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目覚めた世界が私の生きる場所  作者: 月陽
第2章 学園生活の始まり
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100 二人の選定


 光曜日の生徒会は滞りなく終わり、私はこの後お兄様達と共にシベリウスの邸へ帰る。

 帰りの馬車の中で、明日は離宮に行くことを伝えると、直ぐにこの間の件だと分かってくれた。

 お兄様達からも慰められたけれど、私は私の事を分かっているので、そこまで気にしていない。

 気にしているのは、そのような噂の出所だ。

 これは悪意がありありと見えるので、必ず何かあるはず。

 お祖父様にもきちんと話す予定だ。


 翌日朝食を食べ終えてから転移陣で離宮へ向かう。

 離宮に着くとエメリが待っていて、部屋で魔道具を外し元の姿に戻る。

 そして久しぶりなので、なんだかとても張り切って私の仕度を整える。

 勿論モニカも一緒になって嬉々として行っている。

 まぁいいけど⋯⋯。

 手早く整えられ、確認をする。

 安定の素晴らしさだ。

 その後、お祖父様が待つ部屋に案内されると、既にお兄様も着いていたようだ。



「おはようございます。お待たせいたしました、皆様」

「おはよう、ステラ。よく来たな」

「おはよう。元気そうで何よりだわ」

「ステラ! おはよう。今日が待ち遠しかったよ。お兄様の腕の中においで」

「お兄様! この間はごめんなさい。既にご存知なのかと思って⋯⋯」

「いや、私こそすまなかった。ステラの口からあんな事を言わせるなんて⋯⋯」

「お兄様が気にされる必要はありませんわ。(わたくし)は全く気にしておりませんもの」

「ステラが気にしなくても私が気にする。ステラは紛れ間無く私の大事な可愛い妹だよ」



 お兄様はそういうと私を抱き締めてくれる。



「お前達、二人の世界に入ってないで、詳しく説明しなさい」

「「申し訳ありません。お祖父様」」



 お兄様は直ぐにお祖父様にあの日の事を説明した。

 私が私の噂について口にしたと、それを聞いたお祖父様達は冷やっとした空気を纏った。

 私は学園に通っているときもお祖父様の手の者が見ていると思っていたのだけれど、そうではないみたい⋯⋯。



「なるほどな。ヴィンスの怒りも分かるが、もう少し自制することを覚えなさい。特にステラの事となるとお前は見境がなくなりそうだからな」

「はい、申し訳ありません」

「ステラは良い判断だったな。影に伝言を頼むとはな」

「あの場で(わたくし)がお兄様を止める事は公には出来ませんもの」

「兄がこれだからな、ステラが冷静で助かるな」

「あそこで感情を揺らすのは誉められたことではないかもしれませんが、(わたくし)はお兄様が怒ってくださってとても嬉しかったですわ」

「怒るのは当たり前だ。ステラは私の可愛い妹なんだ。それなのにあのような噂を!」

「その件についてはアンセが調べる。そうだろうヴィンス?」

「はい。父上に報告すると、既にご存知で現在噂の元を調査中だと⋯⋯ですが、父上だけでなく私の方でも調べています」

「二人が調べているならステラは気にせず学園生活を送りなさい」

(わたくし)は何もしなくてよろしいのですか?」



 私も調べたいです。

 お兄様を怒らせてしまったし、あのような噂が流れて、事実でないから気にしてはいないけど、耳に入ったときはさすがにとても悲しかったし、何故あのような噂を誰が流したかは突き止めたい。



