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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
127/264

127 一週間ぶりの学園


 翌日の午前中はゆっくりと休み、昼食後にお養父様とお兄様達とお話をしていた。

 昨日話していた通り、ヴァレニウスへ送って行った者から無事に親元へ引き渡したと連絡が入った。

 ゼフィールからはまだ連絡が無いようだったが、お養父様はそんなに心配はしてなさそうだった。

 今日は夕刻前には学園に戻るので、お養父様もまた暫くのお別れだ。

 そう長い事領を空けておく訳にもいかない。

 そう準備することも無いのだけれど、寮へ戻る準備をし、お兄様達と共にホールを出て馬車まで歩く。



「シア、くれぐれも気をつけなさい。無理はしないようにな」

「はい、お養父様。行ってまいりますわ」

「マティ、レオン。シアを頼むよ」

「お任せください」

「この間のような失態は致しません」



 お兄様達の言葉に頷き、私達は馬車に乗り学園の寮へ向けて出発した。

 私にとっては一週間ぶりの学園である。

 休暇の時とは違うので、何となく緊張するのだけれど、寮の前までお兄様達が送ってくださるようで心強い。

 


「シア、一週間も休んだのだから暫く周りがうるさいだろうけど、気にしなくていいからね」

「そうだよ。何かあったら直ぐに僕達に教えてね」

「はい、ありがとうございます。お兄様方」



 私はお兄様達に寮まで送っていただいて、久しぶりに寮へと戻ってきた。

 モニカと共に女子寮の管理責任者であるマルガレータさんに挨拶をして部屋に戻ってきた。

 久しぶりの寮の部屋は何だか不思議な感じがする。

 モニカは荷物を整理するために動いているけれど、私は一応教科書にさっと目を通し、予習、復習をしておく。

 そんな時、私の部屋を誰かが訪ねてきた。

 来たのはティナお姉様の侍女で、今日の夕食を共にどうかというお誘いだったので、私は嬉しくて勿論了承の返事をした。

 そして約束の時間に食堂へ行くと既にティナお姉様、だけでなく、ルイスお姉様にハンナお姉様そしてディオお姉様がいらっしゃった。

 


「お待たせしてしまって申し訳ありません」

「私達も今来たところよ」

「それより、体調はもう平気なのかしら?」

「はい。もうすっかり元に戻りましたわ。気に掛けて頂きありがとうございます」

「話は後にして、先ずは夕食を決めて席に付きましょう」

「そうね」



 私達は各々夕食を注文し、席に着く。

 少し早い時間なので周囲に人は少なく、私達は夕食を頂きながらゆったりと話ができる。



「シアが体調を崩して休みだと聞いた時は驚いたわ」

「そうよね、シアって見た目と違って身体も鍛えているし丈夫だから、風邪とか引かないと思っていたのよ」



 私って⋯⋯見た目は弱々しく見えるのかしら?


 

