愚兄達の占い結果
ほのぼの雑談回になります。
「どうでしたか。」
「とても暖かく明るい運命が見えた。お主はいずれたくさんの人の中心に立つ人物となるじゃろう。軍や組織とは違った暖かい集団に囲まれる。ただ、どこか不安定なところもあるの自分の力を理解し自分の力を信じればきっとうまくいくじゃろう。」
「自分の力ですか。」
「まだ若いじっくり悩みなさい。比較的明るい運命が待っているから心折れずに頑張ってみなさい。」
「はい。」
セミコは何かを見つけたような顔をしゆっくりと頷いた。
手を放したところでジュティが手を前に出す。
「次は私がお願いしてもいいかしら。」
「ああ、全員見てやるつもりだ。」
セミコと同じように手に魔力を込める。
少し経ちセミコと同じように魔力を引き結果を話し出す。
「広がっていくようなこじれていくようなそんな運命が待っているかも知れんな。随分と大きな厄介ごとに巻き込まれるかもう巻き込まれているかもしれんな。ただ、それを乗り越えた先にドンドンと大きくなる何かが見えた。探究心と向上心を忘れずに色んなことをひたむきに頑張りなさい。」
「ふーん。まあ厄介事は嫌いじゃないわよ。そうでなきゃここにいないからね。」
チラリと嫌味な笑顔でクトゥーのことを見る。その表情をクトゥーも確認する。
「さて、次はお前か。」
「あ、俺もやるのか。」
「何じゃ見たくないのか。まあそれも一つの運命じゃ。」
「いやいや、見たく無いとかそういうんじゃないんだ。」
ニタニタと嫌な笑顔でキュジュビーを見る。
「あんたじゃ多分見れないと思うよ。」
「何じゃと、そこまで言われたら是が非でも見てやるわい。」
「どうぞ。」
クトゥーは手を出しキュジュビーはそれを握り魔力を込める。
「お、変な感覚だな。運命は見つかったかい。」
笑うクトゥーを睨み付けるように見る。
「お主、魔力の扱いがいかに上手くともわしは全身をくまなく捜すことが出来るぞ。」
「やってみなよ。」
「ふん。」
キュジュビーが更に集中する。
「魔力なんて扱ったこと無いよ。」
小声でボソッと誰にも聞こえないようにぼやいた。
しばらくしてキュジュビーの手が震え始める。
「お主、一体どうなっておるんじゃ。」
急に手を離し叫ぶ。
その様子を見てクトゥーは笑う。
「どうだ。俺の運命は見つかったか。いや、俺の魔力は見つかったか。」
「信じられんこの世に魔力を持たない生物が存在するのか。」
「さあ、俺も俺意外知らないしな。」
今までニヤニヤ笑っていたクトゥーが少しさびしそうな表情を浮かべる。
「やっぱり俺には魔力が無いんだな。」
「ああ、0じゃ。」
「昔からあきらめてはいたんだが、魔力を見れる人二人に見てもらってこれじゃあマジなんだな。」
「わしも信じられんよ。」
ふーっと一息つき先ほどまでのように楽しそうに笑う。
「ま、そもそも、占いなんてあんまり信じて無いしどうって事は無いさ。」
グッと背もたれに寄りかかりながら体を伸ばす。
するとソスラテが肩からテーブルの上に降り翼を片方差し出す。
「カァ。」
「何じゃ。」
「ソスラテも見てもらいたいんじゃねぇか。」
「ふむティオルの占いは初めてじゃな。」
「出来んのか。」
「なめるな。」
そう言って翼を掴み魔力を込め始める。
しばらくして同じように占いが終わる。
「ふむ、繋がりあっていく一本の道のようなものが見えたな。いろいろなところで様々なものの橋渡しとなり大きくなる運命を見つけた。お主自身は小さな力かもしれない、じゃがお主の力は大きな事を成し遂げる鍵となるじゃろう。自分の力に誇りを持つといい。」
「カァー。」
うれしそうにソスラテは頷いた。
そうしてクトゥーの方へと戻っていく。
「良かったな。いい運命が待ってるのかもしれないな。」
「アァー」
