愚兄、目的を見失う。
洞窟探索編まだ続きます。
翌朝、かどうかは洞窟内のためわからないあくまで体感的なものであり、大体5時間ほど時間が経った頃だ。ジュティ、クディ、セミコが目を覚ます。その間に特に魔物に襲われることもなく無事に休むことが出来た。すぐにジュティと見張りを交代しクトゥーは眠った。その間にセミコとジュティは朝食の準備をした。簡単な朝食を摂りクトゥーも一時間ほどで目を覚ました。
「もう少し寝てなくて大丈夫なんの。」
「眠気覚ましの睡眠だったしちょうど良いよ。今日の飯も美味い。」
三人は軽くアップをし、昨日と同じくセミコをくくりつけた。
「さあ、行くか、洞窟探索多分二日目だ。作戦は昨日の通りに。」
「了解。」
「がう。」
「クディさん今日もよろしくお願いします。」
全員の了承を確認しクトゥーは次のフロアへの扉を開いた。
そこからは時間も経っているということもあり、昨日よりも魔物の数が多くなっていた。体感1.3倍ほど増えている。魔物は昨日のソーだけでなく筋肉質なヨンジュやヨンディが二足歩行になって殴りかかってきたり、鉄で出来た人形のような機械的なものまで襲い掛かってきた。その攻撃を避けたり、受け流したりしながら全力で巻いた。もちろん一回一回ソナーで確認する余裕もなくなってきており、ジュティが魔法で火の壁を作ったりして時間を稼いだり、ソナー無しで進んで行き止まりに当たったときは目に砂をまいて目潰しを試みたりと極力逃げるを意識した動きで進んでいった。
時折魔物と戦い戦死した冒険者や宝箱に目がくらみ罠に沈んで行った冒険者を見ながらぐんぐん先に進んだ。
8階ほど降りたところでジュティが声を上げる。
「クトゥー少しゆっくり休めないかしら。クディも結構きてるみたいよ。」
「がぁぁあ。」
4時間ほどフロアごとに小休止も取りながらだが走り続けている。その間にわかったこととしては魔物達は自ら扉を開けることは無いということだ。いかに魔物を連れてきていても扉を閉めてしまえば開けることも破壊することも出来ない、どういう思考や本能があるかはさっぱりだがそのおかげで小休止が取れている。今も丁度扉を閉めたところだ。
「ん?ああ、そうだな少し休みながらエネルギー補給をするか。」
クディからセミコを降ろした。セミコも乗っているだけとはいえ、死線を常にかいくぐっていたり、中間の位置として常に前後の二人に注意を払っていた。
そのため、クトゥーを除く三人が息を荒らしながらその場に座り込む。自然にクトゥーが見張りを担当することになる。
「それにしても珍しいな、ジュティもクディもいつもだったら一日通して走るくらいの体力はあったんじゃないか?」
「そうなんだけどなんていうのかしら少し息苦しいのよね。まあ、洞窟内だし当たり前のことなんだけど、それでも前に入ったときよりもきついかもしれないわ。」
見張りを続けながらジュティに問う。ジュティは楽な姿勢で座り体を伸ばしながら答える。クディは大の字で寝転がり、セミコも座って休憩している。
その回答にクトゥーが考え込み一つジュティに指示を出す。
「ジュティ次の階からは極力炎でのけん制は止めよう風魔法でやってくれ。」
「え、火の方が効果覿面よ。」
後方のけん制を担当していたジュティは今まで効率を考え火による壁を作って相手の足を止めていた。
「ああ、だからやばいときは火を使って余裕があるときは火を使わないで対処しようって話だ。」
「成程、そういう修行ってことね、常に鍛えることを忘れない。逃げてばっかりだったから結びつかなかったわ。」
「違う。火を使うってことは酸素が薄くなって息苦しくなるんだよ。」
「え、そうなの。」
「ああ、外じゃあんまり影響は無いがここは室内でもあるからな頻繁に使えば影響が出るくらいにはなるだろう。」
「あれ?その話だと火って酸素使うんだよね。でも、火の魔法は全然違和感なく出せているわよ。」