「本当にもう平気なの?」

「はい。本当は三日ほどで治ってはいたのですが、念の為に休みなさいと言われてしまって⋯⋯それで一週間休む事になったのです」

「何にしても大した事がなくてよかったわ」

「生徒会の皆も心配していたのよ。親睦会の時は元気にしていたから」

(わたくし)自身もあまり体調を壊したことがありませんでしたから、自分でも驚いています」



 嘘をつくのは心苦しいのだけれど仕方のない事。

 これからもきっと嘘を付く事が多くなる。

 嘘と言っても自身を守る為や公にできない事など、誰かを陥れる嘘ではないので罪悪感と言うのはないのだけれど、やっぱり嘘を付くのは極力避けたいところ。



「シアが元気に戻ってきたので快気祝いしなくちゃね!」

「では今週末にお茶会なんてどうかしら?」

「いいですわね! では今回は(わたくし)の邸でどうかしら?」



 ティナお姉様の言葉ででディオお姉様がヴィクセル邸での開催を提案してきた。

 お茶会は楽しいから私も賛成ではあるのだけれど⋯⋯。



「快気祝いでお茶会ですか?」

「そうよ! シアが元気になったので皆で楽しいお茶会をしましょう」

「あの、一度お兄様達にお伺いしてもよろしいでしょうか?」

「⋯⋯そうね。貴女の過保護なお兄様達の許可なく連れ出したら後が怖いわね」



 怖いとは、皆にはどのように思われているのか⋯⋯。

 これは皆に言えることではないけれど、私としてはこの間の事があるので一応確認が必要だ。

 そう頻繁に同じことが起こるとは思わないけれど、まだ未成年でありお兄様達に負担をあまりかけたくないと言う思いが強い。

 明日学園で直接お兄様にお伺いしてみましょう。

 それから和やかに夕食を頂き、お姉様方には無理せずに早く休むようにと言われ部屋へと戻った。


 翌日、一週間振りに教室へ行くと、レグリスや中期になってようやく少しずつ話すようになったシャロン様、それにエリーカさん達に体調を心配されつつ皆さんと挨拶を交わす。

 一週間振りに日常が戻って来たと感じる事が出来た。

 授業は勿論進んではいたけれど、分からないところもなく授業を受けることができた。

 そして授業が終わり一週間振りの生徒会。 

 レグリスと共に向かうと、そには会長を始め数人集まっていてまだ全員揃ってはいなかった。



「アリシア嬢、体調を崩したと聞いていたけどもう大丈夫かい?」

「はい。ご心配をおかけして申し訳ありません。もう大丈夫です」

「それなら良かった。これで殿下の機嫌も直るかな」



 ヴィンスお兄様の?

 私が無事なのはお父様から聞いているはずだから機嫌がずっと悪い、と言う事はないと思うのだけれど⋯⋯。

 私以外が原因では?



「殿下の機嫌が悪かったのですか?」

「そうだね、まぁアリシア嬢と会えば直ると思うよ」

「何故(わたくし)と会うと直るのでしょう? 体調を崩していただけですし、他に何か原因があるのではないでしょうか」 

「まぁその可能性もあるけど、アリシア嬢と会えば少しは緩和されると思うんだよね」



 何故かとても自信ありげに話す会長。

 お兄様が機嫌が悪い理由、会えば分かるのかな。

 まぁ会長はお兄様の側近として近くにいてるので、何かあるのかもしれない。

 そう話しているうちに、そのお兄様とレオンお兄様がやってきた。



「噂をすれば、だね」

「会長、何の噂ですか?」

「殿下の機嫌が悪いという話です」

「別に機嫌は悪くない⋯⋯」



 疑わしい目で会長はお兄様は見るが、お兄様は私に気づき速足で私の元まで来た。



「シア! 身体は大丈夫か?」

「もう平気ですわ。ご心配をおかけして申し訳ございません。私の事はレオンお兄様にお聞きではありませんでした?」

「聞いた。だけどやはり会うまでは心配でたまらなかった」

「殿下、(わたくし)のはただの“風邪”ですわ」

「ただの“風邪”でもだ」



 お兄様ったら⋯⋯。

 皆さんに疑われたらどうなさるおつもりかしら。

 


「後、ここではそろそろお従兄様(おにいさま)と呼んで欲しいな」

「ですが⋯⋯」

「シア」



 お兄様は全く引くような気配もなく、私と睨み合い状態になってしまった。

 だけど、防げるところは防ぎたいもの。

 どうやってお兄様を説得しようかしら⋯⋯。



「殿下もアリシア嬢も頑固だね」

「「頑固ではない(ありませんわ)!」」

「殿下もシアも頑固だよ。シア、ここではヴィンス様を従兄(あに)と呼んでも大丈夫だよ」

「レオンお兄様、ですが⋯⋯」

「ここにはシアを面倒事に巻き込むような者はいないからね。もしいたらお兄様が処理してあげるよ」



 処理って⋯⋯何だかお養父様の腹黒い所が段々と似てきている気がするわ。

 少し前までレオンお兄様はどちらかというと可愛らしい感じだったのに⋯⋯ちょっと残念。



「⋯⋯此処にいる間だけです」

「レオンのいう事なら直ぐに聞くんだな」



 また機嫌が悪くなった!

 ヴィンスお兄様の後ろからレオンお兄様はどうにかしろと言うかの如く私に目で訴えかけてきた。



お従兄様(おにいさま)、あまりレオンお兄様を苛めないでくださいね」

「分かったよ。シアがそういうなら⋯⋯それよりも、本当に何ともないね?」

「はい。大丈夫です」

「それならよかった」



 やっとお兄様が落ち着いてくださった。

 表情もここに来た時よりも幾分か和らいだようだ。

 ふと会長を見ると、ほらね、と言いたげな目を私に向けていた。

 他の人達も生暖かい目でこっちを見ているし。

 これ、大丈夫なの?

