110 怒らせてはいけない人達
お茶会が終わり、私達は部屋の一室に移動した。
「さて、お茶会の手応えはどうだった?」
「そうね、私達の信頼する者達ばかりだったので皆好意的よ」
「そうか。ステラはどうだった?」
「皆様のお話は楽しかったのですけれど、流石に学園で顔を合わせているご子息方のお話を聞くのは気が引けましたわ。秘密を密かに聞いてしまったような感覚でしたわ」
「はははっ! 確かにな。だが気にする必要はない」
「そうよ。だけど、トリュフが出てきたときは驚いたわ」
「前々から料理人にお願いしていましたの。確かにご年齢重ねると甘すぎる物ってしんどいと思いますし、中々塩気のあるお菓子って見ないですし」
「なんだそれは? 私の分はあるのか?」
お祖父様も気になるのか興味津々に私を見つめる。
私はちらりとモニカに目線をやると、直ぐに部屋を出て確認に行ってくれた。
あるかな⋯⋯。
「ステラ発案のお菓子なんて、あの人もきっと欲しがるわね」
「お父様も甘いものを召し上がるのですか?」
「そうねぇ、嫌いではないわね。ヴィンスやフレッドに知られると押し掛けられますよ」
「内緒には⋯⋯」
「きっと、お義父様が自慢なさるから、すぐに耳に入るわ」
お祖父様ったら!
どんな自慢をしているのかしら⋯⋯。
そこへモニカがトリュフとケーキを持って戻って来た。
余分に作ってくれていたのね。
それも昨日お祖父様に提案した胡桃のほうね。
お祖父様と候爵の分もあったみたいで、お二人は先ずはトリュフを口にしていた。
「ふむ、これはいいな。甘すぎない所がいい」
「そうですね。これはワインにも合いそうですね」
あっ、ワインね!
それは合うと思うわ。
流石にミルフィーユは合わないけれど。
トリュフの次はケーキにも手を伸ばしていた。
ケーキは昨日お祖父様は食したものとは違う胡桃だからね。
けど、何だろう⋯⋯昨日は何とも思わなかったのだけど、お祖父様達が可愛いケーキを食べる姿が合ってない。
何だかあれよね、可愛いケーキ屋さんに男性だけで入ってるという、あんな感じがする。
勿論悪い事ではないのだけれどね。
男の人の方が甘い物が好きだったり⋯⋯なんてよくあるもの。
「昨日のより、これの方がいいな。食感が良いし苦味のあるこの上のやつがいい仕事をしている」
「これは⋯⋯面白いですね。私としてはもう少し甘くても良いかと。ですが、この胡桃とこのソースの相性は抜群に良いですね」
侯爵は甘いものがお好きなのかしら。
というか、お二人共に何故ご自分の好みを言ってくるのかしら?
これは、あれよね、今度はその好みに合ったものが食べたいという要求かしらね。
今度料理人に伝えておきましょう。
それより、侯爵はいつまでここいるのかしら。
暇なのかとお忙しいであろうお父様の側近に対して失礼なことを考えていると、こちらに書類を渡してきた。
成程、これが本題ね。
「殿下が草案された学園内の監査の件ですが、陛下に報告致しましたらとても喜んでおられましたよ。内容がしっかりしていましたのでこれで進める事に決定致しました。つきましては、殿下に詳細な書類作成をお願いしたいのです」
「分かりましたわ。期日は?」
「殿下がシベリウスに戻られる日までにお願い致します」
お父様ったら中々酷いわね。
もう、日がないわ。
今夜から作成しないといけないわね。
「分かりましたわ」
「もう! あの人ったらステラに厳しくないかしら! 期日が短いわ」
「お母様、私なら大丈夫ですわ」
「あまり無理をしてはだめよ」
「私が無理をしているのが分かれば、色んな所から取り上げられるので大丈夫ですよ。きちんと気を付けます」
「⋯⋯どういう事かしら?」
「夜遅くまで本を読んでいると、見兼ねた影が私から本を取り上げて、そのままベッドに運ばれてしまうのです」
そう言って苦笑したのだけれど、それを聞いたこの場にいた人達は何とも言えない表情をしていた。
侯爵に至っては少し怖い顔で眉間を揉みほぐすように手を当てて何かぶつぶつ呟いているし⋯⋯。
――⋯⋯何?
