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自粛15日目 披露

 漫画が完成した。

 我ながらかなり頑張ったのではないかと思う。

 最も難航したネーム作りが完了してからは、比較的早く描けた。

 といっても、普通の漫画に比べれば、かなり簡易的な絵だし、ペン入れとかしているわけではないので、ラフといっても差し支えないレベルだ。

 それでも、処女作には変わりない。

 さて、王女がどんな反応するか、ということでさっそく見せてみたのだが。


『さいっっっっっこうじゃないですか!!』

「いや、そこまでか」


 お褒めに預かり光栄なんだが、さすがにそこまで言われると逆にむず痒い。

 まあ、自分が原作したものがこうやって漫画になったのだから、そりゃ感動もするか。

 絵は簡易的だと言ったけれども、キャラクターの作画には妥協してない。

 王女がイメージする姫と平民の男をバッチリ形にできたはずだ。

 特に王女は、実際の王女の姿を見ないで描いたにもかかわらず結構寄ってる気がする。

 同じキャラクターを元に、ラノベ表紙風に描いたのが実際の王女で、少女漫画風に描いたのが私の漫画の王女って感じかな。


『ああー、自分で考えたお話ながら、ときめきますねぇ。私にもこんな殿方がいたら……』


 そういって王女が私の描いた漫画を抱きしめる。

 ちなみにダイエット成功して以降、王女との会話は基本映像付きに変わっている。

 それにしても、やっぱり王女の願望だよね、このストーリー。

 まあ、きっと、王族(こういう立場の人間)って、自由に恋愛できるもんでもないんだろうし、キャラに自己投影したくなる気持ちもわかる。


『これだけ出来が良いと、私だけが読むのはもったいないですね。いっそ本にして販売したり……』

「それは恥ずかしいからさすがに……」


 とはいえ、身内で回し読みくらいはしてもらってもいいかも。せっかく頑張ったし。


『あ、あー、テステス……』


 そんな声が聞こえたのは、王女から転送魔法で漫画が手元に帰ってきた瞬間だった。


「あれ、もしかして、魔女さん?」

『あ、勇者……久しぶり…だな』

「うん、良かったぁ。また、連絡くれて!」


 約束通り連絡してくれる確信はなかったので、こうやって実際に念話が届くと、めっちゃ嬉しい。


『ん、ちょっと待て! 隣のその女……王女か?』


 厳密には隣に実際いるわけではなくて、例の魔法の鏡越しではあるけど。


「そうですよ」

『あなたが噂の魔女さんですね。私が勇者様を召喚した王女です』

『あ、ああ……西の魔女だ。宜しく』


 挨拶を返す魔女さんの声に若干の戸惑いを感じる。

 あれかな。相手が高貴な身分の人だから、ラフには話辛いのかな。


『ところで魔女さんってどちらにお住まいですかね? 北の魔女さんとは顔見知りなのですが、不勉強ながら、貴女の事を存じ上げておらずで……申し訳ありません』

『そ、そう恐縮しなくてもいい……。私は魔女と言っても、それほど力のある魔女ではないから、知らなくても無理はない。ははっ……』

「まあ、みんな初対面ということで問題ないじゃん」


 お互いどこか遠慮しがちな二人の間にインターセプト。


「魔女さん、魔女さん、実は見てもらいたいものがあって」

『見てもらいたいもの?』

「これ」


 といって、魔女さんが見てるであろう方向に向かって、自分の漫画を差し出す私。


『これは?』

「漫画って言って、絵とセリフで描いたお話。私が描いたの」

『なんと……これを勇者が』

「パラパラめくるから、眺めてみて」


 ゆっくりとページを開いていく。

 無言だとちゃんと読んでくれてるか不安になるが、ところどころで「おぉ」とか「む、むぅ…」とか唸っているのが聞こえてくる。

 そのままじっくりとページをめくり、10分ほどをかけて最後の頁までを開き終えた。


「どうだった……?」

『ふむ、このようなものは初めて見たが……興味深かった。勇者は絵が上手いのだな』

「そう? そんなことないけど」

『いや、謙遜しなくてもいい。書庫の本ではあまり見ない絵のタッチではあるが、美しいし、なんなら出版してもよいのではないか』


 魔女さんにも出版を奨められる私の漫画。

 みんなめっちゃ褒めてくれるやん。

 まあ、きっとこの世界って私の世界に比べたら娯楽が少ないんだろう。

 でも、売るってなったら、こちらにも印税とかあるのかな。

 異世界印税生活とかもありですな。


「ところで魔女さん、どうせ念話するのだったら、映像念話にしませんか? 私、魔女さんの姿見てみたい!」

『あ、私も見てみたいです』


 私の提案に王女が同意した。


『え、映像かぁ……うーむ。まあ、化けるのは得意だし』

「何か言いました?」

『いや、何でもない!』


 どうしたんだろ?


「やっぱ無理?」

『いや、構わんぞ。ただ、今日はもう時間がなくてな。明日ならどうだ』

「全然、明日でも構いませんよ」

『わかった。では、明日必ず』

『あっ、どうせなら、明日の夜、念話で女子会なんてのはどうでしょうか?』

「あっ、いいね!」


 せっかく女子が3人もいるのだ。

 昨今私の世界でもオンライン飲み会なんてものがあるらしいし、念話で女子会するのも悪くない。

 お酒とかおいしいものとかつまみながらお話するなんて、学生ぶりかもしれない。普通に楽しみだ。


『ふむ、女子会とやらが何かはわからんが……。まあ、時間を指定してくれるならば』

「じゃあ、月が昇った頃に。料理とかお酒とか適当に自分の分用意しといてね」

『わ、わかった』

『ふふっ、まさか自粛生活中に女子会ができるとは……一度やってみたかったんですよね』


 そんなこんなで、明日は私と王女と魔女さんでオンライン飲み会……もとい念話女子会をすることに決定したのだった。

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