表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
111/273

111 成長

 

 目が覚めると当たりは暗かった。

 今何時だろう⋯⋯。

 時間を確かめる為に起きたいけれど、起きるのが億劫で⋯⋯。

 身体がずんと重くて⋯⋯。



『誰か、いる?』

『お目覚めですか?』

『目は覚めたけど、まだ、起きないわ。けど、今は何時?』

『未だ深夜を過ぎた頃です』

『私、随分長く眠っていたのね』

『姫様には休息が必要ですので、まだお休みください』

『そうね⋯⋯、もうちょっと、寝るわ』

『おやすみなさいませ』



 挨拶を返すことなく、私はまた眠りについた。


 そして、夢を見ていた⋯⋯。

 どんな夢か、夢の中で兎に角身体が重くて、身体というよりお腹がずーんとして、それが段々と痛くなってきて⋯⋯はっと目が覚めた。

 目が覚めたら、現実でもお腹が凄く痛かった⋯⋯って痛すぎる!

 何これ⋯⋯この痛み、は⋯⋯。

 そう思った瞬間下腹部に違和感が⋯⋯。

 これは⋯⋯!



『セリニ! 来て!』

「お側に⋯⋯っ!? いかがされましたか!?」



 私の切羽詰まった声に驚いたのかセリニも慌てた様子だ。

 だけど私はそれどころじゃない。


 

「お腹がとても痛いの⋯⋯」

「失礼いたします」



 そう言いそっと布団を捲り、何が起こったか理解してくれた。



「ノヴルーノ、直ぐに侍女達をここへ! 姫様、抱き上げますね」



 セリニはそう言うと私を抱き上げてお風呂場に連れて行ってくれた。

 直ぐにモニカ達も来てくれて、直ぐに私の事情を察してくれた。

 お腹が痛くて動けない私を湯で清めてくれて、直ぐにまたベッドへ運ばれる。

 ベッドは既にきれいに整えられていて、私は一度座ってモニカ達が用意してくれた薬湯を頂く。

 薬湯は、とても苦かったけれど、この腹痛が治まるなら飲むわ。

 頑張って飲み終わって、またベッドに入りそのまま眠りについた。

 最初に起きた時はそれどころじゃなかったけれど、日は大分高かった。

 けれど、薬湯を飲んだらまた眠くなってきてそのまま寝てしまった。



 次に目が覚めたときは、ベッドサイドにお祖母様がいらっしゃった。



「おはよう、ステラ。身体はどう?」

「おはようございます。薬湯を頂きましたので、今はそれほど辛くはありませんわ」

「よかった。お腹は空いてない?」

「あっ、お腹、空きました」

「昨日のお昼から食べてないものね。用意させるわ」



 そう言うと、モニカ達に指示を出し、こちらに向き直った。



「おめでとう、ステラ」

「え?」



 何がおめでとうなのか分からずに首を傾げる。


 

「ふふっ、何を呆けているの?」

「何がおめでたいのですか?」

「大人の階段を確実に登っているでしょう。恋を知って、身体も大人に近づいたでしょう」

「そ、そうですね。ありがとうございます」



 その言葉に気恥ずかしさを覚える。


 

「さぁ、食事が届く前にこれを飲んでおきなさい」



 そう言って渡されたのはあの苦い薬湯だった。

 だけど、お腹痛いのは嫌だから頑張って飲んだわ。



「貴女は症状が重そうだから、シベリウスに返さず、此処から王都のシベリウスに送る事にしたわ。オリーにも既に伝えたから気にする必要ないわ。だから、ぎりぎりまで此処で養生しなさい」

「はい。ありがとうございます。⋯⋯あの、お父様からの執務は?」

「あれに関しては、期日を伸ばさせたから安心しなさいな」

「ありがとうございます。お祖母様」



 そう話していたら、食事の用意が出来たようで、ベッドまで持ってきてくれた。

 消化のいい、温まるスープ。

 優しい味にほっこりしつつ、頂く。



「足りるかしら?」

「もう少し頂いても?」

「勿論よ」



 私が思ったより沢山食事が出来るのが嬉しいのか、お祖母様は喜んだ。

 流石に二杯頂いたからお腹いっぱいだわ。



「気分はどう?」

「今はそれほど悪くはありませんわ」

「そう、ならあの箱を出してくれるかしら?」

「っ! はい!」



 私は素直に箱を取り出し、お祖母様に差し出す。

 箱を開け、何やらとても分厚い手紙? と言えるか言えないか、をあちらに送るように指示されたので、素直に従った。

 まだ確実に怒っていらっしゃる!