「ステラよ⋯⋯」
「はい、お祖父様」
「⋯⋯いや、何でもない」
変なお祖父様ね。
皆の心内を知る事なく不思議に思っていると、お祖父様は気を取り直すように咳払いをした。
「兎に角だ、無理はしない程度に頑張りなさい」
「はい」
疲れたようにそう言って、お開きとなった。
そしてその夜、就寝の準備後に私は早速書類作成に取り掛かる。
こういう時って記憶を持っているととても役に立つわね。
大体頭の中で整理してたので、文字起こしだけなのだけれど、流石に今日中に仕上げるのは難しいわね。
取り敢えず、出来る所までは仕上げてしまおう。
私はそれから黙々と書類を書き上げていく。
どのくらい時間が経ったのか⋯⋯。
「姫様、そろそろ就寝なさってください」
そう声を掛けられたのだけれど、私は集中していた為、その声に気付かなかった。
「姫様、失礼いたします」
私が一旦筆をインクに付けようとしたところで、用紙を横から取られてしまったところでようやく呼ばれていることに気がついた。
隣にはアステールがいて、呆れたような心配するような表情でこちらを見ていた。
「ようやく気づいていただけましたか?」
「ごめんなさい。もうそんなに遅い時間なの?」
「既に深夜を回っていますよ」
「えっ? 本当に!?」
「はい。何度かお呼びしたのですが全く気づいていませんでしたね」
「適度にしておくつもりだったのだけど⋯⋯」
「その集中力はとても素晴らしいですが、まだ御年齢も低いのですよ。ご無理はいけません」
「分かったわ。そろそろ休むわね。いつも有難う」
私は机の上を片付けてベッドへ向かう。
アステールは私がきちんとベッドに入るかを確認するために着いてくる。
もうこれにも慣れてしまった。
「おやすみなさい」
「おやすみなさいませ」
私はきちんと挨拶をして、ベッドに入る。
目を瞑ると直ぐに眠気が襲ってきて寝てしまった。
そして翌日は眠たさの残るすっきりしない朝を迎え、いつも通りにお祖父様の執務室に行くと速攻バレてまった。
何がバレかと言うと、私が遅くまで書類作成していたこと。
「ステラ、私が昨日なんと言ったか覚えているか?」
いつもの呆れた、という様子はなく、見たことのない、感じたことがない圧を感じ体が強張る。
「無理をしないように、と仰っていましたわ」
「それで?」
「申し訳ありません。深夜過ぎまで集中して書類作成をしておりました」
「それで?」
「影に書類を取り上げられるまで気づきませんでした」
そこまで話すと深い溜め息をついて、お祖父様から表情が抜けた。
「今幾つだ?」
「今は九歳です」
「大人か?」
「子供です」
「いつも何時に寝ているんだ?」
「遅くても深夜前には寝ております」
「⋯⋯今なんと言った?」
「深夜前ですが⋯⋯」
この部屋に入った時から空気は重かったけれど、それが更に重さを増した。
息苦しい⋯⋯。
それだけお祖父様が怒っている、という事。
原因は私だから何も言い返せない。
それに嘘を言ったところできっとバレるもの⋯⋯。
「ステラの影全員此処に来い!!」
「待ってください! 彼等は関係ありませんわ! 私が夜遅くまで起きてるのが悪いのです」
「当たり前だ! だがな、それを早々に止めるのも臣下の勤めだ。ステラはまだ九歳の子供、子供に必要なのは睡眠だ! いくらお前が本を読みたかろうがお前の成長を阻害するような真似は駄目に決まっているだろう!!」
「申し訳⋯⋯ありません」
「暫く夜の読書も図書室への立入り、並びに執務も禁止だ! 今日明日と部屋で反省していろ!!」
そう言われて部屋を追い出された。
あんなに怒ったお祖父様は初めてだわ。
モニカ達を伴って部屋にとぼとぼと戻る。