戻ってきたソスラテの首元を指で優しくなでる。
うれしそうにソスラテも声を出す。
「がうぅ。」
外からクディの声が聞こえてくる。
3人が出入口のほうを見る中クトゥーがキュジュビーを見て口をあける。
「悪いがもう一人お願いするよ。自分も見てもらいたくてウズウズしているらしい。」
「わかった。じゃあ外へ行こう。」
そういい、全員が立ち上がって外へと出た。
キュジュビーがクディの手を握り、占いを始めた。
「大空のような広い運命が見えたね。この子まだまだ若いだろう。これから色んなものに出会い、色んな事を知り、色んな事を学ぶ。そしてこの子にはそれを受け入れ力にする器を持っている。大きくなれるよだから常に上を見続けるんだ。」
「がう。」
結果を聞きクディも納得したように頷く。
「さあ、これで全員の占いが終わったなありがとうな。」
「なに、珍しく大きな輝く運命に出会えてわしも驚いているよ。あんたが集めたのかい、いい運命ばかりだったよ。」
「集めたと言うより集まったが正しいかな。」
少しばつが悪そうにクトゥーは答える。
「はっはっは。それじゃあ、あんたはきっともっと凄い運命を持っているのかもしれないね。」
「だといいけどな。さて、値段交渉と行こうと思ったんだがその前に飯にしないかだいぶ時間も経ってるしよ。」
「そうじゃの、久々に複数見てわしも腹が減ってきたわ。」
「じゃあ、うちの料理長の凄さを見せてやるよ。」
「お任せください。」
セミコはやる気満々でクトゥーの言葉に答えた。
「楽しみじゃの。」
そのセミコの様子にキュジュビーもうれしそうに笑った。
セミコとジュティは厨房に消えキュジュビーは色々な調味料を取ってきてテーブルに並べていた。
「調味料並べてどうしたんだ。」
「何を言っておる今から料理が来るんだろ。」
「ああ、食文化の違いか。セミコの料理はほとんど味がついてるから安心しろ。」
「料理で味をつけるのか口に会わない人が出てこないか。」
「そこも文化の違いなんだろうな。もし気に入らなかったら行ってくれ別なのを作るよ。」
「ふむ文化の違いか。」
「不安か。」
「いや、むしろ楽しみになったわ。」
クトゥーとソスラテ、キュジュビーはお茶を飲みながら席について大人しく待つ。
「ここに一人で住んでるのか。」
「ああ、自然のものは豊富だし食べ物には困らん。ただ、たまに散歩がてら城下町に遊びに行くのさ。今日はお主らに出会えてあたりの散歩じゃったわ。」
「そりゃ良かった。」
「せっかくだし、占い料の話をしないか。」
「飯食ってからでは駄目か。」
「その飯で依頼を軽くしようとしておらんか。」
「半分当たりだ。金とかなら少しは減額してもらえるとは思っていたが明確な依頼があるならちゃんと聞くぜ。出来るかはさておいてだがな。」
クトゥーはまたお茶を飲み口を湿らせる。堂々とした態度にキュジュビーは少し頬を緩ませる。
「交渉人というだけあるの。自分の考えを言われても動揺せんのだな。」
「交渉事は相手を見て下になりすぎず、上になりすぎずを心がけているからな。」
「そうか。」
キュジュビーもお茶を飲み一息つく。
「お願いしたいのはあるものの討伐じゃ。」
「討伐?」
「ああ、わしがよく行くきのこ狩りスポットに最近強大な魔力の塊が腰をすえるようになったのじゃ。」
「見たのか。」
「いや、わしは多少魔法は使えるがそこまでのものじゃないましてや前衛もいない中1対1をやるほどの身体能力も無い。ただ、魔力と時折の咆哮から厄介であることは間違いないじゃろう。」
「で、討伐を頼みたいと。」
「ああ、今日はギルドで相場の勉強をした所じゃったんじゃ。」
「まあ、内の戦闘員がなんて言うかだな。」
「別にいいんじゃない。暇だし久しぶりに体動かしたかったのよね最近魔法の練習ばっかだったから。」
