愚兄と少女と火の鳥との決着
対ヴィツチジェ戦の最後です。
「クトゥー。クディ。」
大きな声を出しジュティが二人を呼ぶ。その言葉に消火活動をしながら二人はジュティの声に耳を傾ける。
「大規模火災警報。大きな火災にご注意ください。」
「が?」
「何か思いついたな。」
そう言うとジュティは周囲に火の魔法によって火を放った。
「がぁ!?」
「クディうろたえるな水をいっぱい持って来いさっさと消火するぞ。」
ジュティの行動にクディは驚きを隠せない、クトゥーは全く動じずにクディに指示を出して消火を始める。ジュティもある程度燃え広がらない様に調整をしているため淡々と消火が進められた。ヴィツチジェも相手の奇行に驚き様子を見る。
消火を終えるとそこにジュティの姿はなかった。
「続いて濃霧警報、広がる霧にご注意ください。」
声は小屋の方から聞こえてきた。扉が開いておりそこにジュティの姿があった。ジュティは中に入り中から扉の方に向かって風魔法によって風を作り外に思いっきり風を吹かせた。すると、部屋の冷気が外にどんどんと流れていき外の空気が急激に冷える。
「クックック。成程、自分の手札を有効に使った名案じゃないか。」
ジュティの作戦にケラケラと外で笑っているクトゥー、辺りはどんどんと濃い霧で覆われて行く。
「がぁあ?」
「わからないかクディ。これはあいつが人工的に作ったものだよ。」
突然の霧に動揺するクディに近づきクトゥーが説明を始める。
「気づいてたかクディ、ここは今湿度がすごく高いんだ。空気中の水分量が多い状況だ。どうしてこうなったのかは俺達のせいなんだ。」
「があ?」
自分を指し何かしたっけといった表情でクディはクトゥーを見る。
「してただろ、懸命な消火活動だ。それによって蒸発したり地面に水分が多くなっているんだ。ジュティはそのことに気づいた。でもそれだけじゃこの霧を作ることはできない。
ジュティは念のためのダメ押しで更に自分の使える二つの魔法の一つの火の魔法と俺達が運ぶ川の水を使い水分量を高めた。そして小屋の中に入ってもう一つの必要な要素を取りに行った。」
小屋を指さして解説を続ける。
「クディあそこには氷のお嬢様が眠っている。あの小屋の中は外の気温とは真逆に冷えた空気がこもっていた。その空気を外に出してここの気温を急激に冷ました。
その結果、空気となっていた水が冷やされ目に見える水の細かい粒となってこの霧になった。」
クトゥーの解説の間に戦況が大きく動いた。
「クェェェエエエ。」
ヴィツチジェの大きな叫び声が聞こえる。
この霧によりヴィツチジェはジュティを見失っていた、ジュティを探すために火の玉を放ちきりを晴らそうとする。
その時、風の斬撃がヴィツチジェを襲う。その斬撃を食らいヴィツチジェは悲鳴を上げた。
「さあ、焼き鳥下りて来な、あんたは私が見えない、もちろん私もあんたは見えない。」
剣をまっすぐヴィツチジェに向けジュティは言い放つ。
「でも、夜空には月とあんたがきれいに輝いているわよ。」
追撃の斬撃を放つ。
ヴィツチジェは対応できずに翼に大きなダメージを受ける。高度を維持することができず高度を落とす。その行動に合わせてジュティは接近し強襲する。足音でより早く勘づいたヴィツチジェはジュティの剣を避ける。素早いジュティの攻撃に体を少し掠める。
バサバサと空中に留まりジュティと対峙する。
霧の中一人の女性と一匹の鳥がお互いに見合っている。まだ消火が終わっていない火が霧を通して淡く光り夕方のように二人を赤く染める。まっすぐな鋭い目で互いを見る。決着の時をお互いに感じていた。
ジュッという火が消える音と共に辺りが一気に夜へと変わる。その瞬間ジュティとヴィツチジェは互いに動き出し、すれ違い様にお互いに攻撃を放ちそのまま通り過ぎ背中を向け合う状態になる。
時間が止まったかのように二人は静止していた。
「くっ。」
ジュティの腕から切り傷ができ血が噴き出る、その後発火し傷を燃やす。
痛みにより体が疲れとダメージを思い出し、剣を杖にするように体を支えながら片膝をつく。
「ケェェエエエン。」
ヴィツチジェは高らかに空に向かって声を上げる。その姿は気高く美しい姿であった。
ドサッ。
ヴィツチジェの首が落ち体の炎が消えた。体はその場に立ち続けゆっくりと崩れていった。
決着がつきゆっくりと霧が晴れていった。
「強かったわよヴィツチジェ、あんたの気高き最期、私はいつまでも心に刻むわ。」
クトゥーは決着を見届け、ジュティに近づいていった。クディもクトゥーについていく。」
「お疲れ。いい案だったぞ。」
「どうも、疲れたし休ませてもらうわよ。」
「ああ、だからクディも連れて来たんだ。クディジュティを中へ。」
「そのまま寝させてもらうわね。」
「ああ、わかった。傷の手当は勝手にやらせてもらうぞ。」
