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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
112/273

112 甘えたい弟

 

 体調も元に戻りつつあり、明日には王都のシベリウス邸に戻る事となった。

 そして本日、私はお祖母様に捕まっていた。

 何故捕まったかというと、お祖母様のお怒りの矛先であるヴァレニウスの殿下の件だ。

 秋晴れの庭園でお祖母様と二人っきり。

 若干ピリッとした空気の中、殿下はお祖母様宛にお手紙を送ってきていたみたい。

 最近確認することも無かったから、お祖母様に言われる迄確認をしなかったのだ。

 それどころではなかったしね。

 そして今はそのお手紙を読んでいる最中で、私はお茶を飲みながら待っている状態。 

 とても気まずい⋯⋯。

 お祖母様のあのお手紙に負けず劣らずのお手紙を認めた殿下もすごいわ。



「まぁまぁ及第点ね。直ぐにお返事を書くのでもう少し待っていなさい」

「分かりましたわ」



 何が及第点なのだろう?

 気になるけど聞ける雰囲気ではない。

 お祖母様がお手紙を認め終わるのを待ち、直ぐに殿下の元へ送ると、それを見たお祖母様は満足したのか、空気を和らげた。



「明日にはもうあちらに戻るのね」

「はい。また学園生活が始まりますわ」

「何かあったら遠慮せずにすぐに言うのよ」

「分かりましたわ。ありがとうございます」

「次の長期休暇は冬ね。次の休暇前には貴女にはドレスの流行りを作ってもらおうと思っているのよ。また前回の面々でお茶会を開くから、その時にお披露目ね」

「はい、それまでにはいくつかデザインしておきますわ」

「楽しみね」



 和やかにお茶を楽しみつつ、次回のお茶会の予定が組み込まれた。

 今日はゆっくりと過ごして体調を整えておく。

 夜も最近寝るのはとても早い。

 学園でも図書室禁止かな⋯⋯。

 解いてくれたら嬉しいのに⋯⋯。

 そう思いながら眠りについた。


 翌日のお昼過ぎ、お祖父様達と挨拶をして、魔道具をつけたら久し振りにアリシアとしての姿に戻る。

 何だか変な感じたわ。



「ステラ、中期も頑張りなさい。夜遅くまで本を読まなければ、学園の図書室に行っても良い」

「良いのですか!?」

「夜はきちんと寝るのが前提だぞ」

「はい! ありがとうございます、お祖父様」



 やった!

 図書室解禁!

 許可が出たので嬉しいわ!



「ステラ、体調には気をつけなさい。辛かったら授業を休んでもいいのよ」

「分かりましたわ。様子を見ながら判断しますね」



 私はそうお祖母様に伝え、転移陣に入る。



「では、行って参ります」

「あぁ、気を付けてな」

「またいつでもいらっしゃい」



 お二人に挨拶をして転移すると、シベリウスの邸に着いていた。

 部屋を出ると、お兄様達が待っていた。



「ただいま帰りました。マティお兄様、レオンお兄様」

「お帰り、シア。会いたかったよ」

「シア! お帰り。体調は大丈夫?」

「もう大丈夫ですわ」



 私は久し振りに会うお兄様達と抱擁を交わして、居間に向かう。



「離宮ではどう過ごしてたの?」

「あちらでは半分勉強で半分は療養してました。お兄様方はどのように過ごされていたのですか?」

「私達は父上に扱かれていたよ⋯⋯」

「いつも以上にきつかったんだ。僕も兄上もボロボロだったよ」



 二人共遠い目してる!

 一体何が行われていたのかしら⋯⋯。



「そういえば、お兄様達はずっと訓練されていたのですか? 休暇中はずっと離宮にいましたので、休暇中の事を聞かれたとき、話が合わなかったらいけないので、お聞きしたいのですが⋯⋯」

「そうだね。合わせておいたほうがいいな」



 そこから、領でどう過ごしたか、お父様たちは何をしていたか等を事細かに教えてもらい、ある程度話を合わせられるように話し合った。

 そして翌日の昼過ぎには寮に行き、中期の授業に向けて準備をする。

 その日の夜も早くに休み、次の日からの授業に備える。

 朝は早速図書室に行きましょう!

 楽しみながら目を閉じるそのまま眠りに落ちる。


 翌日、朝早くに目が覚めて、用意を整える。

 少し早かったから、庭園を散歩していると、クラスメイトに出会った。



「おはようございます。シャーロット様」

「おはようございます」

「シャーロット様もお散歩ですか?」

「えぇ」



 相変わらずで会話が続かない⋯⋯。

 けど、嫌がられている気配はないからいいのかな?



「アリシア様、ひとつお願いが」

「はい、何でしょうか?」

(わたくし)の事はシャロンとお呼びください」

「では、(わたくし)の事もシアでお願いしますわ」

「分かりました」



 何だろう、思い掛けず愛称で呼び合うようになっちゃった!

