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愚兄と呼ばれた男の自由な旅  作者: おこめi)
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愚兄の魔法講座(本人は使えない)

長めになってしまったのに全く進みません。なので後書きに今回のダイジェストを書きます。そこさえ押さえておけばシナリオを読むのに問題ないと思います。

「どうだ。各々の進捗具合は。」


 昼食を食べならクトゥーがつぶやくように成果を確認する。


「クディは左右5m、セミコちゃんは魔力の出力まで出来たわ。後は2人ともコントロールできるように何度も練習ね。」


 ジュティも食べながらその問いに答える。

 その答えに少し驚いた素振りを見せるクトゥー。


「早いな。もう少しかかるものだと思っていたんだが。」

「2人とも素直だから飲み込みが早いのよ。」

「いやでも先程倒れちゃいまして。」


 セミコ苦笑いをしながら返す。


「俺、魔法使えないからわかんないけどそういうものなんじゃないの?」

「そうね。最初は出し方だけ覚えちゃうと全開で流れちゃうから急激な魔力の消費で倒れちゃうケースはよくあると思うわよ。」

「だそうだ。それにしてもよく知ってるな。」


 経験豊富そうな発言に感心する。お互いに過去は知らないことだらけなのでジュティの過去に少し興味が湧く。


「冒険者向けの魔法教室に行ってたからね。何人かとまとめてだったし先生がよくあることだと笑いながら言っていたわ。」

「成程な。それでジュティの成果は。」

「何にも。考えれば考えるだけわからなくなるわ。」


 お手上げといった顔で肩をすくめルジュティ、それをクトゥーはうれしそうに見て笑った。


「まあ、難しいよね。当たり前を当たり前じゃないって考えるのは。」

「ええ、ただ今迷走中よ。」

「瞑想しながら迷走してたのか上手いこと言うな。」

「意図して無いわよ。というか見てたの?」

「いや、採寸の時にちょっと外に出ただけだ。」

「そう。」


 話しながらも淡々と食べ続けるクトゥー。話題に一区切りついたように静かな間が生まれる。


「いや、あなたはどうなのよ。」


 何故か会話が止まったことに怪訝な顔を浮かべながら口を尖らせる。


「俺?」

「そう設計図は順調なんでしょうね。」

「ああ、終わったよ。」

「え、もう?」


 意外な回答にジュティは目を丸くする。


「ああ、昨日もやってたからな。」

「それじゃあ、ちゃんと教えなさいよ。もやもやでこっちは気持ち悪いんだから。」

「わかってるよ。」


 その後も談笑をしながら楽しい食事を終えた。

 一休みし、全員は外に出てトレーニングの続きを始める。クディは次のノルマが準備されているためすぐに開始した。


「それじゃあ、セミコちゃんは次のステップに行きましょう。」

「はい。」


 やる気満々のセミコは胸元で握りこぶしを作る。


「じゃあこれもってね。」


 ジュティは木の枝を渡す。

 何の疑いもなくセミコは受け取る。

 ジュティは地面にある枯れ葉を指差して説明する。


「そこにある枯れ葉に魔力を出力して粉々にならないように棒にくっつけて持ち上げたら成功よ。魔力を与えすぎると粉々に砕けるし魔力が足りないとくっつく事は無い。」

「成程わかりました。頑張ります。」


 2人はそれぞれの練習を始めた。

 ジュティは一仕事終えクトゥーに振り返る。


「さて、教えてもらおうかしら。水とは何か。」

「まあ、俺も全てを知ったわけじゃないんだけどな。

 それよりも、ジュティの辿り着いた場所を教えてもらおうか。」

「わかったわ。まず始めに水はどこから来るかを考えて雨にたどり着いたわ。そこから雲は雨を降らすことから雲が水を発生させているのではないか。しかし、そうなると雲って何なんだろうという疑問に辿り着いたわ。」

