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#001

 





 見渡す限りの岩肌を露にした荒野、それが俺の視界に映る光景だ。


 日本でも電車を走らせなければお目にかかれないような大自然だが、日本は勿論海外でもない。そもそも地球ですらない。



 ではいったい何処なのか……話は数分前に遡る。








 △▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼








「あ゛~ようやく明日は土曜か。今週も地味に疲れた……明日はコンクリートジャングルを離れて大自然でも感じに行くかな。うん、温泉とかいいね」


 解放感につい独り言が漏れる。明日と言わず今すぐにでも向かいたいくらいだ。


 日本各所の名湯巡りなんて最高だろうな。




「……お、綺麗な夕日だ。こういう景色見ながら湯に浸かるのも乙なんだ…よ……な!?」


 ついさっきまで河辺を歩いていたんだが……一瞬の内に一面真っ白な空間に様変わりし、目の前には羽の生えた女が浮いていた。ええ~なにこれ、勘弁してくれ。




「どうもはじめまして、城ケ崎(ジョウガサキ) 優斗(ユウト)さん。私がこの世界の美人すぎる創造主"シルフィー"です」



「……いや、ここどこだよ。俺これから家に帰って日本の名湯を調べるところだったんだけど」


「か、可愛くない反応ですねえ。一体何が起こったんだ!この目の前の美しい女性は誰なんだ?、とか期待してたんですけど」



「うん、とりあえず自意識過剰な人だということは分かった。で、ここが何処か説明をお願いできますか"自称"美しい女性のシルフィーさん?」



「チッ、分かりました」


 いや舌打ちしたぞコイツ。




「ではまずこの場所ですが、世界の狭間にある空間…とだけ言っておきましょう。わざわざ説明する相手もいないので名称なんて付けていませんしね。今回は優斗さんと話をするためにわざわざ召喚しました」


 わざわざとか言うな。



「ツッコミどころ満載だけど………とりあえず分かった。あんたが人間じゃないのは一目見た時から分かっていたしな」



「ご理解いただけて良かったです。そのうえでの"あんた"呼び……は少々イラっとしますが話が進まないのでスルーしましょうか。さて、優斗さんを召喚した理由ですが……今から別の世界に行っていただきたいのです。そして残りの人生をその世界で過ごしていただきます」



「え?嫌です」


 創造主だからって人の人生を軽く扱いすぎだろ。



「即答ですか……ですが拒否権はありませんよ?行かないと今すぐ存在ごと消します」


「こわっ!?いやいやまず説明しようか、拒否できないなら尚更詳しく説明を」



「もちろんです。ではまず説明する前の大前提として、数え切れないほどある世界は全て歯車のように噛み合い互いを支えて動かしているんです。それらは【神力(しんりょく)】……私の基となる力なんですが、それの増幅装置として機能しています」



「そして【神力】は世界の創造と維持、そして動力として無くてはならないモノなのです。ここまでは大丈夫ですか?」


「なんとなくは。話の流れを見るにどこかの世界に何らかの不具合が生じて歯車としての機能が不十分になった、もしくはなりそうだから俺を派遣してどうにかする……って事でいいのかな?」



 歯車を使った説明が言葉通りだとすると一つの世界の不具合が他の世界にも影響を及ぼす筈だ。ならば俺の住む世界も無関係ではない。最悪の場合には総崩れ……それは世界の破滅を意味するのだろう。



「そうですね、その認識で大丈夫です。察しが良くて助かりますね」


「……ナチュラルに人の心読まないでくれないかな?」



「優斗さんにそんな(・・・)事を言われるとは……ギャグにしても苦笑いですね」


 そこはもういっそ大笑いすればいいと思うよ。



「ワッハッハッハー!!」


「うるせえー!とっとと説明の続きせんかいっ」



「おっと、そうでしたね。まあご察しの通りとある世界に不具合が起こりまして……本来歯車の軸に当たる部分にはその世界の余剰リソースから潤滑油のようなモノが充填されるんですが、総リソース量が不足した為に潤滑油が充填されなくなってしまって」


「あ、リソースと言うのはその世界に割り当てられた人々の魂から発するエネルギーの事で、余剰リソースは主に死後、転生するまでの間の魂から発するリソースの事を言います」



 ん~まあなんとなく?は分かった、しかし別の疑問も浮かぶ。何故ー


「何故総リソースが不足しているのか?ですよね」



「ああ、聞いた限りだと魂っていうのはその割り当てられた世界で循環するんだろ?まあ輪廻転生なんて珍しい言葉でも無いしそれは分かる。だがそうすると総リソースが減る要因が分からない。まあもしかするとそうやって循環する内に摩耗?のような事が起こって減るのかも知れないけど、そんな想定が容易な事で創造主ともあろう者が困るわけもないだろう」



「なかなか頭が回りますね……勘のいいガキは嫌…いえ好きですよっ!」


「う、うぜぇ……なんだってこっちの世界のお約束が分かるんだ」



「そちらの世界のサブカルチャーはとても興味深いですからね。まああんなに面白いモノが慣用的にとは言えサブカルチャーなのは残念ですが……と話が脇道に逸れましたね。さて総リソース…つまり魂の総量が減ってしまう要因なのですが、実は判明していないんです」



「ん?はあ?」


 仮にも神のくせに分からないだと?


「ああっ、その蔑むような眼たまりませんねジュルリ……いや実はいくつかの候補はあるんですが決定打に欠けるんですよ。一番有力な推測としては魂を食べる生物の存在ですがそもそも一つの生物に魂は一つ、食べられた魂はその生物の魂の濃度を上げその力を強化しますがそれにも限度はあります」



「限界を超えれば肉体は崩壊しますし、それが無くても死ねば魂は召されてリソースに影響は出ません。つまり総リソースに影響を及ぼす程に魂を吸収して無事でいられ、更に生物としてあり得ない程の寿命の生物がその世界にいる…と。しかしそんな生物は神にも近い存在、どんな偶然が重なろうと生まれるわけがないのです」



「一番可能性のあるその推測すらあり得ないとは矛盾した話だが……それで?俺をその世界に送るのはその原因を探って欲しいって事か?」



「それも勿論あるんですがとりあえずの目的はリソースの散布ですね。優斗さんの魂を私の【神力】の根源と繋いで例外的にリソースの充填をします。優斗さんは一講に一人の魂の強度の持ち主なので、【神力】を注ぐパイプとして適しているんですよ」


「不足分を一度に注ぎ込むと流石に優斗さんの魂が壊れてしまうので、二十年くらいかけるのが無難ですけどね。ああ、優斗さんは普通に生活してもらえるだけで充分ですから」



 一講って十の……三十二乗だっけか、とんでもない確率過ぎて実感が湧かないな。まあ普通に過ごすついでに原因を探るために世界を見て回る、という感じでいいなら気が楽だ。




「危険な怪物がうようよしている世界なので普通は気楽に過ごせませんけどね。ということで、いってらっしゃい!」


「はっ?」


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