愚兄一行イジットルルヘ
ジュティ、セミコの久々の登場です。
「イセミ。」
「何だ。」
「あいつらどこまで進んだんだ。」
クトゥーは荒地を後にしそこそこのスピードを出しながら岩山を進んでいる。
「あっちの様子見てなかったからな。繋ぐ?」
「そうだなよろしく。」
しばらくしてジュティと繋がる。
「あれ?どうしたのホームシック?」
「そんなわけ無いだろ。こっちの用事が意外にも早く終わったんで居間から向かうんだよ。」
「早かったわね。」
「俺も驚いてるよ。」
「それで本題は?」
「今どこにいるんだ。」
「今道中、明日くらいには国境に到着するわね。」
「そうか。」
「イジットルル城下町の関所で合流でいいんじゃないクディの説明もしなくちゃいけないしそこで待っているわ。」
「わかった。なるべく急ぐよ。」
「よろしく。じゃあね。」
通信が切れる。
クトゥーは少し速度を上げた。
クトゥーは走り5日後イジットルル城下町へと到着する。
見慣れた小屋を見つけてクトゥーは近づいた。時間は10時頃だ。
「ただいま。」
扉を開け久しぶりに帰宅する。
「おかえり。」
「おかえりなさい。」
ジュティとセミコが明るく出迎える。
「いやぁ、疲れた。ずっと走ってたからな。」
「お疲れ。休んだら交渉に行くわよ。」
「え、済ませておいたんじゃないのか。」
「クトゥーの方が説得上手いじゃない。」
「わかったわかった。とりあえずちょっと寝かせてくれお昼食べたら中に入ろう。」
そう言ってベッドに向かうクトゥーの言葉にセミコが反応する。
「え、私が言うのもなんですがもしお金に余裕があればここの料理を味わってみませんか。」
純真無垢な表情で提案するセミコに二人は動きを止める。
二人は熟孝した。
「セミコちゃんあのね。」
「ジュティ。」
説明しようとしたジュティをクトゥーが止める。
そしてセミコに聞こえないように話し始める。
「ジュティは食べたことあるのか。」
「ええ、修行のために一人旅をしていた時期にね。クトゥーは?」
「実は俺も一回だけある。子供の頃にだがな。」
「そう。私は3年位前かしら。」
「どうだった。」
「さっきの反応見ればわかるでしょう。だから止めるのよ。」
「だろうな。ただ、今の味を食っていないのにセミコが
納得すると思うか?」
「しなさそうね。」
「だろ、だから一度食わせておこう。」
「でも、今日の最後にあの料理を食べるの?」
「そういわれると嫌だな。」
「でしょう。」
「しょうがない。町に行って昼食にしよう。」
クトゥジュティの緊急会議が終わり二人はセミコを見る。
「セミコ、昼飯は外で食べようか。」
「え。でも。」
「セミちゃんも早くこの国の料理を食べてみたいでしょう。今、私がクトゥーを説得したから気にしないで。」
「俺がそうしようと思ったんだだから何も気に病むことは無い。」
そう言って早速クトゥーは門の前に行き門番を説得しに行った。
「ジュティさん。ありがとうございます。」
とてもいい笑顔でセミコはジュティに礼をした。ジュティは引きつった笑顔をした。
しばらくしてクトゥーが戻ってくる。
「許可取れた。」
「どんな感じだった。」
「大人しくしてた様子を見ていたみたいだから意外と話しやすかった。門番とのやり取りの仲でクディに何度か声をかけて言葉を理解していると判断してもらえた。」
「何かこの感覚も久しぶりね。」
「イーワイ城下町はもうヨンディと同じ扱いだからな。それじゃあ行こうか。セミコ、覚悟はいいな。」
「? はい。」
何の覚悟なのかはっきりしないままセミコは何となく返事をした。そしてクトゥー一行はイジットルル城下町へと入っていった。
城下町は工房や魔法具店が多く連なり様々な場所で個性豊かな魔法具が宣伝されている。
魔法具の材料や部品など製品以外にも取り扱っているものが多く、まさに魔法具の為の町だ。
