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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
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101 まさかの噂


 私の中で一つの事が解決した休息日が明け、学園が始まる。

 生徒会の集まりにも慣れてきたし、クラスにも大分馴染んできたと思う。

 まぁ彼女は相変わらずなのだけれどね。

 それ以外に関してはとても順調で、楽しく過ごしている。


 今日は初めて外での授業。

 実技がまだとはいえ、ずっと教室内での授業はやはり窮屈なもの。

 なので、こうして外で受けることもあるようだ。

 本日はマナーの一貫として、乗馬の訓練と女子は将来の事を考えて、馬の乗り方を教わる。

 マナー講師は女性のアグネス先生、そしてその助手を勤める男性のフラン先生。

 アグネス先生は本当に厳しくて、だけど誉めるときはとても誉めてくれるので、良い先生だと思う。



「今日は乗馬の訓練です。まずはこの中で馬に乗れる人は挙手してください」



 手を挙げたのは、私を含めて十五人中で七人。

 女子は私とシャーロット・ベリセリウス嬢の二人だけ。

 彼女はベリセリウス侯爵家の次女だ。

 馬は十頭いるので、私達七人は一頭ずつ宛がわれ、先生の前で一人ずつ乗る。

 七人共に先生に合格が言い渡された。

 乗れない生徒の中で男子は全員乗馬必須だが、女子は一人で乗馬しないものは所謂相乗りが出来るようにと習う。

 此処で合格した七人は四人と三人に別れて、乗馬を習う班と相乗り班に別れて先生のお手伝いをすることとなった。

 私は乗馬する班にいて、御手本となるのだが、先ずは馬と仲良くなることが大切だ。

 ここの馬は気性の穏やかな子達が多いそうで、私が乗った馬も穏やかな子だった。

 こちらの班には女子はエリーカさんが一緒なので、迷わず私の近くにやってきた。



「シア様、よろしくお願い致します」

「こちらこそよろしくお願いしますね」

「集まりましたね。此処にいる皆さんは一人で乗馬する事で相違無いですね?」

「「「はい」」」

「では、今乗れないのが五名なので、丁度いいので三班に分かれよう。女子二人一組だ。残り四人は二班に分かれて、合格した者はまず、馬に乗れるところまで教えてみようか」



 こちらの班はフラン先生の指導の下行われる。

 私は先生が言った通り、エリーカさんに教えることとなった。

 先ずは馬と仲良くなる事。

 怖がってると乗馬どころじゃないからね。

 エリーカさんにそう教えると、怖がるどころか馬を可愛がっていた。



「動物は好きなのかしら?」

「はい! 流石に馬を撫でるのは初めてですが、とても可愛いですね」

「そうね。(わたくし)も動物は好きなの。同じですわね」



 此処からよね。

 先ずは馬の乗り方や名称を口頭で説明し、それが終われば私が実践で説明しながら馬に乗って見せる。

 それが終われば、エーリカさんの番。

 私は側で一つひとつ教えながら進めていくのだけれど、いざ、鐙に足を掛け、体を持ち上げるときにバランスを崩してしまった。



「大丈夫!?」

「あたた⋯⋯はい、大丈夫です」

「怪我はないかしら?」

「はい。もう一度試しても良いでしょうか?」

「勿論よ!」



 それから何度か挑戦した後、馬に乗ることが出来た。



「思ったよりも高いのですね」

「だけど、とても良い景色よね」

「はい!」

「思ったよりも早く馬に乗れましたね。素晴らしいです。今度は降りてから再度乗ってみてください」

「分かりました」



 先生に言われて、馬から降りて、再度馬上に上がる。

 最初よりも上手くなっているので、エリーカさんは凄い。

 他の四人も各々馬上に乗れるようになったので、今度はゆっくりと歩いてみる事が課題だ。

 先生は合格した私達三人に何処まで出来るかを訪ねられた。

 私は普通に遠乗りも出来るし、馬で掛けることも出来るのでそうお伝えした。

 すると何故か私が御手本を見せることになった。

 先生に言われた、常歩、速歩、駈歩を順番に行う。

 私は馬に乗り、先生がまず「常歩」の説明を行うのに合わせて動く。

 その後、同じように「速歩」を、そして「駈歩」をし、一周回って元の場所に戻り、軽やかに馬から降りる。



「アリシア嬢は素晴らしいですね。馬の乗り方がきれいです」

「ありがとうございます」

「皆さんもあれぐらい出来るように頑張りましょう」



 今日の授業は時間となり、次回からは常歩から始めるので、乗り方の予習をしておくように課題を出されて終わりとなった。

 久々に馬に乗れて、楽しい授業だったわ。

 エリーカさんもとても興奮していて、何時もより饒舌だった。