「ああ、だから見落としていた。魔法では魔力で無理やり必要なものを補っているから極端で無い状況下でなら問題なく出せるんだと思う。」
クトゥーは悔しそうな顔で自分の考えを分析する。
「極端な状況下って?」
ジュティはクトゥーの発言の別なところに引っかかり質問を返す。
「水中とか酸素が全く無い場所とかかな。燃えてもすぐに消えるだろう。」
「成程ね。」
「あのーこの流れでとても言いづらいんですけど。」
クトゥーとジュティの会話に復活したセミコが声をかけてくる。
「どうしたセミコ。」
「料理のために火を出してもらっても良いですか。」
「もちろん良いわよ。なべってことはスープね、このぐらいで良いかしら。」
ボッと手から火を出してなべを暖める。
「どうして、言いづらそうだったの?火くらいいつでも出すわよ。」
「いえ、何か酸素とか火を使わない作戦とかおっしゃってたので。」
「セミコ、俺達の中では基本的にはセミコの美味い料理というのが最重要項目となる。」
「だから、もし魔力が少なくなって戦闘で使うか調理で使うかという話になったら満場一致でセミコちゃんの料理に即決するわ。」
「いや、戦闘で命を落としたら元も子もないんじゃないですか。」
二人はわかってないなぁといった顔で肩をすくめて首を振る。
そしてそのままクトゥーは警護、ジュティは火を出しながら調理の手伝いに戻った。
「いや答えて下さいよ。今、反論する流れでしたよね何ナチュラルにスルーしようとしてるんですか。」
珍しくセミコがツッこんだ。その光景を珍しそうな目で二人は見る。その行動にセミコの顔がどんどん怪訝になる。
「いやお前の料理には言葉にしなくても共感できる魅了があるってことだよ自信持て。」
「そうよ。クトゥーが今いい事言った。」
「もういいです。」
諦めたセミコは調理に集中することにした。
「それにしてもクトゥー、あんたこの状況下でよくいつも通りに活動できるわね。」
「ああ、鍛えてたからな。」
「城の中で?酸素が少ない場所なんてあったかしら。」
「あるんだな実は。」
「ふーん。」
ジュティは少し考えたが見当がつかず考えることを止めた。
しばらくして野菜が溶け始めた頃にスープは完成を迎えた。その味を堪能しながら1時間ほどゆっくるどの場で休憩を取った。
「そろそろ大丈夫か。」
頃合を見てクトゥーが声をかける。
「ええ、もう大丈夫よ。」
「がう。」
その言葉を聞きセミコをまた括りつけた。
「そういえば気になっていたんですけど、冒険者のパーティ一組しかまだ会えていないんですけど何でですかね。」
括り付けられながらセミコはふとした疑問を声に出す。
「ほぼ最短距離でいけたからな。多分分かれ道の先にいたと思うぜ。」
「そうね、ただ明らかに無理して進んでいる冒険者が多いわ。前にもこういた大規模調査の仕事をしたけど、今回はなんとしてでも先に進もうという意志が強い冒険者が多かったようね。」
「まあ、どうしようもないし、俺達は俺達の目標を俺達らしく達成するだけだ。」
「え、私たちの目標って何ですか。」
セミコの一言に全員が固まる。
「・・・全力で駆け抜けるだっけ?」
「それは作戦でしょ。言われてみればわからないわね。腕試しにきたわけでも無いし、お金に困っているけでもない、ドゥエンスさんの顔を立てるというわけでも無いわよね。」
「まあ、無視しても良いよって書いてあったしね。」
ジュティとセミコはじっとクトゥーを見つめる。
「ああ、この話は終わり。我々の目標は三日で行けるところまで行く、そして四日で安全に帰る以上。」
そう言って無理やり切り上げてクトゥーは奥へと進んでいった。
「無いなら無いでよかったんですけど。」
「セミコちゃんそれは先に行ったほうがよかったわね。」
そんなセミコの疑問は未解決のまま時効となった。
最初から目的なんてなかったですね。まずこいつらの旅事態に目標がないんで私も見失っています。