「凄いですね。イーワイと並んでいるお店の雰囲気がだいぶ違うんですね。」
「そりゃそうだろ各国に文化や特産があるわけだからな。」
「歩いている方もなんだか違う雰囲気ですね。」
「そうだな霊人族の代表国だからな。」
「霊人族ですか?」
「ああ、魔力が比較的高く魔法を司るのを得意としているんだ。歴史的には魔法を生み出したのも霊人族と言われている。外見的特長としては耳が長かったり触角が生えていたりと、人族に何かしら付け加えたような特徴がある。」
「成程です。」
改めてセミコは城下町の人を確認する。確かに耳が長かったり触覚があったり薄い羽があったりと特徴がある。
「違う種族の国でもこんなに差があるんですね。」
「まあ、イーワイやサン・エルティは広く貿易を行っているから色んな種族が来てるし何となく見たことはあるんじゃないか。」
「そうですね。でもこんな大人数で見るとやっぱり違いますね。」
セミコが感動している様子を二人はほほえましく眺めていた。
「早速この国の食事を楽しみたいです。」
その言葉に二人は顔が少し引きつる。
とあるレストランに3人は入店する。クディには外で小屋を見てもらっている。クディとソスラテは食べるところが無い可能性とクトゥー、ジュティの慈悲で町に入る前にセミコのご飯を食べている。
30分くらい経ち3人はレストランから出てくる。
セミコは酷く落ち込んだ顔をして、二人はまだ平気な顔をしていた。
「あんまり美味しくないんですね。」
「まあ、基本的に薄味な傾向にあるんだけどイジットルルは特に急激な経済成長を遂げた為食事というものがおろそかになっていた時代の所為でこうなっている。」
イジットルルの料理は基本的にまずいのである。クトゥーとジュティはそれを知っていた為にこの町での食事をあまり楽しみにしていなかった。
「それでもまだ食べられるくらいなだけましよ。」
「そうだな、だいぶましになっていたな。」
「昔はもっと酷かったんですか。」
二人は昔の味と比較しながら感想を述べる。
「セミコ。満足か。」
「不満だけど満足です。」
「言いえて妙だな。まあ、食材はちゃんとしてるし大丈夫だ。」
「はい。ちょっと休みますね。」
気分の落ち込んだセミコは小屋の中に戻り不貞寝した。
クトゥーとジュティは顔を見合わせた。
「どうする。」
「お金はどのくらい余裕あるんだ。」
「そこそこあるもうしばらくは大丈夫よ。」
「そうか。暇だし、その人気の占い師の場所の下見にでも行くか。」
「占い師?」
「おい、お前らが言い出したことだろう。」
「冗談よ。」
一行は移動し町の中を探索する。
「それらしいものは無いな。」
「もっと行列とか出来てて見つかるのかと思ったんだけど。」
「地図とか場所の標記はなかったのか。」
「そんなに詳しく見て無かったわ。」
「本当に行きたいの?」
「絶対にって程じゃないわよ。」
「おい。」
ぶつくさ言いながらも観光も含めてのんびりと町の中を歩く。一通り回ったところで、聞き込みをすることにした。
町を歩く一人の耳長の霊人の女性に声をかける。
「すいません。道をお聞きしたいんですけど。」
「はい。どちらに行かれるのですか。」
「この間よく当たると有名な占い師がいるって記事を見て来たんですけど。」
「ああ、その人気分で占いをやったりやらなかったりするのでこの町に住む人でもあったこと無い方が多いんです。」
「なるほど。ありがとうございました。」
「他にもいいところ一杯あるんで楽しんでいってください。」
「ありがとう。」
手を振る女性に手を上げながら挨拶をして分かれた。二人は改めて思い悩む。
「一通り見てきてめぼしいところあったか。」
「あ、そうだクトゥー釣竿とか欲しくない?」
「釣りか。悪く無いかもな。それじゃあ、使えそうなものを探しに行くか。」
釣具を求めて再び二人は町の中を探索し始めた。
今回からまた新しいお話が始まっていきます。




