愚兄、キュジュビーの依頼を受ける
目標にしていた週一の更新が途切れてしまい大変申し訳ありませんでした。
朝。
とてもよく晴れいい天気であることはわかるのだが木々が深くほとんど光の入ってこないなんともいえない朝を迎える。
セミコは早々に朝食の準備に取り掛かり、ジュティは剣を振り体の調子を確かめる。クトゥーは小屋の中で荷物の整理と確認を行う。
「おはよう。」
「あ、おはようキュジュビーさん今日はよろしく。」
家から出てきたキュジュビーはまず稽古中のジュティを見つけ挨拶を交わす。
「朝食べたら早速出発らしいからキュジュビーさんもそれとなく準備してた方がいいわよ。」
「昨日の夜に済ませたよ。今日は偵察に行くんだろ。」
「へ?」
ジュティはわかりやすく首をかしげる。
「何じゃもしや。」
「討伐依頼なんだし倒す気で行きますよ。出来なかったら偵察って言う体で逃げますけど。」
「相当腕に自身があるんじゃな。」
「いえいえ、私なんてまだまだですよ。」
そう言うジュティの目は遠くのものを見るようなまた、決意に満ちた目をしていた。
「上には上がいるんです。私はその人たちを超えたい。こんなところで一度偵察を挟んでいるようじゃ到底追いつけないんです。それをこの間実感させられたんです。」
「ある程度では駄目なんじゃな。」
「はい。私は強くなりたいんです。尊敬している人達だからこそ肩を並べてみたいんです。」
「だが、天才がいるように個人差と言うものがあると思うが。」
キュジュビーのちょっと意地悪な顔の質問に対してもジュティは不機嫌になることも無くむしろにやりと笑い返答する。
「魔法っていつ出来たんでしょうね。」
「ん?」
「今は当たり前のようにみんなが利用している当たり前のように知識としてみんなが覚えて使っている。でもそれを見つけた、作った人は当時天才で誰よりも強い存在になっていたと思います。」
「そうかもしれんの。」
「でも今この世にその天才がいればそれは普通の人と同じになるんです。建物を立てることも料理をすることも昔の天才の知恵と技術を当たり前にして行ったんです。
剣や戦闘の強さだってそうです。天才の知恵と技術を身につければその人を当たり前にすることが出来るんです。
だから私は生きている以上強くなる勉強を止めません。いつか同じ壇上に上がる為に。」
力強く胸のところで拳を握り同道としたたたずまいでキュジュビーに言い切った。
「生意気言ってすいません。」
「いや、若いうちはそのくらい生意気でいいんじゃないかね。」
「光も入ってこないのに朝から元気だな。」
声を聞き小屋からクトゥーが出てきて腕を組んでいる。少し不機嫌なご様子だ。
「あれ、どうしたの不機嫌じゃん。」
「当たり前じゃない男だからな。」
「は? ・・・あ。」
クトゥーは魔法を使えない。この世界では100人中100人が使えると言っても過言ではないことをクトゥーは出来ない。
「ごめんごめんそういうことじゃないというか、ほらクトゥーは一般人じゃないしさ、大きさも魔力も経歴も知恵も思考も何もかも一般人とはとんでもない方向でかけ離れているでしょう。」
「マジでフォローしてるつもりだったらセンス無いぞ。」
「マジよどの位マジかと言うとあなたが不機嫌なくらいマジよ。」
「なるほど、フォローする気はさらさら無かったと。」
「ええ。」
「仲いいのお二人さん。」
「まあいい、さっきの言葉だが各個人には限界がある俺のように。」
自信満々に胸を張るクトゥー。
「だからそのときは別のことでそいつらを超えるといい。精神が折れる位なら意地を折ることを進めるよ。まあ、ジュティなら大丈夫だろうけど。」
「あら、褒めてくれるの。」
「ああ、才能はあると思うよ。」
素直に褒めるクトゥーに驚きながらもジュティはその言葉を素直に受け入れることにした。
「珍しい、ありがとね。」
「ご飯出来ましたよ。」