「そのような不満そうな顔をするな。ステラは影が二人だけだろう? 調査に割ける人数ではないからな。護衛を割くわけにはいかない」

「お祖父様、その事でご相談があるのですが」

「影の事か? あやつら、何か粗相でもしたのか?」

「違いますわ。二人共よく尽くしてくれます。ではなくて⋯⋯」

「もう一人、二人増やすか?」

「え?」

「手は多い方がいいからな。ステラには後二人増やしても良いくらいだ。アンセに伝えておこう」

「ありがとうございます」



 なんだかあっさりと話が終わってしまったわ。

 お兄様はちょっと不満そう⋯⋯。

 何故なのか聞いたら「ステラに影が増えたら、余計に私を頼ってくれない」と言われてしまった。

 あの、影とお兄様は全く違います。

 影には影にしか出来ない事を頼むのであって、お兄様は私のお兄様なのだから、不満にする必要ないと思います。

 私がお兄様に抱きついたらあっさり機嫌が直ったので良かったわ。

 だけど、ちょっと単純すぎますよ。

 そう思いつつも、私も人の事は言えない。

 お兄様の腕の中はやはり安心できる。

 お兄様は優しく私の頭を撫でてくれるのが嬉しくてつい甘えてしまう。



「ふふっ。いつも大人びているステラも大好きなお兄様の前では甘えん坊ね」

「⋯⋯だって、お兄様にはたまにしかこうして甘えられませんもの。学園では一歩引いておりますから。⋯⋯あっ、そうですわ! もう少しで忘れるところでした。お兄様には一言言いたい事があるのですけれど、よろしいでしょうか?」

「どうしたの?」



 お兄様は私からの頼みだと思い嬉しそうにしているが、お兄様が喜ぶようなことではない。


 

「お兄様のお手紙、何故あんなに量が多いのです? それに内容が甘すぎますわ!」

「甘い?」

「甘いですわ。何故好きな人に書くような事を書いてくるのですか? 妹に送るお手紙の内容ではありませんわ」

「ヴィンスよ⋯⋯妹とは婚姻できぬぞ」

「そんな事分かってます! ステラへの、妹への愛が止まらないだけです! ステラは嫌かい?」

「嫌ではありませんが⋯⋯流石にもう少しお手紙の枚数を減らしていただけると、内容も考えていただけると嬉しいですわ」

「何枚書いてるんだ?」

「ざっと二十枚から三十枚程ですね」



 枚数を聞いたお祖父様はさすがに呆れ顔だ。


 

「ヴィンスよ、流石にそれは止めよ。それはもはや手紙ではなかろう⋯⋯」

「⋯⋯ダメかな?」

「ダメではありませんが、減らしていただけると有り難いですわ」

「ステラがそう言うなら⋯⋯自重するよ」



 これであの恋文みたいなお手紙は減るかしらね。

 嫌ではないけれど、流石にね、妹としてはどうして良いのか分かりません。

 話が一段落したところで、皆で昼食を共にしお兄様は後ろ髪を引かれながらも王宮に戻っていった。

 私はこの後お祖父様と話の続きを、その後はお祖母様からは採寸と新しいドレスを仕立てるのに予定を入れられた。


 今日はとてもお天気が良いので、珍しくお祖父様とは庭園で話をすることとなった。

 お祖父様とのお話しは主に私の学園での事を聞かれた。

 なので、必然的にヒュランデル嬢の事も話しをしなくてはいけなくなったのだけど、ヒュランデル家の事を教えてくれた。

 曰く、現公爵は財務長官で、かなり厳しいらしく、彼の下で働く者達は精神的に鍛えられるとか。

 これだけだと、公爵家の邸に帰れないことはなさそうだけれど⋯⋯。

 お祖父様にその事を聞けば、教育には厳しいらしいのだが、後妻とは折り合いが悪いらしい。

 前妻を亡くして数年が経ち、一族から後妻を娶れと言われて迎えたのが現公爵夫人。

 だが、子が出来るとその途端に今迄の大人しく優しい面差し態度から一変し、比べ物に成らないくらいガラリと振る舞いが変わったという。

 それを直で見てるのは前妻の子供達と公爵家で働く者達だ。

 公爵が邸に帰ってきたら夫人は付き合っていた頃と同じ振る舞いをするので、公爵がいるときといない時との差が激しく、まさに二重人格のような感じらしい。

 公爵はというと前妻の子供達には父親らしい事をしているが、後妻の子、つまりサンドラ嬢には父親らしい事は全くしていないらしいく、まぁ元々再婚を望んでいなかった上に、義務で子をなしたので全く情は無いという。