今までの中で一番ショックかも⋯⋯。
あんなに怒られたのは初めてだし、確かに子供はちゃんと寝なきゃいけないのも分かる。
お祖父様の言ってることは間違っていない。
いつの間にか部屋の中でモニカに促されてソファに座る。
「モニカ、ごめんなさい」
「どうされたのですか?」
「きっとモニカ達が怒られるわ。私が悪いのに⋯⋯」
「大丈夫ですよ。私共のことならお気になさらないでください」
「だけど! あんなに怒ったお祖父様は初めてだもの」
「私達はステラ様がいつもどれだけ我慢をなさっているかを知っています。いつも近くで見ていますから。だから、夜だけは自由に読書をする事に目を瞑っていたのです」
「モニカ⋯⋯」
モニカ達の優しさに涙腺が緩むがそれだけでは無い。
私馬鹿だわ。
皆に甘やかされているとは知らずにやりたい事をやっていて、結局皆が怒られる。
私のせいで⋯⋯。
情けないわ。
そう落ち込んでいる時、誰かが来たみたいだった。
今は誰とも会いたくない。
入れないで欲しいと思っていたけれど、入って来たのはお祖母様だった。
「貴女達は下がりなさい」
「はい⋯⋯失礼いたします」
お祖母様はモニカ達を下げたが、モニカはちらりと心配そうに私を見て部屋の外に向かった。
お祖母様は私の隣に腰掛けたけれど、私はクッションに顔を埋めたまま顔を上げることをしなかった。
「ステラ、顔を上げてちょうだい」
「⋯⋯嫌です」
「では、そのまま聞きなさい。一体どうしたの? 普段の貴女らしくないわ。何があったの?」
「特に何もありません」
「そういう所よ。今は、どちらかと言うとステラでは無いわね。記憶の貴女のように思えるの。イルに話を聞いたけれど、何時ものステラでなかったから、余計にカッとなって叱ってしまったと、あの人も反省をしているのよ。何か、貴女を悩ませている事があるのかしら?」
私じゃないみたい⋯⋯。
それは、そう⋯⋯かもしれない。
「⋯⋯何もありませんわ。こんなに甘やかされているのに、何を悩むというのでしょう」
「あまりお祖母様を見くびらないでちょうだい。貴女は悩みがあっても我慢する傾向にあるわね。それは、幼少から親元から離して暮らす事を強いてしまった私達大人の責任。そして貴女は記憶があるからきっと我慢する事にも慣れているのでしょう。慣れすぎてしまって、余計に心に負担が掛かっている事に気付いていないのね。それと、貴女の立ち位置から、自身の事を誰かに相談する事も出来ず、全部押し込めてしまっているのよ。違うならそう言ってちょうだい」
違わない⋯⋯。
多分、色々溜め込みすぎてちょっと疲れてしまった。
お祖母様の言う通り⋯⋯、心が疲れているのは流石に分かる。
「全部、お祖母様の言う通りです。色んな事を溜め込んでしまって、少し、疲れました」
「話してみなさい。少しずつでいいから⋯⋯」
「話せません⋯⋯」
「何故? 人に話せないようなことを悩んでいるの? それはそれで問題なのだけど⋯⋯」
私の悩んでいる事なんて、言えないわ。
こんなに悩み、王族として失格でしょう。
「ステラ、よく聞きなさい。王族だろうと人間に変わりはないのよ。悩みのひとつやふたつと言わずに沢山あるのよ。貴女が悩むのは当然のことなの。私もイルに愚痴を言うときくらいあるわ。アンセも気心を知れた者達に愚痴っては怒られているのよ。だから気にしなくても良いのよ」
お祖母様はそう言うと私を抱き寄せてそっと頭を撫でた。
「大体、アンセも悪いのよ! 貴女が真面目で優秀でよく考える事もできるからって無茶をさせて! 今度会ったらお説教よ!」
そのお祖母様の、言葉につい笑ってしまった⋯⋯。
お説教って!
