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自粛19日目 猶予

「そんなわけで、私、役割が無くなっちゃったんだ」

『そうか』


 およそ3日ぶりの魔女さんとの映像念話を通して、私は現状を報告していた。


「停戦協定も正式に締結されたみたいだし、もうすぐ私も帰らなくっちゃ」

『……寂しくなるな』

「悲しんでくれてるの?」

『当然だ……だが、これで良かったとも思う』

「その心は?」

『勇者が危険な目に遭わずに済んだ』

「はは、魔女さんは優しいねぇ」


 ひとしきり笑うが、途中でどうにも途切れてしまう。


「私も寂しいなぁ」

『別に魔王討伐なんて理由が無くてもこちらにいればよいではないか』

「うーん、まあ、こっちの生活が嫌いなわけじゃないんだけどね。ただ、やっぱり向こうにも色々残してきたものがあるからさ」


 一人暮らしとはいえ、同じ市内には家族もいるし、友達もいる。

 仕事は……ぶっちゃけそんなに未練ないけど。


「まあ、元の世界に戻るには、そういう日を選ばなくちゃいけないらしいから、まだ、もう少しはこちらにいると思うけど」

『そうか。だったら、早くこの自粛が終わると良いな。そうすれば、少しでも、この世界で冒険ができるかもしれない』

「んー、冒険は別にいっかな。まあ、いつも見てる城下町とか、魔女さんのお家とか、そういう場所は行ってみたいけど」

『私の家か……やめておいたほうがいいかもしれん』

「なにそれ」


 他愛無い話をしているうちに、いつしか日も落ち、私たちは念話を切った。


「……はぁ」


 学生時代の夏休みの終わりにも似たなんとも言えない感覚。

 いや、社会人になる直前の最後の大学生活のあの感覚か。

 モラトリアムを終えるような感覚に、なんだか胸に穴が開いたような気分になってしまう。


「もうちょっとだけこっちにいてもいいかな」


 そう呟きながらも、それほど長くはいられないだろうと、私は心のどこかで思っていた。

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