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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
104/264

104 試験後


 休息日明けの今日は試験結果が発表される。

 異例の試験とは言え、この成績は二年次に上がる時にも反映されるそうだ。

 結果はというと、私は変わらず首席で、次席はレグリス。

 これは前もって会長に聞いていたので驚きはない。

 全員の結果が発表され、今はクラスの全員名前も覚えたので、誰がどの位の成績なのかも知れた。

 問題のヒュランデル様については、クラス内では最下位だったが、ここで先生から彼女は転校する事が伝えられ、既に登校もしていない。

 理由としては、体調不良で漸く休養が必要で、厳しいこの学園では難しいだろうと、休養と同時に転校することになった。

 然り気無くクラス内を見回せば、皆それぞれの反応を示していた。

 先生からの話しは以上で、通常の授業にはいる。

 後の事は今日の生徒会の集まりの時に知らされるだろうから、それまでは周囲をよく見ておきましょう。


 授業が終わり、休憩時間に入っても、クラス内ではそこまで噂するものはいなかった。

 彼女の取り巻きだった二人も大人しい。

 特に何事もなく過ぎていき、放課後レグリスと共に生徒会室へと向かう。



「お疲れ様! 早速だけど二人とも今日はどうだったかな?」

「そうですね、今日は表面上は何事もなくヒュランデル様がいないだけで、いつもの日常といった感じでした」

「他のクラスも特に何もなかったように思います」

「噂が立つとしたら明日くらいかな」



 今日の事を報告していると、ハセリウス先生がいらっしゃった。



「よう! 揃ってるな」

「はぁ⋯⋯先生、もうちょっと先生らしくしていただきたいのですが?」

「今更だろう? さて、諸君。早速だが気になっているサンドラ嬢とアリシア嬢の噂の件だが、報告するぞ」



 あら? 会長が報告するのではないのね。

 会長はやれやれといった感じに先生の話を聞く姿勢になっていた。



「まず、彼女の噂についてだが、事実で公爵夫人がそれを認めた。まぁ、証拠が揃ってるので認めざるを得ないわけだが。不正を働いたということで、夫人とそれに荷担した宮廷の文官、並びに先週辞めた元教師が宮廷の司法で裁かれる。サンドラ嬢は直接関与していないが、言動や行動に改善が見られない上、学園長との話し合いでも自分本意で他人を陥れる事で優越感に浸っている事に加え、アリシア嬢の悪意ある噂を流した張本人であることも言質を取っているので、この学園には相応しくないとの判断の元、退学となっている。表向きは担任から通達があった通りだ」



 ハセリウス先生からの報告は以上で、後は宮廷の司法に委ねられたという事だ。

 学園として問題なのはもっと別にある。

 会長もそれが気になっているようだ。



「先生方は今回の件をどう受け止めていらっしゃるのですか?」

「勿論重く受け止めている。まさかこんな不祥事が起こるとは⋯⋯今後はこのような事が起こらないよう、我々教師陣もより一層の厳しい審査と年にニ度宮廷からの監査が入ることになった」



 今までは監査とか無かったのね。

 というか、今までにこのような事がなかったのか不思議でしかたがない。

 偏見だけど、貴族多く通う中、ありそうな気もするんだけれどね⋯⋯。

 普通無いのが当たり前なのだけれど、どうしても何かあるのでは? と疑ってしまうわ。



「今日の今日で噂が立つとは思わないが⋯⋯今話した件はここだけの話だ。憶測で噂が立つかもしれないが、その内収まるだろう。あまり酷いものに関しては噂の払拭をするように。私からは以上だ」



 先生の話が終わり、会長に引き継がれる。



「先生からの話しにもあったように、暫くは周囲の者達の話を注意しておいてね。特に一年生は。後、アリシア嬢の噂に関しては、完全にサンドラ嬢の作り話なので、これもすぐに無くなるだろうね。というか、よくあの試験で満点取れたね。一年生が分からない内容の問題も出ていたはずなんだけど」

「そうなのですか? それは気付きませんでした」

「シアって本ばっかり読んでるもんな」

「確かにね。あれだけ色んな本を読み耽っていたら、知識も沢山つくよね」

「毎朝図書室通いしてればね」



 レグリスだけでなくお兄様達までもが暴露してきた。



「シアは毎朝図書室に行っているの? 放課後に図書室で読んだりはしないのかしら?」

「それは私達が禁止しているのですよ。何故なら、シアは集中して読み始めると周りの声が聞こえなくなるからね。司書にも迷惑だよ。私達が一緒なら図書室で本を読んでも慣れてるから許可できるんだけど」



 ルイスお姉様の質問にマティお兄様が答えるのだけど、そんな事まで話さないで欲しいです!