 そう思っていると、続々と生徒会の面々が集まってきた。

 皆さん私に大丈夫かと声を心配の声を頂き、もう大丈夫です、と答えていく。

 主催者であったラグナル様にも謝罪の言葉を伝えると、私の体調が大丈夫なら安心したと言う言葉を頂き、表情もほっとしたという感じだった。

 体調を崩したわけではないけれど、こうして皆さんに心から心配を頂き、なんだから嬉しい。


 全員が集まると、早速生徒会が始まる。

 お兄様から教えていただいた通り、今日は広報から種目別に参加する生徒達の名前が公開され、早速盛り上がりを見せていた。

 今日決めるのは討論会の題目と言語だ。

 一、二年生はヴァレニウス語なのは決まっていて、それより上の学年をどうするかだ。

 此処には全ての学年の主席と次席がいるので、授業の様子等を聞きながら、顧問のハセリウス先生からの全体的の習得率を考慮しながら決めていく。

 ちなみに上級生、七、八年は外国語で一番難しいとされているゼフィール語に決定で、三、四年もヴァレニウス語、五、六年もゼフィール語となった。

 言語が決まったので、次は議題を決めるのだが、それなりに時間が過ぎていたため、これは次の生徒会まで其々案を出すようラグナル様は指示を出し、今日は終了となった。


 私はティナお姉様達と寮へ向かうのだけれど、生徒会室を出る前に、マティお兄様達にお茶会の許可を貰うのに、引き留めた。



「マティお兄様、お願いがあるのですが」

「どうしたの?」

「今週末、ディオお姉様のお邸でお茶会をするので、(わたくし)も参加してもいいでしょうか?」

「そうだね⋯⋯ちなみに参加者は?」

「それは⋯⋯」



 誰が参加するのか気になるようだった。

 お兄様に参加者を伝えると、条件付きで許可してくれた。

 その条件はここで話をするようなことでもないので、また今度だと言われた。

 とにかく条件付きでもあっさり許してくれたのでよかった。

 お姉様方も一緒に喜んでくださった。

 お兄様に許可を頂いたので、私達は寮へと帰る。

 部屋に戻り部屋着に着替え、モニカに入れてもらったお茶を飲んで一息ついていると、セリニから声がかかった。



『姫様少しよろしいでしょうか』

『どうしたの?』

『陛下の影から手紙を預かりました』

『お父様から? 何かしら⋯⋯』

 

 

 セリニから手紙を預かると早速読んでみる。

 内容は、子供達の事だった。

 ゼフィール国の子も無事に帰り、雪で足止めされていたアルバネーゼでは雪が少し落ち着き、少し遠回りになるが道が確保されたので、ようやく旅を再開出来たとの事。

 リアン共和国の方はまだ雨が続いていて、こちらはまだ時間がかかりそうとの事。

 天災はさすがにどうにもできないものね。

 時間がかかっても無事に帰り着く方が安心だから無理をして足を進めなくていいと思う。



『まだお父様の影はいる?』

『いえ、既に戻っております』

『そう。お父様にお手紙を書くから届けてくれるかしら?』

『畏まりました』



 私は直ぐにお父様へお手紙を書き、セリニに預ける。

 お手紙ついでにお兄様にも手紙を書こうとふと思った。

 どうして機嫌が悪いのか、何だか気になる。

 私が原因のような気もする⋯⋯というかきっとそう。

 心配を掛けた上にお兄様にお手紙を書いていなかったし。

 今はお兄様からの返事を待とう、というか、それしかできない。

 けど気になる!!



「シア様、先ほどから上の空でどうされました?」

「モニカ⋯⋯お兄様の機嫌が悪いの。それが気になって」

「まぁ、それでお手紙を書いていらしたのですね」

「そうなの」

「今回の事でかなりご心配されて、中々お会いできないのでやきもきされたのでは?」

「原因ってきっとそれよね⋯⋯」



 私が悩んでいると、モニカはくすくすと笑っていた。

 なぜ笑ったのか「あの方も妹至上主義(シスコン)ですけど、シア様も兄至上主義(ブラコン)ですよね」と……

 そこまでじゃないわ!

 お兄様程じゃないもの。

 たまにモニカは私を揶揄うのよ。



『姫様、ヴィンセント殿下よりお手紙を預かってまいりました』

『もう⁉』



 流石に返事が早すぎない?