「さぁ、また寝なさい。顔色もまだ悪いわ」

「そうします」

「おやすみなさい、ステラ。いい夢を」

「おやすみなさい、お祖母様」



 私はまたぐっすりと夢を見ずに寝た。

 次に目を覚ますと、少し薄暗くなってきていた。

 夕刻、かしら⋯⋯。

 よく寝たので先程目覚めたときよりもスッキリしていた。

 鈴を鳴らすと、直ぐにモニカが来てくれた。



「ステラ様、お加減はいかがですか?」

「薬湯を飲んでいるからお腹は痛くないわ」

「それはようございました。⋯⋯ステラ様、改めておめでとうございます」

「ありがとう、モニカ」



 何だか祝われるのが恥ずかしい⋯⋯。

 当たり前の事なのだけれど、それでも気恥ずかしいのよ。



「ステラ様のお加減がよろしければ、イェルハルド様方がご一緒に夕食をとの事ですが、いかがされますか?」

「え? お祖父様から二日間は部屋にいるように言われてなかったかしら?」

「流石にそれはもう解かれていますよ。アクセリナ様が怒ってらっしゃいましたから」

「そうなの?」



 会うのが気まずいけれど、会わないわけには行かないよね。



「分かったわ、一緒に頂くとお伝えして」

「畏まりました。ステラ様のご準備もすぐに致しましょう」



 そう言うと、お祖父様達に伝言を頼み、私は直ぐに支度を整えられる。

 簡単に髪を結い、締め付けないふわっとしたワンピースドレスに着替え、食堂に向かうのだけれど⋯⋯。

 ふらっと途中、目眩を起こしてしまい、食堂前まで運ばれてしまった。

 部屋に入ると、お祖母様とお祖父様の他にお父様とお母様もいらっしゃった。

 それに何故か夕食が何時もよりも豪華⋯⋯?

 あれ? 何かあったっけ?



「お待たせして申し訳ありません」

「いや、加減はどうだ? しんどくないか?」

「ここに来る途中、少し目眩を起こしましたが、大丈夫ですわ。ご心配をおかけして、申し訳ありません」

「とにかく座りなさい」

「はい」



 いつもと違い、椅子にはクッションが置かれていて、体に負担がかからずに楽だ。



「ステラ、おめでとう。昨日は怒鳴ってすまなかった」

「ありがとうございます。⋯⋯いえ、(わたくし)が悪いですから、お祖父様が謝る必要はありませんわ。(わたくし)こそ申し訳ありませんでした」



 そう、あれは自分自身をきちんと管理できてなかった私が悪いので、お祖父様のせいじゃない。



「はい、その話はここまでよ。今夜はステラのお祝いなのだから」

「ステラ、おめでとう、身体は大丈夫か?」

「お父様、ありがとうございます。大丈夫ですわ」

「おめでとう、貴女は少し症状が重いと聞いたわ。無理はだめよ」

「ありがとうございます。お母様、気をつけますわ」



 皆からお祝いをされて、恥ずかしさとけど嬉しくもあり照れてしまった。



「今日はステラの好きなものを用意させた。昨日からきちんと食べてないだろう? 良く、食べなさい」

「はい!」



 お祖父様の言葉で食事が始まる。

 お父様達と一緒にご飯をいただくのは一年ぶりかな。

 とても嬉しい。

 色んな話をしながら夕食を頂いた後、部屋を移動し、ソファへ座ろうとしたとき、お祖父様に呼ばれたので、近くへ寄ると抱き寄せられ、お膝の上に横抱きにされた。

 流石にもう恥ずかしいです!