 何で話しちゃうのかな⋯⋯。

 皆に笑われてるし!



「なるほどな、アリシア嬢は面白いな」



 私は全く面白くないですわ。

 私の話はどうでもいいのです。

 会長! 本題はもう終わったのですか!?

 終わりなら締めの挨拶お願いします!



「さて、和んだ所で今日はこれでお終いにしようか。次は週末だね。今週も頑張ろうか!」



 私の心の声が聞こえたのか、会長の挨拶で一連の報告と今日の集まりの終わりとなった。

 この後はティナお姉様達と一緒に寮へと戻る。

 何も用事がなければ、地の曜日はお姉様方と一緒なので、他の学年の女性陣とも仲良くさせて頂いているので、この寮までの道程もとても楽しく、色んなお話が聞けるので勉強にもなる。

 寮に着くと、学年で階が違うので挨拶をしてそれぞれ部屋へと向かった。

 部屋に着くとモニカが出迎え、一息付きながら今日のことを話すと、モニカも気になっていたのか、ほっとしたような顔をした。

 結局彼女とはきちんと話もせずに終わったわね。

 まぁ会話が成り立たなかったので、話もなにもないのだけれど⋯⋯。

 ただ、何故あそこまで私に突っかかってきたのか、きちんと聞いてみたかったっていうのはあるかも。

 憶測だけで本人の口からきちんと聞いてないものね。

 当事者としては、ちょっと心の内に蟠りが残るわ。

 すっきりと終わらなかったことに対して考えてしまう。

 試験の結果だけを見るのだったら話は早いけれど、そうじゃないからね。

 私が今悩んだところで何もわからないのだけれど⋯⋯。

 そう言えば、私には今四人の影がいるわけだけど、影達の間で情報共有とかあるのかしら。



『確認というか、聞きたい事があるのだけれどいいかな?』

『はい、なんでしょう?』

『影達の間で情報共有とかしているの?』

『必要な事に関してはしております。何か気になることでもありましたか?』

『気になるといえば気になるけれど、ただ、確認をしたかったのよ』

『無礼な令嬢の事ですか?』

『まぁ、そうね。結局彼女自身が何を思ってあのような発言をしていたか分からずじまいだったし、公爵夫人の思惑のまま流されていたのなら⋯⋯』

『姫様、訂正を。あの令嬢ですが、既に公爵家から見放されています。ヒュランデル公爵は自身が邸内のことを省みなかった事を猛省され、けれどもあの者達がした事に関してはかなり激怒されまして、既に離縁されています。元々公爵にとっては希望されての再婚では無かった為、決断も早かったと思われます。後、元夫人も実家に帰されていますので、令嬢も夫人と共に伯爵家に戻っております』

『そうなのね』



 公爵の決断は早いわね。

 既に公爵家から出されているなんて。

 それならいつまでも気にしていても仕方ないかしら。



『姫様が気にされている令嬢のあの発言ですか、気にされる程のことではありませんよ』

『何故?』

『本当にただの思い込みから出てきた発言です』



 断言しているけれど、それってただの思い込みなのかしら⋯⋯。

 洗脳⋯⋯とかではないわよね?



『姫様?』



 ヒュランデル嬢からは何も、嫌な感じはしなかったから大丈夫かな。

 考えすぎかしら。



『姫様、何か他に気になる事でも?』

『気になるというか、(わたくし)の考えすぎかも知れないわ⋯⋯』

『何か引っかかる事があるならば調べて参りますが』

『そうね⋯⋯、調べる前に今から話す事を皆がどう思うか知りたいから意見があるなら遠慮なく話してね』

『畏まりました』



 私は影の皆に気になる事を話した。

 ラルフの件もあるので、元夫人か、もしくは令嬢かが誰かに洗脳、若しくは操られていたりしていないか⋯⋯。

 結婚してから夫人の様子が変わったとの話だったので、まさかとは思うけれど、結婚前のただ本性を隠していただけなら公爵には申し訳ないのだけれど大したことではないわ。

 だけど、それが既に洗脳されでもしていたら⋯⋯そう思うと、この後何か起こるかもしれない。

 令嬢からは何も嫌な気配はなかったけれど、元夫人は会った事が無いので何とも言えない。

 けれど、私が考えてることなら、きっとお兄様達も考えているわよね?

