愚兄はやっぱり小さい
一区切りになります。少し短いですがここで切らないと何か気持ち悪いので切ります。あんまり状況をイメージしないで読んでいただけるといい雰囲気になると思います。イメージするといまいち格好がつかない感じになります。
「じゃあ、本当に嫌われたわけじゃないんだな。」
「そうよ。3人と話して今まで考えたことなかったことを考えることになって混乱してただけよ。」
「良かった。どうかなるところだったよ。」
「幻覚見えてたしね。」
事情をそれとなく話し嫌われたわけじゃないということを伝えクトゥーは帰ってきた。
「それじゃあ俺このまま見張りするからおやすみ。」
「おやすみ。明日すぐ行くんでしょ。」
「ああ、特にリミットがあるわけじゃないけどのんびりしすぎたから少し急ぐよ。」
「よろしくね。お金足りないなら連絡頂戴何か狩っとくから。」
「わかった。」
そこまで話ジュティは小屋へと戻った。
そしてクトゥーは夜の番を始めた。
一時間ほど経った頃、一人の来客者にクトゥーは立ち上がり挨拶をする。
「こんな夜更けに美女が一人歩きなんて襲ってくださいといってるようなものですよ。」
「ちゃんと武器は持っている、それに小さな村で村にいられなくなるようなことをする人は、まずいない。」
「固定概念は足元掬われますよ。」
「だから武器を持っているのだろう。」
「それもそうですね。」
月明かりに照らされお互いに姿を確認する。
「こんばんわミロイさん。こんな夜更けにうちのセミコに夜這いですか。」
「悪く無い提案だが残念なことに同性愛者では無いのでな。ただ。」
「ただ?」
「目覚めてしまいそうな可愛らしさではあるかもな。」
「やめい、うちの姫に手は出させんぞ。」
「冗談だ。」
「嘘付け。目がマジだったぞ。」
挨拶代わりの世間話を終わらせ二人は目を合わせる。
「明日に差し支えるぞ。」
「大丈夫だ。むしろ差し支えないためにここへ来た。」
「何か忘れ物でもしたのか。」
「ああ、回収しないとスッキリしなくてな。3人の忘れ物を代表で取りにきたんだ。」
「朝でもいいだろうに。」
「今じゃなきゃ駄目なんだ。」
風もなく静かな夜だ森や山も静まり起きているのはクトゥーとミロイと月だけだと思わせるような静かさだ。
カチャリと音を立てミロイは腰に刺していた剣を床に置く。
「向こうを向いててくれるか。」
「剣まで置いたんだ嫌だとは言わないよ。」
くるりと後ろを向き静かにクトゥーは立つ。
ミロイは身長をあわせるために膝を着き、その小さな背中にグッと顔をうずめた。
腕をまわし力を入れる。
「私達を救ってくださりありがとうございます。」
女性だった。クトゥーの背中で泣いているのは間違いなく女性、クトゥーの知らない本当のミロイがそこにはいた。
「こんなに幸せなことはありません。私達はあなたに感謝しきれません。」
背中に体温とは違う温もりが広がってくる。それでもクトゥーは何も言わずに立っていた。
「本当にありがとうございました。」
抱きしめる力が強くなる。
ミロイはちゃんと喋られなくなる前に簡潔に思いを伝えた。
クトゥーは一切振り返ることなくそのまま話し出す。
「別にあんた達が幸運だっただけさ。俺がドゥエンスさんと知り合いだったことも、すぐに連絡が取れる手段があったことも全て偶々だ。一つでも順番が違ってあんた達と先にあっていたら叶わなかったことだ。
あの大男達のことだって俺が殺したいと思って殺せる術があっただけさ。」
「そんな。」
「それに、あんた達だってまだゴールしたわけじゃない。あくまで分かれ道で偶々いい道を引き当てただけだ。
まだまだ長い道のりが待っているんだ。こんなところでゴールした気分でいちゃ駄目だよ。今日は今日、明日は明日。何が起こるかわからないんだから。
もしかしたらドゥエンスさんが急に破産するかもしれない。もしかしたらドゥエンスさんが奥さんに逃げられてショックで失業してしまうかもしれない。もしかしたらドゥエンスさんが。」
「何で、ドゥエンスさん限定なんですか。」
「まあ、そんな風にまだまだみんな生きている途中なんだ。幸せになる努力は怠っちゃいけないよ。」
「幸せになる努力って何ですか。」
「何だろうね。」
質問を疑問で返してクトゥーは高々に笑う。
「でも、君達がやってる助けられる人は助けたいって気持ちと行動は幸せになる努力だと思うよ。現に俺にあえて君達は幸せになったんだろ。」
「…そうですね。」
いつの間にか涙は止まっていた。
「さあ、君も幸運の余韻に浸るのは今晩までだ。また明日から頑張って生きなきゃいけないな。」
「そうですね。」
まわしていた腕の力が弱まり開放される。
立ち上がったところでクトゥーは改めて振り返る。
そこにはいつもとは違う女性の顔をしたミロイがいた。
「大変だな。お前さんも。」
「そうでもないわよ。大事な二人のためだもん。」
「暗いな、送っていこうか。」
「だーめ。あなたと一緒にいたらいつまでも私がリーダーのミロイに戻れないじゃない。」
「そうか。怖くないのか。」
「まだ怖いわよ。」
「俺には抱きついたのに。」
「あなたは特別よ。」
「そうか特別か。ああ後、明日で俺とはお別れだ。ま、ドゥエンスさんのところにいたらいつでも会えるだろうけどな。」
「そっか。明日から別行動か。とても濃い三日間だったな。」
「そろそろ休め。」
「そうね。じゃ、おやすみ。」
「ああ、おやすみ。」
そう言って村に戻る姿はとても可愛らしい女の子だった。武器を拾うまでは。
クトゥーも大きく一息つき小屋の入口へと戻り錫杖に体を預けた。
私は男で女心がよく分かりません。ですので、もしかしたら女性の読者さんがいていやいやこんな女性いないからって思う方もいらっしゃると思います。そもそも女性読者がいらっしゃらないかな? ここ数話女性キャラメインで色々書いていていたので気になりました。そう思っても「ウフフ作者さんの好みかしらそんな女いませんよ。夢見ちゃって馬鹿ね」といった寛大な心で見ていただけると助かります。