 それ故に母の教育しか受けず、甘く育てられたのであのような性格になったらしい。

 私がSクラスにしては会話が成り立たない上に、見ていると、勉学もあまり出来ないような感じがすることもお祖父様に伝えると、難しいお顔をされていた。

 あの学園はお金を積まれても偽装はしない、固い学園なのだけど、絶対とは言いきれないが、まぁあり得なくはないだろうと⋯⋯。

 公爵がそのような事をする筈がないとなれば、考えられるのは公爵夫人がだろうか。

 だがそこは学園の問題であって、私が調べる事ではないので、今はそっとしておこう。



「話は変わるが、影の増員で何か要望はあるか?」

「要望、ですか?」

「そうだ。あの二人は総合的に何でも出来るが、ステラが何か希望があるならアンセに伝えるが」

「そうですね⋯⋯影って男性だけなのでしょうか?」

「いや、女もいるぞ⋯⋯あぁそうだな、ステラには最低一人は女の影は必要だな。すまない、失念していた」

「大丈夫ですわ。ですが二人、ですか?」

「そうだ。ちょっとな、ラヴィラから良くない噂が溢れている。お前が五歳の頃王都で呪術を受けたのを覚えているか?」

「はい。伯母様主催のお茶会の時ですわね」

「あの時の一人がラヴィラの者だと話したろう? それがあるからステラの守りをもう少し固めておきたくてな」

「なるほど。わかりましたわ」

「選定は一週間もあれば十分であろうから来週には此処で引き合わせるようにする。複数人いればそこから自身で選べば良い」

「はい。お祖父様、ありがとうございます」

「いや、お前の安全が第一だからな」



 お祖父様とのお茶会が終わり、頃合いを見計らったように私はお祖母様に部屋に連れていかれた。

 そこにはやはりお祖母様お抱えのお針子部隊が待ち構えていて、私も流石に慣れたので、お好きにどうぞ状態。

 そして、私も此処はこうした方が、色は⋯⋯と口を出す。

 着る機会は少ないと思うのだけれど、何点ものデザインが決まり、お祖母様と一緒にお茶を楽しむと、良い時間となったので、お祖父様達に挨拶をしてシベリウスの邸へ戻ってきた。

 マティお兄様達も今回の噂を心配していたので、離宮での事を伝えておいた。


 夜、就寝の準備も終わり、モニカ達も部屋を下がった後、影の二人を呼んだ。



「お呼びでしょうか」

「えぇ、二人に謝らないとと思って」

「謝っていただくようなことは何もありませんが⋯⋯」



 二人はなんのことかと困惑したような表情を浮かべている。


 

「二人に何も言わずに影を増やすことにしたでしょう。事前に何も言ってなかったから、嫌な思いをしていたらと気になったの」

「その件でしたら、何も問題はありませんよ」

「姫様がそのようにお気にされる必要はありません。我々もせめて後一人いれば情報を集めやすいとは思っておりましたから」

「そうなのね」

「ですが、我々を慮りいただき、ありがとうございます」

「来週会うときは、二人の意見も聞きたいの。貴方達と上手くやっていける人が良いから」

「畏まりました」



 良かった。

 二人が嫌な思いをしていなくて。

 あっ、けどこの二人なら嫌なことも隠してる⋯⋯ということも?



「姫様、そのような疑いの目を向けないでください」

「そんな目はしてないわ」

「いいえ、我々の事を疑っている目をしていますよ」

「だって二人共自分の思ってることあまり話さないでしょう?」

「まぁ、そうですが、今回の増員の件は賛成ですよ。それは嘘偽りありません」

「本当ね?」

「はい、誓って本当です」

「ならいいわ」



 二人はこう言っているけれど、私ってちゃんと二人の主として出来ているのかしらね。

 そこへ増員だもの。

 そもそもの話し、私に仕えても良いと思ってくれる人いるかしら。

 そこが心配だわ。

 悩んでも一週間後には分かるのだし、悩むのは止めましょう。


 それから一週間後の闇曜日、先週と同じ時間に離宮を訪れる。

 またエメリが待ち構えていて、部屋で着飾られ流石に慣れたとは言え、今日は影の候補者に会うだけなのだから、こんなに着飾る必要は無いと思うのだけれどね。

 だけど此処に来たらこれが当たり前になっているので、仕方ないかな。

 それはさておき、お祖父様から前以て数名候補者がいるので、後は自身で見極めるようにと言われたのだけれど⋯⋯。

 はっきりした人数は書かれていなかったのよね。

 何名いるのだろう⋯⋯。

 私の仕度が整ったら、お祖父様達がいる部屋に案内される。

 部屋にはお祖父様とベリセリウス侯爵がいらっしゃった。



「おはようございます」

「おはよう。今日のステラの装いも良いな。先週デザインしたものだろう? よく似合っている」

「ありがとうございます。お祖父様」



 お祖父様と挨拶が終わるとすっとベリセリウス侯爵からの挨拶を受ける。


 

