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愚兄と呼ばれた男の自由な旅  作者: おこめi)
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愚兄の居ぬ間に二人でデート

ほのぼのデート回です。

 翌日。ジュティは朝食のいい匂いをかぎとても目覚めの良い起床に恵まれた。


「おはようございます。」

「おはよう。」

「もうすぐ出来ますので。」

「ありがとう。顔でも洗ってくるわ。」


 バケツに水をためタオルを用意して顔を洗う。はっきりとしない意識を取り戻し完全に目を覚ます。


「んぅー。」


 心地よく差し込む日差しを浴び芽を伸ばす植物のように緩やかに体を伸ばしエンジンをかける。


「いい天気。絶好のデート日和ね。」

「何馬鹿のこといってるんですか。」

「あら、聞いてたの。」


 後ろから呆れた顔で声をかけられる。


「ご飯出来ましたよ。」

「はーい。」


 セミコの作った朝ごはんを食べながら今日のことを話し始めるジュティ。


「とりあえずドゥエンスさんのところに行って、いろいろ遊びに行こうか。小屋はクディとソスラテが見ててくれるしね。」

「そうですね。二人には何か申し訳ないですけど。」

「お土産でも買っていけば喜ぶんじゃないかしら。」

「がうう。」

「アー。」


 二人は任せろと言わんばかりに返事をする。


「いいみたいね。」

「二人ともありがとう。」


 頼りになる二人に安どの表情を浮かべるジュティ、それども少し申し訳なさそうに笑うセミコ。

 そんなほんわかした雰囲気の朝食が終わる。


「「おはようございます。」」


 朝食の片づけを終えたジュティとセミコはドゥエンスの店にやって来た。


「お、来たな。準備は出来ているよ今取ってくるから少し待っててくれ。」


 朝から出る冒険者も多いため冒険者用の商品を扱うドゥミラ・モニトイの開店は早い。

 丁度朝一の冒険者の波が終わり、店にお客はいなかった。

 ドゥエンスは店の奥へと一度戻り再び戻ってくる。


「ほら約束の200万ギューツだ。」

「どうも。」

「何かもう金額に驚かなくなってきた自分が怖いですね


 200万ギューツは普通に大金である。新米の冒険者なら1年かかってやっと稼げるかどうかといったところだ。

 麻袋を受け取りすぐにジュティはお金を数え始める。


「おいおい、信用して無いのか?200万ギューツはちゃんと入っているよ。」


 貰ってすぐに迷い無くしっかり確認するジュティにドゥエンスは少し不機嫌な表情を見せる。


「いえ、ドゥエンスさん。あなたのことはとても信用しています。ここには200万ギューツは数えなくてもあるでしょう。」

「ならどうして。」

「クトゥーから言われてるんです。」


 ドゥエンスの顔が少し引きつる。どこにも目を向けずに淡々とジュティは数え続ける。

 そして急にお金に手をつけ動きが止まる。


「・・・どうした。」

「ドゥエンスさんここまでです。ここまでで200万ギューツです。」

「くッ。」


 悔しそうな顔をするドゥエンス、麻袋にはまだ幾分かのお金があった。


「クトゥーから言われたことをお伝えすると。きっと多く入れてくるだろうから数えて200万でとめるんだ。決してもらいすぎるなよ。と釘を刺されましたので。」

「ばれていたか。」

「それでは私達はこれで失礼します。これからも長い付き合いよろしくお願いします。」


 自前の麻袋にお金をしまい、ジュティはセミコの手を取って一礼してから店を出た。

 残ったお金を確かめると多く入れた分がきっちりと残っていた。


「クトゥルよ。侮れんな。」


 そこにはがっくりと膝が崩れた亭主がいた。


「さて、軍資金も手に入ったし何か欲しいものとかある?」


 そう言われセミコは思い出すように考え始める。


「んー料理器具も揃ってますし、食材は帰りでいいし、お薬とかも不足しているのは無いので。」

「そういうのじゃなくて、こんなかわいい服が欲しいとか、綺麗なアクセサリーが欲しいとか。」

「いえいえ、今のもので満足していますし、そんな高価なもの買っていただくわけには。」

「いいのよクトゥーから存分に使えってお達しが来ているからね。とりあえず服見に行きましょうか。」


 ジュティはセミコの手を握って城下町の商店街へと足を向かわせた。

 ジュティが止まった先には革製品が並ぶ店があった。


「ここって割と有名なところですよね。何か慣れない物の有名店って緊張しちゃうんですけど。」

「大丈夫よ。前に一回来たけど店主は優しい方だったわ。お客なんだし気楽に絶対買わなくちゃいけないわけじゃないんだし」


 ジュティがつれてきたのはティゼロの店だ。以前に来た時よりも商品が豪華になっている気がした。

 中に入りジュティとセミコがバックや衣服などを見る。


「これとかセミコちゃんに似合うんじゃない。」

「そうですか。」

「セミちゃん華奢だからこういうかわいい系が似合ってうらやましいわね。」

「そんなこといったらジュティさんは身長があるのでこういう大人っぽいのが似合ってうらやましいですよ。どうしても子供っぽくなるんですよね。」


