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自粛12日目 魔女

「無理……」


 漫画を執筆活動を開始して1日、私は早くも壁にぶつかっていた。

 ネームを切れない。

 昨日の綿密な打ち合わせで、ストーリーは頭の中ですでに鮮明に流れているのに、それをどうネームに落とし込んだら良いのか、わからないのだ。

 少し筆を進めて……やっぱ違う。

 また進めて……やっぱ違う。

 ずっとそれの繰り返し。

 結果、予定していた32ページのうち、曲がりなりにもネームが完成したのはわずか4ページ。

 実質、表紙の見開きと、王女のキャラ紹介くらいで終わっている。

 まだ、これから恋愛することになる相方すら登場していないのだ。


「やっぱり自分で描くとなると、難しいなぁ……」


 元々イラストはそれなりに描けていたから、漫画もなんとなく描けるんではないかと高を括っていたのだが、その目算は完全に甘かったと言って良い。

 結果、執筆時間のほとんどを参考に漫画を読み漁ることに費やしていた。

 これって結局3度目、4度目、読み返している状況と変わらないんじゃ……。


『ほっほっ! 勇者様!! ほっほっ! 漫画の方は! ほっほっ! どんな感じですか?』


 おそらく今日もダンスに精を出しているであろう王女が問いかけてきた。


「うーん、まだまだかかりそう」

『ほっほっ! そうですか!! ほっほっ! まあ、時間は! ほっほっ! ありますしね!』


 まあ、そだね。

 一気に描き上げる必要もないし、気分が乗る時に、少しずつ描き上げていくことにしよう。


「それにしてもこの自粛っていつまで続くの?」

『脅威がなくなったとはっきり判断できるまではなんとも言えないですね』

「それってどう判断するの?」

『教会の司祭様判断ですね。この病気を治療できるのって司祭様だけなので』

「ふーん」


 なるほど、治療できる人が1人しかいないわけか。それじゃ、1日に何人も罹患者が出たら、どうしようもないもんね。


『────あー、あー、テステス』

「ん?」


 突然、脳内に声が響いた。

 いや、王女の声はいつもこんな感じで響いてるのだけど、王女とは違う声がしたのだ。


「…………あんた誰?」

『うわっ!? お、お前こそ、誰だ……!?』


 声の主は、びっくりしたように言葉を返してきた。

 女の子の声だ。王女の少しおっとりした声とは違って、パキパキと早口な。


「えーと、私は勇者……らしい」

『えっ、勇者!? あー……どうも』

「はいはい、どうも。あなたはどちら様?」

『私!? えーと、私は魔お……じゃなくて魔女、に、西に住んでる魔女……だ』


 ほうほう、西の魔女さんとな。

 なんとなく、魔女と言われると老婆のイメージがあるけど、声からして、少なくとも私と同年代くらいか。下手したら10代かもしれない。


「ところで何か御用ですか?」

『あ、いや、ちょっと暇だったから、四天王……じゃなくて、友達にテレパスしようと思ったら、混線したみたいでな』


 念話も混線とかするんだ。


『あ、すまん。すぐ切るから』

「ちょい待ち!」

『えっ、何……?』

「どうせ暇だったら、おしゃべりでもしない?」


 しゃべり相手が王女だけだったから、正直会話に飢えてるんだよね。


『おしゃべり? ま、まあ、構わないが……。自分も勇者の情報が知りたい……いや、勇者という存在に興味があって』


 おっ、案外乗り気かな。きっと魔女さんも自粛中で暇を持て余しているんだろう。


『勇者は異世界から召喚されたのか?』

「そうだよー。日本という国から来たの」

『ニホン? ああ、そういえば、以前書架で見たことがある。なんでも、科学? というものが進んだ世界なのだとか』


 日本についての本があるのか。

 案外、こちらの世界と日本って、つながりが深いのだろうか。


『勇者の目的は……やはり魔王討伐か?』

「まあ、王女にはそんなこと言われてはいるかな」


 とはいえ、自分から能動的に魔王討伐したいというわけではないけれども。


『なるほど。ちなみに今、レベルは?』

「えーと、30だったかな」

『30……その程度か』

「ん? 何か言った?」

『いや、何でもない!』


 何を焦ってるんだろう?


「こちらからも質問いい?」

『あ、ああ』

「魔女さんっておいくつ? 凄く声若いけど」

『えっ、えーと、そうだな。1万飛んで19歳──』

「1万!?」

『あ、いや、嘘! ほ、本当は19歳!!』


 びっくりした。さすがに異世界とはいえ、1万歳はないよね。


「私25~。ずいぶん若いんだね」

『そ、そうだな。確かに、身内の中では若輩者の部類ではあるか』


 魔女の身内ってどんなだろ?


『あ、すまん。ちょっと将軍……じゃなくて、兄から呼び出しが来たから』

「そっかー。お話ししてくれてありがとね。もし、良かったら、また、念話飛ばしてよ。私も自粛で暇してて」

『えっ!? ……あー、うん、まあ、構わんか』

「やったー。じゃあ、またね。いつでも都合が良い時に」

『わ、わかった……!』

「じゃあね~」


 まさか、念話の混線で新しい話し相手ができるとは。

 また、近いうちに話せると良いな~。

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