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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
123/273

123 心配性なお養父様

 

 翌日、私はシベリウス邸に戻ってきていた。

 朝食をお養父様と二人で頂く。

 そう言えば、お養父様と二人だけの食事は初めてかも。

 私がじっとお養父様を見ていたら不思議に思ったのかこちらを向いて微笑んだ。



「私の顔に何か付いているかい?」

「いえ、お養父様と二人でのお食事って初めてだと思いまして」

「そう言えば、二人で取ることはなかったね」

「不思議な感じがします」

「そうだね。いつもは皆で囲んでいたからね。たまには良いと思うが、シアはどうかな?」

「嬉しいですわ。ですけどあちらの方々にバレたら大変な気がします」

「ふむ、では私達二人だけの秘密だね」



 お養父様と楽しく話しながら朝食を済ませ、一息ついてから私はお養父様と共に離れに赴くと、そこには王都のシベリウス邸の私兵が守っていた。

 中に入ると、侍女達が数人で子供達の朝食を片付けている最中だった。

 私達の姿を認めると、直ぐに頭を下げ、また片付けに戻る。

 子供達はというと、居間で子供達同士で固まって少し打ち解けたように話をしていた。

 侍女たちの話では、ご飯もきちんと食べているようだった。


 ここからは私が先に居間へと入り、ドアは閉めずに開けておく。

 お養父様はその様子を部屋の外から見守る形だ。



「皆さんおはよう。よく眠れたかしら?」

「「「⋯⋯!?」」」



 私が声を掛けると少し驚いたように皆で固まってしまった。


 

「急に声を掛けてごめんなさい。自己紹介をしておくわね。(わたくし)はアリシアよ。良かったら皆さんのお話に混ぜてもらってもいいかしら?」

「「「⋯⋯」」」



 ⋯⋯無反応。

 怖がられてるわけではないみたいだけど、まだ驚いているのかな。



「あの!」



 子供達の中の一人が意を決してか声を掛けてきたのでその子に視線を向ける。


 

「えと、あそこにいた子、だよね?」

「そうよ。(わたくし)も攫われてあそこにいたわ」

「あの、私達どうなるの?」

「皆に話を聞いてから其々のご家族の元にお送りしますわ」

「彼奴等も魔力渡したら帰すって言ってたけど、悪いやつらだったじゃないか! お前が悪いやつの仲間かもしれない!」



 確かに、闇の者達はそう言っていたわね。

 よく知らない私から言われたらそう思われても仕方ないわ。



「ごめんね。直ぐに帰してあげたいのだけれど、また同じ事が繰り返されない為には予防策を講じたいの。皆がどうやって攫われたのか、それを聞いて今後に活かしたいのよ。だから話を聞かせてほしいの」

「あんたが彼奴等の仲間じゃないって証明できるのか?」

「証明、そうね⋯⋯」



 子供達が安心できる証明ね。

 この子達が納得する証明って⋯⋯。



「僕が証明になる!」



 考えていると、一人の少年が声を上げた。

 よく見たら私と共に連れて行かれた時の子だった。



「あの時の。怪我はなかったかしら?」

「ないよ! あっ、ないです。守ってくれてありがとうございました」

「普通に話して構わないわ」

「このお姉さんが僕とこっちの子を守ってくれたんだ! 相手は大人なのに、女の子なのに戦ってくれたよ! 僕は怖くて、何も出来なくて⋯⋯」

 


 そうしょんぼりと肩を落とすが、私よりも年下なのだからそう落ち込むことはないと思う。


 

(わたくし)は大したこと出来ていないわ。(わたくし)もあの場にいた人達に助けられたのだから。だから気にする必要はないわ。実を言うとね、(わたくし)も怖かったもの」