 何だか嬉しいわ。



「シア様、そろそろ朝食のお時間ですよ」

「分かったわ。シャロン様もご一緒にいかがですか?」

「いえ、もう少しここにいます」

「分かりましたわ。また教室でお会いしましょう」



 シャロン様に挨拶をして、私は朝食を頂くため、食堂へと向かった。

 朝食後、私は少し早く図書室へと向かった。

 久しぶりの図書室の雰囲気と香りに心が踊るけれど、一冊だけにしておかなきゃ。

 どれを借りようか悩んでいると、声を掛けられた。



「おはよう、アリシア嬢。いつもこんなに早く図書室に来てるのかい?」

「おはようございます。会長。大体この時間帯に来ています」

「今日は何を借りるのかな?」

「何にしようか悩んでいるのですが、何かお勧めはありますか?」

「そうだね⋯⋯これなんてどうだい?」



 そう言ってお勧めしてきたのは、冒険者達の逸話を集めた本だった。

 そういえば、こういった本は読んだことないわね。



「ありがとうございます。今日はこれを借りていきますね」

「役に立ってよかったよ。ではまた放課後にね」

「はい、失礼します」



 会長に挨拶をし、貸出の手続きをして教室へと向かった。

 既に何人か登校しており、皆に挨拶をして席につく。

 久しぶりに図書室へ行ったので、本を早く読みたかったけれど、今開いたら絶対読み耽るからダメよね⋯⋯。



「シア、おはよう!」

「レグリス、おはよう。領はどうだったかしら?」

「いつも通り、いつもの日常に戻ってたよ。そっちは?」

「こちらも同じよ」



 私達はお互いの領の事を話した。

 私の場合は昨日お兄様達から伺った事を話すしかなかったのだけれど、聞いておいてよかったわ。

 暫くすると、クランツ先生がいらっしゃったので話をやめて席に着く。



「皆揃ってるな。今日から中期の始まりだが、この中期から本格的に実技が入るので一層気を引き締めて授業に望むように。では魔法学の授業を始めるぞ」



 そう言って、早々に授業に入った。

 今日は前期のおさらいみたいで、ずっと先生からの質問が飛ぶ。

 誰が当てられるか予想つかないので、気は抜けず、授業を受ける。

 そして授業終わりには、次回から実技に入るので今日の事をもう一度しっかりと頭に叩き込んでおくよう言われ、授業が終わった。


 マナーの授業では中期からダンスレッスンも追加された。

 一度先生方がお手本を見せて流れを見た後は、女子と男子に別れ其々のパートの練習をする。

 女子は男子に比べて人数が少ないのでエリーカさんには私達は教える。

 ちなみに、私はお兄様達と入れ替わって男性パートも練習したので、それなりに踊れたりするので、シャロン様に女性パートを踊ってもらい、エリーカさんに皆で教えていった。

 授業の終わり頃になると、皆疲れを見せていた。

 ダンスってそれなりに体力いるからね。


 今日の座学は殆どが前期の復習で終わり、放課後、私はレグリスと共に生徒会室に来ていた。



「皆揃ったね。では中期の生徒会は二週間前に話した通り、ラグナルとルイス嬢主体で進めるからね。ではラグナル、後よろしくね」

「はい。会長からもお話がありましたが、中期からは私達で進めていくので、よろしくお願いします」



 中期始まりの初日なのにやっぱりハセリウス先生はいらっしゃらなかった。

 いつも通りである。

 あの先生、何してるんだろう?

 先生がいなくても生徒会は進められていく。

 今日の話は中期の予定で、休み前に話していた交流会の話だ。

 今から少しずつ準備を始めていくらしい。

 なので、今年の種目をどうするかを話し合う。

 その前に、私達一年生の為にここからです数年、何が行われていたかを記載した書類を見せてくれた。


 そこには必ず行う種目と、その年毎に変わっている種目があった。

 必ず行われている種目は、剣技、魔法技のニ種目は決まっているみたいで、その年により変動がある種目は、乗馬、魔道具、論文、外国語での討論会、情報収集能力、社交会別対抗試合、ダンスの七つでその中から五つ厳選して行うという。

 他に何かやりたい事があれば案を出しても良いらしい、が、今年はこの中から選ぶことになる。

 種目は全学年共通なので、一番投票数の多い種目五つで決定をする。

 剣技と魔法技はトーナメント制で、出場する選手が一番多いみたい。

 乗馬以外は数人で組を作り、ある程度主題が各種目で発表されるので、共同作業で提出し、その内容出来栄えで生徒、及び先生方で点数を出すという、先生方だけでなく、生徒たちから見てその作品がどう感じるのかを採点するのもこの交流会ならではなのだそうだ。

