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自粛6日目 漫画

 剣の修行に飽きました(フラグ回収)。

 いや、最初は楽しかったんだけども、やっぱ大きいとはいえ、部屋という空間の中で、ただ振り続けるのには限界があった。

 せめて、庭くらい行かせてくれてもいいのに、「勇者様が万が一にも感染したら試合終了なのです!」とそれだけは王女が許してくれなかった。

 まあ、私がうつされるだけじゃなくて、私からうつす可能性もあるわけだしな。その辺りの事情は仕方ないか。


「ねえ、王女、また、召喚頼みたいんだけど」

『あー、はいはい。いいですよ』

「じゃあ、これ渡すから、これと交換してくれる」

『わかりました~』


 私は、机の上に、財布に入っていた紙幣を数枚置く。

 お金さえ払えば、お店にあるものを召喚させても構わないだろうという考えだ。

 昨日は召喚をお願いできなかったので、何を持って来てもらうかじっくり考えた。

 WIFIや電気を使った機器は、こちらでは役に立たない。

 生活必需品に関しても、ほぼほぼこの部屋は完璧に揃っているので、取り寄せてもらう必要もない。人に会わないからメイク道具も別にいらんし。

 となると、持って来てもらう候補になるのは、「電気を使わない娯楽グッズ」、しかも、「一人で使えるもの」だ。

 そうなったら、もう答えは決まっている。


『召喚!!』


 王女の声と共に、机の上にあった紙幣が消えて、代わりに数十冊ほどの本が現れる。

 そう漫画だ。

 漫画というのは読むのに意外と時間がかかる。

 特に私は読むのが早い方じゃないので、1冊読むのに1時間近くかかることもある。漫画を読むのにもそれなりのエネルギーが必要なのだ。

 そんなわけで、社会人になって以降、漫画からは少し距離が遠のいていたのだが、この機会に読みたかった漫画を一気読みするのも悪くない。


『これなんですか?』

「漫画って言って、絵とセリフで読むお話」

『へぇ、絵巻物みたいですね。面白そう』

「王女も読んでみる?」

『いいんですか?』

「うん」


 しれっと読み返したいと思っていた漫画を布教する。

 私は、ずっと読めていなかった漫画の新刊と気になっていた漫画から読むこととしよう。


『うわぁ、かわいい絵ですねぇ』


 王女も楽し気に読んでいる。

 ベッドに寝ころびながら、思うさま漫画を読む。これは至福の時間だわ。


 


 数時間後──




『勇者様!! なぜゆえ! なぜゆえ!! 彼女はこっちの男とくっついたのですか!!? 絶対こっちの男の子の方が幸せにしてくれますって!!』

「わかる! いや、わかるけど、本命の魅力にはやっぱ叶わんて。純朴な主人公がオレオレなイケメンに惹かれるのも道理じゃん」

『えっ、でも、私だったら、自分の事「おもしれー女」とか言ってにやついてる男嫌ですよ。どんなに顔が良くても!!』

「これ漫画だから! いいじゃん。漫画の中くらいナルシスト俺様系のイケメンがいたって。考えるな。感じろ」


 すっかり漫画のストーリーにのめり込んだ王女と感情的に感想をぶつけ合うことになっていた。

 まあ、初めての漫画で耐性がないんだろうけど、めっちゃ感情移入して読んどるわこの人。


『いいです! 私はやっぱり真面目で一本気なこちらの方を推します!』

「えー、彼は確かにいい奴だけど、いい奴どまりって感じだしなぁ」

『いえいえ、こういう義理人情のある人こそ、内政も安定するというものです。民にも愛される人柄です』


 もう婿に迎える感覚でしゃべっとるな。


『いやぁ、でも、漫画って面白いですね』

「だしょ。次はこのファンタジーものとかどうよ」

『あ、是非、読みたいです!』


 今後しばらくは、漫画読んだり、王女と感想を交流したりで楽しめそうだ。

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