愚兄の呼ばれた場所へ
少し前から考えていた設定とお話です。
朝。セミコが目を覚まし、朝食の準備をしようと立つとテーブルの上に一枚の紙が置かれている。
“いってきます。”
「早いこと、もう行っちゃったのね。」
「うわっ、びっくりしました。」
紙を持ち見ていると後ろからジュティが覗き込んでいた。
「イセミにも通信を絶たせたらしいわね。」
「起きてらっしゃったんですか。」
「起こすと悪いし起き上がりはしなかったけどね。襲われる様子も無いし、クディも起こして行ったみたいだったから。」
「行ったときにお気づきになられたんですか。」
「クトゥーが行ったことには気づかなかったわ。クディが起こされて暇つぶしに魔法の練習をし始めたところで起きたわ。」
「そうですか。」
「そんな顔しないの。もう、やることもできることも無いんだし、クトゥーを信じて私達は私達のたびをしましょう。」
「そうですね。ご飯の用意してきます。」
セミコは昨日の不安がぬぐいきれず思わず顔に出てしまった。ジュティも明るく振舞っているがイセミでの通信も切るほどのことに不安は残っていた。
朝日が昇る前に出発したクトゥーは風のように目的地へと向かって進んでいた。
「それで、少しくらい教えてくれたっていいんじゃないか。」
「そうだな。頼みたいこともあるし、距離も十分とったか。通信は切ってあるな。」
「ああ。」
クトゥーはスピードを緩めることなく話を始める。
「俺達は今から暇つぶしに行く。」
「ボケとかいらないから。」
「冷たいな。まあ残念なことにあながち間違っていないんだよね。」
「そうなのか。」
「そう。そして、昨日イセミが睨んだとおりこの飾りはおそらくイセミの同類が作ったものだ。」
「そうか。まだ契約しているものがいたんだ。」
スピードを落とすことなく一心不乱にクトゥーは目的地を目指す。
「今から契約を交し合った二人の元へと向かう。イセミにはその様子を見ててもらいたい。」
「それはこっち側のもの目線でってことだよな。」
「ああ。」
少し苦い顔へとクトゥーは表情を変える。
「俺はそいつらを殺そうとしている。」
「君がそういうってことは。」
「ああ、俺じゃあ歯が立たない。だから打開策のためにお前には見ててもらいたい。」
「2対1でやる気か。」
「彼らは最高のもの同士が組んでいるんだ生半可な2対2じゃ話しにならないぞ。」
「だが。」
「大丈夫だ。」
心配そうな声を上げるイセミを制止させる。
「彼らは俺を生かし続ける。俺が面白いと思わせれば、彼らはいつまでも俺を生かす。」
「何のために。」
「彼らは誰かに殺されたいんだ。それも全力を尽くしてな。」
「殺されたい。」
「ただ、我慢が出来ないんだ誰からも相手にされないほど強いだから鬱憤がたまる。だから今一番楽しめる俺を呼ぶ。」
一泊置き仇を見るような目でクトゥーは怒り交じりに言う
「故郷イーワイを、いや、親愛なるグルーフ・イーワイを人質にしてだ。」
「・・・僕に言ってよかったのか。」
「彼らは誰かにこのことを言って人質を殺すような奴らじゃない。むしろ挑戦者が増えて喜ぶだろう。」
「じゃあ何で二人に黙ってたんだ。」
大きく瞬きをして答える。
「死んじまうからだ。」
「・・・矛盾して無いか。」
「して無いから安心しろ。」
「・・・その回答に安心できる奴いるのか。」
「まあ、見ればわかるさ。」
そこまで言うとクトゥーは黙りスピードを上げた。
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ジュティは手綱を持ってクディとのんびりと移動を進めていた。日差しが差し込む森の中をゆっくりと進む。急ぐ必要もないしクディも今日はのんびりとしたい気分のようだ。
「セミちゃん。何か獲った方がいいかしら。」
「いえ、食材はしばらく大丈夫です。でも、池とかあればお魚でも取りませんか。」
「ああ、久しぶりに釣りとかもいいわね。」
「釣り竿ないです。」
「ああ。」
そんな雑談を繰り返しながらのんびりと進んでいた。
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クトゥーは止まらずに進みどんどんと緑が少なくなり生物の気配がどんどんとなくなっていく。
「おい、クトゥー本当にこっちで合っているのか。」
