愚兄、ホーフルフ副町長に会う
洞窟の説明を全くしていなかった気がしたので慌てて冒頭をつけ足しました。
この世界では時折こういった洞窟がポンと突然現れる。洞窟内は魔力で溢れ返っておりその魔力は深く行けば行くほど、濃いものになりより強力になっていく。その魔力によって様々な魔物や罠が洞窟内には存在する。その強力さは魔力に比例するように上昇する。
しかし、洞窟は恐れるだけのものではない。その豊富な魔力により資源も同じように豊富に採れるのだ。また、魔物も多く出ることから魔物を討伐しその素材も有効に使うことが出来る。
そういった面から冒険者達が一攫千金を狙い、又は、自分の実力を測るために利用する。
その出現に突飛さや危険はあるものの資源の獲得が可能ということで神の戯れとして認識されている。
洞窟の大規模調査当日、前泊していたクトゥー一行はがやがやと増える人の声に気づき入口から顔を出す。
「凄い人の数だな。あれ全員であの洞窟に入るのかよ。」
「まあ、新規洞窟の調査開始日くらいよ、誰も入ってないからお金や名誉になる原石がごろごろ転がっているのよ。罠まみれの宝物庫って感じかしら。帰りはそれぞれまばらに出てくるし、そもそも戻ってこない奴もいっぱいいるわ。」
「そんなにか。」
「そんなによ。まだ発見されていない鉱石や資源が見つかればそれこそ一生遊んで暮らせるほどのお金になるわ。洞窟内の情報だけでもある程度お金になるわ。」
「皆さんご飯で来ましたよ。」
外を見ていたクトゥーとジュティが中へと戻りセミコの作った朝食を食べる。
クトゥー一行は邪魔にならないように拠点から離れた位置に小屋を停めていた。
朝食を食べ終えクトゥーはクディに指示を出し動かした。
「早速受付?」
「いや、まずドゥエンスさんを探す。小屋を預けたいからな引き受けてくれるかわからないけどな。」
拠点に近づくと大きな荷物を積んだ荷車に冒険者が殺到しているのを見つけた。
隣には店名の書かれた看板がある。
“道具屋 ドゥミラ・モニトイ”
「あ、あそこか。忙しそうだし少し待つか。」
少しはなれたところで客がはけるのを待つ。ある程度落ち着いたところでクトゥーは近づいてドゥエンスさんに挨拶をする。
「おはようございます。」
「ああ、クトゥー君おはよう。君達も今日からもぐるんだろ。」
「はい、申し込みもしましたので。」
小屋から降りてクトゥーはドゥエンスに近づく。
「ドゥエンスさんはどのくらいいるんですか。」
「そうだな。浅く探索する冒険者もいるし、中を見て道具を買い直す者も出てくるから二週間くらいはここで商いを行うつもりだぞ。」
その言葉を聞きクトゥーの表情が引き締まる。
「そうですか。それでは折り入ってお願いがあるんですがよろしいですか。」
「お願い?私に出来ることなら何だって言ってくれ。」
「ありがとうございます。今回クディも調査に入りますので可能であればうちの小屋も見ていただければと思いまして。」
「ああ、そのくらい構わんよ。」
あまりにも即答するものだからクトゥーは驚く。
「即答ですね。」
「誘ったのは私だそのくらいさせてもらうよ。」
「ありがとうございます。」
その後罰の悪そうな顔をしてクトゥーは続ける。
「実はもう一つありまして。」
「?」
「ソスラテ。」
そう呼ぶと入口から出てきてクトゥーの頭に載る。前回肩に乗ったがちょっと狭かったので今回は頭の上に乗る。
「む、何でだ。前まで肩だったじゃん、狭かったのか。」
「かぁ」
「ティオルか良く手懐いているな。」
「道中暗殺者に気に入られまして伝達用に置いて行ったんです。それで、もう一つの依頼がこいつの食事です。」
「成程。食べ物の指定は。」
「何でもよく食べます。」
「了解したよ。」
クトゥーはハンドサインを送ってソスラテを小屋に戻した。
