愚兄と山賊
本格的に旅が始まります。
ある程度整備された道をだらだらと歩いていく、魔物にも襲われず平和な道をのんびり進んでいく。隣町までは歩いて5日ほどだ、近道なら2日かからずに到着する。鍛えている彼らの足なら3日、近道なら半日で行けるだろう。
「なあ、冒険者って何する仕事なんだ?」
「なんでもないわよ。町の雑用から魔物の討伐、護衛に素材集めとかかな。何でも屋みたいな。まあ、そう入っても上を見たら果たしない金額を稼いでいる人はいるけどね、金持ちの護衛とか採取の難しい素材の入手や災害レベルの魔物の討伐とかが出来る人が上に行くかな。」
「魔力も筋力もない俺には夢のまた夢の話しだな。」
「そう?」
ガサガサッ。
森のほうから物音が聞こえる。
「3。」
「4だな。」
森から武器を持った小汚い男達が3人出てくる。
「ここじゃ見ない顔だな。親子か?姉弟か?まあいい、荷物を置いていってもらおうか。」
大振りの剣や斧、木鎚を持ち二人を見ながらニヤニヤと笑っている。
「かぁ4が正解かぁ。人生のほとんどを屋内で過ごしたのによくわかるねクトゥー。」
「いつも訓練中は誰かが来ないか気にしていたから音や気配には敏感なんだよ。」
「何で私には気づかなかったの?」
「捌くのが限界だった。」
「やっぱグルーフって凄い人なんだね。」
二人はお構いなしに自分達の話題でしゃべっている。山賊たちは呆気に取られ、すぐに相手にされていないことに気づき腹を立て大きな声をだす。
「お前らぁ状況わかってんのか。なめたまねしやがって、もういい交渉は無しだ。死んでもらうぜ。」
「落ち着けよ状況はわかってるよ。」
クトゥーの言葉に山賊は止まる。
「俺達二人は道を歩いていて、道を歩いてくる無用心な連中を中心に活動している。丁度、呑気に駄弁りながら歩いてくるチビと女性という鴨を見つけ行動に出た。誰がチビじゃ。」
「誰も思っただけで言ってねぇよ。」
淡々と話すチビに山賊三人は注目していた。
「好都合と思い三人が俺達の前に出て行った。脅して金また金目の物を奪う、もし言うことを聞かない場合は殺して森に捨ててしまえば魔物達が処理をする。戦闘になっても頭数や図体で大きなアドバンテージが取れる。最悪の事態の回避のために弓を持った仲間を森に潜ませながら。」
「な。」
仲間のことを指摘され動揺する。山賊の一人は気づかれないように合図を取り攻撃の指示を出した。
「君達は道専門の山賊かな最近は道も物騒になってたんだね安全をいいことに人間が人間を襲う。確かに道は魔物からの安全性を考慮した場所だからね。」
淡々と話を進めていくクトゥー、一方、一向に来ない援護に苛立ちを感じ始めてきている3人何回か手で攻撃の指示を出しているが全く反応がない。
「まあまあ、そんなにイライラしないで、もうすぐ来るから落ち着きなよ。」
不適に笑うチビに恐怖感を覚え始めた頃一人があることに気づく。
「あれ、女はどこに行った?」
三人がチビに注目している間にジュティの姿が無かった。
ガサガサと草木を掻き分けジュティが一人の男を引き摺って出てくる。
「あれ?まだ始まってなかったんだ。」
「道を行くって言うからおかしいと思ったがこれが目的だったのか。」
「いやこんな一人10,000ギューツもしない奴ら狩っても運ぶの大変だしね。もっと大きいのがいるよ。」
「そうか。それにしても合図もなしによくわかったな。断末魔も聞こえない見事な犯行だったぞ。」
「犯行とは人聞きの悪い。注目集めだしたから何となく察したのに。」
「えらいえらい。さて、おとなしく捕まるか抵抗して捕まるかなんだが、どっちがいい?」
クトゥーの前に居た男が大斧を振り下ろす。
ひょいっと体を回して避け錫杖で男の顎を打ち抜き、横にどさっと倒れた。
「遅いよ。コンビネーション組むんだったら回避が始まる前に来ないと。」
指でクイックイッと挑発する。
剣を持つ男が横に切り払うその手を踏み台にして男の左を抜ける。錫杖を地に刺し軸にして方向を変えて後ろから首を蹴る。クトゥーの力でも気絶まで持っていける場所を的確に捉えていて、剣の男もどさっと倒れる。
戦意喪失した鎚の男が武器を投げ逃げ出す。しかし、暇をもてあましていたジュティが回り込んで腹部に拳をつきたてた。腹を押さえながらその場に崩れ決着がついた。
「その首を蹴って気絶させる奴どうやるの。」
「一時的に脳への血の流れを停めて意識を落とすんだよ。やろうと思うなよ危険だからな。おら起きろ。」
二人は手足をロープで縛っていく。剣の男を縛ったところで活を入れて起こす。
「それは何?」
「すぐ起こさないと後遺症が出る可能性があるからな。早めにこうやって起こすんだよ。」