「合ってるよ。何回来てると思ってるんだ。」
「そう、そうだよな。」
まだまだ奥へと進み更に生物の気配がなくなる。
気づくともはや荒れ地になり生物なんて一切いなくなった。
岩壁や地面が所々割れ岩や石が多く転がり足場も悪くなっている。
「こんなところがあったのか。」
「ほとんど知られていないよ。生産性もないし時たま謎の化け物が暴れ轟音が響き渡りいろんな生物がどんどんと離れていったんだ。」
「え、化け物が出るのか。」
「何言ってんだ今からその化け物に合いに行くんだぞ。」
「ああそうか。え?」
「到着だ。」
クトゥーの目の前には一人の男が立っていた。
「やあやあ、意外と早く来たじゃないか。」
男性とも女性ともとれるような中世的な声が響く。
「お?いつもより遠かったから時間かかったと思ったぞ。」
「国を出ていったことは知っていたからね。」
「情報が早いな。流石代表国の王。リュトゥーイ・サン・エルティ。」
15歳くらいの少年の様な背格好の男。顔だちも中性的でクリッとしたぱっちりとした目で160㎝程の少し小さな男だ。
「君の事だけだよ。僕たちは君のことが大好きだからね。」
「愛されているようで。相方はどうした。」
「いるよ。もう少しかかると思っていたからねまだ寝ているよ。そろそろ起きるよ。」
イセミは会話の内容が分からなかった。
しかし、その認識はすぐに変わる。リュトゥーイからもう一人のすごい気迫を感じる。
「来たか。」
「早かったんだねクトゥー君。」
リュトゥーイから先程までと全然違う女性の声が響く。
「あれ、今日はもう一人いるの。どうやら同類のようだね。」
リュトゥーイの後ろから女性がぬっとどこからともなく現れる。整った顔立ちきれいな肌、誰もが二度見をするような美人が抱き着くように現れる。
「ジェリスリューワンさん。まだ残ってらっしゃったのですか。」
「懐かしい名前ね。ジェリーでいいわよ。あなたはイセミねこっちに来てたんだ彼とは・・・契約してはいないようね。」
「クトゥルは僕の友達ですので。」
「ああ、今はそう名のっていたね。」
「知り合いか。」
「有名人だよ。僕らの世界じゃね。とても力を持っていて新しいことへとどんどん向かっていくカリスマ的存在なんだ。むしろ名前を覚えてもらえていたなんて。」
「君は新しいものを作れるからね。私は新しいものが好きだから。」
「光栄です。」
映像越しに頭を下げる。その後耳を疑うような声が聞こえる。
「「それで君達で2対2なのかな」」
一人の男から男と女の声が同時にする。
「何だ今の。」
驚くイセミに女性の声が答える。
「ごめんなさい。最初は驚くわよね。私はもう実体を持たないの魔力は力は使えるけど実体が無いからリュトゥーの生態を借りているのよ。」
「僕達は同じのどを使うんだ。だから二人同時に会話をしたいときはこうなっちゃうんだ。」
後半はリュトゥーイの声へと変えて答える。
イセミはとりあえず理解した。
「なるほど契約した仲なんですね。」
「「そうだよ。だから君達も勝つんだったら契約したほうがいいよ。」」
「その必要は無い。今日もかちん着たわけじゃないからな。」
クトゥーは堂々と答えた。
その答えにジェリーは不服そうな顔をしている。
「またぁ。まあそれでもいいけど。」
「早とちりしすぎだよ、彼らのことは知ってるだろ。」
「そうね。まあイセミは私の情報収集のために連れてきたんだよね。」
「ああ、そうだ。イセミには見ててくれとしか頼んでいない。それにリュトゥーイの方は出る気無いだろ。」
「我慢できないのはジェリーの方だからね。」
「もう我慢できない始めよう。」
グッとジェリーの魔力が高まる。映像越しのイセミでも感じられるほどの高まった強い魔力だ。
「積もる話もあったんだけどな。まあ、終わってからでいいか。」
「勘弁してくれ疲れるのはこっちなんだぞ。」
二人は平然と話を続ける。イセミには理解できなかった。
「それじゃあ、いつものように高みの見物をさせてもらうよ。」
そう言ってリュトゥーイは後ろにへと下がっていった。
クトゥーは軽く体を回し節々の動きを確認する。
「それじゃあイセミ観察よろしく。」
そう言ってクトゥーはジェリーのほうへと向かっていった。
リュトゥーイは作中最強のキャラにする予定です。しばらくはこの二人との戯れになります。




