愚兄と草原の孤児院
新しい舞台に到着します。
そろそろ魔法ってタグ外さないといけないんじゃないかなって思うくらい魔法使って無いですね。今回は魔法要素があります。
休憩を終え目覚めたクディがまた元気に小屋を引く。
草を掻き分けるようにクディはもりもりと進んでいく。
「楽しそうだな。」
「がう。」
その足取りは軽く、楽しそうにクディは進む。クトゥーも森の中のじめっとした空気ではなく太陽を全身に浴び、すっきりとした空気を全身に感じる。
森から離れるにつれ生き物も多くなってくるが基本的に襲われなければ構わずにどんどんと西へと進んでいく。
「がうがう。」
しばらく進んだところでクディが何かを発見し声を出す。
その声にクトゥーは体を起こし前を確認する。
「あれなのかな。まあ行ってみるか。」
「がう。」
草原の真ん中に柵に囲まれた建物を見つける。立派な塀に囲まれて周囲に魔物の姿は無い。
「ぐぁ。」
200mまで近づいたところでクディが嫌そうな声を出しペースを落とす。
「無理するなクディ。ここで待っていてくれ。」
「がうぅ。」
申し訳なさそうな声を出すクディの頭を優しくなでる。
「十分力になってるよ。しょうがないことだってあるさ。ソスラテと小屋のこと任せたぞ。」
「がぁう。」
「着いたの? あとソスラテがなんだかそわそわしてるんだけど。」
止まったことでジュティが扉を開けて声をかける。
「ここからは3人で歩く。セミコに出発の準備をお願いしてくれ。」
「どのくらい?」
「日帰りを予定しているが、夜の分まで準備しておくよう伝えてくれ。」
「了解。」
指示を貰い再びジュティは中へ戻る。セミコは二人の食事を作り始める。
「楽なところまで下がってくれ。」
「がう。」
「動くぞ。」
「わかった。」
ジュティの声を聞きクディは転回し更に距離をとった。
「よし、準備できたな。それじゃあ、クディ、ソスラテ、留守番任せたぞ。」
「がう。」
「アァ。」
「お昼ご飯とこっちが晩御飯ね。冷めても美味しくなるように調整したから間違わずに食べてね。」
「がう。」
「アァ。」
「最悪、やばそうだったら逃げなさい。何よりも自分の命を優先するのよ。」
「がう。」
「アァ。」
元気に返事する2人を見て3人は施設の方を見る。
3人は施設の前に到着する。
「綺麗な建物だな。」
「人は確実に住んでいるわね。」
「広い庭ですね。あ、畑にしてるみたいですね。」
3人は正門の前で建物内を眺める。
柵に囲まれ正面に二階建ての大人が20人が暮らせるような白い建物がありその周りを畑や酪農などに利用しているようであった。
畑や建物がとても綺麗な状態にあり、畑には食べられるまでに育った野菜がいくつか見られる。
「入ってみるか。」
「大丈夫なの?」
「野菜泥棒する気も襲撃するつもりも無いし、旅の途中見かけて気になって訪れただけだ。」
「そんな観光気分で人の家に入っちゃ駄目でしょ。」
「んじゃ、道に迷ったので聞きに行くだけだ。」
「それならいいか。」
「いいんでしょうか。」
クトゥーを先頭に格子の門を開ける。
「ごめんください。どなたかいらっしゃいませんか。」
大きな声を出して挨拶をしながら敷居をまたぐ。
建物から紺色の落ち着いたロングドレスに白いエプロンをつけた女性が建物から出てきて近づいてくる。
「代表者か。」
目の前に来て女性は話し始める。女性は若く見えるが40ぐらいの平均的な身長の痩せ型の女性だ。
「旅のお方ですか。何か御用ですか。」
「突然のお尋ね申し訳ない。おっしゃるとおりの旅人でこのあたりは始めて来たんです。それで立派な建物が見えたもんで興味が湧いてしまったので尋ねてしまいました。失礼名前がまだでした。冒険者のクトゥルと言います。」
「ジュティです。」
「セミコと申します。」
クトゥーに続いて二人も礼をする。
「そうでしたか。こちらはヒットルィジドット孤児院。私は子供達のお世話をしておりますソラシンと申します。」
ソラシンという女性が礼をする。
「孤児院でしたか。道理で強い魔よけが施されてると思いましたよ。」
「魔よけ?」
クトゥーの言葉にジュティが聞き返す。
「ああ、クディ達が嫌がったのは魔物避けの魔法がこの柵かな、に施されていたからだよ。結構強い奴だね。ソラシンさんが。」
「いえ、私ではありません。よく気づきましたね。」
「連れの反応を見て何となく。それでどなたが。」
答え辛そうにソラシンさんは口ごもる。
「サン・エルティ国王。」
「!?」