「それで報酬の話なんですけど。」
「別に良いですよ。」
「いえ、ここはきちっとさせてください。」
折れる気の全くないクトゥーにドゥエンスは早々に折れることにした。
「わかった。どう言っても折れる気の無い様だし時間の無駄になるから折れるよ。そうだな。お土産でも持ってきてくれ。」
「洞窟のお土産ですか。」
「ああ、ジャンルも何もかも君達に任せるそっちのほうが面白そうだからな。」
「ハードルは下げといてくださいね。」
「はっはっは、くぐれるくらいにはしておくよ。」
そう言って口約束ではあるが二人の契約が終わった。
ドゥエンスの指示を受け小屋を邪魔にならないところへ移動する。
「ああ、そうだ。一ついいか。」
「はい?」
集合場所に移動する4人を引き止める形でドゥエンスは呼び止めた。
「一つお願いしたいことを思い出してな。」
「何ですか。」
「君達を小屋をスケッチさせてもらっても良いだろうか。」
少し照れた様子でドゥエンスはクトゥーに聞く。
理解が追いつかずクトゥー、ジュティ、セミコは固まる。
「駄目か?」
「あ、別に良いでけど、どういうことですか?」
頭を掻きながらクトゥーが応える。
「いや、私の趣味でな、物を描くのが昔から好きでな君達の小屋はどこにも無いものだろう。だから描きたくてしょうがないんだ。」
「ああ、わかりました。別に気にせず描いて貰って良いですよ。」
「本当かありがとう。」
ドゥエンスは少年のような笑顔でクトゥーの手を握り喜んだ。
「呼び止めて悪かったな。無理せず頑張って来いよ。」
「もちろん無理をする気なんてさらさらありませんよ。」
手を振りながらドゥエンスに別れを告げ集合場所である拠点へと移動する。
「参加者の確認を行います。ランク毎のスペースに集まってください。」
受付嬢の方々が声を出し冒険者への指示を出している。
「FどこだF。」
Eの隣にあるのかと思い移動するも無い、捻くれてAの隣かと思っても無い、各ランクの間を探しても無い。
「ああ、すいませんFランクってどこですか。」
Eの立て札を持った比較的余裕がある人に聞いてみることにした。
「F?ああ、Fランクの方ですね。少々お待ちください。」
「ああ、私持ってますよ。」
「すいません。すぐ戻ってきます。」
ジュティは受付嬢から看板を受け取りそのまま片手で持つ。
少しして一人の男を連れて戻ってくる。
その男は派手な衣装に身を包み立派な髭の細身の男だ。顔も自信に満ちた表情をしている。
「君達がFランクで今回の調査に参加した者か。」
「はい、そうです。すいませんこの町に来たばかりでして。」
言い辛そうにクトゥーは朗らかな笑みを浮かべてやってきた男に聞く。
「失礼ですが、どちら様でしょうか。」
その発言に近くにいた冒険者がどよめく。
ジュティはその様子を黙ってみていた。セミコとクディは訳がわかっていなかった。
「ほう、俺を知らないと。」
「申し訳ありませんが。」
男はわなわなと震え始めた。全身は強張り間違いなく怒っている。その様子を発見し一人の男が慌てて近づく。
「副町長たくさんの冒険者の前です。ここは抑えてください。」」
「わかっておるわ。」
ふぅと深呼吸して男は落ち着く。
「もう少し社会を勉強するんだな田舎者。私はビフォアットュ・ホーフルフ。この町の副町長だ覚えておけ。」
「申し訳ありません。」
フンッと鼻を鳴らしずかずかと戻っていった。
「んで、俺達はここでいいのかな。」
今はEランクの横にいる。
「はい、そこで大丈夫だと思います。」
Eの看板を持つ受付嬢が自信なさげに答えた。
周囲が落ち着き各ランクごとで参加者の確認が行われている頃、ジュティがクトゥーに近づき小声で聞く。
「何で怒らせたの。知ってるでしょうあの人のこと。」
