14 邸内の探検と可愛い弟
夜不安な夢を見た次の日の朝。
スッキリとした目覚めとはほど遠いが、モニカ達を不安にさせないようにいつも通りの様子を心掛けた。
それに、今日はお兄様達に邸を案内して貰う日。
私はそれまでは楽しい事を考えるようにした。
午前中はお部屋で読書をして気を紛らわし、大人しく過ごした。
少し早めのお昼を部屋でいただき、のんびりしているとお兄様達が部屋まで向かえに来てくださった。
まずはお養父様達のお見送り。
お養父様は宮廷へ用事があり、お養母様は王宮にいるお母様とのお茶会に出掛けるのでその見送りだ。
ちなみに今いる部屋は転移陣が引いてあって、特定の人しか通れない仕組みらしい。
此処から王宮の転移陣に移動するようだ。
私もこの転移陣でこちらに来たのだと説明を受けた。
「さて、今から私達と邸の探検をしようか」
「楽しみです! よろしくお願いします」
お見送りした後は、マティアスお兄様とレオナルドお兄様に左右から手を引かれ、邸内ツアーが始まった。
玄関ホールから食堂、団欒の間や応接室、図書室やお養父様の執務室等、お兄様方のお部屋にも案内して貰い、「いつでも来ていいからね」とお許しを貰った。
お外にはとてもきれいなガーデンが広がり、温室もあった。
色とりどりのお花が咲いていたて、そこでお茶が出来るようになっていた。
というか、用意されていた。
「いっぱい歩いたけど大丈夫?」
「休憩しながらだったので、大丈夫ですよ。ご心配ありがとうございます」
「じゃあ、今から三人でお茶しよう」
三人でささやかなお茶会が始まった。
「そうだ、シアにお願いがあるんだけど」
「お願いですか? 私に出来ることなら」
お兄様からのお願い事なんて、私に出来ることなのかな?
「私達はシアを愛称で呼んでいるだろう? だから私達の事もマティとレオンと呼んでほしいんだ」
「そう呼ばせていただいてもよろしいのですか?」
「それも禁止!」
それって何?
何か分からず手を頬に当てこてんと首をかしげると⋯⋯。
「「妖精だ!」
――えっ? 妖精?
妖精がいるの? と思いきょろきょろしていると、また「可愛い!」とかお兄様達が呟いている。
呆れたモニカが「ご歓談中に失礼いたします」と口を挟んできた。
「恐れながら、お坊っちゃま方。それではアリシア様に通じませんよ」
「ごめん、つい可愛すぎて叫んじゃった」
「シア、驚かせてごめんね。禁止って言ったのは敬語の事。普通に話して?」
そうだった。
お養父様達にも砕けて話してほしいと言われてたんだった。
気を付けないと⋯⋯。
「ごめんなさい。気をつけます」
「少しずつでいいからね。シアともっと仲良くなりたいから」
「僕も! シアをいっぱい可愛がる!」
「ありがとうございます。マティお兄様、レオンお兄様」
暫くはここに住むのだからお兄様方とも仲良くなりたい。
色々と頑張らないと。
お兄様達の事を沢山教えてもらい、沢山お話しした後、お茶会は終了した。
そしてもう一人兄弟がいるので紹介したいから、と私よりも歳が下だからお姉様になるようで、ちょっとドキドキしながらお部屋まで案内してもらった。
ノックをすると中からは弟付きの侍女が部屋のドアを開けてくれた。
中にはまだ幼いお養父様と同じ色を持った子がいた。
「シア、この子はアレクシス。シアより三歳下の今は二歳だよ。アレク、彼女はアリシア。私達の妹でアレクの姉上だよ」
「はじめましてアリシアよ。よろしくね、アレク」
にっこり笑ってアレクに挨拶すると抱きつかれた。
――かっ、可愛い!
思わず私もぎゅうっと抱き締めていた。
「あねうえ、はじえまして」
とまだ舌足らずな感じで言われるとほんとヤバイです!
あっ、口調が乱れすぎました。
「可愛い!」
「いや、二人とも可愛いよ」
「兄上、これ二人揃うとヤバイね、色んな意味で」
私達二人を見ていたお兄様達は、お二人でぶつぶつ何か話をしていた。
アレクには姉として認識してもらえたようで良かった。
泣かれたらどうしようかと思ったら。
今日の一番の癒しはアレクだった。
弟って可愛い!
そんなこんなで、弟との対面も無事終わり、部屋へ戻った。
その日の夜中にまたふと目が覚めた。
目が覚めたけれど、直ぐには眠れそうになかったので、ベッドから出てテラスに続く扉の前に立つと、そこから見える夜空がとても綺麗だった。
満点の星空が広がっていてとても心が落ち着く。
だけど、昨夜の夢の不安があり、なんだか酷く寂しくもなった。
今日はお兄様達と一緒にお茶をして、弟となるアレクにも会って⋯⋯。
だけど、私は私なのか⋯⋯とても不安で、お父様達に会えない事に対し寂しさを覚えた。
とても矛盾しているように思うけれど、会えない寂しさは本当のようにも思う。
お養母様達が帰宅してから聞いた話では、お父様達に手紙を渡したとき、すごく喜んでいたとは話していたけれど⋯⋯。
それでも不安が付き纏う。
――ダメだね、我慢しなきゃ。
この先会えない、ということはないのだし、前向きに頑張ろう。
頑張って頑張って、会ったときにいっぱい驚かそう、それまでに私は私であるのか、そうでないのかも解決しなきゃ。
そう考えているとまたあの声が聞こえた。
――大丈夫だよ、会えるから。
「誰?」
――僕たちも会えるよ。そのうちにね。
「会える⋯⋯?」
――その時に解決するよ。楽しみにしていて。
「分かったわ、楽しみにしてる」
そう言葉を返すと、不思議と眠たくなってきたので、ベッドに入ると同時にすぅっと眠りについた。
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