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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
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113 お祖母様の後押し

 

 翌日の魔法の授業は先日話していた通り、実技に入った。

 全員基本的な事は出来るので、今日は魔力操の復習と応用が訓練が主だ。

 自分の意志でどれ位操れるかが課題になる。

 クラスの魔力操作に合格をもらった者達は復習を兼ねて魔力操作に不安な人達に教える。

 人に教える事を一緒に学ぶのだ。

 私も同じで実際魔力操作をしながら何処に意識し、どう想造するかを教えるが、言葉にしてそれを伝えるという事は中々難しい事。

 人によって感じ方は違うので私がどう感じたかは人には違う感じ方になることもある。

 まずは自分が感じることを伝え、その後に彼らが魔力を扱ったとき、どのように想造し、魔力を感じているかを聞いてから考えて、どうすればいいかを伝えてみる。

 そうすると分かりやすくなったのか、格段に自由意志で操作ができるようになったのを見ると、こちらも嬉しくなる。

 実技はやはり楽しい。

 皆も生き生きと学んでいるし、外での授業も大事よね。


 魔法の実技が終わったら、マナーの授業に算術等の座学に戻る。

 休憩時間は交流会の話で皆盛り上がっていた。

 昨日生徒会で説明があった通り、今朝交流会の種目が公開されていたからだ。

 魔法の実技でも先生が魔法技の種目があるので出たいのなら真面目に取り組むようにとの説明があった。

 勿論各授業も種目に関係するものもあるので、同じく授業にも力が入る。

 文官を目指す者、騎士を目指す物を、魔法師を目指す者、それぞれ出場する種目が分かれるが、私は、どれに出場しようか迷っていた。

 どの種目に出場するかを決めるのはまだまだ日があるので、悩める時間はある。

 レグリスは既に決めているようで、剣技に出るようだ。

 彼が論文とか、そちらに出る事はあまり考えられないから納得だけど。

 しばらくはこの話題で盛り上がるでしょうね。

 けど、まずは種目が何になるか、なのだけれど⋯⋯。

 私としては社交会別対抗試合があればヴィンスお兄様達とご一緒できるので、そこに入れようと思う。


 週末の生徒会では、これから交流会に向けての準備で風紀部、広報部と連携して進めていくので、皆で交流も兼ねてのお茶会を次期生徒会長であるラグナル様のお屋敷で、来週末に行うことが伝えられた。

 何故学園で行わないかというと、貴族のお邸に招かれた時のマナーを直に学ぶ機会となるので、宮廷で働くことを目指す平民にとってはいい機会となる為に、それを提供しているようで、いつも次期会長のお邸で開催されるとの事だった。

 後は来週からの予定の説明と確認を行い、今日は早めにお開きとなった。


 私は、マティお兄様達と共に邸に戻り、明日は朝から離宮に行くことを伝えた。

 お兄様達は少し寂しそうにしていたけれど、フレッドの状況を伝えると遠い目をしていた。

 お兄様達ともゆっくりと過ごせる時間も少なくなってきているので、時間があるときは一緒に過ごせたらと思う。

 だけど今はとにかくフレッドの状態をゼロに戻さなければと思う。

 本当に乗り込んてきそうで⋯⋯といってもまだ幼いので無理だけど。


 そして翌日の朝から離宮に赴き、支度を整えてもらい、先ずはお祖父様に挨拶をしに行くと既にフレッドがいたので驚いた。



「姉上! ようやく会えました!」



 そういうと一目散に私のもとに駆け寄り抱きついてきた。

 なかなか勢いが強くてよろめいてしまったけれど、後にいたオスカルに抱きとめられた。



「フレッド、久し振りですね。ですけど、勢いが強すぎますよ。オスカル、ありがとう」

「ごめんなさい。姉上。だけどずっとずっとお会いしたくて今日が待ち遠しかったのです」



 そういうと、しゅんと俯き目に涙を溜めていた。

 あぁ、だめ! 弟が可愛すぎるわ!!

 思わずフレッドをぎゅっと抱きしめて頭を撫でたらフレッドも抱き返してきて「姉上大好きです」だって!

 あぁ、本当に可愛いわ!

