愚兄の帰宅
帰り道どう描写しようか迷いましたが一度通った道でもありましたので思いっきり飛ばしていくことにしました。ゆっくり見たかった方は大変申し訳ありません。
「よし、到着。久しぶりの地上だ。って暗い。」
クトゥーは洞窟の入口でグッと体を伸ばす。星がキラキラと眩く輝いている周りに光もなく夜空の地図が一面に広がっていた。
「いやぁ久しぶりの外の空気ね。あら、夜だったの。」
「わ、暗いですね。」
「がう。」
クトゥーに続いて3人が洞窟から出てくる。
4人の体感では朝方ぐらいの気持ちで出てきたため予想外の時間に驚く。
「結構ずれてたな。まあいいか。ドゥエンスさんのところに行こう。」
「明日はどうするの。」
「しばらく体内時計の調整だろう。食料も取ってきたししばらくは大丈夫だろう、ドゥエンスさんにも何かよくわかんないけど黄色の綺麗な鉱石も拾ってきたし怒られないだろう。」
そういいながら暗闇をランタン一つで進んでいった。
しばらく歩くと見覚えのある家と大きなヨンディ車に到着する。
「久しぶりに見るな。」
「そうね。」
「ドゥエンスさんももう寝てるみたいですね。」
小屋とヨンディ車の横に一人の男が立っていた。
4人に気づくと男は武器を構えて仲間に合図の鐘を鳴らした。その音に反応して次々に護衛の男達が降りてくる。
「怪しいもの止まれ。」
「おっと、これは失礼しました。そりゃそうか護衛はいるか。」
先頭を歩いていたクトゥーが両手を挙げて敵意の無いことをアピールする。
「こんな夜更けに何のようだ。」
「いやぁ、洞窟帰りでして時間の感覚がなくなってました。ドゥエンスさんに用があったんですけど。あと、手降ろして良いですかランタンが熱くて。」
「わかった、敵意のないことは理解しよう降ろして良いぞ。」
「すいません。」
「それでお前もさっき言ったように夜更けで旦那様は眠っている明け方に出直してくれ。」
「その必要は無いよ。」
クトゥー達も護衛の男達も突然割り込んだ声の主に顔を向ける。
「君達の鐘で起きてしまった。」
「申し訳ありません。」
「何言ってる、ちゃんと仕事を全うしてくれているすばらしい証拠じゃないか。」
「ありがとうございます。」
「お帰り、こんな格好ですまないね。」
「いえいえ、夜更けに訪問したこちらが悪いんですよドゥエンスさん。」
夜中に起こされたのにもかかわらずドゥエンスは穏やかな笑顔をクトゥー達に見せた。
一人のまじめな護衛がドゥエンスに確認を取る。
「失礼ですがこの方々は。」
「そこの小屋の持ち主のクトゥル君達だよ。」
「あの100万の首を生け捕りにした。」
「そうだ。」
護衛たちがクトゥーたちの見る目を変える。
「それでどこまで行って来たんだい。」
「最深部まで。」
「それは凄い。」
「おいおい本当かよ。」
一人の男が疑わしい声を出す。
「洞窟が開かれてまだ一週間しか経っていないんだぞ。最深部まで行って引き返したといわれるAランクのパーティも今朝方ボロボロで帰ってきたのにそれよりも早く最深部に行って帰ってきたなんて嘘臭い話だぜ。」
「こら、止めないか。」
男の疑いの声に先程まで話していたまじめな男がその男を止めようとする。
もっともな意見であり護衛の大半はこの話を嘘だと信じてやまない。しかし、ドゥエンスはそんな非難の声が出ても穏やかな表情を崩さなかった。
「あいつら俺らより先に帰ったのに朝ついたのかよ。」
「あいつらとは何だ。」
「多分嘘だって言われてもみ消されるんだろうな。管理者に会ってきたよ契約はしなかったけど。」
大半の護衛がお互いを見合う。神の戯れの管理者や悪魔との契約については知らない人が多い。熱心に勉強しなければその存在自体を知らずに一生を終える。何故か、必要が無いからだ。
みんなが疑問に思っている最中一人だけクトゥーの言葉に目を輝かせる男がいた。ドゥエンスだ。
「まあまあ、今日はもう遅い。この小屋の持ち主が彼らであることに違いは無いのだから。」
「わかりました。」
「ドゥエンスさん一週間ありがとうございました。明日色々お話に上がりますんでスケッチのほうも見せてください。」
「わかったよそれでは明日。」
「はい。」
ドゥエンスが中へと戻り護衛達も危険が無いと判断し、見張りを残して中へと戻っていった。
「俺たちも帰るか。」
「ええ。」
「はい。」
クディは話が長かったからか既に眠っていた。
「まあそんなに離れていないし良いか。」
その場にクディを置いて3人は扉の前に移動した。クトゥーが扉を開け3人で中へと入った。
「「「ただいま。」」」
「アァーアァー。」
その声に反応し一羽の黒い取りがばさばさと3人に飛んでくる。
「おおソスラテこっちにいたのか。待たせたな、お前もお疲れ様。」