 けれど、お祖父様が私に怒鳴ったことを後悔しているのか、少し落ち込んだ瞳を向け何かを言いかけたので、私はお祖父様に抱き着いた。



「ステラ?」

「謝るのはなしですよ、お祖父様」

「だがな、あの時は思わず威圧までしてしまったし、怖かったろう?」



 確かに怖かった。

 体が強張り初めて受けた叱責に落ち込んだけど⋯⋯。


 

「大好きなお祖父様を怖いなんて思いませんわ」

「ステラには敵わないな⋯⋯」 

「今度は此方にいらっしゃい」

「はい、お祖母様」



 お祖父様のお膝から降りる前、ぼそっと「アクシィは私より怒らせると怖いぞ」と仰ったけど、体験済みですよ⋯⋯。



「隣に座りなさい」

「はい」



 私は素直に隣りに座ったら、お祖母様に頭を撫でられた。

 何だろう、既に怖いんだけど⋯⋯。



「アンセ、(わたくし)貴方に言いたい事があるのよ」

「なっ、何でしょうか、母上⋯⋯」



 お父様が若干引きつっていらっしゃる⋯⋯。

 心做しかお顔色も悪いような⋯⋯

 あぁ、昨日話していたお説教が始まるのね!

 だからお父様が引きつっていらっしゃるんだわ。

 お祖母様が話し始めたらそれはもう無双だった。

 お父様が言い訳しようものならすぐ様叱責がとび、お父様は本当に小さくなっていた。

 そろそろ可哀想だから終わってほしいのだけど、お祖母様はまだ怒っていらっしゃるし⋯⋯。

 ちらりとお祖父様を見遣ると、小さく首を振っていた。

 これはあれよね、お祖父様には止められないのね。

 お母様は⋯⋯無理よね。

 と言う事は、私⋯⋯?

 お祖父様から視線で促される。

 どうやって止めよう⋯⋯。



「⋯⋯聞いているのですか? 全く、貴方はそうやって直ぐに思考を巡らせるのだから!」

「そんな事はありません。きちんと聞いております。以後気を付けます」

「貴方の気を付けるは当てになりません!」

「あの、お祖母様⋯⋯」

「まぁ、どうしたの? ステラも言いたいことがあったら言っていいのよ」

「いえ、その⋯⋯そろそろお父様が可哀想です」

「あらまぁ! ステラは優しいのね。だけど、アンセ(あれ)は全く反省していないのよ」

「ですが⋯⋯」



 私はお祖母様を見上げ、じっと見つめた⋯⋯。



「はぁ⋯⋯可愛い孫のお願いを無下にはできませんね。今回だけはここまでにしましょう。だけど、次同じことをすれば⋯⋯分かっていますね?」

「勿論です、母上!」

「全く⋯⋯」



 終わった、のよね?

 良かったぁ!

 お祖母様のお説教は怖いわ。

 私も気をつけないと⋯⋯。



「ステラ、お父様達の所へおいで」

「はい」



 私は呼ばれたので、お父様とお母様の間に座った。



「ステラ、悪かったな。疲れてないか?」

「大丈夫ですわ。お父様の方がお顔色が悪いので心配です」

「私は平気だよ」

「痛くないかしら? ちゃんと薬湯は飲んだの?」

「はい。寝る前にまた飲みますね。そういえば、お兄様とフレッドは今日はどうされたのですか?」

「二人共うるさいから置いてきた」

「うるさいって⋯⋯」

「ステラの調子も芳しく無いのにうるさいと邪魔だろう? 会うなら調子の良いときにしなさい。特にフレッドは姉不足が祟って今酷い状況だ。今度ゆっくり会うといい」

「よく分かりませんが、そうします」



 フレッドの酷い状況が今ひとつわからないけれど、私も弟不足よ。

 お兄様よりも、全然会えてないもの。

 会いたいなぁ。



「さて、そろそろ王宮に戻る。ステラは無理せずに早めに寝なさい」

「ステラ、学園でも無理しないで。慌てなくていいのよ」

「はい、お父様、お母様。今日はありがとうございました。おやすみなさいませ」

「あぁ、おやすみ」



 お二人は王宮に戻り、私もお祖父様達に就寝の挨拶をして部屋に戻ってきた。

 就寝の準備をして、薬湯を頑張って飲む。

 そして、ベッドに入るとストンと眠りについた。



 夢も見ずにぐっすり寝た翌朝早朝に目が覚めた。

 今日もまだお腹が痛い。

 仕方ないわよね。

 しばらくは我慢だわ。

 何だかふわふわする。

 貧血を起こしてるのね⋯⋯。

 確か⋯⋯記憶でも酷かったわ。

 またこれと付き合わないといけないのね⋯⋯憂鬱。

 あっ、そう言えばお礼言ってない!



