自粛3日目 遊戯
おだやかに過ごしている。
お城の窓からボーっと景色を眺める。
街の方にも人影はなく、動くものといえば、鳥と遠くに見える牧場の家畜くらい。あとは雲も。
日本で言うところの小春日和。
ポカポカと暖かく、惰眠を貪るにはもってこい。
このまま昼寝でもしようか。
『おーい、勇者さま~』
「んー、なに?」
王女だ。
『お暇ですか?』
「うん」
超絶に暇。
『何か二人でしませんか?』
ついにそんな提案してきた。まあ、あっちも暇なんだろう。
「何かって?」
『ゲームとか』
ゲームねぇ。
『「ビルダンヨルダンゲーム」とか』
「なにそれ?」
『まず、私が何か適当な言葉を言います。次に勇者さまが私の言った言葉の最後の文字から始まる言葉を言います。それを続けます』
「しりとりね」
ビルダンヨルダンってなんだよ。
『じゃあ、私から……リンゴ!』
「ゴリラ」
『ゴリラ、ラ、ラ、ラッパ!』
「パセリ」
『リ? リ、リ、リバーネイム!』
「なにそれ? 人の名前かなんか?」
『お隣の国名です』
「ふーん……じゃあ、ムササビ」
『ムササビってなんですか?』
ゴリラはわかるけど、ムササビはわからんか。
「滑空できるリスみたいな生き物」
『へぇ! そんな生き物がいるんですね! じゃあ、ビ、ビ、あ、ビルダンヨルダン!!』
「ん、がついたぞ」
ビルダンヨルダンの意味はわからんけど。
『ん、で終われました! 私の勝ちですね!』
「え、そういうルールなの?」
よくわからんわ。
『もう勇者様よわすぎ~』
「うざっ」
ルールが逆なんだよ。私の世界では。
それに微妙に使ってる言葉も違うから、このゲームそもそも成り立ってない。
『じゃ、じゃあ、次はパランパンゲームとかどうですか?』
「どんなゲーム?」
『お題に沿って、それに関係ある言葉を続けるゲームです。国の名前とか』
「却下」
要するに古今東西ね。しりとりと同じで、お互いの知識に違いがありすぎる。
お題、山手線の駅名、とか言っても、あなたわからんでしょうし。
『んー、じゃあ、10回言ってゲームとかどうですか?』
「それは普通の名前なんかい」
『じゃあ、私から行きますね。ピザって10回言って下さい』
「ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ、ピザ」
『腕の関節の部分は?』
「ひじ」
『くぅ、なかなかやりますね』
いや、これおもしろいか?
『じゃあ、勇者様どうぞ』
「え、ああ、じゃあ、シンデレラって10回言って」
『シンデレラ、シンデレラ、シンデレラ、シンデレラ、シンデレラ、シンデレラ、シンデレラ、シンデレラ、シンデレラ、シンデレラ』
「毒リンゴを食べたのは?」
『旧き太陽の美姫、イプール・アルーサ』
「誰やねん」
ダメだ。これも、成り立たん。
「ふぅ……」
『ふぅ……』
「暇だな……」
『暇ですねぇ……』