 様々な服をあてがいながら似合う似合わないこっちのほうがいいなど買い物を楽しんでいた。


「ジュティちゃん。」


 一人の女性がジュティに後ろから抱きつく。


「ティゼロさんお久しぶりです。」

「つまんない反応ね。まるで後ろから来るのが知ってたみたいな。」


 この店の店主であるティゼロが不服そうな顔をする。今日も黒を基調としたエレガントな格好をしていた。


「何となく感づいてはいましたよ。」

「流石、凄腕冒険者ね。」

「凄腕じゃないですよ。昨日も手合わせして手も足も出ずにコテンパンに負けたんですから。」

「え、この町ヒジェの首を一刀両断する子を赤子のように扱う化け物がいるの。ちょっと怖いんだけど。」

「そんなことより随分上機嫌ですね。」

「最近ドゥエンスさんが上質な皮を安く大量に仕入れてきてとっても儲かっているのよ。」

「それはそれは良かったですね。」

「何で他人事なの。」

「え?他人事では?」

「無いわよ。あなた達の納品物よ。」

「ああ、そうでしたか。」

「興味ないの?」

「もうお金に換わったものですしね。」


 重い麻袋を見ながらジュティはそっけなく答える。

 そんな淡白な様子に額に手を当てため息をつく。


「まあ、いいわ。せっかくだし何着か見繕いましょうか。」

「暇なんですか?」

「上客の媚売りも店主の務めですから。」

「では、よろしくお願いします。貴族連中に声かけてもらっても大丈夫な余所行きの服を一着お願いします。」

「何近々貴族とでも契約するの?」

「いえ、なめられないようにそういうの一着持っておこうかと。」

「成程、任せなさい。」


 しばらくして二人のドレスアップが終わった。

 ジュティは薄い橙色のドレスで腰の辺りから少し膨らみまっすぐに膝元へと広がっている左側は始めのスカートとは別に足元までふんわり布がかぶさっている。右側はジュティの引き締まった美しい足が膝下から美しく光る。


「暖色系のドレスははじめてね。何より膝までしか布が無いから動きやすいし、左側は色々仕込み武器が持てそうで便利ね。」

「デザインを実用的に捕らえる人も珍しいわね。」

「割と気に入ったわ。こんなドレスがあったなんて意外だったわ。」

「私はあなたがドレスの立ち振る舞いが出来ることの方が意外だったけどね。」


 ジュティの立ち方は背中から足までまっすぐと綺麗に伸びていて、足も45度ほどつま先が開き少し胸を張っていて、長身と鍛えられた体が相まってとても凛々しく見える。


「昔ちょっと仕事でね。」

「強さ一筋じゃなかったのね。」

「まあ、ちょっとスランプだった時期があったんですよ。」

「そう。」

「あの~変じゃないですかね。」


 恐る恐る試着室から出てくるセミコに二人は目を向けた。


「きゃあ、とってもかわいいわよセミちゃん。よく似合ってるわ。」


 少し藍色がかった明るくない水色のドレスにクリーム色のゆるいジャケットを羽織っている。ドレスは膝下ほどまで伸びて、ジャケットも七部丈まで伸び、肌の露出を抑えた服装は大人しいセミコによく似合っていた。


「ふむとてもよく似合っているよ。」

「ありがとうございます。」

「ティゼロさんこの二着買いで。」

「毎度、二つで57万8000ギューツだが、皮の儲けもあるしなただでいいよ。」

「それじゃあ、間を取って50万ギューツで。」

「どう間を取ったんだい。」

「コーディネート代ですよ。以下に儲けがあったって言っても50万ギューツを負けて貰うことなんて出来ませんよ。」

「ドゥエンスさんの言っていたとおりだな。」


 二人は試着室へと戻りドレスを脱いで普段の動きやすい服装へと戻った。

 脱いだドレスは綺麗に折りたたみティゼロは大きめのかばんに入れた。


「このかばんはサービスさ、50万以上は貰わないからね。」

「ああ、後出しされちゃしょうがないか。はい、50万ギューツ。」

「丁度だね毎度あり。」


 ジュティはかばんを持って店を出た。

 時間は結構すぎ日が天辺をこえ一時間くらい経ったところだ。


「とりあえず何か食べましょうか。」

「そうですね。」


 セミコは立ち止り少し考える。


「やっぱり食材買って家で作りませんか」

「セミコちゃんとのせっかくのデートなのに今日くらい休んでもいいのよ。」

「いえ、十分楽しみましたし、まだ、時間もあるんですからまた今度楽しみましょう。」

「そう、まあセミちゃんが言うならいいか。セミちゃんの料理のほうが美味しいしね。」


 二人は食材を買い込んで小屋へと戻っていった。



---


「よし後は組み立てるだけだな。」

「待ってください。これは風呂です。肌が触れ合うんです。もう少し綺麗に鑢をかけて絹のような手触りにしてもらいたいのですが。」

「成程、作ったことの無いものを作ると色々見えてきて楽しいな。わかったクトゥル全力を尽くさせてもらう。ほかにも気づいたことがあったら遠慮なく随時言ってくれ。」

「ありがとうございます。」


 風呂作りには熱がこもり上質なものが完成しようとしていた。


次回からクトゥーがちゃんと出てきます。物語も進めていきます。

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