表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/22

自粛7日目 増量

 さて、なんだかんだとやることができてきた。

 自炊は継続しているし、剣の稽古も一応毎日ちょっとずつはやってみている。

 その上、漫画も読むようになったので、ボーっとしているだけの時間はかなり減ったと言っても良い。

 とはいえ、まだまだ退屈な時間はあるもので、昼食を終えてしばらくした時、私は王女に話しかけた。


「ねえ、王女ー」

『カリカリ、あ、はーい、なんでしょうか?』


 もう、なんか食べてるのがデフォになってきてるな。


「あのさー、この前セシリアさんの動画見せてくれたじゃん」

『あ、はい、そろそろ中級編に行きますか?』


 ああ、そういえば、あれ初級編だったな。もう中級も用意できるてるのね。


「いや、それは追々でいいんだけどさ。魔法使ったら、あんな風に映像も送れるの?」

『そうですね。念話より少し魔力の消費が重いですが、映像も送ろうと思えば』


 おお、ということは、LINEのテレビ通話みたいなこともできるのか。


「じゃあさ、王女のこと見てみたいんだけど」

『……ぶえっ!?』

「できるんだよね?」

『で、できはしますけど……』


 私の申し出に、なぜか動揺する王女。


『その今はまだ、都合が悪いといいますか……』

「何よそれ」


 なんだか歯切れが悪い。


『いや、私としても、ちゃんとお互いの顔を見合って、お話しできたらなぁ、とは思っているのですが、何分すぐにはそれができない事情がありまして』

「あー、あのさ、もしかして」


 王女と出会ってからここ数日の様子から、私は一つの予想を導き出した。


「王女、太った?」

『はうあっ!!!?』


 あ、図星っぽい。


『な、なぜ、そんな……!?』

「いや、だって、しょっちゅうお菓子食べてる音聞こえるし。自粛で外出もできないし。魔法で動かなくても何でも出来ちゃうし」


 太る要素しかない。


『う、ううう、そうです……。太ったんですぅ……それもかなりorz』


 涙声の王女。四つん這いになってうなだれている姿が目に浮かぶ。


『いや、だってしょうがないじゃないですか。家臣も引き払っているから、誰の目もないわけで……! 普段はこれでも王族らしいふるまいを頑張っているんですよ。食べ物にもあまりがっついたりしませんし! でも……でも……!!』

「はいはい、しゃーないしゃーない」


 まあ、誰だって、合法的にダラケられる環境ができたら、こうなるわな。


『もうほっぺたぷくぷくなんです。お腹の肉もこんなにつまめちゃうんです(T T)』

「わかったから……」

『私なんて豚なんです。豚王女なんですぅ……』


 そこまで自分を卑下しなくても。


「じゃあさ、ダイエットしようよ」

『ダイエット……』

「部屋の中でもできる運動すればさ。自粛太りも解消できるって」

『な、なるほど!』


 ポンと、王女が手を打つ音が聞こえた。


『た、例えば、どんな運動が良いのでしょうか?』

「うーん、そうだね。基本的に、ダイエットは有酸素運動がいいんだけど……ダンスとか?」

『ダンスですか。お相手が欲しいところですね』


 たぶん彼女の中でのダンスと言えば、舞踏会のバロックダンスなんだろう。

 

「いや、もっと激しいやつ。例えば、こんな」


 私は、立ち上がって、腕を振りながら、左右にステップを踏む。

 そのままボックスステップを踏んだり、ランニングマンをしたりしてみせる。


『おおっ!?』


 どや。伊達に高校の体育でダンス履修してたわけじゃない。


「こんな感じ。王女もやってみ」

『は、はい!』


 というわけで、今度は王女のために少しゆっくりめでやってみる。


『ほっ、はっ、よっ!! こんな感じでしょうか?』

「こっちから見えないからわからん」

『そ、そうでした!』

「もうさ、別にそっちの様子見せてくれても良くない? 別に多少肥えてても笑わんし」

『えー、でもー、やっぱりもうちょっとだけ待って下さい。勇者様に最初に見せる姿は、やっぱり美しい姿でいたくて』


 何可愛い事言ってやがんだ。

 私が男だったら、ちょっとだけクラっと来てたかもやぞ。


「じゃあ、頑張って早く痩せよう。よし、目標7日ね」

『な、7日!? が、頑張ります……!!』


 さて、7日後が楽しみだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