「お父様は悪くありませんわ。私が役に立ちたいと言ったので、それを叶えてくださっているのです」
「あら、少し戻ったわね。だけど、これはあの子の母親としては叱るべきところよ」
「お祖母様に叱られるお父様は見たくありませんわ」
「あら、アンセが身体を小さくしているところを見たくない?」
お祖母様の言葉に想像して小さい笑いが漏れてしまった。
「⋯⋯かっこいいお父様でいて欲しいですが、その、ちょっとだけ、見てみたい気もします」
「では、貴女の前で叱ることにしましょう」
「ふふっ⋯⋯あの、お祖母様」
「何かしら?」
「お話し、してもよろしいですか?」
「えぇ、良いわよ」
私はぽつぽつと話し始めた。
学園に入学してシベリウスで過ごす時間も減り、休暇は離宮で過ごす事となったのに対しては勿論否はないし、王宮に、お父様達の元へ戻るのは嬉しい。ただ、四年以上をシベリウス領で過ごしてきたのでとても寂しく感じた事、それが贅沢な悩みであること、学園で親しい友人達が出来ても、本来の姿ではないので騙しているという罪悪感がある事、ヴィンスお兄様が近くにいるのに兄妹として接することが出来ない事を話した。
後、もうひとつは⋯⋯。
「ステラ?」
「お祖母様、怒らないでくださいね」
「あら、何処かの誰かさんと違って滅多に怒らないわよ?」
何処かの誰かさんって⋯⋯それってお祖父様のことですよね?
「どこから話していいのか分からないのですが⋯⋯その、自分の気持ちが分からないのです」
「ステラ、それは流石に端折り過ぎよ」
「そう、ですね。その⋯⋯ヴァレニウスの殿下の事なのですが⋯⋯」
「っ⋯⋯」
えっ、えぇ!?
お祖母様が噎せた?
国一番の品のある方が!?
「お祖母様、大丈夫ですか!?」
「ごめんなさいね、大丈夫よ。思いもよらなかった事だったから⋯⋯続けて?」
「はい⋯⋯その、お祖母様も知っての通り、殿下とはお手紙のやり取りをしているのですが⋯⋯」
「何か言われたの?」
「いえ、特に何も言われてはおりません。ただ⋯⋯この間もお話ししましたが、以前は何だか恥ずかしい位甘い言葉を認めていらっしゃって、どうしていいか分からなかったのですけれど、最近は⋯⋯ただのお決まりの文句でただのご機嫌伺いのようなお手紙なので、それだったら送って来なくてもいいのにと思うのです。それでも同じ内容で送られてくるので、もしかしたら⋯⋯私に番だと言った手前、送らなければと思っているなら、別に要らないですし、番は唯一だと伺ったのですが、もしかしたらそうでないのかもって⋯⋯他に想う方が出来て、だけど、私やお父様に話した手前、義務で送ってきているのなら、気にしなくてもいいのにって⋯⋯そもそも私はまだ子供ですし⋯⋯そう考えると、とてもざわざわとして何故か心がとても苦しくて、痛いのです。普通にもう止めると言ってくださればいいのに⋯⋯」
私は一気に話し終えると、お祖母様は深く溜息をおつきになった。
呆れられたのかしら⋯⋯。
まだ子供なのにこんな事考えて⋯⋯。
折角収まった涙がまた溢れてくる。
「ステラ⋯⋯本当は貴女自身で自覚をして欲しかったのだけれど⋯⋯、今の貴方の精神状態ではそれは身体にも心にも良くないから教えてあげるわ」
そういうと、そっと私の顔を上に向かせて、お祖母様と目を合わせられた。
「ステラ、よく聞きなさい。貴女はね、恋をしているのよ」
「恋⋯⋯ですか?」
「そうよ。勿論相手はヴァレニウスのヴァレンティーン殿下よ」
「私が⋯⋯殿下に?」
「そう、好きなのでしょう? 彼の事が。だから殿下の一言一言が気になり悩んで心が落ち着かないのよ」
「私が、殿下を⋯⋯好き?」
「そうよ。貴女はずっと前から彼の事が好きなのよ。周りは皆気づいているわ。分かっていないのは貴女だけ。だからいつもと違うお手紙の内容に、何故、何かあったのではと嫌な方に考えがいくのよ。それにね、男性は好きでも無い女性に態々手紙など送らないわ。ましてや贈り物なんてしないわよ。それも自分の色の贈り物なんて特にね。だけど貴女にはそういった贈り物が届くのでしょう? それならそんなに不安になることは無いわ」
えっと⋯⋯ちょっと待って欲しい⋯⋯。
⋯⋯私って殿下の事が好き、なの?