 ついさっきお願いしたばかりでもう返事が来るなんて⋯⋯。

 不思議に思いつつも私はそそくさと手紙を開けて読むと⋯⋯やっぱり私が原因みたいだけど、私だけが原因ではないみたい。

 無事に戻ってきてかなり安堵したが、私に会いに行くのは待てと、お父様が仰ったようで、それに対してかなり不満があったようだ。

 理由を聞いて納得はするものの、それでも会えないことの不満が募りに募って会長が機嫌が悪いと評していたようだった。

 その理由というのは、私が無事に戻ってきたが、あまり騒ぎ立てて私に負担を掛けないようにと、騒ぎ立てる、というのは語弊があるかもしれないけれど、私の事を考えてのようだった。

 お兄様は学園があるし、私と会ったら暫く離れなかったかもしれない。

 手紙を書こうかとも思ったらしいのだけれど、書いたらきっと早く無事な姿を見たくて会いたくなるから自制したのだと。

 だけど、今日は私に会って無事な姿を見てかなり安堵したけど、自分を差し置いてレオンお兄様と親しげにしている姿は堪えると書いていた。

 これは、お兄様と会う機会を作らないとお兄様が危険な気がする!

 だけど、今週の闇の曜日はディオお姉様の所でお茶会だし⋯⋯。

 急だけど、翌日の午前中に離宮で会う?

 予定を詰め過ぎかしら。

 無理をすると怒られるし⋯⋯やっぱり来週ね。

 私はお兄様に来週離宮で会いましょうと認める。

 お祖父様にも許可を頂かないとね。

 お祖父様には流石に明日の日中にお手紙を届けてもらうように預けておく。

 お兄様にはお手紙を渡してきてもらい、明日のお祖父様からの返事待ち、という事で今日は休むことにした。

 ベッドに入り、考え事をしていると、ふと手紙繫がりでヴァン様からの手紙を確認していないことに気が付いたけれど、今見たら寝れなくなるから我慢した。

 翌日にはお祖父様からの返事で許可を貰い、お兄様にも返事を出して、来週はお兄様と会うことになった。


 それから数日間、思ったよりも穏やかな日常を過ごし、どの授業も特に遅れたと思えるような難しい事もなく、あっという間に光曜日になったいた。

 放課後はいつもの生徒会で集まり、地の曜日に案を出すようにとの事だったので、其々考えてきた案を出しあう。

 出した案の中で更に吟味して決定した。


 一、二学年は、学園で学ぶ事は必要か否か

 三、四学年は、校則、または寮規則は必要か不必要か

 五、六学年は、学園の理念、階級関係ない平等についてどう考えるか

 七、八学年は、働くにあたりより良い環境とはどうあるべきか


 一、二年と三、四年は数人のグループを二つに分かれて行うため、人数を設定し、自分達で仲間を作る。

 後上級学年は個人での参加となるので、自身でこの案について交流会までに考える。

 上級生はこれだけではない。

 下級生の討論会の手伝いをすることも交流会ならではだ。

 特に一年生は不慣れな所もあるだろうから上級生は率先して手伝いに回るのだそうだ。

 中々上級生と交流する機会など無いので、これをきっかけにさらに学園に馴染むようお手伝いも兼ねている。

 討論会の件はこれで来週地の曜日に公開され、同じ週の光曜日までに一から四年生は誰と組むのかを提出しなければならない。

 提出といえば、魔道具に関しては本日までに仲間と一緒に作成するのか、一人なのか、また何を作成するのかを提出する事が決められているので、これに関しては先生方が管理する。


 早々に決めなければならないのはこれくらいで、後は日程は決まっているので、どの種目をどの日にするか、トーナメント表の作成や細々と決めなければならない事は山ほどある。

 勿論今迄の交流会を参考に決めていくのでそう難しい事はないみたいで、細かく決めていくのはまた来週となり、今日の生徒会はここで締めくくりとなった。

 生徒会が終わり、ディオお姉様達とは明日の時間を確認し、私はお兄様達と共にシベリウスの邸へと帰ってきた。

 

ご覧頂きありがとうございます。

ブクマや評価を頂き、とても嬉しいです。

次回は2月1日に更新致しますので、

よろしくお願い致します。

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[気になる点]  この世界は高等学園や大学みたいな学校制度がある感じ?。
[気になる点]  どっかの小説の主人公でアウローラ様だったような。それに関連しているのか?。転生先が気弱すぎる伯爵夫人だった~前世最強魔女は快適生活を送りたい~より。 [一言]  流れは悪くないが、よ…
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