11 後二日
夜中に一度目を覚ましたけれど、直ぐにまた寝ると朝まで夢も見ずにぐっすり寝たお陰で今朝もすっきりと目覚めることが出来た。
モニカにおはようと挨拶をして、日課の熱の確認をしてもらうと熱は出ていない、と言う事でほっとする。
熱の心配はもう無さそうかな。
ベッドから出られる日も近づいてきたのがとても嬉しい。
昨夜ご飯を食べずに寝てしまい、今朝はお腹が空いているので朝食が楽しみ。
私の熱が昨日に続き上がることがなかったので、朝食も少し変わった。
今日はお野菜たっぷりのスープにロールパンとヨーグルト。そして、熱は下がったけどお薬⋯⋯。
これは医師の判断が必要なので我慢。
けど、早く解放されたい。
早くお風呂に入りたい!
今日は午前中にお養父様とお養母様が来るみたい。
お二人揃って部屋を訪れるのは私が最初に目を覚ましたとき以来になるかな。
しばらくしてノックがあり、どうぞと答えるとお二人が入ってきた。
「おはよう、シア」
「おはようございます。お養父様、お養母様」
「熱は引いたときいたけれど、⋯⋯うん、もう大丈夫みたいだね」
私はその言葉に嬉しくてにっこり微笑んだ。
熱が引いた、と言う事はお風呂にはいってもいいのかな⋯⋯、というか、入りたい!!
「あの、熱が引いたので今日からお風呂にはいってもよろしいでしょうか?」
「「それはダメ(だ)よ」」
即答、仲良くハモった。
お風呂ー! お風呂入りたい!!
さっきから私の心の中はそれのみ。
だってね、すごく汗をかいたので拭いてもらってるといえど、汗を流したい。
「熱が引いたといっても、きちんと医師の許可を得てからだよ」
――やっぱり⋯⋯。
「⋯⋯医師が来るのは明後日でしたでしょうか?」
「そうだね、明後日の午前中の内にこちらへ来ることになっているね」
「後二日⋯⋯」
「シアったら、そんなにお風呂に入りたいの?」
「入りたいです!」
とめいいっぱい言うと、笑われた⋯⋯。
前世をはっきりと思い出し、あちらに引きずられているというのもあるかもしれないけれど、前世日本人としてはお風呂は欠かせない!
ちょっと押しきれるかなぁっと思ったけど甘かった。
「期待に満ちた目でみられても、許可は出来ないよ。後二日は我慢しなさい」
「⋯⋯分かりました」
シュンとしながら言ったら、また笑われた。
そんなに笑わなくても。
早くベッドから出たい!
お風呂に入りたい!
勉強もしたいし、体力も付けたい、そして強くなりたい!
後二日が恨めしい⋯⋯。
「退屈なのね?」
「早くベッドから出て、色んな事を学びたいです」
「あらあら、シアはお勉強が好きなのね」
「お勉強が好きと言うよりは、色んな知識を得ることが楽しく思います」
「レオンにその言葉聞かせたいわね」
レオナルドお兄様はお勉強嫌いなのかしら?
「あの子は要領が良いからか、じっと座っての座学が苦手なのよ」
えっと、それって勉強しなくても要領よく覚えられるとか天才肌的な?
「羨ましいよな、誰に似たんだ」
とはお養父様。
誰に似たか云々はともかく、羨ましい能力だけど、ちょっと味気ないかもと思ってしまう。
「後⋯⋯、私、強くなりたいです」
「シアは強くなりたいの?」
「はい、弱いままでいたくありません」
「そうだね。シアが強くなりたいなら、二日後の診察で許可が降りれば、体力作りから始めようか。どちらにしてもほぼ二週間程ベッドの上だったからね」
「はい! よろしくお願いします」
私はお養父様の言葉が嬉しくて後二日我慢できると、単純にもそう思った。
「後二日の我慢よ。許可が降りればやること沢山あるのだから」
「はい、後二日は大人しくしています」
後二日、二日後がとても楽しみ!
お養父様達は各々戻られて、私はのんびりと過ごした。
そういえば、あの時、夜中に聞いた声がその後聞かないけれど、何だったのかな⋯⋯。
また聞こえる事あるかな⋯⋯。
そして翌日。
今日もお目覚めすっきりです!
何故こんなにもテンションが高いか、それは⋯⋯、今日一日でベッド生活が終わるからです!
明日には解放されるのです!
⋯⋯許可が降りれば、だけれども。
きっと大丈夫なはず!
私のこの高揚はモニカ達にもバレバレだった。
分かりやすすぎだよね。
「シア様、明日許可がきちんと下りるよう、本日はゆっくり過ごされてください。あまり興奮されると長引いてしまうかもしれませんよ?」
それは困る!
「今日も大人しくしています」
そう言って、軽く本を読んだりお昼寝したり、もちろん食事もきちんと食べてお薬飲んで⋯⋯。
ほんとにゆっくりと過ごした。
夜はちょっと楽しみすぎて中々寝付けなかったけれど⋯⋯。
遠足前に寝られない子供みたい、って実際子供だからいいんだけど、ちょっと恥ずかしく思う。
この日は久しぶりに夢を見た。
とてもきれいな景色で空気が澄んでいて、不思議な景色。
そこであの時に聞こえた声が聞こえた。
――大丈夫だよ。身体から毒は抜けているから、もう大丈夫。
優しい声。
その声と内容にほっとした。
『ありがとう。あの夜もお水が大丈夫だと教えてくれて、本当にありがとう』
――当たり前だよ。エステルは大事だから。
『大事?』
――今は気にしなくていいよ。
気になるけれど、気にしなくて良いと言われたら、そうなのかなと思ってしまう。
――そろそろ起きないと、朝だよ。
『また会える?』
――会えるよ。
『良かった、起きるわ』
――またね。
『またね』
目を開けると日が登り始め、明るくなってきていた。
また不思議な夢を見た。
だけど、起きるとどんな夢だったか、何を話したのか覚えているようで、覚えていない。
とてもぼんやりとモヤがかかっている感じだった。
とても不思議な夢だった。
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そして、ブクマもとても嬉しいです、ありがとうございます。
また次話もよろしくお願い致します。