そのタイミングでセミコがみんなを呼んだ。
朝食を食べ終えクトゥー、ジュティが荷物を持って出発を控えていた。
「それじゃあ、俺とジュティの二人で行って来る。セミコ、クディ、ソスラテは留守を頼む。」
「わかりました。」
「がう。」
「カァ。」
3人はしっかりと頷く。
「クトゥー。」
「わかってる。自分にやらせろっていうんだろ。」
「正解。」
「せっかくだし条件をつけよう。最近魔法の練習ばっかりだったし、今日は剣のみで戦闘を行ってみたらどうだ。」
「それいいわね。」
「照明とかの最低限の戦闘状況の確保のみで攻撃防御は剣で行う。もちろん命あっての訓練だやばいと思ったら魔法を使え。俺も本当にやばそうだったら手を出す。」
「わかったわ。私の剣技見せてあげる。」
ジュティもクトゥーの提案に乗る。
今日の方向性を決めクトゥー、ジュティはキュジュビーの元へ行く。
「準備は出来たのじゃな。」
「ああ、案内してくれ。」
「わかった。」
3人は目的地へと森の中に歩いていった。
3人の草木を分ける足音しか聞こえない静かな森だ。3人しかいないように思える程音は聞こえなかった。
「静かね、ここら辺って生き物とかいないの?」
「普通の森に比べて少ないし夜行性が多いかもしれないね。木々が深く光があんまり入ってこないから意外と山の幸みたいなものは少ないかもね。」
「え、それじゃあ昨日とか気にせず寝ちゃったけど危なかったの?」
「これでも魔法使いの端くれさ寄りつかないような魔法を張っているから基本的には大丈夫じゃ。」
「そうなんだ。また一人でクトゥーが楽しんでたのかと思っちゃった。」
「むしろそのくらい気づけるようになった方がいいんじゃないか。」
「確かにそうね。」
顎にてを当てジュティは渋い顔をする。
「クトゥー今度コツとか教えて頂戴。」
「あ、俺が教えるのか余計なこと言ったな。そのままの君でも十分魅力的だよ。」
今度はクトゥーが渋い顔になりごまかすようにジュティへと言葉をつなげる。
「ありがとうクトゥー。でも私もっと魅力的になりたいのよろしくね。」
「決心を変える気はないと。分かったよ。」
ジュティの固い意志を前にクトゥーは諦めることにした。
そんなこんなを話しながらキュジュビーの案内の下森の奥へとどんどんと進んで行った。一時間ほど歩き進んだところで目的地へと到着した。
「すごっ。これどうなってるの。」
「これはすごいな。」
二人の目の前にはトンネルがあった。そのトンネルは岩や土に囲まれてはいなかった太い木が双方からぐっとしなるように伸び左右の木がアーチのように曲がりそのアーチが光を通さないほどに密集し奥へ奥へと連なっている。
「この奥が壁まで続いているからほぼ木の洞窟じゃな。直射日光が当たらない上に壁も天井も木々に覆われているからのキノコが多く生えとるんじゃ。」
「成程、それじゃあ早速入っていきますか。」
そう言ってクトゥーとジュティは木の空間に足を踏み入れた。
「うぁおおぉぉぉぉおおお。」
大きな方向が木々の空間を震わせ、一歩後ろに立っていたキュジュビーの鳥肌が立つ。
「やはり居るの。あの声の主がいてなかなか入っていけないのじゃ。そもそもわしは戦闘が得意では無いしの。」
「まあわかったわ。あの声の主をどうにかしてくればいいんだな。」
「そうじゃ。」
クトゥーとジュティはストレッチを行い荷物の整理をする。クトゥーはランタンをリュックから出す。
「ああ、灯りは大丈夫だと思うぞ。」
「あ、なんでだ。」
「そんなに暗くはないからの。」
「は?」
「入ればわかる。」
「まあ、わかったよ。」
ランタンをしまい直し、二人は一息深呼吸を入れる。
「さあ、行きましょうか。」
「気合入ってるな。」
「久しぶりの強敵の予感がするからね。」
二人は木々の洞窟の奥へと向かって行った。
次回は声の主と出会うことになると思います。




