愚兄の死
サブタイトルだけやたら壮大。
朝を迎えた。日差しが差し込んできてジュティは目覚める。
「ふぁああ・・・。」
「お、起きたかおはよう。よく眠れたようだな。」
クトゥーは既に目を覚まし昨日持ってきた荷物の確認をしていた。
「あ、クトゥー様おはようございます。ベッドありがとうございました。」
「様いらない、敬語も要らない。まあ、敬語はそれぞれの癖があるかもしれないけど様は取ってくれ。俺への忠誠はフレンドリーで返せ。」
「わかりました。」
ジュティはまだ少し寝ぼけている様子だった。
「準備が出来たら朝市で朝食を取ろう。起きれるか?」
「ああ、はい大丈夫です。クトゥーがいる安心感から熟睡してしまいました。」
「ん?城にいるときも熟睡じゃないのか。」
時間厳守という縛りはあるが、すべての部屋に鍵がつけられ簡単には侵入できないため安心である。また、しっかりと睡眠時間がとれるように仕事のスケジュール調整が行われている。
「睡眠時間はちゃんとありましたけどベッドが良すぎるんですよね。」
「そうだな。親父の意向でかなり良いものにしてるからな。」
「逆に寝れない。」
「わかる。」
彼女も出発の準備を始めながらクトゥーへ質問する。
「それで、旅の目的は何なんですか。」
「無いぞ。」
「え?」
「何となく歩き回って、グルーフに伝えたい情報があれば伝えに戻って、何となく過ごして、何となく死ぬ旅だからな。」
「何となくな出発だったんですね。」
「ああ、まあそのうち何となく目標が見つかるだろ。」
「そうですね。それと錫杖はどうしたんですか?」
「かばんの中。町中だと邪魔になるからね。」
「入るんですか?」
「上の飾りははずせるようにしてあるからこのかばんで丁度。」
「へぇ~。」
クトゥーの持ってきたかばんは150cmの大きなリュックであった。肩幅が小さいのでたてロングなリュックだ。
「どこで買ったんですか?」
「王家だった俺が簡単に買いに行ける訳ないだろ。作ったんだよ。」
「すご。」
準備が終わり荷物を持ちながらチェックアウトを済ませ、朝市で肉やら魚やらを買って食べ歩きをしている。
端から見れば旅をしている姉弟か親子にでも見える様で大変なんだなとか言われながらいろいろおまけしてもらった。
「いいんでしょうか。」
「店の親父の勘違いだし良いんじゃないか。意外と俺の顔も割れて無いし、これなら冒険者としてライセンスが取れるかもな。他国に行くなら必要だし。」
ライセンスとは、その職業に就いているという証明書みたいなものである。入国等にお金がかからず、一つの国内で一生を過ごすのならあまり必要ではないが、旅をしたり他国に行くものは必要になる。
ライセンスは業種によって異なるが冒険者のライセンスは無職でも取れる超お手軽品だ。しかし、何の保証もついていないので大体の人が商人か農工人になる。商人や農工人のライセンスは様々な保証があり、同業者との繋がりも持てるため一国に留まる人でも持っていることが多い。
「ジュティは持ってるんだよな。」
「持ってますよ。でも私も更新に行きたいかな。」
「それじゃあ今日は冒険者集会に行ってライセンスの発行と更新だな。」
「本当にゆっくりな旅ですね。」
「まあ、目標は一つあるし、そこまでは旅の準備かな。資金源も確認しておかないとな。」
「やっぱ冒険者らしく依頼?」
「いや、素材売りだろ。一国に留まらないし。他にも何か儲け話があったら食いついていく感じかな。」
「それもそうですね。」
朝食を取り、冒険者集会へ行き、弟という感じでライセンスを取る。基本名前だけで良いのでお手軽だ、偽名も可なのでクトゥーではなくクトゥルで登録しておいた。商人は色々と面倒ごとがあるらしい。
(それにして注目されているな。まあ仕方ないか。)
待ってる間ずっと周りから、あんな小さい子どもが冒険者なのかという不思議なものを見る目にさらされていた。
「おい、小僧、退けよ。ここは子どもの来るところじゃないぞ。」
柄の悪い冒険者が入ってきた。周りも笑っていて助けようという感じがしない。
(まあ、自分の身は自分で守れってことだろう。いや、関わるのが面倒くさいだけか。)
「いま、らいせんす?つくってもらってるの受け付けのおねえさんにここにいてくださいってだからここにいるの。」
子供のような声をだし子供のようなしゃべり方でクトゥーはとぼけることにした。
「お前が冒険者?はっはっは笑わせるぜ。俺は忙しいのどきな。」
(横暴な奴だな、来たばっかりの人か?)