好き⋯⋯?
好き⋯⋯え?
殿下を思い浮かべ、そう思った瞬間、何故かとてもストンと心に落ちたけど、とても恥ずかしくて、思わずお祖母様に抱きついて顔を隠した。
好き⋯⋯殿下の、ヴァン様の事が⋯⋯。
私⋯⋯ダメ、凄くドキドキして⋯⋯心臓が別の意味で痛い。
好きだと、そうきちんと理解すると、今までの事がよく分かる。
それは、皆呆れるよね。
分かってなかったのは、本当に私だけだった⋯⋯けど、自覚してももう遅いわ⋯⋯。
殿下は、私の事をそうは思っていない。
あの様な文面だもの。
自覚するのが遅かったから⋯⋯私が子供だから、きっともうダメなのね⋯⋯。
お祖母様は大丈夫って言うけれど、あのお手紙ではそうは思えないもの⋯⋯。
そう思うと今度は辛くて涙が溢れてきた。
「ステラ、彼からの手紙は取ってあるの?」
「⋯⋯ありますわ」
「見せて頂戴」
私は顔をあげず、空間収納から手紙を取り出し、お祖母様に渡した。
この指輪、外したほうがいいわね⋯⋯。
空間収納の核って違う魔石に移しても使えるのかしら。
そういえば、ネックレスもお返ししたほうがいいわよね。
これは殿下の、鱗だもの⋯⋯。
私が持っていては駄目よね。
もう、外さなきゃ⋯⋯。
あぁ、心が痛いわ⋯⋯。
人を好きになってこんなにしんどいなんて⋯⋯。
もう誰かを好きになったりしない。
けど、結婚はしないといけないわよね。
だったら、お父様に相手を選んでいただこう。
それが良いわ。
ふと、お祖母様が震えていらっしゃるのを感じて、どうしたのかと顔をあげると⋯⋯。
見るんじゃなかった!
お祖父様よりある意味怖いわ。
思わず涙が引っ込んでしまったわ⋯⋯。
でもどうしてそんなに怒ってらっしゃるの?
「あ、あの、お祖母様、一体どうし⋯⋯」
「あの、ヘタレ王太子‼」
「ひっ、お祖母様、落ち着いてくださいませ!」
「あら、ごめんなさいね、つい⋯⋯」
「あ、あの、お祖母様⋯⋯?」
「この件は私に預けなさい。そして一旦私にその箱を渡しなさい」
その有無を言わさない言葉に、箱を渡してしまいそうになったけれど、何となく渡したくなくて⋯⋯。
「はぁ、分かりました。その箱は持っていなさい。だけど、私が使用するときは出しなさい。いいですね? 後、この手紙類は預かります」
お祖母様の剣幕に押されて、そこは素直に頷いた。
一体何を読んで怒っていらっしゃるのかしら。
「貴女は少し顔を洗って目を冷やして休みなさい。食事はここに運ばせます」
そう言うと、品を損なわずして颯爽と部屋から去っていった⋯⋯。
何だったのかしら⋯⋯。
結局私の涙も気持ちも引っ込んでしまったわ。
入れ替わるようにしてモニカ達が入室し、私の様子に驚いて直ぐに顔を洗い、目元を冷やす物を持ってきて冷やしてくれる。
熱を持った目元は冷やされて、とても気持ち良く、全てを話して少し心が軽くなったからか、とても眠たくなっていつの間にか眠りに落ちていた⋯⋯。
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