「おはようございます。エステル殿下、ご無沙汰しております。とてもお美しく成長されましたね」

「ありがとうございます。侯爵に会うのはお久しぶりですね」

「はい。学園では娘が殿下と懇意にしていただいているようで、ご迷惑をお掛けしてはいませんか?」

「迷惑だなんて、とても良くしていただいていますわ」

「それを聞いて安堵いたしました」



 ティナお姉様は家で私の事を話しているみたいね。

 (アリシア)として接しているから、色々と大目に見てくれているでしょう、きっと。



「さて、先週の件だが、手紙で送った通り候補者が数名いるのでな。ステラが自身で二人選ぶと良い。アンセとエリオットが選別したので問題はないだろうが、相性があるから選べ」

「分かりましたわ」

「では此処に呼びます」



 侯爵はそう言うと私の影の候補者がこの部屋に姿を見せた。

 その人数、九人⋯⋯思ったよりかなり多い。

 私、まだ表舞台に経ってないし、王宮にはもう五年も帰っていないのだけど、何故こんなに候補者がいるのかと疑問に思う。



「殿下、この人数に戸惑っていらっしゃるのですか?」

「純粋に驚いているの。思っていたより候補者が多かったので⋯⋯」

「これでも厳選して絞ってきたのですよ」

「それって⋯⋯」

「候補を募ったら、二十人強おりましたので、半分以下に削ぎ落としたのです」



 そんなにいたの!?

 というか、削ぎ落とした!?

 侯爵の言葉を聞いた影の候補者達の顔色が若干悪くなった。

 一体何が行われたのかしら⋯⋯。

 私といる時はとても穏やかな感じなのだけれど、やっぱり長ともなれば、裏では違うのかしら。

 ちょっと興味があるけれど⋯⋯。

 ちらっと伺えば⋯⋯うん、触らない方がいいわね。



「ステラ、好きなのを選んで良いぞ」



 お祖父様、その言い方は⋯⋯物ではないのですから。

 選ぶと言っても取り合えず、顔が見えないわね。

 九人共に跪ずいているのだもの。



「先ずは顔を見せてほしいわ」

「「「はっ」」」



 私がそう言うと皆一斉に顔をあげた。

 女性が三人ね。

 先ずはそこから一人選びましょう。

 三人を、一人ずつ目を合わせていくと何となく、水色の髪の女性が気になった。



『二人共、あの三人の女性の内一人選ぶわ。二人は思うところはあるかしら?』

『あの三人ならばどの者を選んでも姫様の助けになるかと。ただ、私としては水色の髪の者がお勧めですね』

『理由は?』

『彼女は人族と竜族の間の子ですので、今後姫様のお役に立つかと』

『どうして?』

『⋯⋯いえ、分からなければ良いです』



 何それ⋯⋯。

 だけど私の直感も彼女だと感じている。

 感で選ぶのもどうかと思うけれど、彼女が良いと思う。

 うん、彼女にしよう。

 後は男性から一人⋯⋯。

 さてどうしようかな。

 一人ずつ見定めていく。

 うーん⋯⋯可もなく不可もなく?

 何だかぴんとこない。

 と、そこで一人の男性? いや、成人してない、私より一つか二つ年上の男の子もいた。

 彼と目を合わせようとしたら、避けられた⋯⋯。


 

 ――えっ?


 

 私はじっと彼を見るけれど、私の視線を感じているのか、全くこっちを見ない。

 私は無意識に彼の前に行き顔を覗くけれど避けられる。

 そこまで避けずとも!

 もしかして、嫌われている?

 だけど、私が嫌いならそもそも此処にはいないよね。

 私は彼の頬を両手で挟み、強制的にこっちを向かせた。

 けれど、視線は避けられる。

 その様子をお祖父様達はじっと面白そうに見ていたのには全く気付かなかった。



「どうして(わたくし)を避けるのかしら?」

「申し訳御座いません。視線を合わせるのはご遠慮いただきたく⋯⋯」

(わたくし)が嫌い?」

「まさか! そのようなことは御座いません⋯⋯が、あの、手も離していただけたらと⋯⋯」

「理由を言うまで離さないわ」

「き、緊張するからです! 恐れ多くも主となられる方と視線を合わせるなんて! お許しください⋯⋯」



 なるほど?