「変な気起こさないでね。」
「怪我人を襲う趣味はないよ。冗談言ってないで休め。」
クディはジュティを小屋へと連れて行った。
クトゥーは見送りながらヴィツチジェに近づいた。
「いい戦いだったぜ。悪いがこっちも生きるためだ悪く思わないでくれ。」
満足そうに瞼を閉じるヴィツチジェの首を大切に取り抱えた。
戻ってきたクディにヴィツチジェの体を持って行かせた。後ろの荷車を下ろしそこに体を置いた。頭は小屋の中へと運ばれた。
クトゥーはランタンに火をつけ明かりを灯した。ジュティの傷を一つ一つ確認して、薬をつけ包帯を巻いていった。
「うぁっ。」
「文句言うなよ。後あんまり大きな声出すとセミコが起きるぞ。」
「・・・。」
薬が傷に沁み声を上げながらも応急処置が終わった。
外に出るとバケツを回収し終えたクディがいた。
「ありがとう。お前も疲れただろう、俺が見張りをするからゆっくり休め。」
「がう。」
返事をしてクディは横になって眠った。
クトゥーはランタンとナイフを持ってヴィツチジェの体へと向かった。
体の前に座り手を合わせた。
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「ふぁああ。」
朝になりセミコが目を覚ました。
ゆっくりと体を起こし腕を伸ばしながら体を覚ましていく。
朝日に誘導されるように外に出る。
「ん~いい天気。」
朝日を体で浴びながら爽やかな目覚めを迎える。
「で、ここどこかしら。」
知らない景色が広がりセミコは首をかしげる。今晩戦いを仕掛けると聞いていたので場所が移動していたことに疑問は持たなかった。
「お、セミコ起きたか。」
「ひゃっ。」
急に背後から声を掛けられてびっくりして声を出してしまう。振り返り声の主を確認する。
「クトゥルさん。おはようございます。」
「おはようセミコ。」
しっかりと頭を下げて挨拶をするセミコにクトゥーは軽く手を上げて挨拶をする。
「ちょうど良かった。一つ頼まれてくれないか。」
「私にできることならいいですよ。」
手招きしてセミコを後ろの荷車に呼ぶ。そこには解体され羽や皮、骨、肉などが分けられていた。
「この肉を使って朝飯を作ってくれ。」
「はい、わかりました。」
「一部じゃない全部だぞ。全部使って豪勢にしてくれ。」
「朝から全部食べるんですか?」
肉の量も通常のイゼロスリの3倍ほどの肉があった。
「ああ、ジュティの血を作らないといけないからな。あいつも俺達も動いたしこのくらい軽く食えるだろう。」
「わかりました。早速調理しますね。」
「よろしく。」
肉をもってセミコは小屋の中にと戻っていった。
「ひぃやぁぁ。」
小屋からセミコのかわいい悲鳴が響く。
「どしたセミコ。」
その悲鳴に心当たりを感じながら軽くセミコに声を掛ける。
「ああああたあた頭が。」
「ああ、悪い昨日の得物だ。討伐証明に使うから中にしまっておいたんだ。」
「びびびびっくりしました。」
「落ち着いたら、仕事頼むな。」
申し訳なさそうに頭をなでてセミコを落ち着かせた。
こうして、セミコは朝食の準備をクトゥーは骨や皮などの他のものを麻袋に分けて小屋の中の空いているところに片付けクディが起きるのを待って荷車を上げ直した。
「はぁぁああ。」
ジュティが目を覚まし、欠伸をしながら起き上がる。
起きるといい匂いが鼻を刺激してお腹が鳴き声を上げる。
「ああ、起きたか。もうすぐ準備できるからちょっと待ってな。」
台所に二人のちびっこが並んで料理をしていた。身長のせいでまるで夫婦ねなんて感想は微塵も起きなかった。
「何の料理なの?昨日の一件でおなかすいちゃっていっぱい食べたいんだけど。」
「任せろ、初めて食う食材だぞ。」
「・・・。それだいじょうぶな食材よね。」
「大丈夫だろ。毒とかはなさそうだし、味も似たような食材は食ったことあるから保証できるぞ。」
「ねえその食材ってもしかして。」
「ああ、ヴィツチジェの肉だ。」
「仕事が早いのね、もう解体したの。あれ依頼的に食べていいのかしら?」
「え、討伐依頼だから首持って行けばいいかなと思ってたんだけど。」
「それもそうね。」
ジュティはテーブルに向かおうと立ち上がり不図棚に目が行った。そこには自分が切り落とした首が丁寧に置かれていた。
何とも言えない表情をしながらジュティは椅子に座った。
私は頭が悪いので今回のやり方じゃ霧なんて起きない可能性もあります、詳しい方がいらっしゃっても細かいことは気にせず何かそれっぽいなぁという思いで見ていただけると嬉しいです。実際に俺は火の魔法が使えて低体温(0℃~2℃)の友達がいるけど、やってみても霧なんか起こらないぞと言われても一切の責任が取れませんのでご了承ください。あくまで起こりそうという空想のやり方です。