 お祖父様はラヴィラ公国が怪しいと話していたし、四年前の事もあるので、気にはなる。

 何もなければそれに越したことはないけれど⋯⋯何かあれば、また私が狙われたら周りに迷惑をかけてしまう。

 それは避けたい。


 私の話を聞いた影達は、こう考えを述べた。

 まず、令嬢に対しては、私と同じで何も感じなかったそう。

 ただ、元夫人に対しては会ったことが無いので何とも言えず、宮廷の司法で裁かれるなら、何か術に掛けられているのなら分かるだろうと。

 絶対とは言い切れないが、そういった事も調べるそうなので、そうそう心配することも無いとの事。

 それなら⋯⋯安心、かしらね。



『話は変わるけど、あの問題の噂の件は分かったのかしら? それは共有されているの?』

『あの件につきましては、姫様には分かり次第、陛下、若しくはヴィンセント殿下よりご報告があるかと思いますのでもう暫くお待ち頂ければと』

『お父様達から教えて頂けるのね。分かったわ。ありがとう』



 教えてもらえるなんて思ってなかったから少し驚いたわ。

 けど、素直に嬉しい。

 入学して二ヶ月程だけど、こんなに濃い学園生活ってあるかしら。

 稀よね?

 だけどそれも学園に通ってるから経験することよね。

 あっ、そうだ肝心なことを確認しないと。 

 今近くにいるのは、ノヴルーノの他にはセリニね。



『もう少し話をしていてもいいかしら?』

『勿論です』

『セリニとルアノーヴァが来て、まだ日は浅いけれど、二人は慣れたかしら?』

『はい。まだ驚くこともありますが、慣れてまいりました』

『何か驚くようなことでもあったの?』



 そんなに驚くような事なんて無いはずなんだけど⋯⋯。

 ノヴルーノ達が何かしたのかしら?

 それも考えにくいよね。



『まず、姫様から名前を頂いたときも驚きましたが、その後姫様に仕えるにあたり、アステール達からお聞きしましたが、我々影のことをとても気遣うのだと⋯⋯』

『そんなに驚くようなことかな?』

『普通はこんなに我々のことを気遣う方はいらっしゃいませんよ』



 そうなの?

 お父様達は影達にどのように接しているのかしら。

 そっちの方が気になるわ⋯⋯。



(わたくし)(わたくし)のやり方で皆と接したいのだけれど、あまり良くないのかな?』

『いえ、そのような事はありません。我々の事を思ってくださる事にはとても嬉しく思います』

『もし嫌な事があったら遠慮せずに言ってね』

『嫌なことなどありえません』



 何故かきっばりとそう言われた⋯⋯。

 私が嫌なことを言ってしまうことだってあるかも知れないのに。



『ノヴルーノは何もないの?』

『姫様にお仕えし始めてから何も嫌なことなどありません。あえてあげるとしたら⋯⋯私達にも遠慮されていますよね』

『遠慮、なんてしてるかな⋯⋯』

『はい。姫様、何か気になるならそれを調べるのが我々の仕事ですので、遠慮せずにお命じ下さい。姫様は大したことが無い、気になるけど少し待とうとなさりますが、些細な事でも思う事があるならば遠慮する事はありませんよ。我々は貴女様の手足です。主に命じられる事が我々の喜びであり誇りです』



 ノヴルーノの気持ちを初めて知った気がする。

 領にいてると調べる事なんて、気になることが少なかったから二人にお願いすることも少なかったから、ノヴルーノの言葉で更に四人の影の主として彼らの意見ももっと聞かなければならないなと改めてそう思った。



『貴方達の気持ちが知れて良かったわ。ありがとう。セリニは何か意見があったりはする?』

『私もノヴルーノと同じく姫様のご命令を遂行したく思います』

『⋯⋯もしかしてなんだけど、四人共同じ意見かしら?』

『『左様です』』

『他になにか意見があったりとかは⋯⋯』

『今のところはありません』



 そう、皆同じ意見なんて仲良いわね⋯⋯。

 勿論仕事仲間同士、仲良くしてほしいのはあるのだけれど、これ、もし誰かに仕事が偏れば⋯⋯だめ、考えないようにしよう。

 そうならないように気を付けないと。

 彼らとの話を終えて私はいつもと同じく予習と復習、そして欠かせない読書をして影達に叱られる前にベッドへ入る。

 アステールとノヴルーノの二人は領にいる時から私に対して遠慮が取れたように感じる。

 それは私が夜更しをし過ぎると、見兼ねて本を取り上げられるようになった。

 それも容赦なく。

 それだけ信頼関係を結べたと思えば良いのだけれど、本は読みたい。

 色んな知識を身に付けておきたい。

 それは、学園に入って余計にそう思うようになった。

 けど、心配させるのも悪いので、取り上げられたら大人しく寝るようにしている。

 本当はその前に寝なければならないとは思うのだけど⋯⋯。

 読みだしたら止まらないのは許してほしい、と思ってしまう。

 さて、本当にそろそろ寝ないと、また心配をかけてしまうわね⋯⋯。

 私は考えるのを止めて眠りについた。



ご覧頂きありがとうございます。

次回は火曜日に更新致しますので、

よろしくお願い致します。


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