「ほんとに?」

「本当よ。そちらの貴方は大丈夫だった?」

「⋯⋯」



 あれ、言葉が通じない⋯⋯。

 そういえばヴァレニウス国とゼフィール国の子がいてるとお養父様が仰っていたわね。



『貴方はヴァレニウスの子かしら?』

『あ! 言葉、話せるの?』

『話せるわ。怪我はなかった?』

『大丈夫! あの時は守ってくれてありがとう』

『良かったわ』



 私達が違う言葉で話したので、他の子達はぽかんとこちらを見ていた。



「ねぇ、その子話せたの?」

「この子はヴァレニウスの子みたいだから言葉が分からなかったのよ」

「そっか。ねぇ、お姉さんはなんであんなに強いの?」

「小さい頃から魔法の扱いや剣技を習っているからよ」

「わぁ! かっこいい! けど、僕も魔法は習ってるけどあんな風に出来ない」

「ありがとう。けど焦ることは無いわよ」

「あっ、お姉さんって、あのおじさんの子?」

「あのおじさん?」

「僕達をここに連れて来た人」

「そうよ。(わたくし)のお養父様よ」

「悪い人じゃないんだね」

「違うわ。皆を皆のお父様やお母様の元へ帰してくれる人よ」



 私達の会話を聞いていた他の子達もようやくほっとしたのか少しずつ表情が変化していった。

 あと一人、難しい顔をしている子がいた。

 多分、見た目からしてゼフィール国の子かな?

 私はその子の近くまで行き、ゼフィール語で話しかけてみる。



『貴女はゼフィール国の?』

『言葉、話せるの?』

『ゼフィール国の言葉なら話せるわ。いっぱい練習したからね』

『私、国に帰れる?』

『勿論よ。だけど少しだけ話を聞かせてほしいの。(わたくし)も一緒に聞くから、(わたくし)のお養父様と話をしてほしいの』

『うん、それで帰れるならお話する』

『ありがとう』



 皆それぞれ少し心を開いてくれたみたい。

 午前中はそうやって皆と話をしながらわいわいと楽しく過ごし、昼食を一緒にいただく。

 昼食後、私はお養父様の元へ行き状況を説明すると、私が同席して一人ずつ話を聞く事にし、それを皆に伝えると、少し緊張した面持ちだったが頷いてくれた。

 食後の休息後に一人ずつ別室にてお養父様と共に話を聞いていく。

 数人の話を聞いて思ったのは、皆同じような攫われ方だという事。

 よく手の触れる位置に何気なく触れ、気付いたら彼処にいたという事だ。

 そして魔力が多いので、平民でも魔力の扱い方を習っている事。

 将来を有望視されていること。

 中には貴族の養子だという子もいた。

 その子はアルバネーゼの出身だという。

 一年前程にその力を見出されて引き取られ、養子となり魔力操作だけでなくあらゆる教育も受けている事から所作もそこそこ板に付いていた。

 グランフェルトの子達は王都出身の子はいず、地方の子たちで各領地内で行われている学舎で習っているそうだ。

 魔力が使えるといい働き口が見つかるので、親達は率先して学舎に子供を通わすらしい。

 後は全員の住んでいる国から地域まで詳細が分かったので、家まで送る算段がつきやすくなる。


 全員の話を聞き終わると、丁度お茶の時間帯だったので、皆でお茶とお菓子を堪能し、お養父様は子供達に直ぐには難しいが、必ず全員を親元へ帰すと約束し、窮屈かもしれないが邸から出ないよう約束させ、私と共にその足で離宮へと転移した。


 転移すると直ぐにお祖父様の執務室へ案内され、時間が勿体無いといった感じにすぐに本題に入り、子供達に聞いた事を纏めた報告書を渡し説明をする。

 全員がただ魔力が多い、というだけで埋もれさせる事なく、教育を受ける立場にあったので、闇の者にも目を付けられる事となったのだろう。


 話し終えると、子供達の対応をどうするか、勿論親元へは帰すが、今回の誘拐事件に関し、そして私がその場で対応した事を見ているので親元へ帰ったらきっとあれこれ話すと思う。