クトゥーの後ろで腕を組んで話に入り込んでくるジュティ。気づいていたのかクトゥーに驚きの反応は無い。
「と言うので明日行きましょう。ジュティ料理は終わったのか。」
「仕込み終わったから後はセミちゃんが任せろって。」
「それは楽しみだ。」
「待て待て。」
あっさり引き受け当たり前のように終わった話にする二人をキュジュビーが止める。
二人は不思議そうにキュジュビーを見る。
「どした。」
「どうしたもこうしたも無いわ。まだ話は終わっとらん。」
「え、まだ依頼があるのか。」
「そうでは無い。追加報酬の話がまだ済んでおらんじゃろ。」
「は?」
「実際に見たわけではないが強敵であることは間違いないじゃろう。そうなればわしの占いだけでは足りないだろ。」
「いや、別に。」
キュジュビーは口を開けて固まる。玄関の扉が開き声がする。
「ジュティさんできたんで運んでもらえますか。」
「わかったわ。」
セミコの声を聞きジュティが小屋のほうへと行く。
「素材だけくれれば俺達は構わないよ。素材をくれっていうんだったら値段交渉だがな。」
「そんなわけあるか命を賭ける仕事になるやも知れんのじゃぞ。」
叫ぶことを止めないキュジュビーにクトゥーはため息をついて立ち上がり顔を近づけてまくし立てる。
「いいか、こっちは3割の暇つぶし、2割の腕試し、1割の興味本位、4割の食べられる美味い肉だったらいいなと1割のそういえばそんな仕事があったなって気持ちで行くんだ。」
「少し多くなかったか。」
「だから俺達は俺達の自分本位で行くんだ文句言ってないで明日その場所に案内しろ、いいな。」
「わ、わかった。」
クトゥーの勢いに押されキュジュビーは何も言えなくなっていた。
クトゥーも席に座ったところで料理を持って二人がやってきた。
「騒がしかったわね外まで響いてたわよ。」
「交渉を成立させてたんだ。明日連れて行ってもらえるって。」
「本当! 楽しみね。」
そういいながら料理が並ぶ。
「今日はお昼に食べた料理を真似て料理を作ってみました。芋とヒジェの肉で作ったパイと茹でたイゼロスリの玉子を下味をつけたお肉で包んで焼いた物です。お口に会えばいいのですが。」
「ふむ見た目はうちの国の料理と同じじゃの。ふむ、なんとも魅力的な香りがするの。」
「それじゃあ早速食べよう。いただきます。」
「「「いただきます。」」」
まずはキュジュビーがパイに手をかける。
「美味い、何じゃこれ芋の甘さと肉の旨みがよく馴染むの今まで食べて物とは全然違うがとても美味い。」
顔を躍らせながらもう一つの料理にも手を出す。
「・・・美味い。肉と玉子の味がしっかりと繋がっておる。それに肉に練りこんだ香草がどちらの味も邪魔せずにむしろ優しくスッと引き立たせておる。こんな美味い食事は初めてじゃ。」
「お口にあってなによりです。」
「美味い。見た目は昼のと大差ないけど味は大差だな進む進む。」
「やっぱりこれ食べないと安眠できないわ昼間をレストランで我慢して正解だったわ。」
「おかわりもいっぱい作っていますからね。」
「ゴフ。」
キュジュビーが咳き込んだ。
「大丈夫ですか。」
「おかわりってお主らどんだけ食うんじゃ。」
クトゥーとジュティの前にはキュジュビーとセミコの3倍くらいの皿が置かれている。それでもよく食べる冒険者だなと思うほどなのにおかわり前提の言葉に驚かずにいられなかった。
「セミコの料理は美味いからな。」
「お昼も碌にとって無いし3つはいけるわね。」
そういいつつも食べる手を止めることは無い。
「とんでもない奴らと知り合ってしまったかも知れんな。」
そういいながらキュジュビーもセミコの料理に舌鼓を打っていた。
クトゥーの交渉スキルがまた決まってしまいましたね。