「おじさんじゅんばんはまもらないといけないんだよ。そんなこともしらないの?」
ちょっと煽ってみるとムッとした表情でイライラし出した。
「こどもからやりなおしてきたほうがいいんじゃない。」
「ああ、そうか冒険者なりたてだからな。そりゃ知らないか。それじゃあおじさんが先輩への口の利き方やマナーを教えてやるぜ。」
突如腰から剣を抜きクトゥーに剣をつきたてた。
(軌道バレバレ、無駄な大振り、攻撃宣言、目線で攻撃箇所が丸わかり、当てないで脅すつもりか、まあ、何より。)
「くそ遅ぇ。」
一歩も動かず顔をズラすこと無く、クトゥーは何事も無かった様にたっている。すぐ横に刀が突き刺さっていても全く動じていない。
「どっから来たのか知らないがマナーの前に法律見直せ。ド低脳。」
先程までの子供っぽさは無くものすごい大きな存在のように集会にいるものは感じた。
近くにいた、いきがった冒険者が一番震えていた。
「平和の国イーワイ城下町の町条例その1武器の使用や魔法の使用は特定の許可を得たもの又は命を狙われる緊急時にのみ許されるものである。それ以外での使用は懲役又は罰金が課せられる。
その2武力及び魔術による脅し行為や人体、財産を侵害するものは罰則が課せられる。
その3武器や杖を持ち歩くときは鞘や腰にかけ危険の無いように取り扱うこと。管理が雑であったりむやみに手に持つことは禁止とし、違反者は武器所有管理不届きとし罰金と指導が課せられる。」
淡々とクトゥーは言い切る。国によっては武器や魔術の規制が届ききっていなかったり、戦闘を重きにおく国だと街中での武器や魔術の使用が認められる場合がある。
前記の通りイーワイは平和を大事にしているため武器や魔術に関する法律は厳しい。城下町は特にだ。イーワイの中でも使用までは認められていたりする場合もある、それは模擬戦や腕試しの意味であり、国内統一で殺人は重罪に当たる。
「知らなかったじゃ済まされないからな。」
フロントから大男が出てきてその冒険者を捕まえ連行していく。突き刺さった彼の剣だけが残った。
「これは回収しないのか。」
「どうぞ持っていってください売るなり使うなりご自由に。」
「いやぁ、見た目どおりの筋肉なので引き抜くことすら出来ません。それに鞘がなければ武器所有管理不届きになるだろう。」
「刺しておけば誰かが持っていくだろう。ほら鞘だ。」
「そうですね。お疲れ様です。」
捕まえた男の腰から鞘を取り投げて立ち去って行く。警備隊の人達を見送り入れ違いでジュティが出てくる。
「隠す気ないんですね。」
クトゥーは棚においてある新聞を指差す。
”クトゥー王子死去。愚かだったのは病気が原因!!”
