愚兄対中堅商人
書いてて訳が分からなくなりかけました。そんなアホみたいな回です。
「お、ジュティ丁度良い所に。」
「私に何か用だった?」
「査定が終わってね値段交渉して150万ギューツで買い取ってもらえるようになった。」
「へー破格じゃない。相場知らないけど。」
うれしそうに報告するクトゥーにジュティは何となくあわせる。
「破格だよ。本当に。」
とても残念そうな顔をしたドゥエンスも顔を出す。
「俺がな。」
「あはは、やっぱり。相場と内訳を聞いてもいいかしら。」
「通常ある程度傷つけたヒジェを丸まる一匹となると30万ギューツ。」
「ヌケヨンディよりも高いのね。」
「ああ、あれはダンジョンで出ることもあるし、ヒジェはヌケヨンディよりもすばやく移動できるからね。まあ、肉はヌケヨンディの方が断然美味い。正直討伐難易度から見ると依頼が無い素材だけの売りじゃ割に合わない。まあ、首を飛ばす君達にはあまり関係ないことか。
解体費用、肉の売却なしを考えても一頭25万ギューツはするだろう。ただ重くてしょうがないからヨンディ車が無いと運ぶのは辛いな。それに生息地は山やその近辺の森だ。町から遠いことが多いから討伐依頼以外ほとんどやら無いよ。」
「それで一体約30万で買い取ったと。」
「皮に傷が一つもついていないし完璧な一枚による解体を考えたらギルド買取でも5,60万はくだらないだろう。売りに出したら100万ぐらいでの取引になるだろうな。」
「それでクトゥーいつの間に相場を調べたの。」
「いや知らんかったよ。今始めて聞いた。」
衝撃の一言にドゥエンスは固まる。
「待て。お前最初相場は100万だと言った時相場はそんなに高くないもっともっと安いだろと言っていたじゃないか。」
「ああ、ドゥエンスさんのことだから嘘ついてると思ったんだが嘘をついている様子は無い、それじゃあギルド相場と売り相場をわざと間違えてるんだなと考えて吹っかけたんだよ。」
「な、嘘はばれると思って施した策まで。」
「甘い甘い。」
とても悔しそうに膝を着くドゥエンスと対照的に勝ち誇りうれしそうなクトゥー。
傍から見たら高額で素材を売った冒険者と高く買わされた商人の図だが、安く売りつけた冒険者と安値で素材を買った商人に違和感を覚える。
「ドゥエンスさんどう考えても逆じゃないんですか。安く買えれば買えるだけあなたが儲かりますよね。」
「そうですね。商人としては喜ばしいことなんだと思います。ただ、ここでは物と金のやり取りだけでなく信頼や絆のやり取りもしてるんです。だからあまりにも安値で買うのはあなた方を安く買っているようでとても嫌なんです。プライドが許せないのです。」
悔しがるドゥエンスを嘲笑うかのようにクトゥーは見る。
「捨てちまえ捨てちまえそんなプライド。これからも俺はあんたをボロ儲けにしてやるぜ。」
「何言ってんだこいつ。」
「くっ儲けさせられてたまるか。何が何でもこの恩返させてもらう。」
「訂正、何言ってんだこいつら。」
わけのわからない喧嘩を見せられて呆れるジュティは冷たい目で二人を見る。そしてハァと一つため息をついた。
「ドゥエンスさん、あんまり上げるとクトゥーに怒られるんでとりあえずですけど勝手に200万ギューツもらいます。」
「あ、こらジュティ勝手に貰う金額を増やすんじゃない。」
「ありがとうございます。ただ、それでもやはり私が儲かってしまいますので色々な面で返させてもらいます。」
「ああ、止めて止めて、あなた達と会話してると頭おかしくなるわ。とりあえず素材は150万じゃなく200万ね。クトゥーもあんまりいじめるのは止めなさい。」
「いじめて無いぞ。」
「そうね。冷静に考えるとそうなるわね。」
段々ジュティは頭が痛くなって来る。
一番儲かっているのはドゥエンスではあるがそれはドゥエンスの意思に反する。ただ、いじめと言われると一番得をしているのはドゥエンスで一番損をしているのはクトゥーであるためいじめとはいえる状況じゃない。
しかし、立場や勝ち誇っているのはクトゥーだ。その関係と今の現状を見るといじめっ子がクトゥーでいじめられっ子がドゥエンスにしか見えない。
は?