『おはよう、セリニ。昨日はありがとう』

『姫様、おはようございます。いえ、お加減は如何ですか?』

『お腹痛いし、貧血を起こしててふわふわするわ』

『本日もゆっくりお休みさなさったほうがよろしいかと』

『流石に何かをする気力が起きないわね⋯⋯』

『侍女を呼びましょうか?』

『お願いできる?』

『少々お待ち下さい』



 直ぐにモニカが来てくれた。



「おはようございます。お加減があまりよろしくないとお聞きしましたが⋯⋯」

「おはよう、モニカ。お腹痛いのは痛いのだけど、貧血が酷くて」

「お顔色が悪いですわ。直ぐに薬湯をお持ちしますね。今日は一日お部屋でゆっくりされるのがよろしいかと」

「そうするわ。お祖父様達にも伝えてくれる?」

「畏まりました」



 今日は大人しくしておこう。

 学園の休暇が開けるまで日が無いものね。

 けど、学園が始まるまでには落ち着きそうで良かったわ。



「お待たせいたしました。薬湯をお持ちしたのでどうぞ」

「ありがとう」


 薬湯を飲み終わったらまた眠くなってきたので、そのまま寝てしまった。

 今日はこんな感じでゆっくりと起きて寝ての繰り返しで、身体が鈍りそうだったけれど、無理はできないので今日は本当の休息日と言った感じだ。


 更に翌日になると少し落ち着いたので朝食からお祖父様達と共に頂く。

 今日も執務や淑女教育はお休みを言い渡されたので午前中はゆっくりして、午後は庭園の散策をする事にした。

 久し振りにゆっくりとお庭を歩く。

 落ち着くわ。

 最近忙しかったし、こんなにゆっくり散策することもなかったものね。

 学園が始まれば寮生活だし。

 あっ、お父様の執務の期日、いつまでになったのかしら?

 きちんと聞いてないので確認しないといけないわよね。

 散策ができるくらいに回復したので部屋に戻って時間を決めて少し作成しようかな。

 それだったら怒られないよね、きっと。


 私は部屋に戻って、モニカ達に夕刻まで言われている書類作成をするのに、時間になれば教えてとお願いをして机に向かう。

 この間半分以上仕上げてたので、後もう少しで完成なので、頑張ったら終わるかも。

 私は集中して書類作成に取り掛かった。



「出来たわ!」

「書類作成が終わったのですか?」

「終わったわ!」

「お疲れ様でございます」



 お願いした時間よりも早くに仕上がったわ。

 これをお祖父様に、お渡しすればいいかな。



「モニカ、お祖父様に今からお会いすることはできるかお伺いしてきてほしいのだけれど」

「畏まりました。確認してまいりますね」



 モニカにお祖父様の予定を確認してもらっている間に、お渡しする書類を纏めた。

 そこへ戻ってくると、今からでも大丈夫だということで、お祖父様の執務室へと向かった。

 部屋につきお部屋に入ると、少し呆れたお顔のお祖父様がいらっしゃった。



「ごきげんよう、お祖父様」

「あぁ、調子はいいのか?」

「昨日よりは大丈夫ですわ。今日は久しぶりにお庭を散策しました」

「それならいいが。で、書類が完成したのか?」

「はい、こちらです」



 私はお祖父様にお渡しして、確認をしていただく間、ソファで大人しく座っている。



「ふむ⋯⋯良く出来ているな。項目毎に分かれているのでとても見易いし、分かりやすいな。良くやった。これでアンセに渡しておこう」

「ありがとうございます! よろしくお願い致します」



 お祖父様に書類をお渡しした後は部屋に戻って、夕食まではゆっくりと過ごす。

 読書も禁止されているので、何しよう⋯⋯。



「ステラ様、起きてくださいませ」

「⋯⋯モニカ? あれ、(わたくし)眠ってしまっていたの?」

「よく寝ておいででしたよ。ですが、そろそろ夕食のお時間です」

「起こしてくれてありがとう」

「いえ、お支度を整えましょう」



 それから夕食を頂き、この日も早くに眠りについた。

 

ご覧頂きありがとうございます。

ブクマや評価をありがとうございます。

とても嬉しいです!

次回土曜日に更新致しますので、楽しんでいただければと思いますので、よろしくお願い致します。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
小説家になろうSNSシェアツール
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