そんな記事が一面を飾っていた。
ジュティが近づいて回りに聞こえないようにはなす。
「ありゃりゃ。これは酷い。」
「そうか?俺が自由に動ける。グルーフなりの配慮だろ隠れて余計な事しやがって。」
「これ大丈夫なの?」
「何が?」
「いや、これ隠蔽にならない?後から弱みになったり。」
「しないしない。この町の記者は特に平和ボケしてるし大丈夫だろ。」
「そっか。」
「クトゥルさん。ライセンスが出来ました。」
ライセンスを持って受け付け嬢が声をかけてきた。
「ありがとうございます。」
ライセンスを受け取る。
「よき冒険者ライフを。」
「ところでこの剣どうするの。」
「ああ、忘れてた。抜いてって武器屋に持っていくか。」
「売るのね。それじゃあ。」
スッと剣を抜いてみんなが座ってるほうへ振り向く。
「この剣買いませんか3000ギューツから。」
ギューツはこの世界の通貨である。剣の相場は中古で大体1万ギューツのため破格の値段設定である。武器やで買い取ってもらうと2500ギューツほどなのでどちらにしてもおいしい話しとなる。
「3500。」
「4000。」
「5000。」
「・・・。」
「はいそれじゃあ5000ギューツね。」
ジュティはとある冒険者とお金のやり取りをする。
「慣れてるな。」
「昔は冒険者だったからね。」
「敬語も取れてるな。早かったな。」
「もともと、こういう性格で剣のことだけ熱くなる性格だったからね。王家時代はちゃんとすることと、剣に迷っていてからテンションが低かったのよ。」
「成程。」
「はい、5000ギューツ。」
「良いのか。」
「言いも何もあなたの貰った剣でしょ。」
「それもそうか。それじゃあ手数料。」
クトゥーは2000ギューツを渡した。これ以上ややこしくなるのは嫌だし手数料といわれて上手い返しが見つからなかったのでジュティはありがたく受け取った。
集会を出てきた。何をするか。
「隣町でも行くか。」
「いいの?やることあるんでしょ。」
「いいよ。まだ行われなさそうだし、隣町ならそんなに遠くないし何とかなる。」
「そうじゃあいきましょうか。」
ライセンスを見せながら関所を通る。平原に出て隣町に向かって歩き始めた。
外に出たということでクトゥーは錫杖を出した。ジュティは腰に剣を携えている。
「ジュティは魔法とか使わないのか?」
「使えるけど、武術を極めたいのよね。」
「そうか。まあ、欲しくなったら教えるよ。」
「使えないのに?」
「使えないのに。グルーフに教えたのは俺だ。」
「うわ、説得力ある。」
身長差40cmの二人がどんどんと進んでいく。
「そういえばその剣どうした?」
「グルーフが餞別ってくれた。これ片手でも振りやすくて切れ味も良くてぴったりなのよね。」
鞘からとり惚れ惚れしながら眺めている。その剣を見てクトゥーは一人納得する。
「成程、そりゃそうだ。グルーフ製だからな。」
「え。」
「癖でわかる。」
「いや、そこじゃなくてグルーフ、剣も打てるの。」
「自分でその武器の癖をわかるのはとても良いことだからな。ちなみに俺は筋力が無いから打てないけどな。」
「へぇ~。今度、私にも教えてよ。」
「機会があればな。」
雑談をしながら隣町に抜けるため森へと入っていく。イーワイ国内の森や山は魔物の影響が少ない場所を迂回するように道が設けられている。しかし、安全性を第一にとっているのでその通路は長い最短距離で突っ切っていくのとでは何倍もの差が出る。そのため、冒険者や用心棒を雇って進む人が多い。
「どっち行く?」
「道。」
「おや?修行だとか言って荒地のほういくと思ったが違ったか。」
「ゆっくりな旅ですし、みんな近道ばっかり通るので人目につかず剣を見てもらえるからね。」
「成程。」
ブックマークしていただきました。ありがとうございます。読んでくださる方もたくさんいらっしゃってとてもうれしいです。作者の頭自体が悪いので緻密な演出や壮大な伏線を貼る事はできませんが、おもしろいと思ってもらえたり楽しい気持ちになっていただけるよう頑張りますのでこれからもよろしくお願いします。