「成程。」

「そして、セミコちゃんのコップの発言、冷たいコップに水滴が作って話ね。」

「割と良いところついてると思うよ。」

「本当?」

「ほんとほんと。」


 顎に手を押さえ少し考えるクトゥー。話すことがまとまったのか改めてジュティを見る。


「あくまで俺が色んなものを読んでの結論だから必ずしもそうとは限らないそこだけは頭においておいてくれ。」

「わかった。」


 確実な証拠が無いためあくまで一つの説だということを念押す。


「まず雲、あれはおそらく水の集合体だ。」

「は? いや水は空を飛ばないでしょう。」

「まあ、そうだね。でも浮上する水は見たことあるだろ。」

「浮上する水?」


 ジュティは首を傾げるがすぐにクトゥーは例を出す。


「水でお湯を沸かしたことあるだろう。」

「そりゃあるけどそれが……湯気のこと言ってる?」

「ああ、あれは別に煙ではないし、水以外は何も入っていないとなると湯気は水といっても過言では無いだろう。」


 確かに火をたいたときの煙とお湯から出る湯気は違うものに感じる。


「空はとても温かいことになるわけね。」

「いや、多分ここより寒いと思うよ。」


 ジュティの頭を抱え訳がわからなくなっている。


「ヴィツチジェの時に自分でやったじゃないか。」

「あ。」

「それにぬるま湯でも場合によっては湯気が出るだろう。」


 以前人工的に霧を発生させて戦った。そのときの発想を思い出しジュティの中で頭の整理がついてくる。


「そして、水は見えないがどこにでも存在する。それを裏付けるのがつめたいコップだ。」

「何か、全てが綺麗に納まった気がする。」


 自分の両手見てわなわなと震えるジュティ。それを見てクトゥーはそっと告げる。


「それじゃあやろうか。空気中にある水を想像するんだ、魔力をそれに変えてどんどんどんどん集めていくんだ。そしてその小さな粒の塊を少し冷やし固めてあげるんだ。」


 ジュティの手から透き通り輝くものが生まれ始める。どんどんとそれは大きくなっていきすぐに拳くらいの大きさになる。


「はぁ。火より生み出すのが難しいわね。水は火より自然に作り出されるイメージが強いからね。」

「でも感覚はつかめたわ。練習していけば量は増やせそうね。」


 クトゥーはそのままジュティから離れてクディ近づく。


「クディ調子はどうだい。」

「がうぅ。」


 落ち込み気味の暗い声を出す。

 クトゥーが確認すると全ての薪が均等にこげていた。

 その後何度か手に魔力をため一筋の雷を出すも安定せず途中で軌道が曲がり左右の薪にも流れていってしまう。

 クトゥーは何本もの薪を持ってきて一直線に差し込んでいく。


「クディ、確かに狙う対象は一点だがクディの魔法は投げるものじゃないから軌道で捉えたほうが良いな。」

「がう?」

「これに伝うように魔法を当ててみ。」


 言われたとおりに狙い、見事に一直線に流れて真ん中の薪を焦がす。


「がうっ。」

「良しそのイメージでもう一回やってみ。」


 間に並べた薪を取り目標だけを残す。

 クディが放った雷は一直線に走り真ん中の薪だけを焦がす。


「がぁあうぅ。」

「よしよし、上手いぞ。それじゃあ応用編だ。」


 目標の薪と間に二本の薪を立てる。


「ジュティの魔法に出来なくてお前の魔法に出来ることを教えてやる。」

「がう。」


 真剣な表情でクディは頷く。


「あの二本の薪に雷を当てずに奥の薪だけに雷を当てるんだ。」

「が。がうがう。」

「無理じゃないさ。お前なら出来るよ。」


 地面に軌道の例を引いていくS字に薪の間を縫い尾kのまきへと当てる。


「このイメージだ。これは練習、失敗しても良いんだ。」

「がう。」


 頷き、クディは雷を放つ。

 一本目は避けたが曲げきれず二本目の薪に当たり魔法が途切れた。


「が。」

「ははは、上出来上出来。後は練習あるのみだな。」

「がう。」

「明日から別行動になっちまうから次のステップも教えるぞ。

 次は横に曲げるだけじゃなく縦にも曲げるんだ。」

「が?」


 こげてなくなってしまった二本目を指しなおす。