 更衣室で共に着替えている時の事、何故だかまたヒュランデル様が突っかかってきた。



「あのように馬を走らせるなんて、男の子のようですわね。生まれてくる性別を間違えたのではないかしら?」

「それは差別発言ですわ。今の世の中、女性騎士も当たり前のようにいて馬に乗りますのに、その方々をも侮辱されているのかしら?」

「まぁ! 侮辱だなんお言葉がて怖いですわ。(わたくし)のような淑やかな者にはあの様な事とても出来ません。それに男性から見ればとても野蛮に見えましてよ」

「それは人それぞれですわ。貴女に言われることでもありませんわね」



 面倒臭いわ。

 さっさと制服に着替えて此処を出るに限るわね。

 エリーカさんもそれを悟ったのか、早々に着替え終わる。



「次の授業もありますのでお先に失礼しますわ。貴女方も早く着替えませんと、遅れてしまいますわよ」



 私はそういうと、エリーカさんを伴い部屋を後にする。

 毎回思うのだけれど、何かにつけて言いたいのね。

 そういうところに頭が回るって勿体無いわ。



「シア様も大変ですね。毎回ですから」

「そうね⋯⋯段々と面倒になってきてるのは確かね。だけど変に対応して後々余計に面倒になるのも嫌ですし⋯⋯」

「ですが、何故あの方はSクラスなのでしょう?」

「それは、分かりかねますわ」

「あまりこのような事を言うのはよくありませんけど、気になる噂があるのです」

「噂?」

「はい。それは⋯⋯」



 話を聞くと、まさかの内容だった。

 エリーカさんも違うクラスの子から噂話しを聞いたのだけれど、曰く、ヒュランデル様達が昼食を食べている時に話していた内容で⋯⋯。



(わたくし)は勉強をしなくてもSクラスが相応しいからSクラスに入学したの。先生方に認められているから此処にいるのよ。お母様も認めていらっしゃるもの。きっと殿下にも見初められるわ! お母様は(わたくし)が殿下の妃に相応しいって仰ってたもの。必ず(わたくし)の魅力に気付いてくれるはずだわ!』



 どうしよう⋯⋯怒りを通り越して呆れるわ。

 意味が分からない。

 何が相応しくてSクラスになれるのよ。

 試験の結果でしょう?

 溜め息しかでないわ。

 これが本当なのか真実なのかは分からないけれど、申し訳ないけれど好きになれない。

 取り合えず、エリーカさんには噂はあくまで噂だし、大体尾鰭が付き真実は全く別ということもあるので、あまり言い触らさない方がいいと注意しておいた。

 エリーカさんもそれが分かっているので直ぐ頷く。

 取り敢えずは、一応生徒会に報告して方がいいかしらね。

 次の集まりで報告する内容を追加すると、次の授業に集中した。



 そして生徒会集まりの日、私は早速エリーカさんに聞いた内容を報告した。

 何処まで信憑性があるかは分からないけれど、もし本当に裏口入学とかなら学園の信用問題になる。

 無いとは思うけれど、故意に誰かが作り話を流している可能性もなくはない。

 なので、私も一人に聞いただけではなく同じ噂が他の人も話しているか、周囲に注意を向けていたら、違うクラスの人達が同じ話しをしているのを小耳にはさんだ。

 きっとヒュランデル嬢達の話を聞いた人達は色んな人に話しをしているのでしょう。

 まぁ、これも確実ではないので今の段階では何とも言えないのだけれどね。


 会長達に話し終えると、会長達も難しい顔をしていた。

 理由はやはり同じような意見だからだ。

 だからと言って生徒達の間でこのような噂が回るのは良くない事でもある。



「前期の試験まで後二ヶ月か⋯⋯」

「分かりやすいのは前期の試験を一層難題にして出せば分かるだろうな。後は先生方の誰かが手助けをしているのを割り出せれば」

「面白い話しをしているな」



 そこへ生徒会ではない第三者の声が割って入ってきた。

 声のした方を向けば、一人の男性がいた。

 初めて見るわ。

 誰かしら⋯⋯。



「ハセリウス先生。珍しいですね、ここへ顔を出すなんて」

「たまには顔を出すさ。一応顧問だしな」

「それだったら、新入生が生徒会へ来た時にいてくださればきちんと紹介も済みましたのに」

「まぁそう言うな」



 なるほど、顧問の先生でしたのね。

 けど、凄く軽い気がするわ⋯⋯。



「アリシア嬢、レグリス君。遅くなったが、こちらは顧問のグレーゲル・ハセリウス先生。ごく稀に此処に顔を出すので、覚えてあげていてほしい」

「なんだその紹介は⋯⋯俺がまるでサボり魔みたいじゃないか」

「サボりなんて人聞きの悪いことは言ってませんよ。稀に此処に来ると言っただけです。二人共、ハセリウス先生はこんな風だけど頼りにはなるからね」

「はい。ハセリウス先生、よろしくお願い致します」

「君が噂のアリシア嬢か!」

「噂、ですか?」

「生徒達の間で噂になっているよ」



 (エステル)でなくて?