「ああ、もうわかんない。あなた達の不思議な世界に連れて行かないで。とりあえず今回はそうするから決まり。商談、おしまい。」
頭を押さえた後に手で散らすようにして無理やり商談を終了させジュティはその場を離れた。
「それじゃあ、ジュティさんのお言葉通り200万お渡ししますね。」
「ジュティめ、勝手なことを。」
最後に二人の中でも商談を〆て終わりにする。
「さて、そろそろ準備できるだろう。腹減りましたね。」
「そうですね。こんなにも辛い商談は久しぶりでした。いや、この間ヌケヨンディの肉以外を15,6匹分買った以来ですかね。」
「流石ですね。やっぱり名を上げた商人は違いますね。」
「皮肉ですか。」
「肉はドゥエンスさんに買ってもらったこと無いですよ。」
二人並んで準備されたテーブルへと向かう。
「みんなをよろしくお願いします。」
「何、まだまだそんなもんじゃ返せないほど恩はありますよ。」
「ははは。」
「これからもドゥミラ商会をご贔屓に。」
「もちろん。というか商会作ったんですか?」
「言ってなかっただけですよ。あなたの家は商会にいるプロに選んでもらったパーツで出来てますよ。」
「それじゃあ、今度お礼と商談に。」
「代表に言ってるんで大丈夫ですよ。それにお礼は腐る以上に貰ってますよ。」
「そうですか。」
のんびりと歩く二人に遠くから声がかかる。
「クトゥー早く席に座って、みんなセミちゃんの料理の匂いに我慢できない。」
全員が席に座り二席だけ空いている。
「すぐ行く。」
二人は小走りで席に向かった。
料理はヒジェを中心とした料理が並んだ。下味をつけさっと上げたものや、香草と野菜で炒めたもの、細かくした香付けの葉と塩をまぶした串焼き、ミンチにして焼き野菜をペーストにして味付けしたソースをかけたもの、蒸したものを薄切りにしたもの、野菜と煮込んだスープ。
大量のヒジェ肉料理を前にして胃袋を刺激される面々。
「ソスラテ、毎日こんなに美味そうなものを頂いておったのかうらやましい。」
「これは凄いな。庶民的な盛り付けだが漂ってくる香りがとても上品でおいしそうだ。」
「こんなの食べてたらクトゥーがあれで納得してなかった理由が分かるな。」
「す、すごいです。こんなの見たことありません。」
「結構人がいらっしゃったので張り切っちゃいました。ヒジェ肉うまみはあるんですけど匂いが少しヨンディよりも強くて難しかったですね。香草でごまかしたところもあるのでもっと精進が必要ですね。」
「セミちゃん食材大丈夫?必要だったら買い足すから。いつにも増しておいしそうね。」
「ははは、流石だね。大丈夫香草でごまかすって考えないで食材にあった食材と調理を見つけることが大事だよ。」
「さて、みんな揃って待ちきれないようなので早速食べますか。」
「がう。」
「カァアー。」
全員が目の前の料理に胃と脳が興奮する。
「それじゃあ、いただきます。」
「「「「「「「いただきます。」」」」」」」
「がう。」
「ァアー。」
各々が好きなものを好きなように食べ進める。そこには賞賛の声しか上がらない楽しい食事会が広がっていた。
「あ、しまった。俺村長さんとかに挨拶して無い。」
急にクトゥーが大きな声を出す。
「私達でしてきたわよ。少し騒ぐことになると思うっても伝えてあるわよ。」
「助かります。」
「明日にでも挨拶してきたら。」
「了解です。」
ジュティの言葉に深々と頭を下げるクトゥー。
「いやぁ、いろんなことが重なって忘れちまってたな。」
「珍しいですね。いつも私達を引っ張ってくれるじゃないですか。」
「そこの3人娘のことで頭が一杯だったんでしょう。ドゥエンスさんのお目にかかるかが不安だったんじゃないの。」
「ご名答。商人の目はやっぱり見えないからね。優秀な人材は確保しておかないとね。」
妙な発言に全員が釘付けになる。
「どうしたの? 国でも作るつもり。」
「まさか。ただ、親愛なるグルーフ王のため国の発展に貢献できればと思っただけだよ。」
ジュティは知っているのでおちょくるように聞き、クトゥーも面白そうに返す。
「ミロイさん、グルーフ王って最近王に成った人ですよね。」
「そうだ。こんな短時間で信者を作るとはやはり只者ではないのか。」
深読みをする回りに気づきクトゥーは止めに入る。
「違う違う。昔王子の時代に出会って勝手に憧れているだけですよ。」
「なーんだ。つまんねえ。」
「だが、グルーフ王の実力は噂になっているほどだぞ。下手したら国を一人で潰せるほどといわれている。」
「そんなに!?」
「ああ、某もあの王には一目置いている。絶対王とも言われるサン・エルティの王と渡り合える唯一の存在とも言われている。」
ミロイの話にフゼスリが補足を入れる。グルーフの評価を聞き顔がにやけるのを押さえるジュティはクトゥーの顔が少し険しくなったように見えた。
その後も楽しい食事会が続き料理もなくなってお開きとなった。
「それでは某はこれにて失礼する。用があればソスラテにて申しつけくだされ。ミロイ達も新たな主人のために尽力を尽くせ。では失礼する。」
そうしてフゼスリは闇の空へと消えていった。
「私も宿に行くよ。おやすみ。」
「あれ? ドゥエンスさんは小屋じゃないんですか。」
「村への貢献だよ。」
「昼間に同じ宿を取っていたのよ。」
「ふーん。」
「クトゥーこの後ちょっと手伝ってくれない。」
「ん? いいけど。」
「ありがと。セミちゃんちょっといい?」
「はーい。」
小屋へ食器を運んでいたセミコが近づいてくる。
「どうしました。」
「洗い物私とクトゥーでやっとくからちょっと頼まれてくれない。」
「私に出来ることでしたら何でも言ってください。」
「ありがとう。おーい、3人娘。こっち来なさい。」
そう呼ばれ同じく食器を運んでいた3人が近づく。
「何か用か。」
「さっきは話題に上げづらかったでしょう。だから今椅子片付ける前に話しちゃいなさい。」
「すまない。助かる。まさか悟られていたとは。」
ミロイはしっかりと頭を下げた。
「気にしなくていいわよ。クトゥル軍団の仲間じゃない。」
「始めて聞いたんだが。」
「あんたが着々と人を集めるから流行らせていこう。」
「止めろ。俺は大勢の上に立つ気は無い。」
「それじゃあ、セミちゃん詳しいことは彼女らに聞いてね。」
「は、はい。」
二人は小屋へと戻り、四人は椅子に座った。急に一人にされセミコは緊張気味であった。
クトゥーはドゥエンスさんをどうしたいんでしょうね。(他人事)
またまた、評価ありがとうございます。PVも20000を超えました。これからも頑張っていきます。