 闇の者には知られているけど、私の事は極力広めたくないと言うのが本音。

 なので帰すにしてもただの口止めだけでは心許ないので今は一番そこが悩みどころなのだ。



「やはりステラに関する事だけ記憶を消すか?」

「ですがそれだと私が動いた事への説明が出来ませんよ」

「そうだな⋯⋯」



 一番何を知られたくないか⋯⋯。

 あの時はお養父様が助けに来てくれたので父娘だという事は子供達も理解している。

 何よりあそこを治めている領主には娘が攫われた為だという説明をしているので、下手に嘘や子供達の記憶を消すのはあまりいい方法とはいえない。 

 他国の子供達にそんな事をすれば国同士の問題になる。

 影達については、辺境伯夫人が王姉なので姪を可愛くて護衛として付けている、と思ってくれれば⋯⋯。

 まぁかなり甘い考えなのだけれどね。

 これは闇の者がどう考えてくれるか⋯⋯。

 だけど、怪しまれるのは時間の問題だと思う。

 そう思ったら、私が守った一番近くにいたはあの二人が私の事を話したとしても同じ事。 

 それだったら記憶を消すとか物騒な事をせずに、子供達に上手く話して内緒話として口止めすればいいのでは⋯⋯。

 そもそも闇の者を逃した時点で、私の事は能力とかも全てでは無いが知られてしまっているので子供達に何かする必要ってあるのかな?



「殿下は先程から何をお考えになられているのですか?」



 呼ばれて振り向けば、お祖父様とアル伯父様は私を見ていた。



「対応について、少し⋯⋯」

「何か良い策でもございましたか?」

「良いか悪いかの二択でしたら悪いですわね」

「何だそれは⋯⋯」



 お祖父様は呆れ返ってらっしゃるけれど、今考えていたことはそういい事でもないから、悪いになると思う。

 けれど、考えていた事を言いなさいと言われたのでお二人に説明をした。



「ステラの言う事は最もだな」

「やはりそのまま、子供達に秘密事として口止めに留めておくのが良いですね」

「ではそれでいこう」



 ――えっ、いいのそれで?