クトゥーの肩に乗るソスラテをクトゥーは優しく撫でてねぎらう。
「久しぶりのベット。」
ボフンとジュティが力なくベットに倒れそのまま眠りについた。
「セミコも寝てな。見張りは俺がやるから。」
「え、でも。」
「お前だって体に疲れがたまってるだろう。ちゃんと休め。」
「では、お言葉に甘えます。」
セミコも申し訳なさそうにベットへと向かい倒れるように眠った。
「お前も休め。」
「アァ。」
ソスラテも寝床へと飛んで目を瞑った。
クトゥーは部屋の明かりを消し、外へ出た。いつもの場所に座り、いつものように錫杖を刺して周囲に気を張った。
(特に以上は無いな。)
気を張り続けたままクトゥーも体の力を抜いて休憩した。
翌朝になる前、まだ辺りが真っ暗な頃クトゥーは一人何物かが近づいて来るのを感知した。
(あそこからきたということは護衛の一人か。)
丁度雲が月を隠し何も見えないほど真っ暗になった。
ギシっと木で出来た小屋の敷地に足を踏み入れた音がした。
「止まれ。」
近づく男はビクッとその場で歩みを止める。
「それ以上近づくなよ。声や手を出さなくちゃいけなくなるからね。」
その言葉にそいつはその場でじっと立ち止まる。
「そこからだと他の護衛には聞こえないからな。同じくらいの声で話そう。まあ、まず何か用かい?」
「ああ、用がなきゃ近づかないさ。」
「そりゃそうだ。」
その場で、暗闇でお互いにしっかりと相手を確認できないまま会話を続ける。
「泥棒でもしに来たのか。」
「あんた達洞窟帰りだろ。俺は最深部まで行ったことを信用してやるよ。だから大人しく荷物をよこしな。」
「いいのかいドゥエンスさんの報酬もらえなくなっちゃうぞ。それに俺達はドゥエンスのお土産と食料調達で出た魔物の皮と骨しかないよ。」
「嘘をつけ。」
「本当さ。それに最深部に行ったって信用しているんだったら相当腕に自身があるんだね。護衛任務なんて辞めたら。」
「ここの副町長が偉そうに画期的な作戦の雰囲気を出した捨て駒攻略をしたことは知っているんだ。まあ、知ったのはこの依頼を受けた後だったがな。お前らはそれに便乗したんだろ。」
「まあ、正解かな。」
「どうせ帰りもコバンザメのようにおこぼれを拾いながら採掘もしてきたんだろお前のリュックが微妙に光っていたのは見ていたよ。」
「成程。」
「実力者はあの女だけだろ。てめぇを殺って金目の物を頂いていくぜ。」
「今俺が大声を出したらその実力者も目を覚ますんじゃないか。」
「その心配は無い。」
ヒュッ。
「ガァ…。」
ドサッ。
何かが投げられクトゥーが声にならないような短い悲鳴を言いながら倒れる音がする。
「ぺらぺら喋りすぎだよ、おかげでお前のいる位置がわかった。お前ののどを潰したこれで助けは呼べまい。では早速。」
大きな音を立てないように慎重に扉へと近づく、扉に手をかけゆっくり開こうとした。
「その扉を開けるということは泥棒と判断していいんだろうか。」
聞こえるはずの無いと思っていた男の声が大きく響き、男は驚き訳がわからなくなった。
「な、何故だ。」
「何の騒ぎだ。」
その声に見張りの男が様子を見にランタンを持ってこちらにやってきた。
「やあ、ドゥエンスさんの護衛さん。この方は何かの使いでやってきたのですか。」
「いやその予定は無い。」
「そうでしょうね、いきなり投げナイフでのどを狙ってくる訪問があるわけ無いですもんね。」
そういいながら床に刺さったナイフを見つめる。
「何で。」
追い詰められ弱々しい声で状況を把握しようとする。
「何でって、あんたが外したナイフでしょう。まあ、コースは良かったけど狙ったとおりに飛んできて簡単に避けれたよ。」
「裏切り者としてお前を確保する。」
「くそぁ。」
武器を取り出して臨戦態勢を取る。護衛の人もランタンを置き慌てて武器を取り出す。
「ねぇ、あの人攻撃しても、もう何も言わないよね。」
突然落ち着いた声でクトゥーが確認してくる。
「そりゃあ、もう護衛ではなく犯罪者だからな。」
「約束ですよ。」
切りかかってくる男に錫杖を構えスッと足音を立てずに飛び立つ。そのままのどを錫杖で一突きする。
「ガッァ。」
そのまま男が倒れる音と共にクトゥーは着地する。
一件クトゥーは何一つ足音を立てることなく男を処理する。
首を押さえバタバタと悶絶する男。
「うるさいんで地面に転がしてもらって良いですか。」
「ああ。わかった。」
あまりにも鮮やかな行動に見ていた護衛全員が息を呑んでいた。
クトゥーは再びで定位置に戻り周囲の観察に入った。
翌朝を向かえ、朝日がまぶしく辺りを照らす。昨日の男はロープに縛られて地面に転がっていた。
話数抜けはありません。来た道を戻って途中で鉱石を採掘するだけだったのでがっつりやりました。