「次は一直線に三本目を狙え。」

「がっ。」


 思わずクトゥーに首を向ける。


「大丈夫、軌道は教えてやる。」


 空中に絵を描くようにクトゥーが説明していく。

 薪の上を飛び越えるように二本のアーチを描いて三本目の巻きに触れる。


「こうだ。」

「がうがうがうがう。」


 ブンブンと首を激しく横に振る。


「はははさっきよりレベルが高いからな。まあ試しだやってみ。」

「がぁ。」


 集中して軌道をしっかりと描きクディは雷を放つ。ちょっとだけ上向きに角度が変わるも間に合わず高さも足りず一本目に直撃する。


「がううぅぅ。」


 落ち込むクディ、チラリと見るとクトゥーが俯いて震えていた。

 失望させてしまったと思い焦るクディ。


「凄いぞクディ初めてなのに凄いな。お前はほんとに天才だな。」


 クトゥーはいい笑顔でクディに抱きつき頭を撫で回した。


「見えてたかちょっと上に曲がってたぞ。初めてでそんなことが出来るなんてお前はやっぱり賢いな。」

「がう?がう?」

「最初は完璧に出来なくて当たり前なんだ。でもお前の魔法は曲がる兆しが完璧に見えていた。練習していけばすぐ扱えるようになるぞ。」


 べた褒めのクトゥーになんだかクディは自信が湧いてくる。


「ジュティにも話しておくからちゃんと練習すればお前は自由自在に雷の魔法を操れるぞ。」

「がう。」


 その後もクディは教わったことを意識しながら様々な練習に取り組んだ。

 クトゥーも移動し粉々の枯れ葉に囲まれたセミコの元に来る。


「クトゥーさん上手くできません。」

「大丈夫だ。魔法が使える時点で俺よりお前は凄いんだから。」

「でもぉ。」


 全然上手くいかず涙目のセミコを頭をなでながらクトゥーは諭す。


「セミコは難しく考えすぎなんじゃないか。」

「難しくですか?」

「ああ、もっと単純に手で掴むイメージでやってみたら良いんじゃないか。」

「手で掴むですか?」


 言われた通りにやってみるとスッと枯れ葉が棒にくっつくように持ち上がった。


「あれ、凄い簡単に出来た。」

「手を動かすときだって同じように考えて適切な力や動きを行うだろ。魔力だってお前の中にあった一部なんだから魔力を魔力をって思わないで何となくで考えてみると良いんじゃないか。ジュティやクディも多分使えるようになったから何となく使ってるんだと思うぞ。」

「なるほど。」

「全く考えないわけじゃないけど考えるだけじゃなくイメージして魔力を上手く感じることも大事なんじゃないか。」

「わかりました。もうちょっと魔力を感じてみます。」

「ああ、セミコは戦闘で使うんじゃないからもっと魔力を楽しんでみろ。」

「はい、そうですね。」


 少しトーンが落ちるセミコ、クトゥーは失言したかと思い焦りながらセミコに聞く。


「どした、セミコ。」

「私も戦えるようになればもっと皆さんに。」


 そこまで言ったところでクトゥーがこつんと優しくセミコの頭を叩く。


「あた。」

「馬ー鹿。それは昨日学んだだろ、適材適所自分が出来ることをやればいい、できないことは周りに助けてもらうんだよ。」

「はい。」

「俺なんて出来ないことだらけだぞ。魔法は使えない、重いものは持てない、使える武器はこれくらい不便でしょうがないんだぞ。」

「ははは、そうですね。」

「だからお前もやれることをやるんだ。お前は俺達に最高の料理を食らわせる仕事があるんだろ。」

「はい。」


 頭をなでながら優しく言葉で包み込んでくれるクトゥーに頬を少し染め照れながらも満面の笑みで力強くセミコは返事をした。


「それじゃあ、荷造りしえ来るからいい時間で帰って来いよ。」

「はい、わかりました。」


 そう言って手を振りながらクトゥーは小屋へと戻っていった。


今回のあらすじ

・ジュティ魔法で水が作れるようになった。

・クディ魔法が上手になる。

・セミコ魔法の基礎を身に着ける。

・あとはみんな練習あるのみ。

次回はクトゥーの一人旅が始まります。

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