表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/22

自粛9日目 成長

 さすがに、中途半端で終わってしまった中級編の映像水晶には続きがあったようで、今日は中級編その②の映像を視聴した。

 身体能力を一時的に向上させる『気合』スキルや攻撃スキルの『瞬刃』(相手に向かって突進しつつ突きをお見舞いする技)などを覚えた。

 しかし、もう一つ教えてもらった攻撃スキル『兜割り』は練習方法に困った。

 どんな技かというと、剣を思いっきり振り下ろして、相手を脳天から砕くという豪快な技だ。

 案の定、室内で手本を見せたセシリアさんは、今度は床に穴を開けて、また、母親に説教食らっていた。そりゃそうやろ。


「なんとかこの技も練習できないかな」


 とはいえ、何もないところでやれば、セシリアさんの二の舞になることは確実だしな。

 サンドバッグみたいにこっちの攻撃を吸収してくれるようなものがあればいいんだけど。

 王女に召喚頼むか。でも、おっきいし、結構魔力っていうの消費しそうだしなぁ。


『いっそ魔物を召喚しましょうか?』

「えっ?」


 魔物召喚?

 そんなんありなの?


『王国のコロッセオでは、人と魔物のバトルも興行として行ってるんです。そこで飼われている魔物ならこちらに召喚できますよ』

「え、でも、たぶん殺しちゃうけど、いいの?」

『ああー、むしろ喜ばれるかと。興行も自粛中なので、魔物の餌代ばかり嵩んでしまっている状況なので』


 私の世界だったら、動物保護団体から猛抗議ありそうな事例ですな。

 まあ、殺れというなら殺りますが。


「だったら、お願い」

『わかりました。できるだけ攻撃能力が低くて、逆に耐久性能が高そうな……この子かな。召喚!!』


 王女の転送魔法で部屋の窓際に現れたのは、青くてクッションみたいなやつだった。

 これなら知ってる。いわゆるスライムというモンスターだ。

 イメージしてたよりも幾分大きく、バランスボールくらいの大きさがある。

 スライムはこちらに振り向くとにへらと笑った。


「確かにこいつだったら、思いっきり叩き切れそうね」


 弾力がありそうだし。


『では、さっそくやってみましょう!』

「OK」


 私は動画で見たように、剣を頭の上に掲げて、構えた。

 いわゆる上段の構えというやつだろうか。

 そのまま間合いを詰めて、適度な距離を推しはかる。

 スライムの方は置かれた状況がよくわかっていないのか、こちらを警戒するでもなくボーっと佇んでいる。

 これなら問題なく当てられる。


「じゃあ、行くよ」

『はい!』

「兜割り」


 スキル名を唱えた瞬間、グッと半自動的に身体が動く。

 刀身が光を放ち、そのまま真っ向から聖剣がスライムに振り下ろされた。

 弾力とか関係なかった。

 聖剣の圧倒的な切れ味とスキルの威力によって、スライムはその間抜け面を真っ二つにされて、光になって消えた。

 明らかにやりすぎな攻撃力だ。オーバーキルってやつ。

 でも……。


「結構癖になるわね」


 魔物を真っ二つにする感触……悪くない。


『勇者様、顔、顔』


 おっと、悪人面になってたようだ。自重自重。


「んっ、あれ……?」


 と、突然、私の全身がパァッと光を放った。


『あ、勇者様! レベルアップですよ!』

「あー、レベルアップ」


 これがレベルアップか。レベル1から2に上がったってことかな。

 それにしても、こんなに簡単に上がるとは。


『勇者様は「成長加速スキル極」をお持ちですから』


 これもスキル効果ですか。勇者というのは役得だらけですな。


「だったらさ、もっと魔物送ってくんない。技の練習ついでにレベル上げもできるじゃん」

『いいですね。ただ、あんまり大きい魔物はさすがに送れないので、小型のばかりになりますが』

「いいよいいよ」


 あんまりでかいのだと怖いし。


『では、召喚!!』ズバシュ!

『召喚!!』グッシャァア!

『召喚!!』ドガァン!

『召喚!!』バコォオン!


 次々と送られてくる魔物を出合い頭に切り刻む。

 飛翔斬り、瞬刃、兜割り、飛翔斬り、瞬刃、兜割り。もはやルーティーンだ。

 そして、倒すたびに私の身体が激しく発光する。

 これ、あれだ。昔、お兄ちゃんに誘われてネットゲームをした時に、やったやつだ。パワーレベリングってやつ。

 とにかく凄い勢いでレベルが上がっている。

 レベルが上がるたびに、スキルを使うためのSPというやつも増えてるみたいで、いくらスキルを使っても尽きることがない。

 そうこうしているうちに100体以上のモンスターが光となって散った。


『ゆ、勇者様、そろそろ部屋の中に召喚できそうな魔物はいなくなってしまいました』

「ほいほい。あー、いい訓練になったわ」


 実際は、出てきたそばから叩き切っていただけなので、戦闘訓練になっているのかというとはなはだ疑問ではあるが、とりあえずこの世界の基準に合わせて、成長=レベルアップはしていることだろう。


『す、凄いです勇者様! もうレベル30超えましたよ!!』

「それって凄いの?」

『並みの冒険者だったら、10年頑張ってようやく到達できるくらいですかね』

「なにそれ、チートじゃん」


 冒険者の10年分をほんの数十分で終わらせてしまった。我ながら、なんと不公平な力を持ってしまったのか。

 まあ、この分だと、自粛が明けてからの魔王討伐とやらも、ぽんぽん進むことだろう。

 あまりに楽すぎて、拍子抜けではあるけども、楽に越したことはない。

 さて、良い運動もできたし、あとは漫画でも読もうっと。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