 まぁ、理由を話したので、取り合えず両手を下ろした。



『ねぇ、もう一人は彼で良いかな?』

『⋯⋯そうですね、今のような所は欠点ではありますが、それを除けばこの者は幼いですがかなり優秀ですので、否はありません』

『同じく』

『分かったわ。ありがとう』



 私はソファに座り直し、お祖父様達に向き直る。



「決めたのか?」

「はい。女性は水色の髪の方を、もう一人は(わたくし)の視線を避けた方に決めます」

「ほぉ、また面白い人選をしたな。理由を聞いても?」

「理由⋯⋯と言う程の事もないのですが、直感で、二人が良いと思ったのです」

「ふむ。直感も大事だ。ステラがそう思ったのなら、必要なのはその二人なのだろう」

「では他の者達は退かせ⋯⋯」

「待って!」



 私は咄嗟に侯爵を止めた。


 

「殿下、如何されましたか?」



 私は他の人達を選ばなかったけれど、彼等は私に仕えても良いと思ってくれた人達。

 そのまま返したくなくて、侯爵の言葉を遮ったのだ。

 私は再度彼らに向き直り、言葉を掛けた。

 本当は私の立場でこのように言葉を掛ける必要はないのだろうけれど。

 私はそれでも声をかけたかったのだ。



(わたくし)に仕えたいと思ってくださってありがとう。これからも王家の為によろしくお願いしますね」

「勿体無いお言葉です」



 そう、一番年年嵩であろう人が代表してそう答えた。

 それと同時に姿を消した。



「ステラのそういうところが人気なのだろうな」

「確かに。殿下の人柄ですね。私も若くて自由なら殿下に仕えたいと思いますから。子供達が羨ましいですね」



 それは⋯⋯喜んで良いのかしら?

 侯爵はお父様の側近でしょうに。

 素直に喜べない。



「では、無事選定が終わりましたので、王宮に戻ります」

「あぁ。ご苦労だったな」

「侯爵、休息日なのに来ていただいてありがとうございます」

「いえ、殿下の為なら何時でも馳せ参じますよ」



 そう言って、王宮に帰っていった。

 お祖父様からは先に契約を結んできなさいと、その後昼食を共にしようと言うことで、部屋に戻ってきた。

 これから一人ずつ、契約を結ぶ。

 まずは女性から⋯⋯。

 先の二人同様、先程は何も聞かなかったけれど、やっぱり何故か理由は聞いておきたい。



「二人共、私に仕えたいと思ってくれてありがとう。先程はあえて聞かなかったのだけれど、何故(わたくし)に仕えようと思ったのかしら? 先ずは貴女からね」

「はい。私が殿下にお仕えしたいと思いましたのは、長も申してました通り、暖かみのある人柄の良さが一番ですが、何と言うか、殿下には何故か惹かれるものがあります。そして、私の生まれの特性が殿下の助けになるかと」

「そう言えばさっきアステールがそんなこと言ってたわね。よく意味が分からなかったのだけど⋯⋯」



 そう言うと彼女は黙ってしまった。

 何だろう、何とも言いがたい瞳で見られている。

 まぁいいわ。



「貴方は何故(わたくし)に仕えたいと思ったの?」

「えっ⋯⋯と、あの⋯⋯僕は、そのお仕えするなら王女殿下が良い、です」



 何だか先程と話し方が違うわね。

 長である侯爵がいたからかしら⋯⋯。

 だけど私だと言葉が幼くなるって⋯⋯まぁ、別に良いのだけれど、どうなのかしらね。

 だけど、言葉は直球で、その言葉は単純に嬉しい。

 あまり追い詰めても可哀想だし、二人に一応契約を結んで良いか確認をすれば「「否はありません」」ときれいに揃った。

 なので、一人ずつ契約を結ぶ。

 女性には“セリニ”と男の子には“ルアノーヴァ”の名を与えた。

 二人続けて契約を結んだけれど、前回みたいな疲れはない。

 成長したってことかな。

 これで先の二人もゆっくり休むことも出きるだろうし、私も情報を得やすくなったので、これで一先ず目先の心配はなくなったかな。

 先に知っているかと思うけれど、アステールとノヴルーノを紹介し、契約の義が終わったので、お祖父様達と昼食をとるのに食堂へと向かった。


ご覧いただきありがとうございます

次話も楽しんでいただけたら嬉しいです。

よろしくお願い致します。

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