「何を驚いている? ステラが考えた事だろう?」

「いえ、まさかその案でいくとは思わず⋯⋯」

「闇の者を逃してしまったからな。ステラの考え通り子供達への対応はそれで十分だ」

「⋯⋯お祖父様、もしかしてですが、(わたくし)の考えを聞く為に態と記憶を消すと言いましたの?」

「バレたか」



 バレたかって⋯⋯。

 回りくどいことせずに直接仰ればいいのに。



「ステラ、アルノルド、明日の昼過ぎにアンセが離宮(ここ)に来れる目処がついたので、昼食を共にしよう」

「はい、お祖父様」

「畏まりました」



 詳細はお父様が来られてから決まる。

 今日はこれで終わりかと思ったのだけれど、この後お祖父様が選定した私の影候補と会うこととなった。

 昨日の今日で選ぶ事になるとは思わなかったので少し驚いたけれど、今は影が一人少ない状態なので最優先で選定が行われたのかもしれない。

 伯父様は先に邸に戻り、執務室には私とお祖父様だけとなった。

 お祖父様に五枚の書類を渡された。

 そこには其々の能力の詳細が記載されていた。



「今回の候補は五人だ」



 お祖父様のその言葉の後に颯爽と五人が姿を現した。

 年齢は成人である十五歳から上は三十位かしら。

 前回私が顔を見せて欲しいとお願いしたのが考慮されて、今日は顔を最初から見れたので、選びやすい。

 一人一人の目をじっと見る。



『皆の意見も聞きたいのだけれど、(わたくし)から向かって一番左端の方と、右から二番目の方ならどう思う?』

『その二人なら、左端の者がよろしいかと』

『アステールに同じく』

『私も異存ありません』

『では彼にするわ』



 私は影達の意見に確認をし、左端の方に決めた。



「お祖父様、決めましたわ」

「ほぉ、誰にする?」

「あちらの左端の方にお願いしますわ」

「良いだろう」

「他の方々はごめんなさい。ありがとう」



 私は他の方達にお礼を言い、その後お祖父様が手を振ったので私が選んだ方を除き、姿が消えた。



「何故此奴を選んだんだ?」

「前回の時と同じで直感って言うのもありますが、それに加えて能力を考慮したのですわ。後は、他の影達との相性あるでしょうから皆の意見を聞きましたの」

「なるほどな。ステラは独特な選び方をするな」

「そうでしょうか」

「まぁいい。では契約を結んだら邸に戻りなさい」

「はい、お祖父様。ありがとうございます」



 私はお祖父様に挨拶をして離宮にある自室に向かう。

 部屋に入り、早速新しく入った影と契約を結ぶ。

 彼には“ノヴィルニオ”の名前を与え契約完了した。

 その後シベリウス邸に向かうのに部屋を出ると、クレーメンスがいた。



「殿下をシベリウス邸までお送り致します」

「邸に戻るだけなのだけれど」

「何があるか分かりませんので、念の為ですよ」

「分かりました。お願いしますね」



 転移で移動すると言えど、きちんと邸に、アル伯父様の元へ戻ったという安心が必要なのね。

 だけどそれほど心配をかけてしまったという事だから、暫くは甘んじておかないと。

 といってもほんの一瞬でつくので、邸に戻り伯父様の元へ戻るとクレーメンスは離宮へ戻って行った。

 今はお養父様の執務室にいて、ソファに座っている。

 もうすぐ夕食の時間なので、ここで明日からの事で話合いをした。

 私は子供達を安心させるために朝食後は離れに行き子供達と過ごす。

 だけどまだどのように其々の国に帰すか、まだ決まっていないので不安にならないようにとの配慮だ。

 お養父様は私の護衛で一緒に行動するので、子供達の所へ行きがてら子供達に慣れてもらうという。

 確かに大人に慣れないと、この先が少し大変だわ。

 送り届けるのは大人だものね。

 流石に私はついていけないし。

 話していると夕飯の時間になったので一旦話を中断して食堂へ向かう。

 そして食事が終わり、食後のお茶を頂きながら話の続きをする。

 続きと言ってもまだ詳細が決まってはいないので、詳しくは決められない。

 なので、久々にお養父様と雑談に花を咲かせた。

 私はシベリウス領の事を聞いたり、逆に学園の事を聞かれたり、久し振りに楽しい一時を過ごした。



「あぁ、もうこんな時間だ。シアはそろそろ休みなさい」

「はい、お養父様」



 お養父様に促されて、部屋まで送ってくれる。



「おやすみ、シア」

「おやすみなさい。お養父様」


 私はお養父様が部屋を開けてくれたのでそのまま中に入る。

 だけど⋯⋯。



「お養父様」

「ん? どうしたんだ?」

「お礼を⋯⋯」

「お礼?」

「まだきちんと言えてませんでしたから。(わたくし)を助けに来ていただき、ありがとうございました」



 ちゃんと、助けて貰った事にお礼を言えてなかった。

 本当はあの時お礼を言おうと思ったのだけれど、お養父様に先に謝罪されて言える隙が無かった。

 私の言葉を聞いたお養父様はふっと笑った。



「娘を助けるのは当たり前の事だよ。もう少し早く助けに行きたかったが⋯⋯シア、無理はしていないか?」

「無理、ですか?」

「魔法で人を傷つけた事はあっても、剣で人を切ったのは初めてだっただろう? 無理はしていないか?」



 とても心配そうにそう聞かれた。

 私も、後からしんどくなるかもとは思ったけれど、思ったよりは何ともない。

 私も守られているだけではあの場はそう生易しいものではなかったから。

 ノヴルーノに傷を負わせてしまったが、私が動かなかったらもっと酷いことになっていたはず。

 そう思うから、何も思わかなった。

 全く、という事は勿論無い。

 あの時、魔法を乗せた剣で切った時は凄く気持ち悪かった。

 だけど、それ以上に皆を守りたかったから耐えられた。



「無理はしていませんわ。大丈夫です」

「シアがそう言うなら⋯⋯、だけど気分が悪くなったりしんどくなったらすぐに言いなさい。いいね?」

「はい」



 私はそうお養父様と約束をした。



ご覧いただき、ありがとうございます。

誤字報告やブクマや評価を頂き、ありがとうございます。

次回は2022年1月4日に更新いたします。

来年もよろしくお願いいたします。

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