愚兄達とイセミ達の友情
洞窟の最深部での話は終わります。
「良し決めた。」
満腹になり各々が休んだり体を動かしたりとしている中、イセミが何かを決めた。
「何を決めたんだ。」
頭に手を組んで寝ていたクトゥーはその言葉に目線のみをイセミに向けて質問する。
剣の手入れをしていたジュティ、眠っていたクディ、座って休んでいたセミコもイセミに注目する。
「クトゥル、ジュティ、セミコ、クディ。
僕達と友達になってくれないか。」
「は?」
「僕は今まで人は力を求める欲の強い生物としか認識していなかった。
でも、君達は違った。何しにここにきたのかはわからないが、特別視しないで接してくれた。
違うな。単純に君達と接点を持ちたいだけだな。」
「長いし、それにさっきの聞き返しはわからなく手の聞き返しじゃない。」
「すると、どういう意味だったんだ。」
頭を書きながら体を起こしイセミと対面になる。
「まずな、友達は申告してなるもんじゃない、気づいたらなってるものだ。いちいち確認するような友達は長く続かないしそもそも友達じゃない。」
「そういうものなのか。」
「ああ、だがお前はそういうのわかんないよな。すまん配慮が足りなかった。俺達はもう友達だ。」
スッとクトゥーは右手を出した。
「ありがとう。」
それにイセミも応じた。
「あれ、そういえばここで俺達くつろいでいて大丈夫なのか?」
横になってくつろぐクトゥーがイセミに確認を取る。
クディに魔法を教えていたイセミは顔だけを向けて答える。
「大丈夫だよ、今のところはそんなに深くまで潜ってきている人もいないしね。」
「管理者だからわかるのには驚かないがどうやって確認しているんだ。」
「各フロアに扉があっただろう、あれで人数を集計しているんだ何人がどういう方向で扉をくぐったかね。今は一番深いところでここから三つ前のフロアかな。」
「ああ、罠部屋か。」
「罠だって気づいたんだ流石だね。」
「まあ明らかに罠な塊があったからな。それにしてもその情報が絶え間なく流れてくるんだろ頭おかしくならねぇ?」
「慣れているからね。でも、君達がやったら一瞬で頭が狂うと思うよ。」
「だろうな。」
再び体勢を戻しクトゥーはくつろぐ。
しかし、気になることを思い出し再び体をイセミに向ける。
「クディのレッスンは順調か?」
「うん、もうすぐ終わるよ。」
クディはバチバチと音をだしなから電気を身にまとうようになってきている。
「頭が良いようでどんどん吸収していって教え甲斐があるよ。」
「そうか。明日の朝には戻ろうと思っていてな。会ってすぐにで申し訳ないんだがな。」
「しょうがないさ。君達は元々日の下で生活していたんだ、しかも旅をしているんだろう、止めることは出来ないよ。」
「すまんな。」
少しさびしそうな苦笑いをするイセミにクトゥーは何も言えなかった。
まだ時間はそんなに経っていないがイセミは一人でこの洞窟の管理者として最深部に存在していた。早々に訪問者が現れるも長い時間とどまることは出来ない。またひとりの生活に戻る頻繁にここへ来るわけにも行かないクトゥーは良い案が浮かばないまま目を閉じていた。
翌朝を迎えた。昨日の夜も昼間と同じように料理を作って一緒に食べて盛り上がった。
そして、クトゥー一行が帰るときが来た。
「じゃあな。イセミ、ヒュー。クディの魔法ありがとうな、全く見てないからどんなもんかわからんけど。時間はかかるが近くを通ったら会いに来るよ。」
少しさびしそうな顔でクトゥーはイセミに言う。
「イセミさんもご一緒には無理ですか?」
「ここの管理があるからね、長い時間は離れられないよ。」
「そうですか。」
セミコもダメ元で聞くも予想していた答えが返って来た。
「ただ昨日君達が寝ているときにとあるものを作ったんだ。」
そう言って3つの指輪を取り出す。銀を主体とした素材でリングが作られ、淡い赤色の鉱石が設置してある、3つのうち一つは淡い青色の鉱石だ。
そのまま、青をクトゥーに赤をジュティ、セミコに渡す。
「ごめんね、クディ用の物が用意できなかった。それを使ってくれればいつでも交流ができるんだ。」
「なんか何でもありだな。」
「そういう存在だからね。まあ、制作を得意とするから全員がこういうものを作れるわけじゃないんだけどね。」
「友情的な意味だとどの指だっけ。」