 何の噂かしら⋯⋯。



「知らないって顔だな」

「知りませんわ」

「良い噂もあるし、悪い噂もある。聞きたいか?」

「別にかまいませんわ。興味ありません」



 自分の噂なんてどうでも良いわ。

 あの噂よりはどれもましでしょう。



「どんな噂ですか?」

「おっ、レオナルドは聞きたいのか?」

「妹の事なので、聞いておきたいです」



 話しが変わってきているわ。

 ヒュランデル嬢の事はもう良いのかしら。

 だけど、先生の話を聞いてわが耳を疑った。



「アリシア嬢の噂だがな、悪い噂からいこうか⋯⋯」



 そういうと話し始めた。

 私の噂⋯⋯それは私が裏口入学しているという、しかも首席をお金で買ったと。

 何処からそんな噂が?

 そしてちらりと、お兄様方を見ると⋯⋯。

 あぁ、また怒っていらっしゃるわ。

 他にも学年問わず男性に媚びているとか先生方も取り込んでいるとか、弱い者を苛めている等々⋯⋯。

 変わって良い噂は階級や男女関係なく優しい、勉強も分からないところがあれば質問すれば教えてくれる、説明が分かりやすい等、さっきとは真逆。

 というか、その噂の方が何だか恥ずかしいわ。

 だけどこれは、お養母様達が心配していた事かしら?

 裏口云々も再度試験すれば分かる事。



「シアの悪い噂って、証拠はないけど、あの令嬢が流しているんじゃないのか? 何かにつけてシアに突っかかっているし」

「ほぉほぉ、あの令嬢と言うのは先程話していた、サンドラ・ヒュランデル公爵令嬢の事か?」

「やはり最初から外で話をお聞きになられてたんですね」

「まぁいいじゃないか! さて、生徒会としてはその噂をどうするつもりだ? アリシア嬢の事も含めてな」

「手っ取り早いのは再試験と言うことになるが、それは大事になるからね、現実的ではない。となれば、一年を全員を巻き込んで、各授業中にテストをしよう。それも、一年では難しい内容の物で」

「ふむ、入学試験は学園内の先生方以外で不正がないよう第三者の王宮の文官が入るから、今回もし不正入学が合ったとすれば、それを利用されたのだろうな。残念なことだ」

「けれど、学園内の各授業のテストとなれば、学園の先生方のみなので、不正なしに実力が分かるでしょう。そこでも仮におかしな事があれば、それは学園内の先生が疑われる事となるので、そうそう不正はないでしょうが⋯⋯」

「実技はどうする? 入学試験では魔法操作もあったが」

「それは、特別授業と称して実際に後期で行うことを前倒しで取り入れるのもありなのでは?」

「異例尽くしだな。アリシア嬢は恨まれているのか?」

「誰かに恨まれる程、まだ学園に馴染んでいないですわ」

「才色兼備だと同姓からは妬まれるか憧れの的になるかきっぱり分かれるとこだからなぁ」



 私、まだお誕生日が来てないので九歳なのだけれど⋯⋯。

 それで才色兼備ってどうなの?

 何か違うと思うわ。

 だけど、何処の世界でもあり得るって事ね、妬みや逆恨み等は。

 ほんと、面倒臭いわ⋯⋯。

 それから、準備期間をいれて、七月の終わりに授業の半時間を使って試験が行われることとなった。

 私とレグリスだけが知ってるのは良くないので、各授業で七月終わり頃に試験を実施することを周知させた。

 と言っても、試験まで一週間程で範囲は言われていないので、勉強するにしても対策が難しい。

 そこが狙いでもあるのだけれど。

 ただ、今回の試験を実施するに辺り、色んな噂がたったが、これは予測済みの事なので特に思うことはない。

 そして今回は特例の試験をする事になったわけだけど、前期の試験は免除されること無くこれもきちんと行われる。

 が、今回の試験でどのような結果になるか。

 成績次第ではクラスが落ちたり、もし、本当に不正だったとしたら、退学も免れないだろうと先生は仰っていた。

 不正とは無縁だけれど、成績に関しては私も気は抜けず、情けない結果にならないように出来るだけ頑張りましょう。

 噂を払拭する良い機会でこれを逃すわけにはいかないので、暫くは勉強に時間を費やすことにした。


ご覧頂き、ありがとうございます。

次話も楽しんでいただければ嬉しいです。

よろしくお願いいたします。

次回更新は、土曜日予定です。

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