 ダンスはもちろん二人一組なので、これは出来栄えとパートナーと息が合っているか、曲との調和が取れているかが審査基準でこれも生徒、先生方での審査となる。

 ざっと説明されて、十一月の交流会に向けて今から準備を進めていく、という事だった。

 私達は交流会を開催するに当たり、主体で動くけれど、勿論交流会への参加は義務なので、どれに出場するか決めなければならない。

 だがまずは、五つの種目を決めなければないけないので、これは学園の掲示板に明日から公開し、今週いっぱいどの種目をやりたいを考え、来週頭に投票するという仕組み、朝皆が登校する時間帯に魔道具を設置して少しの魔力を注ぐという仕組み、魔力を注ぐと色が変わっていき、輝きの多い五つの種目を決めるというわけだ。

 悪用されないよう、その日の朝は先生がお二人その場にいるようだった。



「ここまでざっと説明した中で質問はありますか?」

「質問をよろしいでしょうか?」

「どうぞ」

「朝に投票するという事ですか、投票できるのは一人一種目でしょうか?」

「すまない、伝えていなかったな。投票できるのは二種目可能だ。投票後は他の魔道具に触れても投票されないようになっているから規定以上投票されることは無い」

「ありがとうございます」

「他には? ⋯⋯また何かあればいつでも聞いてほしい」

「私達が交流会を主体で進めていきますが、広報部が掲示板に貼り出し、投票に関しては風紀部が行います。交流会に関してはこれからも私達生徒会と連携して進めていきますので、皆様と仲良くしてくださいね」



 ラグナル様とルイスお姉様が説明を終えた後、これから生徒会で決めなければならない事や私達がやるべき事などを簡単に教えて頂き、今日は終了となった。

 これから少しずつ準備で忙しくなると皆様に教えて頂きながら寮に帰ってきた。

 部屋に戻り、ソファに座りモニカの淹れてくれたお茶を飲んで一息つく。

 まだ本調子ではなく、少し疲れた。

 今日は無理をしないで早く寝たほうがいいかも。

 そう思っていると、ヴィンスお兄様の影、お馴染みのノアが私にお手紙を持ってきた。



「姫様、失礼いたします。主よりお手紙を預かってまいりました」

「いつもありがとう」

「あともうもう一通ございます」

「何かしら?」

「こちらはアルフレッド殿下のお手紙です」

「⋯⋯これは、手紙なの? 手紙、という厚さではありませんよね?」

「私からは何とも⋯⋯ですが、アルフレッド殿下へは必ずお返事をされるのがよろしいかと」

「分かったわ。届けてくれてありがとう」

「では、御前失礼いたします」



 フレッドのは⋯⋯後にしよう。

 取り敢えず、ヴィンスお兄様のお手紙が先ね。

 開けて読んでみると、私の体調を心配しての手紙だった。

 そういえば、お兄様心配そうなお顔をされていたわね。

 私そんなにしんどそうだったかしら。

 外ではそんな素振り出していないはずなのだけれど。

 けど、心配してくださっているので、お礼のお手紙と体調は大丈夫だとお手紙に認めた。

 さて、次はフレッドね。

 何を書いてきたのかしら⋯⋯。



 なるほど⋯⋯。

 そういえば、お父様が仰っていたわね、フレッドが姉不足で酷い状況だと。

 その酷い状況の一端がこのお手紙ね。

 内容は⋯⋯どうして兄上ばかりと会って僕と会ってくれないのか、兄上ばかりずるい、僕も姉上に会いたい、会ってくれないと寮に乗り込む、姉上と一緒にお茶会をしたい、姉上にぎゅってしてほしい、姉上と一緒に寝たいとこんな事を延々と書かれたお手紙⋯⋯重症というか、大丈夫かしら。

 そして突っ込みどころ満載ね。

 けど私も会いたいし、弟を愛でたいのは同じ気持ちよ!

 だけど、流石に一人で寝なさいと言わなきゃね。

 そして寮に乗り込むのは絶対にダメ。

 私も久しぶりに会いたいので近々会えるように予定を組まなきゃ。

 良く考えたら去年の私のお誕生日から会ってないものね。

 もう半年以上になるわ⋯⋯。

 離宮から戻ってきたばかりだけれど、週末に一度ゆっくり会えるように、私はお祖父様とフレッドにお手紙を認めて、アステール達にお願いをして持って行ってもらった。

 ここ数ヶ月の間に同じやり取りを何度しているのかな、と思わなくもないけれど、これからもまだきっとあるわね。

 フレッドに返事を出したことだし、そろそろ寝ようかな。

 あまり遅くまで起きているとまた叱られる。

 読書も今夜は止めて明日にしよう。

 まだ体調が万全でないからか、ベッドに入ると直ぐに夢の中へと旅立った。



ご覧頂きありがとうございます。

ブクマに評価もとても嬉しいです。

ありがとうございます。

次回は火曜日に更新しますので、よろしくお願い致します。


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― 新着の感想 ―
[気になる点] 朝の登校時の投票について。 魔道具は種目ごとに設置するのでしょうか。 [一言] 第2王子のこれからが楽しみです☆
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