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自粛16日目 饗宴

 というわけで、女子会の日がやってきた。

 準備ということで、王女と二人で分担して、酒とつまみを用意する。

 ダイエットも今日だけは解禁ということで、その点でも王女はウキウキとしている。

 王女としても、友達という存在があまりいなかったこともあってか、初めての女子会でテンションが上がっているようだ。

 かくいう私もそれは同じで、恥ずかしながら、めちゃくちゃ楽しみにしている。

 大学時代にはサークルの友達と時折こうした家飲み、みたいなことをしたこともあったけど、それも遠い昔の話。

 久しぶりの気の置けないメンバーでの女子会ということで、悪くない気分だ。

 そんなわけで、必然つまみ作りにも気合が入る。

 定番の枝豆に、カマンベールチーズをベーコンで包んだもの(カロリー爆弾)。

 他にはリッツみたいなものもあったので、アボカドとか上に載せられそうなものを適当な大きさに切った。

 さすがにお城だけあって、キャビアやトリュフのようなものもあったので、これらも添えてみる。

 あとは、調子に乗って、スイートポテトも焼き上げた。

 もはやおつまみの範疇を越えつつあるが、それだけ、楽しみだと思ってもらいたい。

 ちなみに、作った料理は王女の転送魔法で魔女さんにも食べてもらう予定だ。


「さて、こっちはだいたいOKかな? 王女は?」

『こちらも準備できました!』


 王女が作ったのは、魚介の白ワイン蒸し。

 おつまみどころかガッツリ料理だが、最近、王女も料理を頑張っていたそうで、私や魔女さんに食べて欲しかったらしい。

 食事はOK。他には特に用意するものもない。

 格好も王女含め、普段のネグリジェだ。飲み会であり、女子会であり、パジャマパーティーでもある。素晴らしいね。

 さて、あとは魔女さんが来れば。

 と、そんなふうに思っていると、ちょうど私の目の前に光を放つ大きな鏡が現れた。

 王女が映像送ってくる時と同じやつ。映像念話の鏡だ。

 ゆっくりとシルエットが明らかになる。

 現れたのは、黒いコートをまとった赤い目の美少女だった。

 年齢は王女と同じくらいか、さらにもう少し下かもしれない。

 背は低めで、赤い瞳に赤い髪。カッコよく表現すると「紅蓮」なんて言葉が思い浮かぶ。

 王女と同じくファンタジーファンタジーした見た目だ。


『こ、こんばんは』

「うわぁ、魔女さん、めっちゃ可愛いじゃん」

『そ、そうだろうか……?』


 いかにも魔女なコートを羽織っていて、特段着飾っているわけではないんだけど、とにかくベースが可愛い。

 肌もきめ細やかでめちゃくちゃ綺麗だ。ちらりと見える八重歯もかわいい。若さを感じる。


『魔女さん、こんばんは~』

『あっ、王女。……こんばんは』


 王女の貴族風の会釈に、魔女さんは軽く頭を下げて返す。

 うんうん、王女にとっては、まだ、会って間もない相手だけども、なんだかんだ仲良くやれそうだ。


『あ、ところで勇者……。あの、最初に謝らないといけないことが……』

「ん、何?」

『実は料理が用意できなくて』

「ああ、こっちでたくさん用意したから、魔女さんにも送るよ」

『そ、そうか…良かった……。あ、いや、代わりと言ってはなんだが、以前、戦利ひ……人から譲り受けた酒を用意した』


 ドンッ、と魔女さんが机の上に置いたのは、私の世界では比較的見慣れた酒瓶だった。

 瓶の表には達筆な字で「魔王」と書かれている。


『なにやら異世界産のお酒だそうだ。ずっと眠らせておくのもあれだったので、この機会に味わうのも良いかと思って』

「おお~、いいね。結構高いやつだよ」


 確か上司が飲み屋でストックしてる日本酒の中にもあった気がする。

 それにしても「魔王」か。なんか、魔女さんにとても似合っている気がする。


「"魔王"かぁ……」

『うぇっ!?』

「ん? 魔女さん、どうしたの?」

『お、お前、知っていたのか……?』

「知っていたって、魔王のこと? うん、私の世界にあるお酒だし」

『お、お酒……? あ、この酒、魔王という名前なのか……?』

「そうだよ~。私は飲んだことはないんだけど。だから、楽しみ」

『なんと紛らわしい……ほっ』


 なんだか安心した様子の魔女さん。

 よくわからないけど、まあ、いいか。


「じゃあ、とりあえず乾杯しようよ! 魔王は最後に取っておいてさ。最初はワインでどう?」

『いいですよ~。では、転送します』


 王女の転送魔法で、全員にワインのグラスが行きわたる。

 では、改めまして。


「三人の出会いに」

『漫画の完成に』

『えっ、ああ……えーと、混線という運命の悪戯に』


『かんぱーい!!!』


 こうして、離れ離れではあるけど、女子だけの楽しい念話飲み会が始まったのだった。

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