愚兄の増築計画
会話回が続きます。少し短めになっています。
ドゥエンスが奥から大金を持って帰ってくる。
「というわけで400万です。確認をどうぞ。」
「おお、流石に結構ありますね。」
そのままクトゥーは自分の下に手繰り寄せた。
「確認しないんですか。」
「めんどい。」
「どうやら信用されているようで。」
一言ばっさり言い放ってすぐにお金から手を離した。
その大金を見てジュティが感心しながらドゥエンスに問う。
「ドゥエンスさんよくこんなポンと出せますね。」
「ここでの一週間のだからね。」
「一週間で400万も儲かるんですか!?」
「そんなわけ無いだろ。ドゥエンスさんちなみに収支は。」
「ギリギリマイナスですよ。まあ、日持ちしない食材を扱ってるわけじゃないし、持ち帰って売ればそれなりの利益になる。未知のエリアなので色々準備しただけだしね。まあ、君達の商談で大きなプラスにはなるようだ。」
不思議そうな顔のままジュティは更に質問を続ける。
「え。でもここに400万ギューツが。」
「仕入れとか護衛の報酬とか色々払わなくちゃいけないものが出てくるだろう。」
「ああ、成程。」
拳を手に置きやっと納得するジュティを差し置いて、クトゥーが話し始める。
「ドゥエンスさんちょっと相談があるんですけど。」
「相談? まあ答えられる範囲であれば力を貸すよ。」
「助かります。実は木材が欲しいんですけど。」
「木材? 増築でもするのか。」
「まあ、そんな感じです。」
「クトゥーもしかしてあれ?」
「そう、あれ。まとまったお金の手に入れ方もわかったしセミコもいるし早めに作った方が良いだろう。」
うれしそうな顔をするジュティにセミコは首をかしげる。
「何を作るんですか。」
「お風呂よお・ふ・ろ。これで体を拭く生活から開放されるわ。」
「まだ設計もして無いんだ。気が早すぎるぞ。」
「でも構想は出来てるんでしょ。」
「まあな。」
クトゥーとジュティのそんなやり取りを見ながらドゥエンスは今日何度目かわからない重くなったおでこを右手で支えた。
「何を言ってるんだ、と頭ごなしに否定できないね。」
本来であれば管理や使用法などを考えてまず不可能な話ではあるが、あの移動型住居の設計図のことがありドゥエンスは相談に乗ることにした。
「熱と湿気に強いものが欲しいんですけど。」
「専門家じゃないからわからないね。」
腕を組み悩むドゥエンス。横からヌスアルが声をかける。
「ジアッツ村のロックスムさんならここからも近いしちょうど良いんじゃない。」
「ああ、あの人か。まあ、大丈夫なのかな。」
渋い声を出すドゥエンスにみんなが注目した。
「そんなに難しい人なんですか。」
「いや、まあ、難しいといえば難しい人かな。」
中途半端な回答にクトゥー一行の謎が深まっていき互いに顔を合わせる。
「しゃきっとしなってあの人なら大丈夫なんでしょ。」
バンとドゥエンスの背中を叩くヌスアル。
「あたた、まあ、そうだな。
クトゥル君ここから少し南にあるジアッツ村そのはずれにその男が住んでいる。村の人に聞けば案内してもらえるだろう。」
「よし、それじゃあ次はそこに向かうか。」
「ただし、クトゥル君、君だけが向かってくれ。」
次の目的地が決まったと盛り上がるクトゥー達にドゥエンスが淡々と条件を告げる。何故かわからない条件にクトゥーは呆気に取られる。
「え。俺だけですか。」
「ああ。実を言うとなそのロックスムという男なんだが女性に対しての免疫がからっきし無いんだ。」
「女性への免疫が無い。」
「ああ。」
「全然。」
「うむ。」
「全く。」
「女性を見るだけで動揺して交渉や話し合い、仕事すらままならないだろう。
凄い微妙な声と表情をして話すドゥエンス。クトゥーも何となく話がわかってくる。
「男性だけのパーティなら文句なしにオススメできるんだが、女性のいるパーティでは一時的にはなるが別行動を取ってもらうことになるからな、あまりオススメはしなかったんだよ。
でも、木材や建築に関する腕と知識は間違いないものだから安心してくれ。」
「成程、わかりました。木材の搬送はどうしたら良いんですか。」
「小屋をどこかに置いてクディ君に引っ張ってもらうか別にヨンディを調達して運搬とかになるだろうな。もちろん協力はさせてもらうよ。」
クトゥーは腕を組み今後の予定を考える。交渉のこと、作成のこと、運搬のこと、様々な要素をよく考えクトゥーの中で予定が立った。
「ドゥエンスさん。厄介になります。」
「うむ。了解した。」
「では、ドゥエンスさんのこれからの予定を聞いても良いですか。」
「これからはそうだな。色々得た物も変わったし予定を変更して明後日から城下町に戻ろうと思っている。この皮と骨も仲間を通して早く売ってみたいからね。それにしばらくは城下町の店をやりながら自分の家で各店舗の情報、状況の整理かな。」
「ではジュティ達はドゥエンスさんについて行ってゆっくりしていてくれ。」
「わかったわ。」
「それで俺がロックスムさんに商談に行ってくるよ。事態が動き次第城下町に戻って予定を伝える。しばらくはそういう形で良いか。」
全員が了承の意を示し、クトゥー達の今後の旅が決まった。
一息つきクトゥーは大きく体を伸ばしストレッチをする。
「まじめな話はこれで終わりです。ドゥエンスさん色々とありがとうございます。」
「何気にするな。土産といい素材といい、こちらもよくしてもらっているからね。今後ともよろしくお願いするよ。」
改めて差し出されたドゥエンスの右手にクトゥーは迷うことなく応じた。
「それで、クトゥル君そろそろ聞かせてもらっても良いかな。」
「というと。」
「君達の洞窟探索だよ。」
「もちろんですよ。ただし、そんなに面白くないですよ。」
「最深部で悪魔に会ってきたんだろう面白くないわけないじゃないか。君達が言うんだ嘘じゃないんだろ。」
「もちろん嘘じゃないですよ。これが証拠です。」
そういってくトゥーは右手の指輪を見せた。
「それは普通の指輪じゃないのか。」
「世間一般に悪魔と呼ばれる奴から友好の印としてもらったものです。イセミ。」
そう呼ぶと青い鉱石が光り小さなイセミが現れた。3人も始めて使ったため興味津々でイセミを見る。
「やっと使ってくれたね。まあ、今までもずっと見させてはもらっていたけどね。」
「これはすごいな。」
「ああ、はじめまして3人の友達のイセミって言います。よろしくお願いします。」
「こ、こちらこそよろしくお願いします。」
小さなイセミはクトゥーに文句を言いながらドゥエンスに挨拶をする。
驚きをまだ隠せていないドゥエンスもたじろぎながら返事をする。
現在の魔法や技術では不可能なことを平然と可能にしている。世界のいろいろな情報を集めようとしているドゥエンスは聞いたことのないものを目の当たりにしている。他の4人は何かすごいね位の感覚だがドゥエンスは奇跡を見ているような感覚でいた。
「なるほど、これは君達の話がどんどん楽しみになっていくな。」
その後クトゥーは洞窟探索をダイジェストで面白おかしく話した。
誤字報告ありがとうございます。いつもよくわかんない誤字ばっかしてるなと思います。これからも気づかない点が多々あると思いますが今後もよろしくお願いします。
何か知らないんですけど1月31日のアクセス数がこれまで以上に多かったんですけど何かありましたか?しかし、一日のアクセス数が初めて500を超えました。ありがとうございます。




