愚兄酒豪伝説
飲み対決の続きです。次回くらいから物語が動いていきます。
開幕と同時に2人は訓練後の兵士が水を飲むかのようにハイペースで瓶を空けていく。その光景に観客は度肝を抜かれて呆然と見ることしか出来なかった。
「すげぇ、あれ本当に酒か」
「ゼティビの飲みっぷりは知っていたがあの男も同じペースで飲んでるよ」
「あの小さいからだのどこに入ってるんだ」
お互いいいペースで軽く10本を飲みきった。
「「次」」
そう言って出されたのは果実酒の瓶ではなく小さなグラスだった。グラスの中には淡い琥珀色の液体が注がれていた。
「「これは」」
「お前ら2人がまだ平然として飲んでるから展開を加速させることにした。ブーストワンショット。これから10本ごとにこいつを飲んでもらう。更に飲む量も増えていく20本到達時点で2杯、30本到達で3杯。度数は50、ちょっと強いぞ。
本当は96を持ってくるつもりだったんだが生憎この店には無かった。2人とも追加ルールだが受け入れるよな」
気にする様子もなく平然と一口で飲み干す。
「流石、いい飲みっぷりだ」
「「次」」
「「「「「おおおぉぉぉぉぉ」」」」」
勇ましい2人にオーディエンスのボルテージはドンドンと上昇していく。
17本目に差し掛かり若干ペースが衰える。
(流石にあのワンショットは聞くわね。全身にアルコールを感じ始めたわね。それにしてもこの男ペースは落ちているけど顔に全くでないわね。相手の限界が見えないのってかなりきついわ)
なるべく顔に出さないように注意をしながら、ゼティビはクトゥーを観察する。クトゥーもペースは落ちてはいるが平気そうな顔でつまみと酒を楽しんでいる。
そして、お互いに20本目を飲み終え、2回目のブーストワンショット。
「ここまで飲んでこれはきついだろうな。量もブーストさせ今回は2杯だ。そろそろ決着がつくか」
それぞれに二つのショットガングラスが並べられ淡い琥珀色の酒が注がれる。
ゼティビは一つに手をかけ、ぐっと煽り一杯目を飲みきる。
(きつぅ)
ダンとグラスを置き深い息を吐く。
常人では既に到達できはしないであろう域に到達しているため、ゼティビの見たことの無いゼティビの姿に心配そうに静かに見る。
「トイレ」
そう言って席から離れトイレへと向かう。
「それ飲むんで置いててくださいね」
そういい残してクトゥーはトイレへと消えた。
「姉さん。大丈夫ですか」
「ああ、正直結構きてるよ。でも、負けるわけには」
「諦めたらどうですか」
勝負を囲む外からフゼスリが提案をする。その言葉に全員がフゼスリを見る。
「てめ」
逆上しようとする一人の男を制止させ、ゼティビはフゼスリに問う
「なあ、フゼラテさん。あの男は演技をしているのか、それともまだまだ余裕なのか」
「わかりません。一緒に飲んだのは今日が初めてなので」
「なら最後まで、薄くてもいい勝ち目が少しでもあるのならば私は戦う」
そう言ってもう一つのショットを飲みきる。
「次を出してくれ」
そして、また果実酒に口をつける。
「ふースッキリした」
「悪いが先に行かせて貰ったよ」
「待つ理由もないし当然だな。まあ時間制限がないので、ゆっくり追いつきますよ」
クトゥーは自分の席にあるショットを飲み始めた。
少し経ちゼティビ24本、クトゥー22本という所でゼティビの手がぴたりと止まった。
「くっ」
「ギブアップですか」
「……なんの」
「そうですか。」
そういいながら22本目を空にする。ギブアップをしてしまえばそこに到達すれば勝てるという、相手を優位な心理状態にさせてしまうことはわかっていた。ゆっくりでも確実に近づいてくるクトゥーを前にそんなことをしたら負けが濃厚になってしまう。負けじとゼティビも24本目を空ける。
「そろそろ、終わりにしようか」
「え」
25本目を開けるが一行に進まないゼティビを見ながらぼそりとつぶやいた。
持っていた23本目をあっさりと空け、24,5,6と始まりの時と同様のペースで酒瓶を空けていく。そして、30本を飲みきり、
「次、ショットガン3杯だったよな」
と仕切っていた男に言い放つ。
男は驚きながらもショットガングラスに酒を注ぎ、3杯準備する。それを人差し指から小指までの指の間に挟めて持ち、3杯まとめて一気に飲み干した。
そして、ゼティビを見る。
「どうする」
「ギブアップだ。勝ち筋なんて最初から無かったんだな」
「最初に言ったはずだぜ。俺は勝てる有益な喧嘩しかしないってな」
「勝負あり、勝者クトゥル」
「「「「おおおおぉぉぉぉ」」」」
仕切っていた男は高らかとクトゥーの腕を上げ試合結果を高らかに言い放った。その声にオーディエンスが最高潮の盛り上がりを見せた。
「完敗だよ。それでどこの宿屋に行けばいいんだい」
「何言ってんだ。俺のお願いはここの勘定だけだあんたとヤる気はさらさらないよ」
「え」
「あんたは娼婦じゃない、冒険者だ。仕事でも愛でもない行為をヤる気がないだけだ」
そう言って立ち上がり近づいてきたフゼスリと合流して出入口へと向かう。
「ご馳走様。美味い酒だったよ」
「ご馳走様でした」
2人はそのまま店を後にして宿屋へと向かっていった。
「良かったのでござるか。かっこつけて、仕事は時間に余裕があるのだから楽しんで来ればよかったでござろうに」
「言ったとおりだ。ただただそういうのが燃えないだけだ」
「そうでござるか」
「というか、去勢した男に言われたくない」
「もっともでござるな。返す言葉が見つからん」
暗くなった夜道をのんびりと歩く。
「それにしても随分強いでござるな」
「アルコールの流し方を身につけているからな。軽い毒くらいなら抗体は出来ていると思うぞ」
「何故そのような体に」
「小さい頃から練習してたからな。いける毒といけない毒の味の違いもわかるようになったぞ」
「わかってはいたことだが、ますます人の域を超えているでござるな」
宿に到着し2人は手続きを済ませる。水とタオルを貰い簡単に身を清めてから部屋へと入る。
「風呂のある生活に慣れると少し物足りないな」
「そういえば以前そんなことも言っておったの」
2人は宿に入り両壁に耳をつけ隣の部屋や外が寝静まったのを確認し、蝋燭に小さな灯りをつけてお互いに向き合う。
「それでは仕事の話をいたそう」
酒豪のラインってあるんですかね。私は弱いのでビール中ジョッキくらいで真っ赤になって頭が痛くなってきます。
お酒は適度に楽しむ嗜好品です。飲みすぎには注意しましょう。