 もっとお姉様らしい所を見せなければと思っていたけれど、フレッドの可愛さには負けるわ。

 ついつい甘やかしたくなる。

 それを見ていた他の人達は、フレッドが故意にそう見せているのをありありと感じていて姉を独り占めしたいという悪魔的な行動に引いていたのを私は知る由もなく、フレッドのふわふわした髪の毛を堪能していた。



「はぁ⋯⋯二人共そろそろ落ち着け」

「あっ、お祖父様。ご挨拶が遅くなり申し訳ありません」

「いや⋯⋯、フレッドは相変わらず姉が好き過ぎるな」

「兄上からいつもいつも毎日のように姉上の素晴らしさと可愛らしさを聞かされているのですよ! 私だって会いたいのに! だからたまには姉上を独り占めしても良いではありませんか。皆ずるいです! 一番ずるいのはマティとレオンの二人です! 姉上と一緒に暮らしていて羨ましすぎます!」

「フレッド、落ち着いてね。今は寮で過ごしているので、マティお兄様達とはそこまで一緒に過ごしていないのよ?」

「それでもです! 私が一番姉上と過ごしている時間が短いのですよ! 姉上は、姉上は私の事を何とも思っていないのですか⋯⋯?」



 そうすごく悲しそうに言われてしまっては折れてしまうでしょう。

 そして私がフレッドを可愛がるのも許してほしい。



「まさか、そんな事無いわ。(わたくし)もフレッドと気兼ねなく会いたいわ。それにこうやって抱きしめたいもの」

「姉上大好きです!」

(わたくし)もよ」



 私達が姉弟仲良くしている中、周囲の大人達は微笑ましい中にも、お祖父様達はかなり呆れていた。



「⋯⋯お前達、そろそろ戻ってこい」



 私達を見兼ねたお祖父様は疲れたようにそう声を掛けてきた。



「フレッドよ、ステラとて好きで王宮を離れて暮らしている訳ではないのだぞ」

「分かっています。ですがお祖父様、私も姉上と会うのは我慢しているのですよ。それに、彼奴等好き勝手に姉上の悪口を言っているのが悔しくて! 姉上がとても美人で優しくてとても凄いのだと早く自慢したいです!」



 やはり私の事をあれこれと噂してる人達はいるのね。

 だけど、フレッド、そのような嘘を言ってはだめよ。

 そしてそこ、私情でしょう?

 別に自慢はしなくていいと思うわ。

 そうちょっと残念な子を見るような目で見ていると、更に残念な子を見るような目でお祖父様達からの視線を浴びた⋯⋯。

 何故⁉



「ステラ、フレッドの美的感覚は正常だ。残念なのはステラのほうだぞ」

「酷いですわ。(わたくし)の何処が残念なのでしょう?」

「自身の容姿がいい事に全く気付いていない」

「それは、モニカたちのお陰で可愛らしくして頂いていますが⋯⋯」

「そうじゃない。勿論侍女達の支度で更に美しくなってはいるが、元が良いから余計に磨きがかかっているのだ。元の姿で学園に通うようになったら実感するだろう」



 お父様もお母様もとても美形美人だからお二人の子である私も悪くはないと思うけど、そこまでなのかな⋯⋯。

 私なんかよりお兄様の方が断然美人だと思うし、フレッドはお母様に似て美人よりはまだ今は可愛らしさが勝っている。

 その二人と比べたら、私って普通じゃない?

 悩んでいると、お祖父様に「悩まなくても学園に元の姿で通えばわかる」と言われてしまった。

 まぁ、自分の容姿はどうでもいいわ。

 今はフレッドといっぱいお話することが重要よ!



「フレッドは今はどんなお勉強をしているのかしら?」

「今は歴史と語学を中心に勉強をしております。そしてお祖父様に魔力操作を教わっています。姉上は? 学園はいかがですか?」

「そうね、学園のお勉強はまだそこまで難しくないわ。だけど交流会は楽しみにしているのよ」

「そうか、もうそんな時期か」

「はい。週明けにどの種目を行うか決定します」

「ステラはどの種目に出るつもりだ?」

「悩んでいるのですけれど、魔法技が気になりますのでそれにしようかなとは思っております」

「私も観に行きたです!」

「最終日の決勝なら観に行けるぞ」

「本当ですか! 姉上、絶対観に行きますから頑張ってくださいね!」

「観に来てくれるのはとても嬉しいけれど、学園ではこの姿ではないのよ」

「ですが、シベリウスには伯母上がいらっしゃるので、従姉弟同士になるので、姉上って呼んでも問題ありませんよね?」

「それは、そうなのだけれど⋯⋯そうしたら、マティお兄様達の事も兄上って呼ぶのかしら?」



 私がスレッドに聞くと、すーんって表情が無になった。

 そんなに嫌なの?