4人を縛り終える、3人は現在も気絶中で一人だけ起きているが両手足を縛られ、手も足も出なかったものが目の前にいるため大人しい。
「んで、これどうするんだ。町に戻って受け渡しか。」
「その辺は大丈夫。」
先程ジュティが出てきた場所から大きな影が見える。
大きな胴体で短い首、一対の角を生やし、こげ茶色で太く引き締まった短足の四足歩行の生物が大きな荷車に荷物を載せてやってきた。横には屈強で良い装備を身にまとった男もいる。
「すげぇでかい荷車だな。ヨンディの上の人が主人か。」
短足四足歩行の生物はヨンディと呼ばれる魔物で、温厚な性格で大人しいため荷物の運搬などに色んな種族から重宝されている。動きは早いわけではないが力強く結構な重さを運ぶことが出来るので大荷物の行商人などに親しまれている。
「すいません。ここまで来て貰って。」
「何、気にするな。」
ヨンディを休ませ一人の男が降りてくる。口元に立派なひげを生やし服装も見るからに良いものだとわかる品である。
「さっき、弓男を倒しに行ったときに見かけて声をかけたの、私達この身とバックパックだけで来たでしょう、だから引き取ってもらおうと思ってね。」
「そうか、始めまして私はクトゥルと申します。彼女ジュティからは愛称でクトゥーなどと呼ばれています。」
「始めまして私はドゥエンスという。城下町を中心に活動している商人だ。ドゥミラ・モニトイの亭主だ、これも何かの縁だよろしくお願いするよ。」
「あの、冒険者は行けば何でもそろうと有名なドゥミラの亭主さんでしたか、こちらこそお世話になってます。」
クトゥーのかばんの中にもロープやナイフなどの基本的なものは入っている。どれも出発前にドゥミラで買った品だ。ドゥエンスは手を出し握手を求め、クトゥーもそれに応じる。
「ははは、ありがとう。それにしても変わった名前だね。愛称だとこの国の長男と同じ名前になるし、おっともしかして失礼だったかな。すまない、そんなつもりで言ったんじゃなかったんだ新聞で久しぶりにその名前を見てしまって。」
「ああ、大丈夫ですよ。子供のとき以来誰も見たことのない隠された愚兄でしたっけ、そうですね。でも、愛称ですので気にしていませんよ。」
失言をしてしまったと焦るドゥエンスをクトゥーはなだめる。
「まあまあ、ドゥエンスさんそろそろ本題に行きましょう。」
「ああそうだなすまない。」
ジュティが間に入り本題へ促す。
「リストと確認してもらいまして全員で36,000ギューツ、チームでまとめて40,000ギューツになると思います。それと彼らの武器を合わせて、30,000ギューツでいかがでしょうか。」
「その値段で良いのかい?ここからの距離も近いしちょっと運ぶだけで10,000ギューツと4つの大きな中古武器も貰って良いのか?」
「構いません。私達には運ぶ手段がないですしここで安くても引き取ってもらえるだけありがたいです。」
「わかったその値段で取引しよう。」
荷車に戻りかばんとロープを持ってくる。かばんから財布を出し30,000ギューツを取り出す。
「では、約束の30,000ギューツだ。それと。」
持って来た縄をジュティに渡す。
「縛っているロープはこちらで持っていってしまうからな。交換といこうじゃないか。」
「いいんですか?これ、私のよりもずっと良いロープですよね。」
「構わんよ、儲けさせてもらった分これぐらいは返さないと商人の運気を逃してしまうからね。」
「それではお言葉に甘えさせてもらいます。」
ロープを受け取り、一礼する。その間に護衛の人が荷物を積んでいた。
「それじゃあ、これからもうちの店をよろしくね。」
「こちらこそ、冒険者なりたてのひよっこですが何かあればご協力いたします。」
再度、クトゥーとドゥエンスは握手を交わし、ドゥエンスはヨンディに乗り城下町へ動き出した。
「それじゃあ良い旅を願っているよ。」
「ありがとうございます。」
見えなくなったところでクトゥーはジュティを見る。
「よく見つけてきたな。」
「たまたまよ。」
「山賊狩りの依頼でも取ってきたのか。」
「そんなわけないでしょどうやって運ぶのよ。」
「そうだよな。」
「まあ、でかい懸賞首一人くらい何とかなるかなって。」
「顔は割れてるのか。」
「うん。絵で貰ってきた。後、名乗るんだって。」
「自分の名前をか?」
「そう。」
「変わった奴だな。」
そしてまた道をのんびり進んでいった。
誤字報告ありがとうございました。指摘されて気づくとひどい間違いしていたと思います。しっかりと見直すようにしますが今後も出てくるかと思いますので暖かい目で見守ってください。




