が学園の卒業生だとしたら、学園の教育問題にも関わるし、もし卒業生であの素行なら悪ければ退団させられるか再教育がなされるでしょうね。

 話を聞けば、そのトシュテンさんという方は一般公募でも群を抜いて魔法の素質が高く、またかなり有能らしいのだけど、ただ一点、学者馬鹿ならぬ魔法馬鹿のようで、魔法が関わると全く人の話を聞かなくなり、強引さが増すという。

 私はそこで目を付けられた、と言った感じなのだと言われたが、私からしたらすごく迷惑もいいところ。

 溜息が出るのは許してほしい。



「その点は安心しなさい。明日からは付き纏われないから」

「はい。お養父様。ありがとうございます」

「何の話をしているの?」



 そう第三者の声が聞こえた方に顔を向けると、そこにはヴィンスお兄様がいらっしゃった。



「これは、ヴィンセント殿下。試合は終わったのですか?」

「終わったからレオンの決勝を見に来たんだ。間に合ったみたいで良かった」



 まさかヴィンスお兄様がいらっしゃるとは思わず、驚いたけれど、私達はお兄様に挨拶をして私はお養母様の隣へ移動し、お兄様はお養父様の隣へと座った。

 お養父様達も試合が早くに終わった事に驚いたのか、お兄様に質問をしていた。

 話を聞けば、お兄様はご自分の試合を颯爽と終わらしただけだと。

 ただ、決勝のディオお姉様との試合は中々白熱したが、危なげなくお兄様の勝利で終わらせて、レオンの試合を観に来た、という事だったが、かなり話を端折っている気がするわ。

 やっぱりお兄様の試合、観たかったわ⋯⋯。

 話はそれだけで終わらず、先程の私達の話を少し聞いていたみたいで、何があったのかと聞かれてしまった。

 答えないわけにもいかないので、お養父様がお話をすれば、ヴィンスお兄様の笑顔は笑顔でも段々と怖い笑みに変わっていった。



「学生に暴力を振るうような勧誘の仕方は禁止の筈なんだけどね。分かっていない魔法師がまだいる事は問題だな。それよりもシア、腕は平気?」

「はい、大丈夫ですわ。ご心配頂きありがとうございます」

「シア、次から同じような事があれば、排除していいからね」

「⋯⋯え?」

「排除、しなさい。いいね。心配しなくても大丈夫だよ。学生の攻撃にやられるような魔法師なら宮廷で働く資格はないから」



 まぁ、そうだろうけど。

 お兄様の言葉がお養父様よりも過激で⋯⋯あ、これはお兄様はかなり怒っていらっしゃるのね。

 後からの笑顔の怒りを感じながらアレーナに目を向けると、丁度お兄様とアストリッド様が向かい合っていた。

 二人共これからの試合が楽しみだというように笑顔だ。



「二人共やる気に満ちているな」

「シアはどっちが勝つと思う?」

私は(わたくし)レオンお兄様が勝利すると思います」

「言い切ったね」

(わたくし)はアストリッド様の実力は分かりませんし、判断が出来ません。ですが、今日の試合を観ていると、レオンお兄様が勝利すると思うのです」

「レオンが羨ましいね。私も魔法技に出れば良かったかな。そしたらシアに応援して貰えたのに」

「殿下、心の声が漏れすぎですよ。もう少し自重してください」

「従妹に応援して欲しいと言ってるだけですよ、伯父上」



 お養父様はそっとお兄様に囁いたが、お兄様の言葉を聞いたお養父様は呆れたように軽く首を振っていた。

 お兄様はというと気にする風でもなく、試合を観ていた。

 試合は終始レオンお兄様が優勢で、だけどアストリッド様も負けじと反撃しているが、最初の余裕もなく、焦りが見え始めているので、隙が出来やすく、それをお兄様が見逃すはずもなく、決定打を放っていた。

アストリッド様はそれを辛うじで防御したが、その間に距離を詰めたお兄様がアストリッド様の眼前で攻撃魔法を展開していた。

 そこでアストリッド様は負けを認め試合終了となった。



「アストもまだまだ爪が甘いわね。それにしてもシベリウスで一体どのような訓練をしていたらあんなの強くなれるのかしら。マルクスも負けてしまったし⋯⋯」

「特別な訓練はしていないですよ。ただ、レオンもマティと同じで強くなりたいと思う一心で強くなっていっているだけで、その思いがあの二人をより強くしているのでしょう」



 何か目標があると意欲も湧きますしね。

 そこでベティ様が何かを思い付いたのか声を上げた。



「いいことを思いついたわ!」

「ベティ? 今度は何を言い出す気だ?」

「その言い方、まるで(わたくし)が突拍子もないない事を言い出すみたいに言わないで頂戴」

「で、何を思いついたんだ?」

「一度、うちの子達をシベリウスで鍛えてもらったらどうかしら? 逆にシベリウスの子達を家で預かるの! お互いどのような訓練をしているか勉強にもなるでしょう。どう?」



 確かに勉強にはなるしいい提案だとは思うけれど、問題があるとしたら私の存在かしら。

 お養父様もそう思っているから思案顔だ。



「ベティ、得意顔で話しているが、それは難しいんじゃないか」

「何故?」

「マティはシベリウスの後継だから休暇中はアルに付き従って学んでいるだろう。レオンは殿下の側近だ。それどころじゃない」

「殿下の側近はレオンだけじゃないでしょう。うちのマルクスだってそうだわ。それに別に休暇丸々とは思っていないわ。一週間くらいなら別にいいじゃない?」

「ベティ、アル達はその提案に良しとしてないだろう。諦めろ」

「何故? シベリウスとは兄弟領と言われているのに何故ダメなの? 二領がそれだけ結束が高くなるいい機会になるし、何も問題はないわよね? オリー様はこの案如何です?」



 すごく可愛らしく不思議そうにするベアトリス様。

 そしてお養母様に答えを求める姿も可愛らしい。

 そう、ベアトリス様はまだ外見がとても可愛らしいと言えるような姿なのだ。

 


「ベティ様の言ってることも最もだわ。あの子達も自領で学ぶ事があるからそう何度もは難しいけれど、一度位ならいいんじゃないかしら」

「⋯⋯そうだな」

「アル、ベティが悪いな」

「いや。ベアトリス様が言っていることも分かるからな」



 ベアトリス様はご自分の案をお養母様達が受け入れたので、とても嬉しそうにされていた。

 何だかお兄様の試合よりこちらの話の方が変に盛り上がってしまったような気がするわ。

 だけど、私の事はどうする気でいるのかしら。

 ちらりとお兄様に視線を送ると、肩を竦めて、まぁ何とかなるだろうという表情をされていた。


ご覧頂きありがとうございます。

ブクマ、評価、いいねをありがとうございます。

とても嬉しいです。

次回は五日に更新いたしますのでに、楽しんでいただければ嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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