 

「⋯⋯呼びません」

「どうしてかしら?」

「呼びたくないからです」

「お兄様達が嫌い?」

「嫌いとかではなく⋯⋯」



 そう言うと俯いてしまった。

 無理にお兄様と呼ばなくていいと思うけれど、マティお兄様達の何が引っかかるのかしら。

 従兄弟同士仲良くしてほしいとは思うけど、無理強いもできないし⋯⋯。



「姉上はマティ達が好きなのですか?」

「お兄様達のことは好きよ。とてもお優しくて、時には叱られることもあるけれど、色んな事を教えてくださるわ。それに(わたくし)がシベリウスで過ごす事となって、伯父様達が(わたくし)を大事にしてくださって一緒にいる時間を奪ってしまったというのに、嫌な顔せず妹としてとても可愛がってくださるのよ」

「⋯⋯姉上が大事にされていて良かったと思いますけど、それでも、姉上がシベリウスに取られたようで寂しいのです」

「フレッド⋯⋯寂しい思いをさせてごめんなさい。だけど(わたくし)も皆に会えなくて寂しいのよ」

「あっ⋯⋯ごめんなさい! 一番我慢してるのは姉上なのに」

「いいの。理由なくそうしているわけではないし、お父様達のお考えでもあるのだから。でも、それも後もう少しよ。 だから、フレッドも、もう暫くお手紙で我慢してね」

「分かりました⋯⋯」



 フレッドは渋々ながらも頷いてくれた。

 しょんぼりするフレッドも可愛いけれど、やっぱり笑っていて欲しい。

 そのふわふわの髪の毛を撫でていると、フレッドが甘えるように抱きついてきたので、私もそっと抱きしめた。



「ほんとにお前達は⋯⋯それでフレッドは今日は何時まで此処にいるつもりだ?」

「今日は夕方まで姉上と一緒にいます。なので、お昼からお茶をしませんか?」

「勿論よ」

「では、お茶の時間まで折角離宮に来たのだから、フレッドの魔力操作を見てやろう」

「えー⁉ 今日は一日姉上の傍にいたいです!」

「駄目だ。ステラは今からアクシィと共にやる事がある」



 そんな予定聞いてませんけど⁉

 私が驚いていると、お祖母様がいらっしゃった。



「お祖母様、ごきげんよう」

「ごきげんよう。さぁ、ステラは(わたくし)についていらっしゃい」

「はい」



 私はお祖母様に言われ、そのまま後をついていく。

 何処に向かうかと思えば、お祖母様の書斎だった。

 何だか嫌な予感がするわ⋯⋯。

 お祖母様に促されてソファへ座るとお茶が用意され、部屋には私達二人だけとなった。



「ステラ、あれからお手紙は届いたかしら?」

「お手紙⋯⋯ですか?」



 何のことか直ぐに分からず、首を傾げたけれど、お手紙って⋯⋯あっ! 殿下からのお手紙のこと?

 ⋯⋯全く確認していない。

 だって、私が見る必要ないと思うし、何よりお祖母様が怒ってらっしゃったからもう届かないと思ったからだ。



「確認していないのね?」

「⋯⋯はい」

「困った子ね。今出してくれるかしら」

「分かりましたわ」



 お祖母様に言われて、私は空間収納から箱を取り出し机に置いた。

 開けるのが億劫なのだけれど、お祖母様からの無言の圧力があるので、私は箱を開けた⋯⋯。



「お手紙が届いていますね」

「そう、ですね⋯⋯」



 お祖母様は、箱から何通かのお手紙を取り出した。

 そんなに届いていたの?

 その中の一通はお祖母様宛のようで、ご自分の元に、後の何通かは私宛のようでこちらに差し出された。



(わたくし)宛はこれだけよ。後はあなた宛だからお読みなさい」

「今ここででしょうか?」

「そうよ。(わたくし)も読みますので、貴女も読みなさい」



 そう言われてしまい、読まざるを得なくなった。

 はっきり言って気が重い。

 だけど、私がお手紙を開けるのをじっと見つめているお祖母様の手前、開けなければならない。

 私は意を決して一番下のお手紙から開けた⋯⋯。

 それを確認したお祖母様は、ご自分宛ての手紙を読み始めた。


 お手紙の内容は、一通目はただの謝罪文。

 お祖母様からのお手紙で、私がとても傷付いていると、そしてこれ以上傷付けると、今後一切私とは会わせないと言われた件が書かれており、それは耐えられないと、私を傷つけた事への謝罪が一通目。