「一応ね、面倒事押し付けられないように切れてもらおうかと思ったんだけど優秀な部下がいて参ったね。
あの人は、自信家で元冒険者として色々な功績を上げているし色んなことに顔を出しているからそこそこ有名だ。実績主義な面もあるからFという実績の無い連中には強く出てくる、ましてや名前を知らないなんて言ったら怒る。ただ、人に取り繕うのは上手い人だから今の位置を確立している。今回も実力者の引き込みと次期町長戦への布石として名乗りを上げたんだろ。」
「未知数の洞窟調査だし中々主催する貴族もいない中、失敗を恐れないのは凄いことよね。」
「違う違う。失敗を考えていないんだ。」
感心するジュティにクトゥーは水を差す。
「Aランクに何人かあいつと結託している奴がいる。」
「そういえばAランクの集まりが良いと思ったわね。」
「多分まだなんか仕掛けてくると思うぞ。二人とも何があっても俺に合わせてくれ。俺達は最後尾を進むんだ。」
確認が終わったようで一人の兵士が大きな声を上げる。
「皆のもの静粛に。これより今回の主催である、ビフォアットュ・ホーフルフ副町長より挨拶と作戦の説明がある。」
用意された高台にさっきの男が登壇する。
堂々たるたたずまいで全員の前に立つ。
「私がビフォアットュ・ホーフルフだ。皆の者今日は我が町ホーフルフのために集まってくれてありがとう、今回の洞窟の開拓はホーフルフの発展に大きく関わって来るものと考えている。この町の重役を務める私自身またホーフルフの町としてもこの洞窟の情報は大変重要なものと考えている。今回はホーフルフへの多大な協力大いに感謝する。
私も元冒険者なので固い話はここまでとしよう。
全員、金や名誉のために集まったことは重々承知である。さっきも言ったが情報は何物にも替えられない資源だ。調査依頼の報酬として言い値で買い取ることを約束しよう。もちろん魔物の素材や鉱石等の資源もだ。
そこで、私から一つの提案がある。」
報酬の約束などの話で盛り上がる冒険者達がビフォアットュの異例の発言にざわめく。
もちろん貴族の立場として冒険者に対し金や名誉のために来たのは知っているという同等の目線で挨拶をすることも稀だが、統率の必要の無い調査依頼で貴族が指示を出すのは聞いたことが無い。
「今回の調査で我々ホーフルフの町としても広く深く調査を進行させたいと考えている。情報があれば冒険者の定住にも繋がる、さらに、異常事態の早期発見にも繋がるだろう。
そこでより深く探索するためにランク毎に調査開始をしたいと考えている。
Eランクを始めとしてD、C、B、Aとランクを上げていく。先に低ランクから行くことにより上位ランクの冒険者は弱い魔物に対する労力を減らすことが出来る。余裕が出来た上位ランクも最小限の戦いで済むためより深い探索を試みることが可能と考えている。
もちろん低ランクの冒険者達にも利点は存在する。各それぞれの実力に合わせたところでの探索が可能となるだろう。上位ランクが先行してしまうと魔物も少なくなり深入りしてしまう可能性がある。低ランクから行くことで勘違いせずに身の丈にあった探索が出来るだろう。」
熱のこもった作戦の話終え一呼吸置く。冒険者達も文句を言わずに真剣に聞いていた。整理する時間を作ったのか少し間を置き再度ビフォアトュは冒険者に語りかける。
「まずは、反対意見や質問を受け付けよう。何かあれば手を上げてくれ。」
冒険者は静かだった。誰一人手を挙げることは無くビフォアットュが次に行こうとしたとき一人の男がゆっくりと手を挙げた。
次回からやっと潜ります。目的も何もないのでどういう展開にするかは完全に未定です。どうしよっかな。
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