バッと顔を挙げ目を見開いてクトゥーを見る。その表情を見てクトゥーはニヤニヤと笑う。
「そういう反応しちゃ駄目だよ。今のはただのカマかけだからね。」
「何故そう思いに。」
「前に勉強したことあるけど、これって術者が近くにいないとかなりの魔力を使うらしいんだよね。それでソラシンさんじゃないとなるとここにいない人でこんなに魔力を張れるのはってなるとだいぶ絞れるかな。更に、口ごもるってことは言いたくない、言ったら反感を受けかねない。ただでさえ孤児院への出資と言うのは難しい話題だそれで口ごもるってことはそれなりの有名人だったり力のある人だ。そういった理由でカマをかけてみました。」
クトゥーの話しにソラシンは顔が引きつる。
「あなたはいったい。」
「ただのしがない旅人ですよ。ただ一つだけ嘘をつきました。ここに来たのは偶然じゃないソラシンさんは。」
「ここから出て行け。」
クトゥーの言葉を遮るように幼い声がする。
「ここには何も無い。先生を困らせるな。」
一人の男の子を先頭に10人の子供が武器を持って並ぶ。子供達はソラシンの前に出てくる。武器はちゃんと手入れがされておらずさびが目立ち、なまくらもいいところの状態で子供達の持ち方もぎこちない。
「みんな。出てきちゃ駄目でしょ。まだ魔物がうろついてるのかもしれないのよ。」
「ああ、子供達が見えなかったのはその所為ですか。安心してくださいそれは俺達の連れです。今は離れて大人しく留守番してもらってますよ。」
「何だよく見たら子供二人に大人一人か。」
「誰が子供だ。俺は25、こっちもお前らより年上だ。言葉遣いに注意しろ。」
「うるせぇ。これでも食らえ。」
「止めなさい。」
ソラシンの言葉では止めきれず少年は剣を斜めに振り下ろす。
クトゥーは一歩も動かずにその手を少し押してやり軌道を誰にも当たらないものへとかえる。
降ろしきった剣を見て少年は驚き恐怖する。
「プラズフルどうした。脅してる場合じゃないだろ。」
微動だにしなかったのに外れた剣に後ろの男の子が少年に聞く。
ソラシンも目の前の光景に驚く。
ジュティとセミコは見慣れた光景だ。
「お前はわかっただろド素人の剣が通用するほど世界は甘くないんだよ。」
威圧するように少年の前に立ち低い声を出す。
「安心しな。ここに危害を加える気は無いよ。危ないからみんな武器閉まってくるように言ってきな。」
スッと人が変わったように笑顔で優しい声で少年を促す。
プラズフルと呼ばれた少年は握る力を強めながら振り返り下がっていった。
「先生に任せよう。俺達が出る時じゃないみたいだ。」
そうつぶやくように言って一人建物のほうへ向かった。
「みんな。この人達は私を困らせてたわけじゃないのだから安心して。気持ちはうれしいけど危ないから閉まってきなさい。」
「「「はーい。」」」
ソラシンの優しい声に安堵の表情とどこか納得行かない顔をしながら建物に下がっていった。
「お騒がせしました。」
「なに、思いやりのある元気な子達じゃないですか。」
「でも、子供達何かに怯えているみたいじゃないでしたか。」
セミコの言葉にソラシンは唇をかむ。
「話の続きをしましょう。俺達がここに来たのは偶然ではなく占いによって来ました。」
「占い、ですか。」
「はい。何かの導きがあったのかもしれません。よろしければご相談に乗りますよ。」
「でも。」
「これも何かの縁です。お金に困っているわけでも無いので安心してください。」
ソラシンは改めて3人を見る。
一度目を瞑りしっかりと考える。自分の背負っているのは自分の命だけじゃないからだ。
答えが決まり目を開け3人をしっかりと見て話す。
「困ってることはありません。お心遣い感謝します。」
ソラシンは深々と頭を下げてクトゥーの話を断った。
「え。」
「そうですか。失礼変に勘繰りを入れてしまいましたね。それでは俺達は旅を続けますので。」
「え。」
「いえ、幸運を祈っております。」
「行くぞ。」
「クトゥルさん。」
「話は後、まずは戻ろうか。」
引きとめようとするセミコを言い聞かせて3人は小屋へと戻っていった。
「クトゥルさん何にも無いわけ無いですよ。」
「わかってるよ。でもお相手さんがそう言うんだ。証拠も無い。変に突っ込んでいったらそれこそ信用を失う。」
「そうね。心苦しいかもしれないけどセミコちゃん何か起こるのを待ちましょう。」
「・・・はい。」
2人に説得されセミコは自分の浅はかさを感じながら小屋へと戻っていった。
あんな小さい男が前であんなずばずば切り込んできたら誰だって疑う。




