12 待ちに待った診察の日
今日は 待ちに待った診察の日!
朝からそわそわとブルーノ医師が来るのを待っていた。
朝食もきちんと食べて、出きる範囲で身支度を整え待つ。
今日は診察日と言う事もあり、私に付いているのはモニカだけ。
マリーとミアは本来の事情を知らないからね。
暫く待っていると、ノックがされたので「どうぞ」と答えると、お養父様達がブルーノ医師を連れて入ってきた。
「おはよう、シア。気分はどうだ?」
「おはようございます、お養父様、お養母様、ブルーノ医師。体調は問題ありません」
元気に答えると、ブルーノ医師に笑われた。
「おはようございます、殿下。一週間前と違って元気いっぱいのようで何よりじゃ」
「はい!」
「では、殿下の為にもまずは診させていただこうかの⋯⋯」
早速私の熱や脈を測り、私の中の魔力の流れや毒の有無も調べていく。
「ふむ、熱、脈も正常。魔力の流れも乱れなく、問題の毒の方も心配いらんじゃろう」
それを聞いた、部屋にいた面々は安堵の息をついた。
私もそれを聞いて安心した。
「ほんとうに良かったわ。陛下も安心されるでしょう」
「あぁ、それはもう執務が滞る位心配していたからな」
初耳なんですけど⋯⋯。
執務が滞るって、それ大丈夫なの?
心配している、とお養父様達から聞いたけれど、そこまでなんて⋯⋯。
ただ儀礼的なものかと思っていたから。
少し不安気な表情をしていたのか、私を見たお養父様は話しかけてきた。
「シア、陛下と王妃殿下、ヴィンセント殿下は執務が手につかない程心配していたよ。表向きはおくびにも出されないけど、見る者が見たら分かる」
「そうよ、アルの言うとおり。三人ともすごく心配していて、お忍びで此処に来ようとするくらい。だけどそんな事すれば周囲にバレかねないから止めなさいと叱ったのよ。決して貴方の心配をしていない、と言うことはないから安心なさい」
私はそれを聞いて泣いてしまった。
この一週間、お父様達が大丈夫なのか、狙われたのはほんとうに私だけだったのか心配はしても、心配をされているなんて考えてなかった。
考えていなかったと言うのは少し違うかもしれない。
王族だから命を狙われるなんて有ること。
私は王子ではないから優先順位は低いし、政治的な利用も出来るだろうけど、いなくてもいい存在。
だから心配されてるなんて考えることがなかったのだ。
ここで生活することに抵抗もなく、伯父様達をお養父様と呼ぶことも躊躇いはなかった。
家族を信じているけど、家族愛なんてそんなに無いと思っていたから⋯⋯。
無性にお父様達に会いたくなった。
会って元気な姿を見せてあげたい。
抱き締めてほしい。
だけどそれは出来ない。
出来ないからお手紙くらいは書いてもいいかな。
私から伝えたい。
元気なことを⋯⋯。
いつの間にか、お養母様に抱き締められていて頭を撫でられていた。
私は落ち着きを取り戻して、お養母様達に聞いた。
「あの、私お父様達にお手紙を書いてもいいでしょうか?」
「もちろんよ! 私が責任をもって本人に届けます」
「ありがとうございます。あの⋯⋯、泣いてしまってごめんなさい」
「謝ることなんていらないわ。気にしなくてもいいのよ」
お養母様は優しくそう言ってくれた。
手紙の件も快諾してくれたので嬉しかった。
私はブルーノ医師に尋ねた。
「ブルーノ医師、私はもう動いても大丈夫ですか?」
「あぁ、勿論じゃよ。よう我慢なされた。じゃが、暫くベッドの上じゃったから身体が鈍っておろうから邸の中で慣らしてから外へ出るように。勿論無理は禁物じゃ。少しでも疲れたら休むこと。食事も徐々に戻していくと良かろう。すぐに皆と同じものは身体がびっくりするからの」
やっと許可を得たので私は内心喜びに溢れた。
やっと解禁!
あっ、肝心なこと聞くの忘れた!
「お風呂も入って大丈夫ですか?」
「勿論じゃよ」
やったわ!
気持ちとしてはいますぐ入りたい!
「シア、落ち着きなさいな」
お養母様に苦笑された。
「すみません。だけど嬉しくて!」
「元気じゃな! 良いことです。ではわしはそろそろ戻るとします」
「ブルーノ医師ありがとうございました」
「礼は不要です。元気になったからと、暫く無理は禁物ですぞ。お元気で過ごされますよう」
そう言って王宮に戻っていった。
「シア、今日の予定だけれど⋯⋯今からお風呂です!」
「いいのですか!?」
「もちろん、お風呂の後は身仕度して、昼食を一緒にしましょう」
私は嬉しくてついはしゃいでしまった。
ほんとうに嬉しい。
「昼食が終われば皆でお話しましょう。その後お手紙を書きなさい」
「わかりました!」
一日の予定が決まったので⋯⋯。
ようやく待ちに待ったお風呂です!!
ご覧いただきましてありがとうございます。
今回少し短めですみません。
また次話もよろしくお願い致します。