 二通目は殿下が何故あの様な手紙を認めたのかの理由が記載されていた。

 曰く、番である私に会えない事への焦燥感がこれ程までに自身を苛むとは思っておらず、気持ちを抑える為にと、同じ様な文面で只々体調を気遣うだけの、ごくごく普通の一般的なお手紙を送ってしまったと⋯⋯。

 年長者であるにも関わらず、自身の気持ちに振り回されて私を傷付け、申し訳ないと、情けないという事がつらつらと書かれていた。

 三通目は、番を見つけたら他の者達のことは目に入らないこと、感情が移ることもない事が事細かく書いてあった。

 四通目になると、殿下が私の事をどのように想っているのかが、それはもうこう、むず痒くなるような、心がうるさく高鳴るような、もうどう言い表していいのか分からない位の嬉しい、恥ずかしくなるような殿下の想いが率直に書かれていた。

 五通目は、ただ、会いたい、とだけ書かれていた。

 そして、六通目⋯⋯。

 少しでいいので、会いたいと、精霊界で会わないかというお誘いだった。

 勿論二人きりというわけではなく、アウローラ様達も交えて、だから安心して欲しいと。

 日程は私に合わせると記載されていた。

 ただ、この件は内密にしてほしいと。

 流石に私のお父様やお祖父様にバレるとただでは済まないからね。

 殿下に会えると思うと心が踊るけれど、会いたいような会いたくないような⋯⋯。

 嬉しい気持ちと、会ってもどうしていいのか分からない気持ち、その二つの思いで固まってしまった。



「ステラ、どうしたのかしら? 貴女の表情を見る限りでは悪い事は書いていないのでしょう?」

「そう⋯⋯ですね、悪いことは書いておりませんでした」

「何を悩んでいるのかしら?」

「何も悩んてはおりませんわ」

「大丈夫よ、アンセやイル達には伝えませんから話してみなさい」



 お祖母様には話しても大丈夫かしら⋯⋯。

 殿下のお手紙にはそこは書いていらっしゃらない。



「お祖母様、お父様やお祖父様達には必ず内密にしてくださいね」

「勿論よ」

「殿下から、その⋯⋯精霊界で会ってほしいと、二人きりではなく、精霊女王様達も一緒だから安心して欲しいと、書かれておりました」

「まぁ! やっと素直にそう言ったのね! で、貴女は会いにいくの?」

「いえ、その⋯⋯」

「あら? 会いたくないの?」

「会いたくないわけではないのです。ただ⋯⋯会ってもどうしていいのか分かりませんもの」

「ステラ。会いたいの会いたくないの? どちらかしら?」



 会いたいか会いたくないか⋯⋯私は⋯⋯。



「⋯⋯会いたい、です」

「なら会ってきなさい。(わたくし)が許します」

「ですが、お祖母様⋯⋯」

「ステラ、会わずに後悔するよりも会って後悔なさい。この事に限らず、やらずに後悔するよりも、やって後悔するほうがいいわ。貴女が少しでも会いたいと思う気持ちがあるのなら、会いなさい。文字ばかりのやり取りでは誤解を生むこともあるの。会って言葉を交わしなさい。そしてあちらが貴女の日程に合わせるというなら、今夜行ってきなさい。今からそのようにあちらに返事をしなさい」

「今夜ですか!? 流石にそれは⋯⋯」

「だめよ、すぐに行動に移さなければ、貴女の事だから、日が過ぎればきっと会わないわ」



 よく分かっていらっしゃる⋯⋯。



「さぁ! 今すぐに返事を送りなさい!」



 そう言うと、直ぐに趣味の良い便箋と筆が用意された。

 逃げたいのに逃げられない⋯⋯

 どうしよう⋯⋯何てお返事すればいいの。

 お祖母様からの視線が突き刺さる。

 無言の圧が怖い!

 一度深呼吸をしてから筆を進める。

 今回認めるのは、お返事だけ。

 ただ、私もお会いしたいと、そして急だけれど、今夜で如何でしょうと⋯⋯。

 それだけをあちらに送る。

 はぁ、緊張するわ。



「今夜が楽しみね」



 そうお祖母様は楽しそうにしていらっしゃったが、私は只々どうしようという不安と色んな気持ちが入り混じっている事で、夜が来てほしくないと、そう思っていた。



ご覧頂き、ありがとうございます。

ブクマや評価をありがとうございます。

とても嬉しいです。

次回は土曜日に更新しますので、よろしくお願い致します。

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