「左手の中指だったかしら。」
「確かそうです。」
そう言って3人は左の中指につける、すると自然にきゅっと指にフィットする。
「お、これはすごいわね。指のサイズに自動調整されるのね。」
「魔法で作ってあるからね。使い方を説明するよ。
まずこれを通して、通信をとることができるんだ。」
「全員とか?」
「正確には僕と通信が取れるんだ。そのまま他の人につなぐことによって通信ができる。」
「成程。」
「指輪を意識して頭の中で僕に呼び掛けてもらうと僕とつながるよ。つながってるときは指輪の鉱石が光るんだ。
僕からの呼びかけがあったときは指輪が振動しながら鉱石が点滅する。同じように意識してもらうとつながるようにできてるよ。」
「成程これは便利だな。これ魔力とかかかるのか。」
「かからないよ。」
いかにも魔力が必要そうな道具に魔力空っぽの男が不安を覚えるがイセミは即答した。
「いや、このご時世魔力空っぽの人なんているわけないと思っていたから君の魔力を調べた時は慌てて作り直したよね。」
「ご配慮いただきありがとうございます。」
腰を90度にまげてイセミにお礼を言う魔力0のクトゥー。
「いや、多少はあるかと思ったけどまさか0とはね。呪われてるんじゃないの心当たり無い?」
「あったら苦労してないよ。」
けらけら笑うイセミに何とも言えない顔をして点を見上げるクトゥー。
「僕も世界を見てみたいから気を遣わずどんどんかけて来てね。僕の方からも度々かけると思うよ。ちなみにクトゥルの指輪は僕側から常に見ることができるようにできてるから度々のぞかせてもらうよ。」
「ちょ、俺のプライバシーはどこへ。」
ギャーギャー言いながら3人は使い方を覚える。
「OK、理解したわデザインもシンプルだし結構便利そうね。」
「これで離れていてもイセミさん達とお話ができますね。」
「ああ、困ったことがあったら言ってくれ、2,3日くらいだったらここを開けても大丈夫だと思うから、すぐに飛んでいくよ。」
「ありがとうその時はよろしく頼むよ。」
「ああ、友達の頼みだからな。」
改めて全員と固い握手を交わしクトゥー達はイセミとヒューに手を振りながら金の扉を通った。
「食える野菜を覚えているんだったら少しいただいてから行くか。」
植物のフロアに戻ってきてセミコを見ながらクトゥーは提案する。
「そうですね。新鮮でおいしかったですし魔力も大きく栄養満点ですからね。」
「それじゃあ、ジュティとセミコは食材の野菜を見ててもらっていいか。」
「クトゥーはどうするのちょっと見ておきたいものがあってな。よろしく頼むよ。」
「まあ、わかったわ。」
二手に分かれて行動を開始した。
ジュティとセミコ、クディが昨日食べた種類を含め食べられる野菜を黙々と採取してセミコのリュックへとぽんぽんと詰め込んでいく。
「さてこんなもんですかね。」
「結構取れたわね。」
「がう。」
1時間ほどウロウロしながら食べられる植物を採取しリュックが再び最初に入り始めた頃までのふくらみを取り戻している。
「クトゥーはどこまで行ったのかしら。」
辺りを見回すとクトゥーがゆっくり歩いて戻ってきた。
「何探してたの。」
「木。」
「木?」
歩いて地上への道へ向かいながらクトゥーの行動を聞く。
「ああ、ただこの辺の木はここの魔力に依存している面もあるから食べる分にはいいんだけども木材としては長い時間持たなそうだから、いまいち使い物にならなくてな。」
「木材ということは増築するの?」
「ああ、あれを作りたいからな。お金にも余裕あるしここでいい木材が手に入ればとも思ったんだが木としては悪くないが木材としては微妙なものだったな。」
「それじゃあ、上に戻ったら。」
「いや、メインの目的にはしないよ。色々な木々を見ておきたいからなこれというものがあったら早めに作るけどな。」
「こだわってくれるのはうれしいわね。」
そうこうしているとらせんの通路を上り、宝箱の前に到着する。
「どうする。」
「無視しよう。面倒くさくなる。」
「そうね。」
金塊をスルーしてそのまままっすぐ進んだ。
「それじゃあドゥエンスさんへのお土産考えながらのんびり帰りますか。」
セミコをクディに取り付け洞窟を上り始める。
次回から帰ります。今までよりも速いペースでどんどんと登っていきます。




